2022年9月19日〜10月5日  2023年1月28日〜2月2日 2月13日〜2月26日
 走行日数37日間
 累計走行距離2888km(1回目1497km・2回目428km・3回目963km)
(117174km〜118671km・124581km〜125009km・125960km〜126923km)

◎道路
 自転車専用道というのが未舗装路だったり整備の行き届いてない道が増えた反面、一般道路の多くに広い側道が設けられるようになったため、結果としてはものすごく走りやすい国である。
 地図見て主要道路でそのままルート構築して、1日丸々予定通りに走れるってのは自転車だと結構難しいことも多いのだけど、スペインだと基本的に主要道をずーっと走り続けられるので予定が立てやすい。アップダウンがかなり多い国なので、そちらで体力削られて計画通りにいかいないことはあるかもしれないが。なお車両は右側通行。
 路面状態もしっかりしてるのだが、下手に高速道路が通じている道だと山中の場合、エスケープできる代理ルートが鬼の急斜面をクネクネ登らされまくる地獄の道しかなかったりするので要注意。
 あと近い時期に日本人サイクリストが自転車で高速道路走っていたりしたけど、基本的にスペインの高速道路は自転車走行禁止(走行可能なポイントは赤マルの自転車マークに「斜線」が魅かれてる)であり、真っ赤な違法行為なのでやらないように。このアホは警察に捕まった後でも反省せず繰り返し高速道走っていたが、そんな道を走らなくともスペインには走りやすくて面白い道路が無数にあります。

◎治安
 非常に良かった。偶然見つけなかっただけとは思うが、大都市でも雰囲気の悪い所謂「スラム街」的な場所が出てこなかったこともあり、危険を感じるようなことがついぞ起こる気配もないままスペイン滞在を終えたという感じ。重要なのは、スラムや雰囲気の悪い場所が有る・無いという点ではなく、自転車旅行者がそうした場所に迷い込む可能性が非常に低いということなので。スペインではよっぽど変な場所に行こうとしない限り、1ヶ月を超える滞在でも危険と遭遇する可能性は少ないよ。という感想です。
 それとカミーノ巡礼の関係かテント張ってる旅行者に対して地元民の視線が優しいのがありがたい点で、日本的な感覚だと四国の人はお遍路してる人をよく見るのでそうした人に理解がある・・・という感覚に近いかな。こっちは白装束とかじゃない普段着での巡礼なので。旅行してるだけで「ブエンカミーノ(いい巡礼を)」とかよく挨拶されるし。

◎ビザ・出入国
 シェンゲン協定内なのでヨーロッパ諸国から出入国する分には何の問題もない。アンゴラ国境だとイミグレーションがあるが、自転車に関してはノーチェックである。
 ただしアフリカからの亡命先として玄関口となって国である関係上、モロッコからの入国審査はかなり厳格に審査されているらしい。私は日本人なので適当というか係員がスタンプを押し忘れて「おいおいスタンプないけど大丈夫なの?」と確認に戻った一幕があったほどだが、モロッコ人だとスペイン入国には4000$の現金が口座にある事を保証しないとビザが降りないらしい。なんというか日本に生まれてよかったと思う。

◎交通事情
 非常に良い。やっぱり自転車人気の高い欧州国だと車両も自転車に対し一定のリスペクトを持っている感じを受ける。自転車でなくとも横断歩道で歩行者が待っていると多くの車両が停車して通行を促す様子を幾度となく目撃しており、こうしたところは本当見習っていくべきだと思いますよ。
 道路事情に近いかもしれないが、主要道路の郊外とかだと最高速度が100km/hとかの表記があるため、いくら側道が広い道とはいえすぐ脇を猛烈な速度で追い越しかける車が1%くらいいるのでやや怖い。ほとんどの車両は大きく迂回してくれるんだけどね。
 大都市でもない限り信号はほとんど出てこない代わりに円形交差点を利用するスタイル。片側2車線とかの大型ラウンドアバウトが非常に多いので、円の外側を走ってる車両が外へと抜ける車両というのを感覚的に理解しとかないと戸惑うと想像する。特に日本じゃこのスタイルの交差点ほとんど出てこないから。

