2022年10月5日〜12月23日  2023年1月4日〜1月28日
 走行日数105日間
 累計走行距離5173km(1回目4048km・2回目1125km)
(118671km〜122719km・123456km〜124581km)

◎道路
 かなりレベルが高いと感じた。大都市の市内・その周辺道路には自転車レーンが設置されていることも多く、交通量が多い場所でもそれなりに安心感のある走行できるし、郊外ではそもそも交通量が少ないのでそこまで危険を感じることがない。他のアフリカ諸国に見せてやりたいな。
 中央部に複数の山脈があるため海岸線以外のルートは大抵山道となるのだが、無茶な急斜度で昇らせてくることはほぼなく、またよっぽどマイナーな道でもなければキチンとアスファルトが敷かれているのもポイント高い。ただし場所によっては標高2500m越えてくる箇所すらあり、冬の時期だと場合によっては積雪の可能性を考慮して走らなくてはならないので要注意。
 ここら辺の山岳ルートはヨーロピアンの人気が高く、サイクリスト意外にもライダーやオフロード車が様々なルートを走り回っている関係か、かなり僻地でも宿泊できる施設が整っていることが多く補給の心配も少ないのが嬉しいところ。総じて自転車で走りやすい国である。なお右側走行。
 西サハラ地域はゲルミンからダフラまでの道を片側2車線に拡張しようと大規模工事が行われていたが、現在では3〜4割くらい工事完了している感じかな。この区間、そこそこ大型車両の交通量がある道なので、自転車的にも早く竣工して欲しいところ。数年後のサイクリスト情報が待たれる。

◎治安
 アフリカという大陸で鑑みれば無茶苦茶良い方だといえる。とはいえモロッコは決して気を抜けるレベルの国ではないし、近くに集落のない荒野とかでも割と人が住んでいたりするので明るいうちからテント張るのはかなりリスクがある。野宿していて追剥ぎにあったという話も聞いた。
 かといって観光地みたいな都市部だとひったくりや盗難といった軽犯罪が横行しており、人通りの多い場所でスマホ見ながら歩き回ることとかはやめた方が良い。
 ちなみに私はティトアンの町で宿に荷物をあげる際、一度に全ての荷物を持ち上げられない関係で3度に分けて部屋へと持ち込むのだが、宿まで案内したジジイがこの隙を突いて自転車に付けてた腕時計を盗んでいった。そういうことがあったので、盗難に関して私はモロッコのイメージがすこぶる悪い。

◎ビザ・出入国
 2020年から西サハラ地域を巡っての戦闘が起きた(再開した)関係だと思うのだが、入国審査はすんなりスタンプ押された割に荷物のチェックが尋常じゃないほど厳しかった。別に何を探られても痛くないし・・・とか思っていたら、自転車に付けてる看板に描かれた世界地図見て「ここ(西サハラ)がモロッコと色が違うのはおかしい!西サハラはモロッコ領だ!」と言われ没収されそうになった。結局マジックでモロッコの土地を全部単色で塗り潰したら許してくれたが、この点かなり神経質になっている模様。貰ったフランスの地図とかも全部広げてモロッコが描かれてないか確認してたし。地図関係を持ってる人は気にした方が良いと思う。

◎交通事情
 これがアフリカにしては驚くほどマナー良くて驚いた。基本的に信号も交通ルールもちゃんと守るし無茶苦茶な王腰をかけてくるようなドライバーもそんなに多くない。何よりモロッコドライバーはクラックションを鳴らしまくったりなど(あんまり)しない。マジか?ここ本当にアフリカか?と疑ってしまう。クソドライバーはそりゃいるけれど。
 基本的に大都市及び沿岸部に交通量が集中しているので、多少内陸へ入ってしまえば良質な路面も相まって非常に走りやすい環境だといえる。自転車追い抜く時も大きく反対車線まで避けてくれるし、この国では渋滞が起きて無茶苦茶になってる光景も見た記憶がない。ただしマラケシュだけはクラクッション鳴りまくりでクソマナーだったイメージ。
 多くの町の出入口となる場所には警察が陣取って検問を実施しているが、自転車はよっぽど過疎ってる町か西サハラ地域でない限り基本スルーされるので問題なし。

