2019年11月7日〜11月18日
 走行日数12日間
 累計走行距離594km(103757km〜104351km)

◎道路
 素晴らしい。主要道路には広くてしっかりした路面の側道が作られており、走行する分には全く危険を感じることがないレベル。どっちかと言えばその主要道路がどれも高速道路チックで景色的な変化に乏しいとか道路じゃないところに文句が出てしまうほど郊外の道ではノンストレスでの走行が可能。
 よく分からなかったのが、高速道路って世界共通で緑地の看板で一般道路は青地看板だと思ってたのだが、イスラエルではこれが混在していたと思われる。明らかに一般道路なのに緑地の看板が出てくると「ここって高速道路なんか!?」と不安になるのでよろしくない。あと高速道だったとしてもイスラエルは側道を自転車で走ることは問題ない国らしい。ネズミ捕りしてる警察車両の前を普通に走ってて何も言われないどころか手を振られたくらいだし。
 大きな町になると側道が消えて歩道を走らなくてはならない道が増えるのだが、ときどきスロープ状になっておらず歩道への乗り降りが大変だったりする。あとイスラエルの信号機は中央分離帯を挟んで手前と奥の信号が別のタイミングで切り替わるため、信号を一気に通過できないことがある。
 死海の標高が低いのもそうだが、それ以外にも割と山あり谷ありの国で地中海沿岸部から離れると結構な山岳地帯が多い。私が登ったところではエルサレム周辺で標高800m程度だったが死海からのアップとなると−400mスタートなので数字以上に登らされるので注意。

◎治安
 単純な暴漢に襲われるといった点に関する治安はそれほど問題ないと思う。ただエルサレムを筆頭にやたら緊張感が高い雰囲気を感じる国で、やたらと沢山ある検問所だったりエルサレム旧市街の住宅街では1階部分に窓が存在してないとか町中が監視カメラだらけ等々警戒心が異様に高い。市民が自らに危険が降りかかる可能性を現実的に直視してるのだと思わせる意味では「治安は悪い」というべきなのかもしれない。エルサレム旧市街の何かが崩れたら一気に危険なことになりそうな独特な緊張感は確かにあると思う。
 あとはパレスチナ区域だけど、ガザ地区はともかく死海に向かうとヨルダン川西岸地区の一部区域に突入することとなるので気になってたけどさ。少なくとも死海沿岸部と国道1号線に関しては他の場所と違いはないように思った。

◎ビザ・出入国
 これは面倒臭い。入国時に聞かれたのは通り一遍のことだったけど、係員の態度がやたら横柄で「マジで入国拒否されるんじゃ?」と一瞬とはいえ思わせる雰囲気があった。あと現在ではイスラエル入国に関してパスポートにスタンプは押されず、代わりに顔写真が印刷された証明書みたいな用紙を渡される。これを出国時に返すというシステムである。
 これは有名な話だが、イスラエルの入国履歴があると敵対してるアラブ諸国に入国できなくなるという問題があるためで、これを回避するため一昔前まで「パスポートにイスラエルのスタンプ押さないで」とお願いするのが世界周遊旅行者の常套手段だった。この問題を解決するための措置ではないかと私は考える。
 なお日本人の場合ノービザで30日間の滞在が可能だが、国を抜ける際に出国税として合計107シェケル徴収された。なんか出国する国境によって料金が違うという話もあるらしいが詳しいことは知らん。
 他の国境は知らんがシェイクフセイン橋の場合は国境を自力で越えることが出来ず、イミグレーションに付随してるバス停で待つ必要がある。300mとかその程度の距離で5シェケルか1ディナール(約150円)とアコギな商売してやがると思うし、バスがどのタイミングで来るのか時刻表もないし私の場合は1時間以上待たされたことからそれほど頻繁に行き来してないことが伺える。何から何まで面倒臭い出国となったが、これでも中央のキングフセイン橋国境より随分とお値段安くて審査も簡単らしい。

