2022年12月23日〜2023年1月4日
走行日数12日間
累計走行距離737km(122719km〜123456km)
◎道路
所々ガタガタだったりするけれど私が走った道nには未舗装路がなかったし、むしろ田舎地域の路面は素晴らしい状態に保たれて最高の走り心地だった場所も多かった。恐らく近年に造られたばかりの道路なのだと想像できる。道路脇の看板で日本の国旗が見えたので、ODAとかで日本が協力してるのかもしれない。
どちらかというと都市部の方が問題となることが多く、首都のヌアクショットですら片側2車線あるきっちりしたアスファルト道路は稀。狭い1車線な上に側道が砂地だったりするため悲惨な交通状況と相まって非常に走りにくい。しかも交通量が多いためかボコボコに穴空いてたり傷んでいる路面も多い。車だったけどヌアクショット〜ヌアディブ間の道も路面の良い場所と悪い場所の差が激しく、極端だなと思うことが多かった。なお車両は右側通行。
国内全体として標高の高い場所はほとんどなく、内陸に一部背の低い山々が連なっている程度。ズエラットの周辺に国内最高標高ポイントがあるらしいが、その辺の標高が500mとかだったので多分大したことない。
◎治安
町中とかでもそんな悪い雰囲気は感じない。とにかく貧しい人が多くしょっちゅう物乞いに絡まれたりはするものの、攻撃的な視線や雰囲気を感じることは終ぞ起きなかった。
とはいえ町の出入口には必ず警察か軍隊、若しくはその両方が検問を構えて常駐しておりモロッコと違って自転車旅行者でも100%止めさせられてパスポートチェックを受ける。
面倒なのがモーリタニアはこの際必ずパスポートのコピーを求める(「フィッシュ」という言い方をしてくる)のであり、これに毎回付き合っているとモーリタニア縦断するだけでコピー用紙を10枚以上準備しておかなくてはならない。
私はアホらしいので「いや持ってないしパスポート見せれば良いでしょ」という対応していた人なのだが、なんと最初から最後までそれで問題にはならなかった。どうやら後で外国人の情報を確認する際にコピー用紙があった方が手間要らず・・・ということであるらしく、それがないとスマホで写真撮影したり紙にデータを記入するのが面倒くさいからみたい。モーリタニアってのはそんなレベルの国なのです。
◎ビザ・出入国
西アフリカの国らしく入国にはビザが必要である。ただし国境その場で取得できるアライバルビザであるため事前に準備するものは料金の55ユーロのみで構わない。ポイントはアフリカ諸国におけるビザ料金は米ドル支払いが主流であるのに対し、地理的に近いためかモーリタニアビザはユーロ払いしか認めていない点。うっかり米ドルしか持っていないと困るけど、まぁ国境にいる両替商のレートはそんなに悪くないので対処できます。実際一緒に入国したペアランしたフランス人のサイクリストはモロッコディラハムしか持っておらず、国境で慌てて両替してたし。
モロッコとの国境は両国間の仲が良好ではないことを反映してか、手続き以外にもやたらと検問でのパスポートチェックが多かったり緩衝地帯の道路が崩壊し未舗装路となっていたりする。2020年にここでドンパチが発生して一時期国境閉鎖されたりもしたが、2022年12月現在は通常通りに国境開放され通過可能となっている。
セネガルとの国境に関しても賄賂の請求だとかロクな話を聞かないが、そっちは行かなかったので真偽のほどは知らん。
◎交通事情
町中の交通マナーの酷さは相当なレベル。常に何処かでクラックションが鳴っているし、信号機は赤でも平気で突っ込む車両が半数くらい居るため、下手に赤信号で停車してると脇から結構なスピードで車がぶち抜いてきたりとかえって危険なことも多い。
アスファルトの幅が狭いため側道に逃げたいところだが、そこが砂地となっていると自転車が沈み込んでしまい転倒する危険もあるので市内の運転難易度が相当高い。ヌアディブ・ヌアクショットの2都市は極力自転車での走行をしたくないと思った。
これが郊外になると割と緩やかになるというか、単純に車両の数が少ないので危険度が低いだけなのかもしれないが、ともかくそこまでストレスを感じる事なくなるのが救い。
でも最終日にバス乗ったら酷い荒くれ運転&クラックション鳴らしまくりで爆走してた上に、路面状況の悪い道でもほとんど減速せず突っ込む無茶を繰り返してたので、本当に車両数が少ないから目立っていないだけかも知れない。
