2022年7月15日〜7月19日 9月4日〜9月6日
走行日数8日間
累計走行距離500km(1回目337km・2回目 163km)
(112558km〜112895km・116032km〜116195km)
なおリヒテンシュタイン21Km(112537km〜112558km)
◎道路
オランダを平地の自転車道路国とするならスイスは山の自転車道路国。非常に多岐に渡って自転車用道路やコースが作られており、しかも分かれ道には地図付きの情報看板が設置されてる親切っぷり。主要な坂道には山頂部までの残り距離と1km毎に区間平均斜度まで示されていて、まさに至れり尽くせりとはこのことか。なお車両は右側通行。
自転車の単独専用道路よりは一般車道に自転車レーンが描かれているパターンが多いが、狭い土地に無理矢理道路通してる場所も多いし、スイスは自転車に対してよく対応してくれてると思いますよ。
ちゃんとルートを選べばそこまでアップダウンがない道を走れる反面、幾らでも2000m超の峠へアクセスできるルートが作られており、坂バカもそうでない人も自転車旅行をするにおいて最高レベルに走りやすい国だと思う。
◎治安
非常によろしい。特筆すべきは規模の大きな大都市であってもあんまり嫌な雰囲気のする場所が少ないという点。大概治安の良い先進国でも大都市ってのは嫌な雰囲気の場所がどこかしらあるものだが、スイスってそれがあんま目立たないんだよね。分かりやすい浮浪者とかが少ないからなのか。
もちろんあんまり安心し過ぎるのは禁物であるが、スイスはヨーロッパ内でも特に治安の良い国であったとは思っている。
◎ビザ・出入国
シェンゲン協定内の国なので他国からの陸路入国で制限は受けない。ただリヒテンシュタイン除く他国への国境にはイミグレーション的な建物や検査場が今も残って稼働しており、警察官が詰めて業務を行なっている模様。私はリヒテンシュタインに入国(リヒテンシュタインはスイスと合わせて1国みたいな扱い)の際、呼び止められて入国理由を聞かれたりしたが、別にパスポートの確認もされなかったので実質フリーパスみたいなものだった。
◎交通事情
全く問題なし。こちらが恐縮してしまうくらい大きく避けてくれるし、ちょっとでもカーブに差し掛かると無理に自転車を追い越して反対車線に出るようなことをしない。これが運転マナーの良い国か・・・と背筋を伸ばしてしまうレベル。そも場所によってはあんまり道路脇を走ることもないし、ドライバーは車だけでなく自転車や人にも常に注意を払ってくれてる印象。こういう国を見てしまうとね、やっぱり国のレベルは運転マナーに比較されるのでは?とか感じてしまいますわ。
◎特徴
ロシアに経済制裁とかしてるけど、永世中立国として有名な国。このため当然NATOには入ってないし、軍事的中立というだけでなくEUにも加盟していない。だから隣国から入国すると車のナンバーがEU方式で無いことにまず驚く。次に買い物で通過がスイスフランであることに困る。素直にユーロで統一してくれれば楽なのにな。
ユーロではないけどシェンゲン協定にはちゃっかり組み込まれており、ヨーロッパ周遊における90日ルールはしっかりスイスでも適用される。まぁ仮にルール外だったとしても物価が高すぎてスイスにあんまり長居するのは難しいと思うんだけどね。
◎リヒテンシュタイン
国としてはオーストリアよりスイスに近いイメージを受ける。物価もスイス寄りだし。でも通貨はユーロ・スイスフラン共に利用できるらしく、ガソリンスタンド等では両方の料金が表記されていた。基本的に人が住むエリアは平地なので自転車で走り抜ける分には楽しい走行が出来るだろう。人口も少ないし交通マナーも良ければ野宿もしやすい国だと感じた。
面白い特徴として全世界でも2ヶ国しか存在しない「二重内陸国」の1つである。これは隣接する国が全て内陸国となっており、陸路で海に到達するまで少なくとも2度国境を越えなくてはならない国だ。なおもう1つの二重内陸国はウズベキスタンらしい。
◎気候
周囲を山に囲まれた内陸国&山岳国であるため基本的に標高が高い。なので割と夏でも涼しい土地が多いし湿度も低くて過ごしやすい。日が長いこともあって夏のスイスは本当に優雅というか、いつまでも地元民が川や湖で遊んでいるイメージだ。
実際低地では35度を超える猛暑の中を走ったりもしたのだが、2022年の夏は相当な異常気象だと方々から言われたこともあり、例年はもうちょい凌ぎやすい気候とのこと。日本人的にはそれでも湿度が低い分だけ楽だったと感じたが。
なお標高の高い場所だと夜は普通に冷える。テント内でシュラフも使わず寝ていると風邪ひきかねないので注意だゾ。
◎言語
