2019年12月31日〜2020年1月19日
走行日数20日間
累計走行距離1624km(106436km〜108060km)
◎道路
都市間を結ぶ主要道路は割と新しくしっかりしたアスファルトが敷かれていた。むしろ町中に入ってしまうとそうした路面が消えてゴミだらけの未舗装路が広がっていることが多い。多分先進国によるODA支援で作られたのだと想像する。そのため道路そのものは一部しか整備されておらず、ぶっ壊れたまま放置されてたりすることもままあり。傾向としてハルツーム以南の方が路面状況は悪い。なお車両は右側通行。
道路幅は決して広くはないのだが、交通量自体がエジプトにも増して少ないのでそれほど危険を感じることはない。主要道路沿いに建っている喫茶店とかでも、駐車場とかそいういうのは一切ないため本当に少しでも道路から離れると途端に砂の上を走る事となり、柔らかい砂だと一瞬で自転車沈んで全く動かせなくなる。
基本的に砂漠が続く平坦路で常に北からの風が吹いてるため、一般的なルートを取れば北上か南下することになるスーダンでは進行方向の有無で恐ろしく走行距離に差が出ることになる。1日の走行距離は南下なら普段の1.4倍、北上は0.6倍くらいの計算で良いんじゃないかと思う。
国内ほぼ完全平坦路といって差し支えないほど起伏は少ないが、一応南西部にある山の最高標高は3000mを越える高さらしい。スーダンが暑い国なのは国土全域がこうした低標高にあるというのも1つの理由。
◎治安
アフリカでも割合裕福な方の国らしく、つまり格差がある国ということになるのだが治安が悪いと感じたことはない。首都のハルツームも夜中に1人歩きしても全然不安を覚えない程度には雰囲気が良い。もちろん過信は禁物だし、数年前には主食であるパンの値上げに際して相当規模の大きなデモが起きたりもしたらしい。
だがまぁスーダン人自体は非常に緩やかで親切な人たちというのが私の感想で、ソマリアや南スーダンといった政治・治安的に問題を抱えてる国の国境へ近づかなければ特に問題があるとは思わないかな。
◎ビザ・出入国
これは面倒臭い。現代でも頑なにeビザを拒み、近隣国等の大使館で領事ビザを発給してもらわなくては入国が叶わない国である。私はエジプトのカイロにあるスーダン大使館でビザを取ったがお値段なんと150USドル。数年前まではエジプト南部のアスワンにある領事館なら50ドルで発給されたらしいが、現在アスワンも値上げされて同じく150ドルとなっている。なお支払いにあっては新しく折り目のない紙幣でないと領収されないので要注意。ちなみに手続き自体はそれほど難しくないものの、大使館が開館する時間前で100人以上の待ち人数がおり、誰も彼も順番通りに並ぶなんてことはしない無秩序を絵に描いた受付であるため申請書類を受け取ってもらうまでが一苦労。受理されれば同日15時にはビザが発給された。
入国手続きではかなり大きな専門の建物に入って係員が荷物チェックを行う。直前のエジプト出国でも荷物検査してるのに馬鹿みたいだが仕方ない。なおスーダン側ではX線ではなく人がバッグを開けて1つ1つチェックしていく方式だが、私の場合は1つのバッグを一瞬だけ開けて後は全て適当な流して終わった。その際にバッグにシールを貼られる。なお入国審査自体はザルというか、外国人登録の説明を受けてる途中でスタンプ押されたパスポートが返却されて何1つとして審査官から質問は受けなかった。
◎交通事情
意外とクラックションが控え目な国民性で、アフリカという大陸を考えるとこれは非常に立派で胸を張って良い点だと思う。まぁ普通に鳴らしてくるけどエジプトと比較したら雲泥の差くらいに感じますよ。
車両に関しては大型バスの運転が酷くて危険極まりない。遠くからクラックション又はパッシングしてくるのは「そこは自分の道だからどけ」という意思表示であり、間違っても危険を知らせようみたいなことは考えていない。総じて「交通状況を予測しブレーキで減速する」という考え方が存在しておらず、無理やり突っ込んで対向車線の車両を確認せず前の車を追い抜こうとする運転が目立つ。その際に自転車は「車両」として彼らの目に見えてないのか平気で突っ込んでくるの頭オカシイだろう。もっと交通量が多かったらこの国走るの本当嫌になってたと思う。
あと道路上でなく脇の未舗装路を走る車両というのが一定数いるのだが、猛烈な土埃を巻き上げているので風向き次第では酷い目にあう。現地スーダン人もこれには参っているのか、郊外に出るとターバンを顔全体に巻きつけ目の部分のみを開けて対処してる人が増える。これに加えて目元をサングラスで保護した「月光仮面」スタイルの人もいたりして、砂漠でそんなの出会ったら思わず私もニンマリしちゃうじゃないか。
◎特徴
1、入国してから3日以内に外国人登録という手続きをしなくてはならない独自の制度が存在する。全国の主要都市にある警察署やハルツームの空港にて手続きが可能。スーダンポンドの暴落が激しいため料金はすぐ変動していくが私の場合は530ポンド(約1290円)であった。闇レートで両替してるので実際には600円強ってところ。
