2019年5月20日〜5月22日及び6月18日〜6月27日  2022年7月9日〜7月12日  7月19日〜7月23日  7月28日〜8月5日  2023年8月4日〜8月10日
 走行日数39日間
 累計走行距離2106km(1回目655km・2回目219km・3回目576km・4回目602km・5回目54km)
(93316km〜93971km・112152km〜112371km・112558km〜113134km・113475km〜114077km・137284km〜137338km)

◎道路
 すげーよドイツ。日本より大きな国土を抱えていながら、全国自転車に配慮されたサイクリングコースを敷いているという時点で驚くより他にない。普通の道路は割と側道が無い道が多いのだが、そういう道には大体すぐ近くに自転車用の道が設置されている。
 なのでドイツ国内を走る際には自転車道の看板を見つけてそのコースに従って走るのが最も安心・安全かつ自転車的に楽しめるよう設計されている。町中で買い物したい時などにちょっとルート外れたりすると、コースに復帰するのが大変といえば大変かな。ちなみに車両は右側走行。
 基本国内の多くが平坦基調な道なので、ドイツでの走行はルート下調べしておけば、ほぼ当初の計画通りに走行ができると思って良い。あんまり楽でストレスの少ない道なので、道中集中力を切らさないよう注意した方がいいとかそんなことを心配するレベル。

◎治安
 非常によろしい国ではあるが、大都市にはあんまり裕福でない人とかも沢山寄ってくるので盗難には十分な注意が必要。私が訪れた町だとベルリンやミュンヘン、ケルンの町中では自転車の盗難には特に注意をしていたし、実際高価な自転車が盗まれる事例は後を絶たないらしい。そこそこ観光地なんかだと橋の下とかに暮らすような人も見かけたりしており、あんまり気を緩めすぎては駄目だと思う。
 ただ田舎で野宿してても人に見つかって夜中に襲われるなんて雰囲気は無いし、それより不審に思われて警察呼ばれると大変だよな・・・という感覚が強かった。

◎ビザ・出入国
 2022年次の入国では航空機INで入国審査の際に割と揉めた。というのもシェンゲン協定内の滞在予定を3ヶ月と答えたら不法就労するんじゃないかと疑われたようで、結局銀行口座を確認してもらいようやく解放されたりしてる。2019年次の入国ではそこら辺スルーだったので運が悪かったといえばそれまでだが、まぁヨーロッパ走行で飛行機入りするサイクリストは自分の銀行口座写しくらい事前に準備しておいた方が良い。といいますか私も久しぶりのフライトで色んな感覚が鈍っていると実感した出来事でもあったりする。

◎交通事情
 すっごい紳士的な運転をしてくれるし歩行者・自転車優先で歩道なんかでもほとんどの車が停車して譲ってくれる。ただドイツは日本と同じく車の数が非常に多い国であり、いくら自転車道が整備されてるとはいえ交差点など車両と混ざり合うポイントで交錯する時は要注意。どんなに運転マナーが良くても数が多いと危険運転する車に当たる確率自体は増えるので。
 あと町中は交差点も信号機(郊外は円形交差点が主)が多いけど、歩行者用と自転車用の信号機はランプが別に分かれてて、青信号に変更するタイミングがそれぞれ違ったりすることあるため気を付けたほうが良い。

◎特徴
 イメージ的にあるかもしれないがルールに対してお堅い国。誰もいない交差点の信号でもドイツ人は待つんだよ・・・という自虐風の冗談を私もドイツ人から聞かされたのだが、基本的にルールに対してしっかりしてる印象がある。これの何が大変かってガソスタでボトルにガソリン入れてくれないという問題がある。マジでドイツでガソリン入手するのは困難を極めるので、なるべく他国でしっかり補充してドイツ国内では燃料補給を見送った方が吉。Nettoというスーパーやホームセンターとかにガスカートリッチが販売されているので、ガスバーナー持っているならそちらを利用するのも一考かと思う。
 あと西欧で多い日曜日の商店が一切開かない点に関しても、観光地や大都市など「一部の例外」の割合が最も少なく何処に行っても本当にお店が閉まっててやりようが無い。土曜日も田舎だとお昼過ぎにはスーパー閉まり始めるとてもキッチリ決まり事を行う国なので、事前の準備と計画が非常に大切。
 この他自転車ヘルメットの着用義務と前後のライト設備も法令で決まっているため忘れないようにしたい。西欧諸国でも特にドイツはこの辺厳しい印象で、私はドイツ走り始めた初日に他のサイクリストから尾灯の付け忘れを指摘されて(バス移動のパッキングでバック内に入れっぱなしだった)、慌てて取り付けしたことがある。