◎特徴
 1、そらもう本場のシエスタ文化でしょう。大体13時半になると個人経営のお店はシエスタ(意味は昼寝)休暇に入って16時半〜17時半頃まで営業停止する。理屈としては日中猛烈な暑さとなるスペインにおいて無理せず長めの昼休みを取ることが起源とされてるらしい。まぁ冬の寒い時期でも関係なくシエスタ休暇取ってるあたり、完全に形骸化してるといって良い。
 小さな町だとスーパーとかも休みに入ってしまうので、この辺注意しとかないと場合によっては昼食食いっぱぐれる可能性があり注意が必要。
 2、巡礼の道における最終地点があるカミーノの本場。そのためサンティアゴを中心として放射状に様々な巡礼路が延びており、この道のルート上には巡礼者用の休憩所なり巡礼宿と呼ばれる安宿が多かったりと、自転車旅行車にも大いに恩恵に預かれる施設が多い。特に水場の多さは素晴らしく、一部動いてない水道に騙されることはあるが、水分補給を全く気にせずに走行ができるレベルで充実している。ヨーロッパで比較するとスイスよりちょっと落ちるレベルで水場が多い。
 スペインのローカル道をある程度走っていれば貝殻のマークにぶち当たることは多いので、巡礼やるやらないは置いといて、カミーノの存在を知ってると色々助かります。

◎気候
 南部は地中海性気候なので夏場は乾燥していて雨もほとんど降らないという自転車的に素晴らしい環境の一方で、冬になると雨が増える上に湿度が高くなる傾向がある。そんな冬にヨーロッパを走る人は多くないと思うのだが、他の欧州諸国に比べるとスペイン・イタリア辺りの国は緯度が低くてまだ冬季走行で凌ぎやすい環境のため割と需要もあるし。
 夏場の暑さは軽く40度を超えてくる灼熱の大地とされる土地だが、9月の後半から気温は一気に下がって過ごしやすくなるらしい。10月の時点では暑さで問題となることは無かったし、かといって寒さに震えるというほどではない。真夏の時期にヨーロッパの他地域を旅行し、秋の訪れと共にスペイン(もしくはイタリア)へと南下するのは長期ヨーロッパ旅行でよく見られる動き方。春にスペイン入って夏の到来を待って北上するってスタイルも同様。
 全体的に標高の高い大地という印象で、風に関してはそれほど決まった方位から吹き続けるイメージはない。今日の向かい風が明日には強烈な追い風となることも珍しくなく、天気予報と日程調整、ルート選択の腕が試される土地だ。

◎言語
 スペイン語のみかと思いきや、カタルーニャ語というのも一部で使われていたりする。都市部に行くと英語話者も相当いる印象で、特にサンティアゴやマドリードでは英語で話しかけられることも多かったし、マドリードの自転車ショップは10店近く回ったと思っているが、7〜8割は英語で対応できる店員がいた印象だ。
 長期自転車旅行者的には先に中南米を回ってある程度スペイン語が話せる人も多いかと想像するが、多少なりとも言語が理解できるというのは他のヨーロッパ地域と比べて格段に難易度が下がるのであり、イギリスを除くとスペインは意思疎通で非常に楽ができた国であった。別に楽とは言ってない。

◎宿(野宿)・Wi-Fi
 数回キャンプ場を利用した程度でほぼ野宿で乗り切ったスペインだけど、特にカミーノの巡礼路ならば巡礼者宿とかあって、料金的にも西欧とは思えないほど安く泊まれる場所も多い。私が見た限りでは1泊12€(約1720円)とかで宿泊できる場所とかあり、おいおいキャンプ場の一般相場より安いんだけど。そっちを使えばよかった!とガッカリしたこともある。というかスペインは自転車におけるキャンプ場利用が車両と同敷地・同料金を指定されることが多く、あんまりサイクリストに優しくない造りであると言えよう。
 都市部の周辺さえ避ければ全土姿を隠せる森林だらけな上に、カミーノ巡礼者用にレストエリアや休憩場所として整地されてる場所も数多い。水関係もやたら優秀で、ちゃんと水場をチェックする癖さえ付けておけば、水が補給できず水道探し回るといった苦労をすることはまず無いレベル。私は1回チェックサボって日暮れ前に水探し回り泣きを見たが。
 Wi-Fiに関してはカレフールやLIDLといったチェーン店スーパーで利用できる他、Caixa Bankという銀行がFreeWi-Fi飛ばしていて、よく利用させてもらってた。基本的に小規模な町でもカフェやBarが存在し、そうしたお店でネットを利用することができるため、たとえ田舎であってもWi-Fiが無くてネット接続できない!と困ることは少ない。個人的にスペインでsimカードは必要なんじゃないかな?と思っているし、私はその辺調べもしなかった。

◎動物
 野生動物は特別姿を見かけることもなく。こんだけ山深い土地で野宿も繰り返してたので猪とか出ても不思議はなさそうだけど、走った時期も秋と真冬だったからね。おかげで野宿中にも虫に悩まされることもなく快適でした。
 田舎では牛や羊の放牧が盛んでよく姿を見たけれど、あんだけお店に並んでいる豚肉の元は全然見た覚えがない。鶏肉も元は朝方に村とかを走っているとよく鳴き声がしていたのだけれども。
 都会の犬は大人しい反面、田舎の犬は自転車見かけるとアグレッシブに反応して吠えまくってくる傾向あるが、所詮は敷地内から出れないか鎖に繋がれたヤツばかり。面倒な展開になることはほぼないあたり、先進国ってのは違うなぁと思うのです。

