2022年8月5日〜8月14日
走行日数10日間
累計走行距離706km(114077km〜114783km)
◎道路
こういうのが自転車に優しい道路の国・・・と言うのだろうな。冗談抜きで「何処を走っても」自転車用に作られたサイクリングロードか道路脇に自転車レーンが設置されており、目的地までのルートをアレコレ考えなくても「ただ道を進む」だけで快適なサイクリングロードに乗れてしまう。
かなり小さな国土であるオランダだが、サイクリングロードの総距離は6000kmを超えるとされており、面積9倍ある日本よりもその距離は多分遥かに長い。
しかも国内にアップダウンがほとんど存在しないので、自転車での移動という点に関してはこれ以上楽でストレスの無い国は存在しない!そう断言できるほど整ってる道です。なお車両は右側通行。
流石にアムステルダムみたいな都市部に行くと信号の数も増えるし、交通量も多くてやや緊張する場面が出てくるが、それでも他国の首都と比べると雲泥の差。何より多くの観光ポイントにおいても自転車での走行を可能とする形であることから、本当に自転車を置いてどうこうする・・・という状況が極めて少ない。こんな自転車乗りのことを考えて寄り添ってくれてる国はちょっと思いつかないのであり、オランダこそ自転車で旅行する国であると私は声を大にして言いたい。
◎治安
アムステルダムとかは場所によって嫌な雰囲気感じる場所もあったけど、それは「東京の歌舞伎町は治安あんまよくない」とか言ってるのと同意なので、首都&観光地なんてのは基本的に注意するに越したことはない。
それ以外の田舎に関してはまぁ牧歌的な雰囲気というか、危険を感じることは全然ない。あんまりなすぎて私の危機察知能力が衰えてしまっているんじゃないかと不安になるくらい。
とはいえ自転車から離れる時は必ずロック掛けてたし、キャンプでは荷物を全てテント内に入れる程度の対策は行っていた。雰囲気だけで防犯対策を怠って良いとは思ってないので。
◎ビザ・出入国
シェンゲン協定圏の国なのでな〜んも問題なし。むしろオランダでは久々に国境でオランダの表記がある看板を見れたことに喜んでしまったくらい国を跨ぐのは簡単。というかそろそろシェンゲン全体での滞在日数90日を意識して後の走行計画立てないとだ。
◎交通事情
そもそも車両が自転車と交わることの少ないよう配慮されてる道路造りの影響で、サイクリングロードを主体とするオランダではあんま車に対してどうこう思うことが少ない。町中とかだと車両を近くに感じることもあるのだが。それを踏まえた上で言うと、結構スピード出すし先進国にしては横断歩道とかで自転車優先で止まってくれる車の割合は低いと思う。でもまぁ円形交差点とかも基本自転車側が優先して入れるようなってる造りなので、そもそも「自転車が車の走行に邪魔されて進めない」という状況になりにくいのだこの国は。こういうハード面自体が車両ではなく自転車優先で作られている構造となっているため、完全に住み分けがなされていると感じた。すごい国だよ本当に。
◎特徴
1、国土の4分の1ほどが干拓によって海から陸地となった海抜0m以下の土地である。このため河川の水はほとんど流れているか分からないレベルで濁っている(入水に躊躇する)し、起伏がないので開けた場所だと風を遮る遮蔽物がないので風も強い。森林は防風林か敷地内のみに植林されたものが植えられている。海岸線に作られた堤防は道路として機能しており、もちろん自転車も走行することができるため、狭い直線道路の左右に海が広がる・・・というなかなか爽快な景色を見ることができオススメ。
2、国内で大麻が合法化されている。マフィアの成長を防ぐためとか色々理由は聞くけど重要なのはそこじゃない。大麻を扱うお店の名前がよりによって「Coffee Shop」と表記されている点で、カフェと勘違いして入店しないよう注意が必要。
◎気候
夏のオランダは実に過ごしやすいと思うけどさ。地味に高低差がない土地のため、風を遮る遮蔽物がないポイントだと風が吹きっぱなしになるという問題が。せっかくアップダウンがない国なのに、運が悪いとひたすら向かい風を受け続けて疲れ切ってしまう・・・ということもあり得るのが怖いところ。町と町との間隔近いし多少は森林地帯もあるのでオーストラリアみたいに丸1日吹きっさらしとかにはならないけど。
私が走行した時期は熱波が襲来して相当な暑さだった・・・と聞いたけれど、それで気温は30度ちょいとかだったので、日本の夏を知ってる人には問題なく過ごせるだろうと思われる。湿度低いし。
◎言語
