2023年5月9日〜5月24日
走行日数16日間
累計走行距離1256km(131197km〜132453km)
◎道路
一部ガタガタの未舗装路もあったが全体的には綺麗で走りやすい。少なくとも北部に関してはアップダウンがほぼ出てこない平坦な国であり、この国の累計獲得標高は1000mに満たない程度であったと思われる。なお日本と同じく車両は左側通行。
側道幅はそれほど広くないもののしっかり確保されている反面、その側道部分だけ微妙に路面状態が悪くガタガタだったりする問題も。ただ交通量が全然ない国なので、路面状態が悪い場合は普通に中央寄りの場所を走れば済む。そもそも側道部分にまでトゲトゲ植物がはみ出しまくって生えているため律儀に側道だけを走ることが不可能に近い。
町中ですら主要道を外れると途端に未舗装路となるのはアフリカお馴染みの光景だが、ボツワナのそうした道は沈み込むタイプの砂で構成されてる道が多く、荷物満載の自転車だと全く動けなくなり持ち上げるようにして移動しなくてはならず大変なことが多い。
◎治安
それまでのアフリカ諸国と比べてそもそも人口数がガクッと減っていることもあり、治安云々の前にまず人が住んでる地域が非常に少なくなった。そうした意味で人間に対する注意よりも野生動物の方が危険度の高い珍しい国。
なお大都市マウンの中心部でもそれほど防犯面での警戒感は強くなかったし、首都のハボローネとか行けばまた違うのかも知れないが、私の通ったルートではそれほど犯罪に遭遇する危険性は高くないように思う。
とはいえスーパーの前には平日の日中から貧しい身なりの輩が何をするでもなくブラブラ屯っていたりするのでフルパッキンの自転車置いて買い物するのはかなり気を遣う。大体出入口にガードマンだか商品万引きを防ぐためにレシートチェックをしてる係員がいるので、私はそういう人に「自転車見といてくれ!」とお願いしてから店内入ってた。もちろんロックはしてるのだけど、括り付けてるバッグや荷物はどうしようもないから。
◎ビザ・出入国
日本人はビザ無しで最長90日間の滞在が可能。私の場合は滞在日数聞かれて長めに「2ヶ月くらいかな」と申告したら60日間の滞在許可が下りたので、申告次第で変動するパターンだと思われる。というかそれが一般的だわな。
特に荷物のチェックも無ければ指紋の登録だとか面倒な手続きも一切なくスタンプ押されてアッサリ出入国できました。他のアフリカの国もこれくらい簡単だったら良いんだけれど。
◎交通事情
そもそも交通量が非常に少ないというのはあるが、ボツワナのドライバーはアフリカで1番マナーが良いかもしれないとすら思う。クラックションを鳴らさないというだけで他のアフリカ諸国と違うと感じるし、自転車を追い抜く際にしっかり距離開けてくれるのは非常に印象が良い。
ただそうした過疎地域の国であるため一般道路の制限速度が120km/hと凄まじい設定となっており、実際にはもっと速度出して移動してることを想像するに自転車で走るの安心な国とまでは表現できない。アフリカという範囲でなら間違いなく安心な国。
大都市に行っても信号機を見る方が稀で、広い土地を有効活用してかラウンドアバウトも見かけた記憶があるけれど、そもそも渋滞になるほど走ってる車両の数がないので無用の長物だと思う。私が訪れた都市で唯一そこそこ車両を見かけたのがマウンの町だったけど、ここも中心部から半径2〜3kmだけが栄えている印象で、ほとんど危険な運転する車に遭遇した覚えがない。
◎特徴
すごく様々な点で特徴ある国で、それぞれ他の項目に関連してるからそちらで詳しく書いてるけれど、他のアフリカ諸国と比べて「人口が減って道中で人の姿を見ることが激減した」「物価が上がると共に市場が無くなりスーパーが増えた」「安宿が無くなりキャンプ場が増えた」「野生動物に道路上でも遭遇する確率が非常に高い」といった点が挙げられる。そもそも国立公園の敷地とそこに隣接する町や道路にほとんどフェンスを張ってない(他のアフリカ諸国はなんだかんだ境界線やそれに準ずる物があることが多い)というのもボツワナならではと感じる。
◎気候
4月後半〜10月が乾季とされているが、なんだかんだ5月でも雲が広がり僅かだが雨を降らせることもあった。太陽が出てると暑くて仕方ないボツワナだけど、こうして雲が遮られると肌寒いどころかTシャツ1枚では少々しんどいレベルとなることも。
内陸国ということもあってか非常に乾燥しており炎天下で走り続けても汗を流すことがない(汗が即座に蒸発してしまう)程度には乾燥してるため、他国よりも水の補給と携行に少々気を配った方が良い。
◎言語
英語の他にツワナ語という言語が使われている。ツワナ語自体は南アフリカでも同様に使用されているらしい。肝心なのはもう1つの主要言語である英語の方で、そういえばボツワナ国内で英語が通じなかった人に遭遇した記憶がないほど英語の通用率が高い。流石に子供はあんまり英語を解さない子も多かったけど。