◎特徴
 南部の西サハラと呼ばれる地域で領土問題を抱えている。内情や経緯に関しては日記で少々語ったので省略するとして、この問題のため西サハラ地域ではやたらと検問が多いし、他地域ではほぼスルーされる自転車も逐一止められて身元確認させられる。沿岸部は軍隊の詰所が一定の間隔で並んで監視網を敷いていたり物々しい雰囲気をそこはかとなく感じる。
 モロッコ人はこの問題をかなりナーバスに捉えており、冗談でも西サハラを指して「ここはモロッコじゃない」とか言わない方が賢明だ。その一方でここの現地民(サラウィーと呼ばれる人たち)は「西サハラはモロッコではない!」と強烈に意識して生活しており、やっぱりモロッコの侵略行為云々と気軽に聞くのは憚られる雰囲気。
 モロッコを走るのであればこの問題はあまりつつかずにしておき、なぁなぁの態度でやり過ごすのが正解・・・というのが旅行者としての私の意見だ。

◎気候
 北部は見事な地中海性気候の土地で、オリーブ畑ばかりが立ち並ぶ夏は小雨で冬によく雨が降る。とはいっても冬の時期でもそこまで雨は激しくなかったし、私の滞在中に雨降られたことは1度あったかどうか・・・というレベル。
 中央のアトラス山脈周辺には冠雪があるため、暖かい国だからとあんまり真冬に無茶な山岳ルートを選ぶと場合によっては雪上走行の可能性がある。雪がなかったとしても普通に氷点下の寒さとなる場所は無数にあるため砂漠のイメージだからと冬用装備を疎かにしてると痛い目にあう。
 アトラス山脈を越えて南に入るとサハラ砂漠が広がりある意味天候は安定する。この地域では年中北(北西風が多いとか)からの風が吹き続けるとされてるが、実走した限りだと風力・風向は安定しないし東から風が吹く日が多かった印象だ。西サハラを南下する場合は追い風を過信せず「良い追い風が吹いたら走る距離伸ばそう」くらいの気持ちでルート計画すると無理なく回れると思う。

◎言語
 アラビア語が主要言語である一方、フランス語もよく通じる。沿岸地域に限れば地理的に近いスペイン語もそれなりに。内陸部に入るとベルベル語(彼らの弁では「アマジィク語」)話者も多い。ただし数字に関しては我々が慣れ親しむアラビア数字表記であるため、金銭的な面で何が書かれているか分からず困る・・・ということはない。
 英語に関しては都市部と観光地ならおおよそ大丈夫だが、田舎だと通じたら相当ラッキーくらいに思っておいた方が良い。そもそも道路標識を始めとした看板の文字すら、基本がアラビア語でサブの文字すらフランス語という世界だ。外国人的にはまだアルファベットであるフランス語の方が取っつきやすいものの、発音がよく分からず正しい読み方が不明だったりすることも多い。
 なおモロッコの地名はGoogleマップに表記されてる物を採用しているが、これも現地読みと比較すると全然違うことが多いらしく、仮に町の名前が変だとしたら私の不勉強によるものです。