◎交通事情
 アラブ系の人たちは遠慮なくクラックション鳴らしまくり。狭い隙間に突っ込んでくるし無茶な運転なんのその。それに対してユダヤ系の人たちは多少クラックション鳴らすクセがあるものの、歩行者優先だし安全な運転をしてくれる。
 つまり運転マナーの良い人たちと悪い人たちが混在している国のため、テルアビブのマナーが良いからとそんな気分で気軽な運転を続けてると危ないということでもある。普通1つの国でここまで運転マナーが異なることって無いと思うだけに、油断しやすい環境で普段以上に注意が必要だよなコレ。
 あとテルアビブの町だと電動バイク系が平気で歩道爆走したり信号無視や狭い隙間をすり抜ける危険運転してるため、車両よりもコイツらへの危険が高い。電動なのでエンジン音しなくて近づいてきてるのかも分からないのであり、こんな厄介な乗り物普及させるなよ・・・ってのは自転車乗りの意見なんだろな。

◎特徴
 キリスト・ユダヤ・イスラム3つの宗教における聖地を内包しており、特にエルサレムの町にそれが集約されている。これに先住民であったパレスチナ人の問題もあったりと、国として様々な問題を孕んでいるのは間違いない。それを体現してか警察や軍隊の人間を異様に多く見かけるし、イスラエル人は男女問わず国民全員兵役の義務がある(除くアラブ系)。パレスチナ地域では小さな村の出入口でも検問所があったりと警戒してる様子が様々な点から伝わってくる。
 なお基本的にユダヤ人の国なので、祝日が金曜の午後から土曜の日没までとやや珍しいタイミングで行われる。土曜日の夜になるとそれまで閉まってた商店が営業始めるのはちょっと面白い。 

◎気候
 基本砂漠の国なので11月の乾季で雨が降る心配は要らない。ちょっと内陸部に入ると一気に乾燥した低湿度となるため気温が高くても割と凌ぎやすくある反面、水分の消費量が跳ね上がったな。
 かなり強い風に吹かれていたが地中海の沿岸では地中海側から、それ以外は東からや北からの風が多かった。死海の地形的な影響とかもあるのかもしれん。
 標高高い場所では日が落ちるとかなり冷え込むため、夏スタイルの服装で呑気に過ごしていると驚くほど寒くなり慌てることになる。やっぱりね、標高による気温の違いってのは如実に出るものなんだって思ったよ。死海の標高で野宿した時には寝袋使わずに寝てたくらいだもの。

◎言語
 公用語がヘブライ語とアラビア語。テルアビブ及びユダヤ人が住んでる地域なら多くの人が英語も話せる。逆にアラブ系の人が住んでる地域だと英語通用度はガクッと落ちる。
 道路看板等には公用語2種類の他に英語表記もされてるので何とかなるが、一般商店とかだとヘブライ語のみというのが多いため何書かれてるのか全く理解できない。基本的に大都市や観光地ほど英語表記率が上がるため、僻地だったり小さな町に行くほど難易度が上がる。
 そうはいっても国土小さな国だしある程度移動すれば大きな町がある感じで、よっぽど僻地にでも行かない限りは英語1本で平気だと思う。何だかんだアラブ系の町でもユダヤ人見かけたし。

◎宿(野宿)・Wi-Fi
 主要観光地にはホステルが散見されるけどまぁ値段的に安くはない。テルアビブのホステルなんか最安値で1800円オーバーだったし、完全に先進国でも高い方の料金だよな。サービスも良いのでコスパ的に悪いということはないと思うけど、周辺諸国と比べてイスラエルだけが異色であることは間違いない。
 そんなワケでインフラにしても設備にしても無茶苦茶整っているためネットも速かったし、主要な町では町のサービスでFreeWi-Fiが飛んでたりもした。アメリカと密な国なのでハイウェイ沿いによくマックがあり、こちらでもネット利用できるし。一般的なカフェやれレストラン系の施設にはWi-Fiサービスあるようだが、とにかく物価高くてそういった店に入ることなかったため、この点についてはよく分からん。
 そうそう野宿についてだが、やっぱり危険なイメージつきまとう国ということもあって不安を覚えていた側面があったものの、テルアビブとエルサレム以外の就寝を全て野宿で済ます程度には平気だった。墓地の脇で野営した時なんかは朝に管理人が来て見つかったけど「全然問題ないぞ、良い旅行をな!」とか言われたのであり、割と旅行すること自体に寛容なイメージを持った。無料のキャンプ施設もあったし。

