2019年10月6日〜10月20日
 走行日数15日間
 累計走行距離1001km(101670km〜102671km)

◎道路
 ウクライナ・モルドバを経て来た身には路面のギャップが格段に減って、見通しの良い下り坂でも常にブレーキを気にして走らなくても良い道路になったという点が1番嬉しかったかな。
 全体的に側道のある道も多いのだが、幅員が狭くて余裕を持って走り続けられる道は多くない。それに加えて道の隣を流れる排水溝がやたら深く掘ってあり、当然そこにガードレールなんぞないため側道を走りたくとも「何かの拍子に落下したら」という恐怖感がありあんまり側道の外を走れない。
 国全体的にSの字を描くようにして山脈が連なっているそうで、私の場合は標高1000mちょっとまで登らされる峠があった。斜度は緩めで距離かけて緩やかに登らせるタイプの山であり、看板表記では8%が最高だったかな。大抵の場合、上り坂では登坂車線が出てくるため遅い自転車でも安心して登れる。
 町中も割と走りやすかったが路面状況が一気に悪くなるパターンが多く、また自転車専用道は一部の町でしか見かけなかった程度の普及率である。町中では道路幅狭くなり交通量が増えて危険なので歩道へとエスケープしたりもしたが、段差が自転車押さないと乗り越えられない大きさの場所も多くて困り者であった。総合的にいうと道路レベル全体的には高いがヨーロッパとしては低いって感じかな。

◎治安
 全体的に良いのだが、首都のブカレストだけはそうでもない。ブカレストも全て危険というよりはちょっと近寄りがたい嫌な雰囲気のする場所や落書きが多かったり家々の防犯レベルがやたら高い区域があり、そう言った場所を外れて観光ポイントや大通りを歩いてる分には問題ないと感じた。一眼レフ首からぶら下げてほっつき歩いてる人もいたくらいだし。
 ただホステルのスタッフからは「ルーマニアは自転車の盗難が多いから目を離しちゃダメだよ」と注意されたし、私もその点についてはかなりナーバスになって対応してた。そうはいっても買い物する場合は絶対自転車から離れなくてはならないのであり、地球ロックは当然として、こういう時に鍵をかけれるリアボックスは貴重品の保管に安心感あったな。

◎ビザ・出入国
 ノービザで90日間の滞在が可能であり、日本人なら特に気にする事なく入国できる国の1つである。だが私はルーマニアの滞在に関しては割と緊張があったのであり、それが2019年にもルーマニア及びブルガリアの2カ国がシェンゲン協定の加盟国として認証されそうというニュースがあるためだ。
 これはかなり可能性が高い事らしく、私のようにシェンゲン滞在期限ギリギリまで使っている人間にとって非常に困るというかモルドバからアジア方面へ抜けるにしてもルーマニアはともかく地理的にブルガリアへの入国は避けられない状況にあり、下手したらウクライナやモルドバで身動き取れない状況に陥る可能すらあった。
 もっといえばルーマニアの滞在中にシェンゲン協定への加盟が施行されたら私の立場はどうなんだ?という事態すらあり得たのであり、こんな状況を体験するのは珍しいにしても今後のルーマニア・ブルガリアの状況次第では自転車旅行のルートが大きく制限されることにつながりかねない。一応ウクライナのオデッサからトルコへのフェリーはあるけどさ。

◎交通事情
 道路が良くなったプラス点を上回るほど車両の数が増えたことでマイナス面が目についてしまったルーマニア。とにかく狭い道路でも大挙して車両が押し寄せてくるのであり、特にトラックが自転車を見つけるとプップッと短くクラクション鳴らしてくるのがウザい。存在を知らせようとしてるのだろうが、その馬鹿デカいエンジン音で気づかないわけねーだろ。むしろそうしたクラクッション鳴らしてくる車両に限って「これで大丈夫」とばかりに自転車のすぐ脇をスピードも緩めず抜いていく輩が多い気がした。
 山間部の狭い道でこれが続くと緊張で疲れきってしまうのであり勘弁してほしい。全体的にかなり紳士的な運転をする国だったと思うが、このイメージが強くて私はルーマニアドライバーのイメージあんまよろしくない。

◎特徴
 東欧でよく見るロマ(ジプシー)の人数がもっとも多いとされている。実際私も街中・郊外を問わずやたらカラフルな衣装を着たロマの人たちを数多く見かけており、それなりに「タバコくれ」とか言われたりもした。
 割と悪評判が目立つ人たちで、特に彼らは平気で荷物を盗むから用心しろと注意を受けた。一応調べてみたら、ロマの移動生活スタイルの絡みで「そこに落ちてる物は自由に利用して良い」という考え方が根底にあるそうで、そこら辺の考え方の違いが軋轢を生むんだろな。
 ともかく割と町から外れた郊外でも遭遇することがあり、野宿するにおいて色々と気を揉む要因になるため注意してた。私は直接被害を受けたりしてないんだけども。

◎気候
 初日・2日目を除いて全て良い天気だったルーマニア。10月でも日中の気温は25度を超えてくるほど暖かいが、夜になるとぐっと冷え込むことが多かった。特に山の上で野営した日は朝にテントに氷が張りつきペットボトルの水も氷かけてる程度には気温が下がっていたため、冬の装備でないとやや厳しいとは思う。