国境職員から「頼むから3日以内に手続きしてほしい」と再三お願いされたが、別に期日を過ぎても問題があるとかは無いらしい。手続きするとパスポートのページ半分くらいを使ったシールとスタンプが押され、これは出国時に確認されるし手続きの1つとしてこの部分のコピーを提出する必要がある。
2、アメリカからテロ支援国家として指定されてる国であり経済制裁等を受けている。このためアメリカ資本のVIZA系カードや国際キャッシュカードも使うことができない。というか使ってしまうと即座にカード利用を停止させられてしまうとのことで、一般的な旅行者はスーダン国内での旅行に際し100%現金を活用して乗り切ることになる。
このため他国から現金を持ち込み両替をすることとなるのだが、スーダンは公定レートと闇レートが剥離している国のため、銀行ではなく町の両替商とやりとりすることで同じお金でも割増した現金が手に入ることになる。ただし闇両替だけあって個人間でのやりとりとなるため領収証やレシートなんぞ発給されないし、特に国境付近の両替商は様々な手を駆使して騙そうとする輩も多い。私は運良く国境ではイミグレ職員と、ハルツームでは商店の親父とそれぞれエジプトポンドを両替することができた。
なお2020年1月時点で公定レートは1EGP=2.8SDPに対し、闇レートだと1EGP=5.0SDPというのが相場らしい。この数字はスーダンポンドの価値がどんどん落ちてる現状での数字なので、実際には何人かにレート確認して現在レートが幾らなのかを確認してから両替を行った方が良い。なお私のブログでは正規レートで値段は表記している。
あとスーダンに入国履歴があると、この後アメリカ入国したい場合はアメリカビザが必要になるという大変面倒な枷を負う事となる。これはイランの入国履歴でも同様で、世界1周旅行をしたい場合に日本から東回りルートを選ぶ人はこの点を考慮してることも多い。
◎気候
天気は毎日晴れます。そんで重要なのがスーダンは世界的に見ても5指に入るほど暑い国として厳しい気候である国。特に国の北部はほぼ全て砂漠であり、夏季には当然のように40度を超える気温となるらしい。私が滞在した1月という時期はそういう意味でスーダンを旅行するベストシーズンだったと言えよう。それでもハルツームの日中は30度近くまで気温上がっていたし、ハルツーム以降では日中の走行に困窮するレベルで暑さを感じる日もあったが。国中の至る所で見かける野外ベッドは夏季になると夜でも暑すぎて建物内で眠れない為の措置らしく、夏にスーダンを自転車旅行するのは相当厳しいことが伺える。
そして自転車的にはそれ以上に重要な風。スーダンでは常に北か若しくは北東から強い風が吹く国であり、多分貿易風のエリアに入っているのかほぼ毎日恒常的に年間を通して風が強い国であると予想できる。しかも国土の大部分が遮蔽物の一切ない砂漠であるため非常に風の影響を受けやすい。スーダン南下する分には大きな恩恵を受けられるので構わないけど、これ北上する人はとんでもなく大変だと思う・・・ってのは「道路」の項で同じこと言ってるな。
◎言語
公用語はアラビア語なんだけど、実は同様に英語も公用語となっている。もちろん国民の多くが英語を話せるわけではないが、それでも思ってたよりずっと多くの人が英語を解するのはこうした背景があるからだと思われる。ハルツームなら商売人は半分くらい英語が話せたし、砂漠の田舎でも案外英語の通じる人に出会うパターンは多かった。ただ英語ができるといっても私レベルのエセ英語からほぼ完璧に英語を操る人もいれば、「How are you?」くらいしか喋れないのに「英語話せる!」と豪語する人もいる。こういうのがアフリカの面白いところだと思う。
それ以外にも小さな部族ごとの言語が多数ある国とのことで、多分現代では失われつつある少数民族の言語とかいって学者が一生懸命研究してたりすんだろうな。
◎宿(野宿)・Wi-Fi
値段は無茶苦茶安いが設備レベルはまぁそれなり。ロカンダと呼ばれる安宿なら100ポンド(約240円)とかでも宿泊することが可能だが、これならテント泊する方が100倍マシというレベル。一般的な宿は300ポンドくらいから登場し、ある程度都会だったり観光地なら600ポンド以上の宿ではWi-Fi付いてる可能性が見込める感じ。
ハルツームでは正月休みと現金余っていたのもあって1泊900ポンドのお高いビジネスホテルに泊まったけれど、この町のユースホステルなんかは1泊250ポンドと言ってたし。なおこのユースホステルの立地は日本大使館の真裏なのでここに宿泊するとある意味すごく便利だと思う。
常に風が吹いているため風を防げる人工物を求める関係で野宿は割と人が住んでる土地の近くになってしまう傾向がある。でもスーダン人は近くに誰も住んでない場所でもひょっこり現れたりするため、過疎区域だからと早い時間帯たいからテント張ると普通に発見されることもあり思ったより野宿難しいイメージがあるな。