◎自転車店
 3大グランツールの一角であるブエルタ・ア・エスパニョーロが開催される国だけあって自転車人気は非常に高く、ある程度の大きさの町なら必ずどこかに自転車ショップがあると考えて差し支えない。しっかりしたメカニックが在中しているようなレベルのお店が、だ。
 とはいえベタ褒めできない点も幾つかあって、その代表格が自転車ショップは多くがシエスタ休憩を取るため、1番利用しやすい時間帯の13時半〜17時前後にお店が閉まっていることが非常に多い。紛らわしいのが「全てのお店」がシエスタしてるワケじゃなくて、体感1〜2割くらいのショップは普通に営業してること。なのでGoogleマップとかの情報で「10時〜20時営業中」とか表記されてても、本当に営業してるのかシエスタなのか割と怪しいし、逆パターンでシエスタ休みと書かれていたら普通に営業してたこともある。
 あと旅行者的にはマラソンプラスの在庫が気になるところだが、取り扱っているお店自体はそこそこあるものの、主要タイヤではない・・・くらいのイメージでいた方が良い。私はマドリードでマラプラ探し回って幾つものショップに出向いたが、全体の3〜4割はシュワルベ製品だったりマラプラの販売がある一方で26インチサイズの在庫があるショップは最後まで見つけることができなかった。スペインからジブラルタル渡ってアフリカ入るルートのサイクリストは多いと思うが、アフリカ入る前にマラプラ探すのであれば大都市で十分な探す時間と手段を用意するか、手前のドイツ・オーストリアあたりの確実にマラプラが入手できる国で事前に準備しておくことをオススメする。私は入手に失敗して別メーカーのタイヤ抱えてアフリカ飛ぶ羽目になったとここに記しておきます。

◎物価・食事
 今回リスタートしてからのヨーロッパでは1番物価の安い国だったと思われる。これはスーパーの料金だけに限らず何度か入ったバル等の飲み食いできるお店も含めてだ。
 面白い点としてどこのスーパーに行っても生ハムが置かれているのだが、特に大型店舗だと2〜30kgはありそうな大型肉が吊るされて売られている光景を何度も目にした。こいつも生ハムとのことらしく、安いのなら1€とかから楽しめるしお昼のメニューとしてもサラミと共に重宝しました。
 ビールは500mlが安いと50セントとかでも売られているし、ワインも種類豊富で値段安くても結構色々なタイプを楽しめるのが嬉しい。バルでも1杯1〜2€で飲めるそうで、軽い気持ちで訪問するのも楽しいと思う。
 ケチ臭い事言うと、何故か周辺諸国と比べてインスタントの袋ラーメンが高かったし他国で使われてるメーカーの種類がなかったり。やたらパエリアの調味料が豊富だったりと国の特色的にラーメンが不遇の国なのかもしれん。
 よく豚肉で「イベリコ」と書かれた豚肉やハムを見かけると思うが、本場スペインのイベリコ豚は普通の豚肉と比べて値上げ幅が日本ほど大きくないので試してみるのも良いと思うし、実際私は食べてみてハッキリ違いを感じた。美味しかったです。
 あとスペインでかなり駄目になったアウトドア用品の購入をしているが、特にこだわりがなかったらとりあえずカレフールに行ってみるのが正解だと思ってる。自転車部品も含めて独自ブランド用品が非常に安価で販売されているので節約派には色々と助かります。

◎総括
 いや楽しかったなスペイン。走り甲斐ある道と走ってて楽しい道の合わせ技に加えて物価安くて人が明るく積極的で気分が上がるのは素晴らしい。悔しいのが前半・後半共に時間に追われのんびりとこの国を見て回ることができず、ひたすらに走りまくっていたことだ。国がヨーロッパの南西端に位置する関係で、ヨーロッパ周遊を計画するとモロッコへ海路で渡れるスペインはどうにも走行計画の後半に持っていきやすい。結果としてシェンゲンの滞在日数オーバーに振り回される形へ運ばれてしまうのは難しいところだ。
 できるならばスペインは1ヶ月以上の時間をかけて(暑すぎない時期を)ゆっくりと回る旅行をすべきだと思う。名前を聞いたこともない都市ですら立派なカテドラルが立地していたり、全国91箇所に散らばる牛の看板だったりと、見所が多くて飽きることはない国だと私は太鼓判を押すね。