オランダ語。文字表記もほぼ英語が使われておらず地図を見たりするのにやや苦労するかも。なお会話に関してはオランダ人の多くが非常に流暢な英語を話せるので、その恩恵に預かってかなり楽させて貰った。
◎宿(野宿)・Wi-Fi
地味に野宿が難しい国である。というか海岸線へ近づくと「自然にできた森林」というのが存在しないため、身を隠せそうな雑木林とかが出てこないのだ。ちょくちょく林とかはあっても大概の場合、人様の家だとか敷地で囲われているパターンが主であり、郊外であっても人に見つからないポイントというのは割と難しい。むしろ町の近くの方が人工林揃っていたりで野営地見つけやすかったりする場合もある。
2度ほどキャンプ場を利用したが、料金それぞれ14ユーロ、11ユーロでWi-Fi使い放題だったし設備も素晴らしくコスパ的には悪くない。ヨーロッパのキャンプ場は良いよね。
そのWi-Fi自体は大手のスーパーでも観光地でもほぼFreeWi-Fi飛んでいるので特にネットを求めて探し回るような苦労はない。
◎動物
危険な動物は出てこないのだが、野宿するような雑木林にやたら蜘蛛が多い印象を持つ。よく見ると木々の枝が雲の巣だらけだし、一夜過ごしただけで自転車にまで結構糸張られてしまったりするためやや面倒。
あとやたら人口河川や湖が多い影響なのか、場所によっては蚊の数が多いので注意した方が良い。鴨とかアヒルなんかもよく見かけるけれど、アイツらは基本害が無いので省略。稀に道路上を隊列組んで横断したりするので邪魔ではあるが。
なお割と酪農が盛んな国なので馬や牛、羊を見る機会は多かった。敷地内に柵が建てられてないことも多く「脱走したりしないのか?」と疑問に感じたこともあったが、土地ごとに水路で区画されて仕切られているパターンが基本の様子。
◎自転車店
中規模な町なら1店くらいは自転車店があるし、そんなショップでも品揃えは気にすることはない。ただショップ自体がスポーツ系より一般車両系(ママチャリみたいな)をメインターゲットにしているお店も多いため、専門的な部品になると取り扱いが無いこともある。
パーツに関してもタイヤはマラソンプラス取り扱ってる店が非常に多いし、種類も豊富だった。あとオランダはリカンベントどころか座席が並列のタンデムバイクとか独特な自転車を沢山販売してるので、自転車好きな人はとりあえずお店入ってみると楽しめると思う。なおドイツよりEバイクの使用率は低めの印象で、そりゃあこの坂のない国じゃアシストも使いどころないもんなぁ・・・とか思ったりした。
◎物価・食事
まぁやっぱり高いです。とはいえドイツより1段階上がった程度の物価なので、西欧諸国を旅行していたならそこまで「物価が一気に上がった!?」みたいな驚き方はしないと思う。ビールもたくさん1ユーロ以下のロング缶があるし、主要食材を選んで購入してる分にはそこまで気にすることもないレベル。ただオランダはガソリンにかかる税金が高いらしく、ガソリン代はどこ行っても軒並み高かったな。
スーパーの食材で自炊しかしてないから食事とか正直全然分からないのだけど、隣国ベルギーに比べてオランダは食の面では大したことないんだ・・・みたいな話は聞いたな。でもオランダもチーズに関しては熱い情熱を持ってるらしく、チーズの専門店とかよく見かけた。保存が効いて栄養価の高い食材なのでヨーロピアンサイクリストがよく食べてる食材の筆頭なのだけど、私も購入してみたら使い切るまで2週間近くかかってしまった。米食を主体にしてると難しいんだ。
◎総括
とにかく走りやすい国というのが印象的で、特に西欧では1日の走行距離を短くして休息日を減らしていこう・・・と考えているにも関わらず、軽く走ってるだけでグングン走行距離が伸びる。楽して進んでるのだから良いのだ!と考えるべきか、それじゃあ疲れ溜まるからもっと道中休むべきだ!と考えるのが正しいのか。
とりま「自転車で走る」という点におけるストレスの少なさは、特に自転車旅行をやってみたいと考える初心者にとって非常に重要な点であり、そういう意味でオランダほど自転車旅行に適した国はないだろう。
反面、楽すぎてチャレンジングな走行をしたいだとか頑張って走って達成感を味わいたい人だとオランダはすぐ飽きてしまいそうだと感じる。私だってオランダ走行10日程度だから楽しめたけど、1ヶ月とかこの国いたら「もうちょい峠とか出てこないんかなぁ」くらいの文句は言ってしまう気がする。そういう次のステップはアルプスに行けば良い話なんだけどね。実際オランダのプロレーサーはこの国じゃ山岳練習しない(出来ない)らしい。
何にしても車両ばかり優先される道路づくりとなってる日本の民からすると、この自転車大国の姿には強い憧れを覚えたのは確かである。