それを示すようにモーリタニアでは路上でパンクしたタイヤの交換作業とかしてる車両がやたら多かったのだけど、これは荒い路面で無茶な飛ばし方をしてることが大きな原因の1つであると思う。
◎特徴
1、人種でいうとアラブとブラックが混じり合っている感じの国。南部にいくほど黒人の割合が増える感じでヌアクショットでは黒人が7割くらいのイメージ。この辺は東アフリカのスーダンとよく似てると思ったな。ちなみに漁業で日本へのタコ輸出割合がNo.1の国なのだが、これの基礎を築いたのが日本人の援助によるものらしい。その関係でかアフリカの中で対日感情が非常に良い国とされており、実際私も「日本人だ」と話すと喜ばれることが多かった。
2、国土のほぼ全てを砂漠に覆われている砂の国。これに北東貿易風による恒常的な風が吹き続ける関係で常に砂が舞い散っている。宿が高いこともあってテント泊の割合が増える国だが、きちんと対策しないとチャックのある製品は砂が入り込んで動かなくなる原因になるし、電子機器やバーナー等も隙間に砂が混入して故障の要因となる。私もウィスパーのゴムパッキンが砂により隙間できてしまい、ポンピング中にガソリンが吹き出したことがあったのでマメなメンテナンスを心がけた方が良い。
◎気候
完全に砂漠の世界である。といっても天気は晴天というより砂が舞って空は白っぽい色してるが。ヌアクショットより南に進むと砂漠が終わって緑化してくるらしく、また別の雰囲気になるのかもしれない。
真冬でも平気で30度を越えてくる気温と強烈な直射日光、加えて北東から吹きまくる風が自転車で走る難易度を上げていることは間違いない。この風を上手く捉えることができれば1日150kmとかでも余裕で走行することが可能な土地なのは間違いないが、あんまり期待しすぎると痛い目を見る。というのも南下するなら基本追い風になる風向きなのに、モーリタニアの風は安定しておらず、場合によっては真東だったり西から吹いたりすることもあるため。アタールでは雷に雨まで降られた大嵐も体験したし、砂漠だからといって全く天候に変化がないワケではない様子。ちなみに嵐の時の風速は40km/hとか表記されてた。
◎言語
引き続きアラビア語圏でありながら植民地支配下であった歴史上の関係でフランス語も主言語となっている。スペイン語に関してはほぼ通じることが無くなった反面、田舎でも英語の通用率は若干上がったような気がしないでもない。
あと同じアラビア語といってもかなり地域差があるようで、せっかくモロッコで覚えたいくつかの単語が全然通じなかったりすることもしばしば。そもそも現地の部族がそれぞれ独自の言葉を使っている(しかもそれが公用語)ため、アラビア語1本では難しいのかもしれない。
◎宿(野宿)・Wi-Fi
ヌアクショットを除いて何処もクソ高い。しかも高い料金に見合った設備や内装してる訳じゃなくて最低レベルのサービスでありつつ先進国並みの料金を取ってくる。私は運良く町での宿利用を回避したり特別料金で泊めてもらった人なのだが、普通に宿泊しようとすると最低レベルの宿でも1泊3000円くらいを目安にする必要がある。ヌアクショットならもうちょい安いかな。
Wi-Fiもマトモに普及してる場所は限られているし、1度ネット作業したくてカフェ利用したが写真のアップロードすら出来ずに敗退するレベル。この国ではSIMカードを購入するメリットが十分にあると思う。私は適当な会社を選んだが、料金設定に関しては何処も一律らしくカードの購入とアクティベート作業をやってもらって100ウギア(約360円)だった。データチャージでもう100ウギア支払い2.5G分を取得したが、このデータ使用期限が1週間と短くて最終日はネット利用できず。なお速度はWi-Fiよりスマホの方がずっと速くて都市部なら回線も安定もしていた。
ちなみにこの国でブログのアップロードができたのは、唯一アタールの欧米人が経営しているキャンプ場のみ。ブログが途切れないで投稿が続いたのは単に運が良かっただけ。
そんで野宿に関してだが、砂漠の厳しい環境下では人間も寄り集まって暮らすのだろうか、モロッコと比較すると郊外で人を見ることが減り野宿自体は楽になったといえる。場所によっては地平線までアップダウンがなくテントが道路から丸見えだったりするので躊躇いがあるものの、それなりに姿を隠せる障害物やれ傾斜は出てくるのであまり心配しなくても大丈夫。ただし砂地でキャンプ泊となるので夜間に強い風が吹くと悲惨なことになるため天気予報は要チェック。
◎動物