◎気候
 夏のヨーロッパは過ごしやすいと言われるが、なるほどその理由がよく分かる。気温的にも真夏で35度を超えることは稀だが、たとえ暑くなっても湿度が低く保たれているのでカラッとしていて不快さが無い。1番暑い時間帯でも日陰に入って休んでいると風が通り抜ければ涼しさを感じるほどだ。
 実際ドイツの住宅でクーラーが取り付けられてる家を見たことがない。夜になっても窓を開けていれば熟睡できる快適さであり、夏のドイツは素晴らしい。
 反面冬の時期は相当寒いらしく、場所によっては雪に閉ざされるわ太陽も15時過ぎで沈んでしまうわと生活するのも大変とのこと。ヨーロッパ走るなら夏シーズン・・・というのは間違いないようだ。

◎言語
 バッチリドイツ語です。難しいなと思ったのが、道路標識や町の名前、スーパーの商品名といったポイントにまで英語表記がされていないこと。このため基本的にほぼ全ての文字が「何書かれているのか全然分からない」状態で、それを自身で解消する手立てがない。
 幸いなことに多くの人が英語を話すことができるため、困ったことがあったらとにかく近くの人に助けを求めれば大抵の場合は何とかなる。私なんかドイツ語でのトイレ男女表記すら分からず「男はどっちに入れば良いの?」とか確認していた。割と他国は図とかマークで描かれてるのにさ、ドイツは文字表記なのだよ。
 言い換えると「英語で最低限人様に疑問を聞く」能力がないとドイツでは1から10まで分からないことだらけになりかねない。

◎宿(野宿)・Wi-Fi
 全体的に北部に行くほど人が入らない森林とかが増えてテントも張りやすくなった。夏のシーズンに走行したので出来る限り水場の近くを野営地にしていたが、それを気にしなければ田舎なら5分も走れば何処かテント張れそうな場所くらい見つけられると思う。あんまり簡単に野宿出来るもので結局キャンプ場の1つも利用しないままこの国走り終えてしまったな。
 なおドイツは主要スーパーのほぼ全てでFreeWi-Fiが飛んでおり、町と町との距離も近い関係からネット利用で困窮する事はほとんど考えなくて良い。速度も爆速だしインフォメーションセンターとかでもWi-Fi使える。利用した図書館もWi-Fi設置率100%だったのであり、何処かの島国も見習って欲しい。個人的にはsimカードなんか全然必要ないと思うのだが、流石に日曜日だとこうした施設のほぼ全てが閉鎖してしまうためネット環境得るのが難しくなるので、まぁあったら役に立つかもとは思う。

◎動物
 凄く注意しろ!と言われたのがマダニ。こいつがドイツの森林には多数生息してるらしく、野宿してると刺されて肌を腫れ上がらせてしまう事例が後を絶たないらしく。特に問題となるのは刺されてるとこ発見しても叩いて潰してしまったりすると、鋭い顎だけが皮膚に食い込んで刺さりっぱなしになってしまう。感染症とかの問題もそうだが、痒みの持続、なかなか止血ができない等非常に対処が面倒である。これを防止するためにドイツの薬局とかでは二股のフォークみたいなピンセットが売られてたりして、こいつを利用するとマダニの顎を引きちぎることなく回収できるとのこと。

