2019年5月19日〜5月20日  2022年7月23日〜7月27日  8月22日〜9月4日  9月6日〜9月19日
 走行日数35日間
 累計走行距離2114km(1回目62km・2回目263km・3回目855km・4回目934km)
(93316km〜933378km・113134km〜113397km・115177km〜116032km・116195km〜117129km)
 なおアンゴラ45Km(117129km〜117174km)

◎道路
 フランスの道路は気持ちいい。これが最初に思った感想かな。正直一般道路には側道が設置されてなかったり「走りづらいな」と感じる点もなくは無いのだが、とにかくフランスは地形的に一走りすると必ずご褒美ともいえる光景を見せてくれる。それは丘の上からの風景であったり小さな村の牧歌的な町並みだったり峠から眺めるそれまでの道のりだったり様々だけど、フランスの道で思い出すのはそうした光景ばかり。なので私は「フランス走るのは楽しいぞ」とオススメしたい。なお車両は右側走行。
 自転車先進国の国だけどサイクリングロードは主要な川だとか、ある程度目星をつけて探さないとそんな何処にでも出てくるほど取り揃えられてる訳ではない。小さな道も多くて油断してるとよくわからない場所へと迷い込むこともしばしばあり、一筋縄ではないかない。あと道路標識が日本とは逆で一般道路が緑地看板、高速道路が青地看板で表記されてるため、うっかりしてると高速道に迷い込んでしまう危険性が高いので要注意。

◎治安
 パリだけ別格に悪い。他のフランス各地域は不安を感じることはほとんど無かった。そのパリも中心街はスーパー観光地なので、スリとか置引きといった犯罪は多々あるだろうけれどアグレッシブな強盗やれ殺人事件が起こる雰囲気はあんま無い。
 ところがパリの周辺は多種多様な人種がガツガツ物乞いやってたり、ゴミが散乱してるわ窓ガラス割れまくり、落書きしまくりと場所によってはかなり嫌な雰囲気。実際私が泊目てもらった地区のすぐ側でも数年前に銃殺の事件があったという話を聞いた。
 余談だがパリ市内は完全に移民の町といった風情で、黒人3割・白人3割・アラブ系2割・アジア系1割・その他1割みたいなイメージ。

◎ビザ・出入国
 ヨーロッパ圏内からの陸路移動では何のチェックも無いでござる。一応スイスとの国境には越境者をチェックする建物があるんだけど、別にパスポートをチェックするワケでもないザルな警備。むしろイミグレで審査あっても良いからヨーロッパでの滞在日数を各国ごとに分けてくれないかなぁと毎回思ってる。自転車旅行でヨーロッパ滞在期間90日は短すぎるよ。

◎交通事情
 ドイツより全体的に車両の数が減ったので、その分走りやすい感じがあったかな。田舎道が多いのでかなり速度出すのが怖いんだけど、追い抜くときにはしっかり車間距離取ってくれるので地味にそれほどストレスではなかったり。
 クラックションもまず鳴らさないしそこそこ自転車専用路もあって車両と住み分けされているのであんまり苦労することは無いと思う。
 自転車でも走れる主要道路なのか走行禁止のモーターウェイなのか判断が難しく、入ってみたらクラックション鳴らされた・・・ということが数回あったけど、後で調べたら普通に自転車走行可能な道だったこともあり、要するに邪魔な自転車に威嚇して来ただけじゃねーか!ということもあったので、そんなにドライバー信頼しすぎちゃいけないなとは思う。それはどの国でも同じなんだけどさ。

◎特徴
 自国の好きっぷりと健康志向の強い国だと感じた。これはフランス人当人の口からも聞いたし、スーパーみたいな食品売り場でも「フランス産」であることを非常に強くアピールしてくる点からも感じる。もっというと、フランスというより自分が住んでる地域に誇りがある印象で、食事を頂いてる時にしょっちゅう「このチーズはこの村にあるどこそこ農場で作ってるヤツで・・・」といった話を聞いた。田舎だと出ている食材全て自給自足で賄っていたりしてさ、それはすごく良いな!と私なんかは思ってしまうんだけど。
 あとよく言われることだけどフランス語に誇りを持ってるので、他国の言語を話せても使わない・・・なんて話を聞くが、まぁコッチがバリバリの自転車旅行の格好していて、それに対して話しかけてくる人はあんまそういう感じを受けないです。フランス語しか話せないけどガンガン話しかけてきて、お互いほとんど意思疎通できないまま「良い旅行を!」と言われることは多々あったけど。