Wi-Fiに関しては素直にsimカード購入した方が無難だと思います。首都のハルツームですらカフェにWi-Fiが無いのは当たり前の国で、酷い場所だと「Free Wi-Fi」としっかりステッカー貼っておきながら「Wi-Fiなんて無い」と言ってくるお店もある。結局ややお高い宿に泊まってネット使うくらいしか、現在のスーダンでWi-Fiを満足に利用することはできないのでは?というのが私の感想。私が利用したハルツームのホテルは接続も安定しないし速度も遅かったけども、町中で他にネット接続できる場所を最後まで発見できぬ(ネットカフェ含む)ままだったほどで、現代のご時世にこれほどネット接続で苦労するとは思わなんだ。
◎動物
結構砂漠にはサソリがいるらしくてそれは十分注意しろよと言われたくらいかな。他だと馬やロバにラクダ、ヤギといった砂漠でよく見る家畜が幅を利かせている感じ。なおエジプトでもそうだったが、スーダンは犬より猫の方を見かけることが多い。吠えてこないので自転車旅行者としてはその方がありがたいと思うのです。
あと日中ではハエ、夜になると蚊が活発に活動するため1日を通して落ち着ける時間帯というのが極僅かしか無い。宿の中だと流石にハエはほとんど居ないけど、代わりに部屋内に蚊がウヨウヨいるのは当たり前状態で安眠妨害も良いところであった。ちなみにエジプトやスーダンには多分「蚊取り線香」の取り扱いがなく、私が見つけたところでは殺虫剤スプレー缶が精々である。スーダンでこそ蚊取り線香は必要だろうに。
◎自転車店
ありません。というのは言い過ぎであるが、スポーツ用自転車をちゃんと修理できる店はないです。ハルツームで幾つか自転車を販売してる店を見かけたが、ほとんどは子供用の自転車だったりでパーツ関係もまともな部品は置かれていなかった。そもそもスーダンで大人が自転車に乗ってるのは一部の仕事で荷物を運んでる人とかそれくらいなので、自国民の自転車需要が極端に少ないのだろうと思う。とりあえずこの国で自力修理不能のトラブルが発生したらもうバスワープするしか方法がないと思う。
◎物価・食事
前述の闇両替をすると物価は安くなるため、書かれている日本語表記値段の6割くらいが実際の価格と認識してもらえば良い。1食は40〜150ポンド(約100〜360円)くらいが相場で、肉が入ってると大体100ポンド以上する。オススメは完全生搾りフルーツジュースで、やたら濃厚なのが安いと10ポンド(約25円)とかで飲める。個人的にチャイより断然上手くて量も多いので好んで飲んでたし、ハルツームでは1日4〜5杯くらいこれを楽しんでいた。むしろこのジュースがあったから完全にアルコールがないスーダンという国を私は走り抜けることができたのだ!と言っても過言ではない。
食事はかなり種類も豊富で美味い反面、砂漠のポツンと建ってる食堂とかだとメニューはフルと呼ばれる豆ペースト1種類しか無いことも多い。不味いというほどでは無いにしても特徴もない塩のみの味付けですぐ飽きる。スーダンの走行は如何にしてフル以外の食事を楽しむかだと思っていた。
自転車で野宿すると1日の予算は400ポンド(約970円)で事足りた。夏の気温上昇が厳しいらしいので夏季は水分補給にもうちょい予算増やした方が良いと思われるが、この国では隣国から入国する前に両替用の金銭を事前準備しとかないとならないため、いくら準備しとくか判断に迷うところ。個人的には500ポンド×滞在日数+外国人登録費用で良いかなと思う。これで余った分をたまの宿泊費に当てるくらいで丁度になるかな。
私は事前に2500EGP(闇両替で12500SDP計算)ほど持って入国したんだけど、予想以上にスーダン物価が安く現金余らせてしまう感じだったのでハルツームで贅沢して調節した。エチオピアとの国境で再両替するのも有りだけど、スーダンポンドは前述の通り価値が暴落してる通貨であるため悪いレートでしか変えてくれない。それくらいならスーダンで綺麗にポンド使い切って、エチオピアでは改めて米ドル両替するなり普通にお金下ろす方が良いかなと思ったですハイ。
◎総括
衛生環境悪いし気候やインフラレベルも著しく低く、自転車で旅行するのはやや大変なスーダン。そもそも入国に必要なビザ代が150米ドルと足元見た価格だし、そこまでしてこの国に行く価値があるのだろうか?と思われる人がいたならば、私はハッキリ「ある」とお答えしたい。
それほどスーダンという国で出会った人たちは皆優しく親切で、こうした人と出会うためにスーダンへ来たんだ!と今にしてみれば強く思う。走った記憶は砂漠しか残ってないし。
闇両替で資金が少なくてもウハウハな生活できるとかそういう側面は置いといて、エジプトやエチオピアといったあまり褒められる性格の人が多くない東アフリカ旅行の中で、スーダンという国を訪れたか否かはアフリカという全体のイメージすら左右させると思わせる。私が現時点でアフリカを好きだと言えるのはスーダンの影響が強くあるからだし、そうした思いを持たせてくれたこの国の人たちには本当に感謝している。もっかいスーダンを自転車で走りたいとは思わないけどさ。