◎宿(野宿)・Wi-Fi
 これはかなりレベル高い。辺鄙な土地にある宿でもWi-Fi完備されてることが多く、宿それ自体に「値段と見合わない」と感じることはまず無かった。むしろ観光地を外れるとそれなりの規模である町にも関わらず宿が1件もない・・・ということがままあり、こっちの問題の方が大きい。
 観光地やある程度大きな町の宿なら朝食付いてくることが多いが、むしろ割高なので「朝食いらないからもっと安くできないかな?」とお願いしたら値下げしてくれる宿が多かった印象。色々な宿に泊まったけど、私の場合は50〜120ディラハム(630円〜1500円)の料金幅で大体納まった。150ディラハム(1900円)とかの宿も沢山あるけど利用しなかっただけともいえる。
 スペインから距離の近い北西部の大都市ほど料金高くなる傾向にあり、タンジェでは最低レベルのホステルドミトリーで1泊1500円とかするのだが、南部の町だと半額の料金で個室とかザラにある。ただしWi-Fi速度に関しては都会のホステルの方が総じて速い。あと部屋までWi-Fiの電波が届かず受付周辺でしかネットができない「ちょっと足りない」系の宿は多い。最もモロッコはカフェが乱立しており値段も安くWi-Fi速度が大変優秀なので、しっかりネット利用したいなら幾らでも方法はある。
 あと長期滞在になりそうだったためSIMカードを購入した国だが、西サハラの砂漠内ですら多くの場所で使えたし速度も速い。SIMカード自体の料金は250円でチャージ1ヶ月分(容量5G)が630円ほどと大変お買い得な内容であり、大手3社の料金は何処も変わりないらしいので適当に使ってみるのも良いと思う。恐らくモロッコテレコムという会社が1番広域をカバーしている。
 ちなみに野宿に関してだが西サハラを除いてこれが難しい。というのも「まず周辺誰も住んでいないだろう」という土地でも何処からともなく人が現れることが多く、しかも全体的に荒野が多く安心して身を隠せる場所というのが見つかりにくい。デーツやオリーブの木は人が管理してる畑にあることが多いし。
 中央を縦断するコースならば割とキャンプ場が多いので、宿が見つからず野宿もイマイチというなら利用するのは良いと思う。先進国の人間を対象としてる(キャンピングカー相手)のでキッチン設備こそ無いが、安い料金でWi-Fiを始めとした各種設備を宿より安い料金で利用できることも多い。

◎動物
 ロバ・ヤギ・ラクダの3大家畜はよく見る。家畜だけでなく逃げ出す等で野生化した個体も数多くいるそうで、特にロバはモロッコ国内で使役動物として様々な場面で存在感を発揮している。ちょっと裕福な家庭だとロバに変わって馬で荷物運びさせたりしているようだが、モロッコの主役は断然ロバだといえよう。
 危険な動物はほぼ出てこないが、サハラ砂漠に本格突入すると砂蛇が潜むようになるため、あんまり変な場所でテント張るのはオススメはしない。私は直接姿を見てないのだが、ペアランしたサイクリストが休憩中に盛り上がった砂を指して「コレは蛇だから近づくな!」と教えてくれた一幕が。
 例によって田舎地域だと犬に追いかけられることがある。イスラム圏なので犬の個体数自体が少ない印象だが(逆に猫はやたらと多い)、田舎のポツンと一軒家みたいな建物横を通ると放し飼いされた犬が無然と追いかけてくることあるため要注意。
 あと南部の砂漠地帯へ入れば入るほどハエの数は増えていく。アフリカのハエは刺してくる種類がいるのか、ときどきチクリと痛みがあるハエに当たることがあってそれが厄介。なお蚊に関してはほとんど苦労させられることはなかった。何度か叩き潰したので全くいない訳ではないが、宿の窓が全開でも不思議なくらい蚊が入ってくることは少なかったように思う。

◎自転車店
 それなりの規模の町ならバイクと合わせて自転車の修理家業をしている店は必ずある。ただしこの手のお店は看板も掲げていないし日中は営業もしておらず夕方頃になると営業してることが多かった。
 パーツとかも謎メーカーなのはまだしも規格もロクに合っちゃいないので、基本的にはスポーツ自転車が壊れたからといって持ち込んでも修理できる見込みは薄い。そりゃ基本的なパンク修理とかは出来るっぽかったけど。
 本格的なプロショップは沿岸部の大都市に散見される程度であり、それでもアフリカということを考えればこれは素晴らしい。ただしアフリカ南下を考えているならスペインで十分に事前準備と予備パーツは揃えておくべきだと私は考える。
 フェス周辺では最新ロードに乗ったチームにも合ったので、そういう層に対応したショップもあると思うのだけど、まずそうしたショップを見つけることが大変だと思う。