◎言語
 ルーマニア語。旧社会主義国では珍しく使用文字がアルファベット(ラテン文字)であるため何を書いてるいるのか見当付けやすいのが有難い。結構会話を聞く機会があったが、英語よりもスペイン語に言語が近いようで理解できる単語が多かった。もちろん何言ってるか分かるほどではないが。
 英語は通じる人と通じない人半々くらいかな。もちろん都会の方がその割合が高く、田舎だと若干低い。ホステルや観光地とかのスタッフは私が相対した限り100%英語喋れたし、そうでないと務まらないんだろうなとも思った。

◎宿(野宿)・Wi-Fi
 まぁそれなり程度のお値段。主要観光地と大都市にならホステル系の安宿が存在するが、それ以外の町では割高のホテルか郊外にモーテルが散見されるものの利用はしていない。
 ホステルでも1泊の値段が1000円オーバーしてくる物価となるが、その分宿の質も高いのでコスパという面で見ればそれほど悪いとは感じない。というか利用したのヤシとブカレストだけなのであんまり語れる立場にはないけども。
 なお野宿は町を抜けても人家が点在してるパターンが多く、かつ農業国で何処にでも森林が生え揃ってはいないためやや難易度が高い国である。割と水源が豊富なのか川の数が多く野営した全日程で身体を洗うことができたため、野宿を続けて移動していくこと自体はかなり楽だったが。水場にこだわらなければ多分もっと簡単にテント張れる機会も多かったとは思う。
 メジャーなガソスタと主要スーパーマーケットではFreeWi-Fiが飛んでいるのでネット接続するのは簡単。ホステル含め速度は申し分ないレベルだったし、こうしたネットに接続できるポイントや町と町との距離が短い関係でネット難民となることは心配しなくて良い。結局ルーマニアで丸1日ネット接続できなかった日はないと記憶している。

◎動物
 割と犬が多く追いかけられる場合がある。ルーマニアの観光情報局みたいなトコが出してる情報では「昔は野犬が多かったが今はそんなことはなく〜」みたいなこと書いてたりするが、それは都市部のみに限定された話であり人里離れた場所で野宿しようものなら、運が悪いと夜中いつまでも犬の鳴き声が鳴り止まない程度には犬で溢れている。
 ただ野良犬は総じてアグレッシブなタイプではないため野営中に襲われる雰囲気はなかったし、自転車で走行中に襲いかかってきたのは鎖に繋がれてない飼い犬ばかりだった。
 あと馬車の数がかなり多いのだが、馬の移動は基本自転車と同じ道路脇となるため自転車の走行ルートに馬糞がたくさん落ちている。大半は車に踏み固められたモノだが、稀に新鮮な生っぽいブツもあったりするので気は抜けない。

◎自転車店
 ヤシとブカレストの2店舗ではお店も見学してみたが、ラインナップはいたって普通。そろそろタイヤが欲しいのでマラソンプラス探してたのだが、よりにもよってヤシの休業してたお店ではシュワルベのタイヤを扱ってた模様。そのほかの店ではシュワルベのタイヤ自体を見なかった。
 まぁ各種パーツがダメになっても基本的に補充をすることは問題なくできると思う。ただし長距離ツーリング系のキャリアはまだしもバッグとかはそんな取り扱ってない感じだな。

◎物価・食事
 かなり安くはあるものの気軽に毎日宿に泊まれるほどではないし、毎食レストランに入るのには躊躇してしまう程度に物価が上がったとも言える。ただ国のレベル自体も上がっているので、それほど大きくない町でもファストフードやスーパーといった良心的な値段で商いしてるお店が見つけやすいため、ちゃんと選んで買い物してけば食に関して1000円以下で余裕の生活ができる。
 後ビールに関しては無茶苦茶安いというか2ℓとかのペットボトルが100円とかそんな程度で売られてたりして、下手なコーラやジュースなんぞよりよっぽど安く飲めたりするというね。
 全体的には日本の4割から半分強くらいの物価ってイメージだろうか。もちろんインフラとかそういう旅行者には見えない値段は分からないけど、一般的な旅行者が利用する食関係に関してはそんな程度かな。

◎総括
 国の南部に首都だったり主要な都市が固まってる印象で、このため南部の方が交通量が多くて自転車走らせるの大変だった。それに対して北部地域は広大な農地が広がりやたら良い景色の中を走れたこともあり、私の中では「ルーマニアといったら北部地域」というイメージが作られている。
 そんな外国人旅行者に対してグイグイ来るような人は多くないが、トゥルダの町であってお世話になったクラウディアに連れてってもらった教会で多くの人と触れ合う機会があり、ルーマニアの人が本当に親切で素晴らしい人たちであることを実感できたのは良い経験だ。
 旧ソ連のイメージが割と強く町中では全体的に暗いイメージがつきまとうものの、観光資源も豊富だし走っていても様々な景色が入れ替わり立ち替わり現れる飽きさせない魅力を持った国である。特にサリーナトゥルダは一見の価値ある面白い建築物で茶壺さんオススメですよ。