町中にヤギの姿が目立つようになった。首都だろうと何処だろうとゴミが溜まってる場所で餌を探している姿が哀愁を誘う。モロッコと同様にロバやラクダの姿も見かけるが、その数はグッと減って生き物が生息するの難しい砂漠という土地であることを感じさせる。
町中における蚊の数が増えた感じで、特にヌアクショット以南はマラリアを発症する危険が高くなる地域となってくるため、多くの旅行者はヌアクショットで抗マラリア薬を購入するらしい。私はヌアクショットで北部にUターンしたのでそこら辺あんまりチェックしてないが。
他にモーリタニアに入っていよいよハエの存在が鬱陶しくなり始めた。走行中はそこまでではないが、自転車を止めると何処からともなく現れてまとわりついてくるのでウザい。場所によってはオーストラリアのハエの3割近くになる・・・という表現で分かる人は少ないだろうけど。周囲に2〜30匹くらい飛び回ってるイメージです。
◎自転車店
期待しちゃ駄目。ヌアディブやヌアクショットでは自転車を修理するお店も見つけたけれど、いずれも専門店ではなくボロっちぃ2輪車の修理店といった様相で、とてもじゃないが交換パーツを取り扱っているようには見えない。
この国を走っていると砂でどんどん消耗品パーツが磨耗してくるのが分かるので、もうアフリカ突入前に十分な事前準備をしておくべし!・・・というのが最善だと考える。
偶然ペアランしたロブのスポーク折れを修理する機会があったけど、彼は西サハラでスポーク折れてからずっとスプロケット外しの工具を探し続けて見つけることができなかったと言っていた。偶然他の自転車旅行車を見つけてそいつが修理工具を持っている可能性の方がまだ高い。モーリタニアの自転車店レベルはその程度と捉えておく方が良いと思う。
◎物価・食事
物の値段に関しては全体的にモロッコより高いクセに品質は低い。国力が圧倒的に低いことで自国における生産品というのが少なく輸入に頼る割合が大きいため「ロークオリティ・ハイコスト」という途上国でも最底辺の国でのみ発生する現象が起きている。ちょっと気にしてみるとコーラ等の飲み物ですら明らかにモロッコから持ち込んだっぽい物で溢れており、こうした点が西アフリカを旅行するのが難しいとされる理由の一翼を担っているのだと思う。フルーツですらモロッコ比較で倍近い料金の物もある。
ただそうした品物ではなく「食堂での食事」という一点に限定すると安くて量が多い自転車的には満足度が高い国に。特に米をメインとしたメニューが複数あるのが日本人的には嬉しいところで、1食の値段も150円とかからある。だが砂漠という土地柄なのか食事に水が添えられることはあったりなかったりだし、飲み物の値段は全体的にかなり高めでコーラ1ℓが180円くらいする。
フランス植民地だった関係で午前中に町を歩けば何処でも行商人がフランスパン10ウギア(約35円)とかで売ってるし、普通に中身はもっちりして美味い。このパンを活用したサンドイッチも多く、私はこれをアルミホイルに包んでもらい走行中のお昼ご飯としてよく食べていた。
チェーン展開してるようなタイプじゃないローカルレストランは営業時間帯が遅いというか、19時とか20時になってから開店する場合が多く、お昼や午前中は閉まっていることもしばしば。なので小さな町だと自炊しなけりゃ前述のサンドイッチしか食べる物がなくて困ってしまう可能性が。商店の品揃えも非常に悪く、特に袋麺が見つけられなかったのは苦労した。なんか思い返してみると食でも結構大変な思いしてるなモーリタニア。
◎総括
結構散々な言い方をしているのだが、全体を通してみると私は割とこの国が好きだったりする。なんというか厳しい砂ばかりの世界でも結構楽しそうに生活していたり、気持ちの良い対応をしてくれる人に数多く出会えたことが大きいのだと思う。
人様にモーリタニアの旅行をオススメするかと問われれば「それはないな」と回答してしまう反面、自分自身がモーリタニアを再訪してみたいか?と問われれば「そういう気持ちはある」と答えてしまいそう。他の人には分からなくても、私はこの国の良さをわかってあげられるから!・・・ってダメ人間に貢ぐ人みたいな台詞だな。
ただしこの国を自転車で走る人は自分である程度トラブルに自己対応できることが最低条件として求められる。修理だけじゃなくて走行計画や一般道路での補給の難しさもかなり高難易度の国なので、初の自転車旅行で西アフリカスタート!というのは止めましょう。そんな奴そうそういないと思うけど。