◎物価・食事
 基本的に安いのだけど、都市部や観光地では完全に外国人料金として食事のメニュー運用されてるお店も多く、そういう所では日本より高い。想定してる相手がヨーロピアンだろうから、彼らにしてみりゃ割安なのかもしれないが。
 サンドイッチみたいなファストフード系なら20〜30ディラハム(約260〜390円)くらいが相場。ローカル食堂だと5〜15ディラハムくらいで食べることも可能だが、モロッコ料理として有名なタジンやクスクスは、ローカルなお店だとメニューにないことも多いので注意。
 ローカル食堂でなければメニューを持っているお店が多く、値段が一目瞭然で把握できるしぼったくられる心配ないのはアラブの国なので重要ポイント。概してそういうお店は全体的にお値段高めではあるのだが。
 アフリカでは他国を圧倒するレベルで食事が美味しく、特に先に挙げたタジンは大量の野菜を豊富に摂取できる上に繰り返し食べても飽きが来にくいハイレベル料理。観光客相手のお店だと一気に料金2〜3倍に跳ね上がるのが玉に瑕だが、普通の食堂では好んでよく食べていた。
 その他に国民食とも言えるのが、ナツメヤシの実を甘く味付けしたデーツと呼ばれる実。保存が良くききエネルギー源になるのでモロッコでの補給食に活用するのも良いと思う。私は1Kg5ディラハムで買えてしまうみかんばかり食べてたけど。
 そのほかの食材では炭水化物系が輸入に頼っているのか値段が高い気がする。特にお米に関してはヨーロッパで購入するより倍近い値段となってしまうため、仕方なくモロッコ産?なのか謎の米を買ったりもしたけどそういうコメは総じて不味い。1番マシなのはバラ売りしてる白色でロングタイプの米を購入するパターン。茶色のタイプとかショートグレンのタイプは日本の米の炊き方すると本当に不味いので要注意。
 なおイスラムの国であるためアルコールの類は販売所が限られており、1番安くて簡単なのは大都市にある外資系スーパー(カルフールとか)のアルコールエリアで購入すること。それ以外には観光地ならバーに行くのもアリだし、ちょっとお高い外国人向けのホテルやキャンプ場なら飲み物メニューにアルコールがある。なおモロッコ産のカサブランカビールは正直微妙な味だった。モロッコワインは美味しかった。
 余談だが、地方の田舎に行くと食堂でもスプーン等の食器は出てこずイスラム方式である手掴みで食事する機会が増える。必ず付け合わせにパンが出るのだが、これを上手に利用して指を汚さず食事するのがモロッコ方式。私はモロッコも終盤くらいになってようやくこのスタイルで普通に指を汚さず食事できるようになった。

◎総括
 まさか100日を超えるとは思いもしなかったモロッコだが、長い期間滞在しても気にならないほど様々な魅力に溢れた国であることは間違いない事実。国自体が問題を抱えていると言えるし、大都市だとちょっと面倒くさい人が多買ったりで、文句なく旅行にオススメだよ!と言い難い部分はあるけれど、私はすごく大勢のモロッコ人に良くしてもらったし、良し悪し色々含めてのこの国が面白いと思う。アフリカ大陸における他国と比べれば、抜群にクセが少なく過ごしやすい国であるというのも事実。特にヨーロッパから気軽に渡航できる立地という点もあり、ビザ要らずなモロッコで90日間の滞在日数が確保されているあたり、私でなくともシェンゲン協定の再入国待ちでこの国に長逗留する人も少なくないことが予想される。しかしそれだけの理由で入ったとしても、きっとモロッコの奥深い魅力に驚き思わず想定以上に長期滞在してしまう・・・きっと、そんな人は大勢いるのだろう。