◎アンドラ 
 フランスとスペインに挟まれた小さな内陸国。ピレネー山脈のど真ん中に位置している山岳国であり、またアンゴラには国際空港が存在しないのでこの国を訪問するには必ずピレネーの山を登らなくてはならない。なお私がフランス側から入国した際に標高2100m程で、2400mの峠を越えてスペイン側に抜ける時は標高600mまで下っていた。
 そういう土地なので山登りやスキー等で旅行者には賑わっているらしい。それに伴う観光地としてのレベルも高く、主要都市部では町中でFreeWi-Fiが大体使えたな。フランス側ではフランス語、スペイン側ではスペイン語が主流となっているようだが、公用語自体はカタルーニャ語というヤツらしい。
 小国あるあるの国内全域が免税エリアに指定されおり、人口(約8万)の割に異様なほどデパートの数が多い。せっかくなので自転車パーツ色々購入したのだが、ここら辺だと消費税が減額される程度なのでフランスとはともかくスペインでのショップと差は正直感じられなかった。スペイン側だと普通にシエスタ制度あって昼間は休みが入っていたりと、基本的には隣国の文化が色濃く出ているように感じられる。
 またピレネー山脈の1角としてヒルクライムの人気も高いようで、且つ道路に側道か自転車レーンがしっかり引かれていることからサイクリストも数多く見かけた。 

◎気候
 500年に1度の大熱波・・・なんて言われてる時期に走行してたので、これが普段のフランスと思って良いのか自信ないけど。とりあえず8月のフランスは場合によって35℃を超えてくる相当な暑さ&湿度の低さでやたらと喉が渇く気候。18時とかでも日が高いままなので気温が下がらず、その代わり日陰に入ってしまえばむしろ涼しいといえるレベル。
 後半にちょいちょい雨降られたけど、割と短時間でドバッと降ってダラダラ続くことは少ない雨ばかりだった。天気予報があんまり信頼できないレベルだが、オーストラリア然り基本農村地帯で人口希薄な土地は天気予報の信頼性が下がる印象あるからなぁ。

◎言語
 ボンジュール!フランス語です。西欧ではあんま言語苦労したことなかったけど、フランスは大変だったわ。フランス人はあんま英語喋れないと方々から聞いていたのだが、個人的にはそこまででもなくて、むしろ「フランス語なまり」がキツいことの方が苦労した。
 英語で会話してても普通にフランス語が挟まってきたりするし、ちょいちょい此方が理解できない言葉が多くて「どういう意味だろ?」と思ったら発音が違っているだけだったり。そういうのはどの国でも(アメリカですら)あることだけど、フランス人のなまりは特に強いと感じた。カタカナ英語で発音してる茶壺さんが偉そうによく語るよなぁ・・・と思わないワケではない。

◎宿(野宿)・Wi-Fi
 キャンプ場に関して言えばオランダよりはレベル下がったというか、自転車みたいな旅行客に対しての対応を想定してないキャンプ場が増えた。結果としてサイクリストなのにRV車両と同じスペースに送られ料金も一緒!とか割りに合わないことが多くてちと不服。ツール開催してる国だろ!という思いがあるからなのかもしれんが。
 Wi-Fiに関しては最初北東部を走ってる時はスーパー関連全然ダメで、こりゃFreeWi-Fi見つけるの苦労しそうだな・・・とか思ってたが、何故かその後はホイホイとスーパーでWi-Fi出てくるようになり「フランスは地域によってネット事情も大きく違うのか?」とか思ったり。
 大都市なんかは地下鉄でも何処でもWi-Fi飛んでる国だけど、田舎のスーパーでWi-Fi拾えないとヨーロッパにしてはネットやや繋がりにくい方の国なため、毎日ネット触れたいというレベルならSIMカードの購入が検討対象に入るかもしれない。2〜3日に1度くらい情報取れれば十分というなら心配する必要は全くないが。