◎自転車店
 大体何処のショップに行ってもシュワルベのタイヤが取り扱われている。これは自転車長期旅行する者が愛用するマラソンシリーズのタイヤを入手するという点で非常に大きなポイントで、そもそもマラソンシリーズの販売元シュワルベ社はドイツのメーカーだから当然といえば当然なのだが。
 関税の関係でドイツの方が安く入手できると思い、2度ほどこの国でマラソンプラスを購入したが2019年次はともかく2022年次は円安の関係で日本国内で購入するのとほとんど金額変わらなかった(45€=約6400円)ので、金銭的なメリットはそれほど大きくないかと思う。
 それでも細かいギアからリム作成まで、ドイツという国が自転車に関して最高峰のレベルであることは疑いようのない事実。とりあえず困ったことがあったら近場のショップに行けば大抵のことは解決できる。あと近年ドイツではEバイクが主流なので、ショップによってはEバイク専門店だったりして普通の自転車は専門外ということもあるため注意が必要。普通に自転車走らせてる人も7割くらいはEバイクだったと感じる。そのせいかドイツサイクリストは平均速度が速いのなんの!普通にママチャリみたいなバイクに乗ってるお婆ちゃんが私をぶち抜いていくんだよ。

◎物価・食事
 これが西欧諸国の中だと安い国に該当する。ポーランドはともかくそれ以外の隣国どの国行っても物価が上がるため、地味に金銭面でドイツは癒しの国なのだ。ということで西欧で物を購入する拠点を考えるならドイツが賢い選択だと私は考える。自転車関連での選択肢も無数にあるしレベルも非常に高い。何よりビールの値段が非常に安いのだが、これはドイツが酒税を低く設定していることに起因するのだとか。偉いぞ!ドイツ!
 なおビールだけじゃなくてワインも人気な国である。どうしても隣国フランスワインに目がいってしまうが、モーゼル川沿いで見た100km以上続くブドウ畑は圧巻の一言。相当に力を入れていることが窺える。
 ちなみにビン・缶・ペットボトル等はリサイクルのスタイルが確立しており、主要スーパーに行けばリサイクル用の機械がある。これを利用すると1本につき0.25ユーロ分の割引券が発券されるため、前日飲み終えたビール缶は捨てずにスーパーでリサイクルに回していた。
 さてドイツ料理だが、普段の調理では火を使わないというのが考えにあるようで、普段の食卓に並ぶ食事は「温かい食べ物が少ない/無い」ことが多いのだそう。実際私が体験したドイツの食卓はそうした傾向があったし、そもそもドイツはキッチンを汚してはならないというノリがあるらしく、あまりキッチンが汚れるような調理をしたがらないのだと聞いた。流石にジャーマンポテトはガッツリ調理に手をかけてたし、味わい深くて美味かったけど。
 そのせいかドイツ料理はBBQ以外の家庭料理はパンチの弱い大人しい物が多かったように思う。色々食べたらまた違う感想になるのかもしれないけどね。
 ちなみにビールは1ユーロ以下の格安ビールですら結構選択の幅があり楽しめる。ただ多くの種類のビールは冷蔵ではなく普通の棚に陳列されているため、近々に冷えたビールをスーパーで購入するというのはかなり難しいのが現実だが。

◎総括
 西欧における旅行人気国としてフランスと2分するイメージがあるドイツだが、こと自転車での旅行しやすさという点においては圧倒的ドイツに軍配が上がる。これだけの国土を持ちながら自転車が走りやすく、また旅行しやすいよう様々な点に配慮されているのは頭が下がる。ガソリンさえ普通に売ってくれればなぁ〜とは思っちゃうけど。
 そういう意味では1週間くらいの短いスパンで出入国を繰り返す方式は、ドイツ自転車旅行と非常に親和性が高かったよう思う。何だかんだヨーロッパの国で5回(走ったのは4回)も入国したのは恐らくドイツが最初で最後になると思うのだ。それくらい思い出深いし良い経験をたくさんさせて貰った国でもある。