ドイツ語とフランス語をメインとする地域が多く、南部ではイタリア語を話す地域もあった。一応スイス的には4種類の言語が公用語らしい。そんな国なので多国語を話せる方が非常に多く、また英語での会話も堪能で旅行者的には非常にありがたい。というかスイス語って存在しないのね。
なのでスイス人同士でも住んでる地域で使用言語が異なることは多いそうで、そういう時はお互い通じやすい英語を使うことも多いのだそう。実際私がお世話になったご家庭では普段ドイツ語で会話しているのだが、私に合わせて英語で会話をしてくれた。多国籍言語が使えるってすごい。
◎宿(野宿)・Wi-Fi
ちょっと町から離れてしまえば野宿できる場所は幾らでもあるが、スイス人はかなり僻地でも平気で散歩している人たちなので明るい内にテント張るのはそれなりに注意が必要。そんでもって山岳国なので場所によっては「町中」と「主要道路」以外の場所がひたすら急峻な山に囲まれており、案外テント張る場所が見つからない・・・という状況は出てくる。かといって物価的に「じゃあ今日だけは宿入ろうか・・・」と考えるのが(物価的に)大変な国でもあるため、割と早いタイミングで野営地候補を探しておくなど準備を怠らない方が吉。
あとスイスはFreeWi-Fiの利用が非常に厳しい国であり、というのも大概の施設にFreeWi-Fiはあるものの、利用するにはSMSサービスで電話番号にパスコード等を一旦送信し、それを入力することで利用可能になる方式が取られているため。つまりSIMカードを購入せず自身の電話番号を持ってない旅行者はいくらFreeWi-Fiがあっても全く利用できない始末。そもそもSIMカードあるならWi-Fi利用しないんじゃい馬鹿野郎!と文句の1つも言いたくなる。困ったらカフェとかに行くのが無難だけど、コーヒー1杯500円するんですよスイス。
◎動物
そんな面白い動物は見なかったな〜。高山地帯だけどヤギとかも少ないし、土地が狭いからか牛や羊といった家畜の数も見る機会は比較的少ないかと思う。むしろ川や湖が多い関係か、草ぼうぼうの池の側とかで野宿してた割に蚊に刺された回数が少なかったことの方が印象的。泊めて貰ったお家でも窓を全開にして涼とってたけど、網戸とか無いのに蚊が入ってこないの羨ましいなぁと思ったよ。
◎自転車店
ちょいちょい覗いてみたけどパーツ関係は充実してたし、山がちな土地が影響してかMTB関連が充実している印象を受けた。ちょっと観光地行けばレンタルバイク屋もたくさん見かけるし、Eバイクに乗ってる人も非常に多い。
ただやっぱりお値段が高い傾向にあるため、隣国にドイツがあるのにわざわざスイスで何かを購入する理由は薄いんじゃないかと思ってしまう。参考までにチューブは1本10スイスフラン(約1400円)で販売されていた。なおぶっ壊して交換したリアディレイラーは約6800円でした。グレードはアルビオなので相当割高だと思う。店員さんは非常に親切だったけどね。
◎物価・食事
世界1物価の高い国とか評されることも多いけど、私個人的にはノルウェーやアイスランドほど厳しいとは感じなかった。というのも内陸国で国土も狭い関係上、事前に食材や消耗品の対策が立てやすくトラブルが起きても簡単に隣国へとエスケープできるから。アルプスの奥地へ向かうとなればなかなか厳しいところがあるが、必要最低限の物だけ購入する形を取れる自転車旅行者にとって割とスイスは凌ぎやすいとすら言える。
もちろん物価自体は世界でも有数の高さなのだが、それでもビールは100円以下で簡単に見つけられるし、ミグロかコープの2大スーパー行けば見切り品やれセール品もそこそこ見つかる。アルプスでの観光的な遊びはイタリアやフランス側で行うなど、手間と時間をかけることで割と物価に対処できる範囲が多いだけ有情というのが私の感想かな。ちなみにスイスではチョコレートにこだわりがあるらしく品数も味も多様なのだそう。そんな中で頂いたココアパウダー1袋(容量1kg)のお値段が28スイスフラン(約4000円)とか表記されててビックリした。やっぱり普通に買い物は出来ませんわ。
◎総括
自転車乗りとしてはアルプスの山々に魅力を感じるのであれば避けては通れない国という感じ。山岳国でありながら、これほどサイクリングロードやれ自転車道が整った国は滅多にお目にかかれないのであり、思う存分ヒルクライムして美しいアルプスの世界を単応することができる。そうした点に興味がない人は、高い物価を何とかして回避するべく短期間の滞在となってしまうだろう。でも個人的にスイス人には本当にお世話になったので、彼等の生活している都市や町を訪問するのも楽しいと思ってしまう。つまり何処行っても良いってことじゃん。
水場も探すまでもなくそこかしこでアルプスの雪解け水が飲めるし物価(とネット環境)以外は本当に素晴らしい国なので、騙されたと思って行ってみんしゃい。