◎動物
 基本的に田舎というか農地や山ばかりの国なので、家畜以外でも割といろんな動物を見かける。日中でもウサギが道路に飛び出してきたり、謎の小型動物が目の前を横切ったことが1度や2度ではない。なので道路上には結構小動物の轢死体があったりして臭い。
 森の中でテント張ってる時に猪をみたことが複数回あって、そのうち1度は深夜に息遣いの音で目を覚ましている。つまりかなり至近距離まで接近されていたということで、肉食動物がいないからといって安心はできないなと実感した。
 なお犬が割とアグレッシブで自転車に吠えかかってくる輩が一定数いる。フランスはお上品なので家の敷地から出ることができず、門の前で吠えているのが精々なので怖くはない。

◎自転車店
 主要な町はもちろん、アウトドア人気の高い山とかの麓にも無数にショップがある。シャモニーとかモン・ヴァントゥ麓の町とかさ、町の規模に見合わないほどたくさんのショップがあって驚いたものだ。
 サイクルレースの本場なので品揃えもしっかりしてるが、マラソンプラスはドイツのメーカーだからかそれほど姿を見せることがない。多分フランスのタイヤメーカーが幅を利かせているのだと思われる。
 コロナの関係で在庫が少ないとされるカセットスプロケットもフランスで発見したワケだが、地方のショップ店員は基本フランス語しか話せない・・・という人も多いので、私1人だったら無事に見つけられたか自信はない。まぁ運と気合があれば多分気持ちは通じると思う。

◎物価・食事
 スイスとベルギーの後に入った時は「フランス安いじゃん!」とか思ったけれど、それは普通に比較対象が悪かったからで、3日もすると「フランス物価高いよ!」という事実に改めて気づく。
 周辺国と比べてビールも比較的値段が高く、1€以下で買えるタイプは2種類くらいしかない。日本的には「150円以下でロング缶買えるなら安いじゃん!」となるけど、ヨーロッパではビールは100円以下がザラ。その半額とかでも売ってる世界なので。
 農業国だからか野菜の値段は安いと思うが、肉に間しては相当良い値段してるため、ちょっと気を抜くと3食自炊にも関わらず1日の食費が2000円超えることも珍しくなかった。円安で物価全体的に上がっているとはいえ、3食自炊で2000オーバーは北欧並み。
 ただお味に関しては流石3大美食の1つに数えられる国だけある。そんなレストランとかしっかりした場所行かなくても私が購入するようなレベルの食べ物ですら美味い。特に洋菓子関連は絶品であり、よくスーパーの期限間近割引エクレアとかケーキ食べてた。余談だが大型スーパーには必ず日本の漫画コーナーがあって、ジャンプ系の作品が中心ではあるが手軽に購入できる体制が整っていたのは印象的だ。
 あとイメージ通りフランスパンがどんな商店でも売られているのだが、このパンがもっちりしていて実に香ばしく美味い。ガンガン焼かれてバンバン買われているため回転数が良いので焼きたての良いパンが手に取られやすいのが要因かな?と思われる。その証拠に1日経過したフランスパンは堅くてスープにでも付けないと食べられた物ではないからだ。このため1本丸々購入するとその日のうちに食べきれず処分に難儀するため私はハーフサイズのタイプを好んで買っていた。

◎総括
 世界で1番観光客が多い国とされてるが、なるほど自転車旅行においてもフランスは実に良い国だ。走って気持ちの良い道に加えて挑戦し甲斐のある山岳地帯も多数取り揃え、かと思うと有名な観光地や見所のある歴史的景勝地も国内全域にバランス良く収まっている。
 だがそうした旅行のしやすさよりも、私はとにかく沢山のフランス人からよくしてもらい親切を受けたことの方が印象的であり、思い出す景色も黄金色した一面の地平線の方がアルプスの山々より多かったりする。
 そうした特別観光地ではない、何処にでもあった田舎のフランスがとても心地よく、自転車走らせるにおいて楽しかった。そういう「ただ自転車で走る」ということの根源的な喜びを程よく感じさせて、そうした自転車での旅行に近づき過ぎず、でも困っているのを放っておかずに声かけてくれるこの国の人たちの距離感が好きだったのだと思う。
 ヨーロッパ全体で90日の滞在期限にもかかわらず、気付けばドイツの滞在日数超えて1ヶ月以上もこの国走っていたけれど、実はフランスそこまで長居するつもりじゃなかったのだ。
 旅行して楽しい国ってのはそんな感じで「気付けばそんなに滞在してたのか!」となるものであり、フランスはそういう国だった。