◎動物
 砂漠地帯ということもあってかハエが多い。ザ・大都会という感じのテルアビブでも普通に周辺をハエが飛び回って来る。それ以外に郊外だと蚊と蟻が結構な数いるため、特に野宿する場合はテント張る場所と食料の置き場を注意してないと蟻にたかられることとなる。
 あとイスラエルの人はやたら猫が好きで、それだけなら別に構わないのだがホステルなんかでも普通に猫を飼っていたりする。そういう境遇の猫なので宿泊者たちからおこぼれ貰いまくっており、食事してるとせがんでくるし剥き身で食事を放置してると取られてしまう可能性がある。可愛いからって何しても許されると思うなよ?

◎自転車店
 ユダヤ人が多数を占める町なら先進的なショップが数多くある。テルアビブで足回りのパーツを一通り交換したけどスタッフ親切だったし腕も良かったと思う。なおシェワルべのタイヤもちょいちょい見かけたけどトルコでマラソンプラス揃えてしまったので細かいタイヤの種類までは確認していない。シュワルベ直営店もあるみたいなんだけどね。
 なおイスラエルの大都市では電動キックボードや電動式自転車の需要が高く、そうしたバイクに強い傾向のショップも多数見かけた。この手のお店はスポーツバイクへの対応全然できない感じのため、全体的にショップレベルの差が激しいと思う。ちゃんと住み分けができているとも言えるか。

◎物価・食事
 高すぎる。物価安い国の周辺で1カ国だけ高い国というのは幾つかあるが、この国は「周辺諸国と仲が悪い」という特徴からかなり色んな面で割を食ってると思う。周りが産油国だらけなのにガソリン回してくれないのだろうことが想像できる料金とかさ。
 恐らく物流に関してもアメリカ頼みになってる部分が強いのではという気がする。というのも技術力が高かろうと国土の大くが砂漠であるイスラエルでは自国で生産できる農作物がそれほど多くないだろうし、物価高い先進国で頼みの綱となるスーパーのホームブランド商品という物がほぼ存在していない。輸入に頼るしかないのかな〜と思っちゃうよね。まぁ北欧ほどではないにしても、西欧よりよっぽど物価高の国であった。
 なおビールは最安値で1本150円強から見かけたが、アラブ系の商店では当然扱っていないしあんまり飲む機会に恵まれなかった。ということでイスラエルではコーラばっかり飲んでた印象が強い。
 ちなみに自転車ショップで交換したクランクセットは値札表示699シェケルだったのを299シェケルにまけてもらったので購入したのだが、クランクセットの値段ってDeoreで1万円ちょっとくらいのイメージであり、大幅値引きしてもらって約15000円というのは何とも恐ろしい。

◎総括
 日本からすると国際ニュースでしょっちゅう騒ぎを放送している危険な国という印象を持ってたが、多様な民族が混在しつつも危ういバランスで成り立ってるという、他の国ではなかなか味わうことが難しい独特な国であった。
 そうした背景もあって出入国を始めとした面倒な点も多い国ではあるが、小さな国土の割に観光も宗教も人の良さもギュッと詰め込まれてるイスラエルは非常に印象深い国となった。物価の高さ故に急ぎ足での旅行となってしまったが、それでも有名どころを一通り回れる程度のコンパクトな国というのは自転車的にも相性良いと思うのですよ。