というかボツワナ入ってから人と接する機会が激減し、特に言語的に苦労しそうな田舎でやり取りすることが少なかったため、実は英語できない人が多かったとしても不思議ではないが。どちらにしても一般的な日本人では全然知らない謎言語でやり取りする・・・といったケースはほとんど出てこないので安心感があった。
◎宿(野宿)・Wi-Fi
これが一気に高くなったというか、そもそもボツワナという国は長期旅行者が好んで利用するタイプの安宿が都市部ですらほとんど無い。小さな村にはそもそも宿泊施設すらない有様で、都市部や観光地に出てくるのは星が付いた高級ホテルばかり・・・という状況だ。なので私のような旅行者はホテルに併設されてるキャンプ場エリアを利用するか、町の郊外にあるキャンプ場に行くこととなる。
このためボツワナ滞在中は一気にテント泊率100%になったし、そのキャンプ場ですら1000円以上する場所ばかりで、今までのアフリカ物価を考えるとかなり高いと言わざるを得ない。ちなみに料金は最安値でも110プラ(約1100円)で、象が出てくるエレファントサファリキャンプ場は驚異の175プラ(約1750円)であった。
ただしキャンプ場自体の質はかなり高く、またボツワナのキャンプ場は土地の特色を生かした面白いキャンプ場が沢山あるため利用した上での満足感は高い。私が利用したキャンプ場ではほとんどでWi-Fiが使えた上にアフリカとは思えないほど速度も安定していたというのがあって、ネット関連ではそれほど気になったことはない。300km以上に渡ってキャンプ場が出てこないということも無かったし。外国人向けのちょっとお高いカフェとか行けばWi-Fi設置しているし、何ならショッピングモールでFreeWi-Fiが使えたこともあった。アフリカという土地でこれは僥倖である。
それまでの国と比べて一気に人口密度が下がり、一旦町の外へ出ると次の町まで無人区間を走り続ける形になってしまったため、ルートによっては野宿が避けられなくなった。次の項目で詳しく書いてるが、野生動物に遭遇するエリアがかなり広いので野宿する場所はかなり慎重に選ぶべきだと思う。
◎動物
私のルートだとマウンの町以前の前半戦が、肉食動物を含む大型野生動物が出現するエリアに該当しており危険のある区域であった。実際道路上で何度も象を見かけたし、普通にライオンが生息してるから気をつけろ!とも言われた。
道が広く視線も遠くまで届きやすい作りとなっているため、ヤバい動物と突然鉢合わせとなる確率はそう高くないと感じたが、とにかく区域が広いので夜間におけるキャンプ中の対応が怖い。
町や集落、キャンプ場だけは周辺を柵やフェンスで囲っているため基本的には安全地帯となっているが、最長で約150kmほどこうした人工物等の施設が出てこない無人区間があるため、この道を通過する方は走行前に事前情報をしっかり取って対処を考えて頂きたい。レストエリアの看板にも「休むのは自己責任で!」とか書かれている地域だ。
その他にはいつもの牛・ヤギの他にロバをよく見かけるようになったかな。逆にマラウイやザンビアでは少なくとも大型スーパーに行けば豚肉の取り扱いがあったけれど、ボツワナでは豚肉の類は一切見ることがなかった。多分国内でほとんど飼育されていないのではと想像できる。
ちなみに他のアフリカ東部国に比べて犬は多少姿を見かけるようになったし吠えられることもあった。というかケニア以南で犬に吠えられたの初めてかもしれない。
◎自転車店
結構規模の大きなマウンの町ですら自転車ショップはおろか自転車自体を見ることがなかった。恐らくボツワナという国自体で自転車という乗り物が全く普及していないのだと思われるほど自転車の存在感がない。実際現地の人間からも「ボツワナは自転車人気全然ないよ、みんな車に乗るしな」と言われてしまった。ちなみに自転車乗ってる現地人の姿を見たのは僅か2回のみ。
首都のハボローネとか行けばまた違うのかも知れないけれど、ボツワナで自転車関連のトラブルがあったとしてもショップに持ち込んでどうこう対処するというのは絶望的ではないかというのが私の意見。素直に隣国のナミビアか南アフリカ行きましょう。
◎物価・食事
物価はそれまでと比べて一気に上がってしまいまぁ大変だった。今までのアフリカ諸国では食堂で200円も支払えば十分な量の食事が出てきたが、ボツワナでは食材購入し自炊をしてもこの金額で治めることは難しい。というかそもそも食堂の絶対的な数が減り、特に小さな集落ではそうしたレストラン等を見つけることが難しくなってしまい、途上国だと手間の割にコスパが悪い自炊を続けなくてはボツワナでの走行は難しいという事情もある。
一応調べた限りでは1食300プラ(約300円)とかで食事できたので、ローカル食堂を利用できるなら無茶苦茶高すぎるというワケではない。
それと途上国には「甘い食べ物が際限なく甘過ぎる」という困った傾向が存在するのだが、ボツワナではスーパー等で販売されてるケーキが適度な甘さでそれなりに美味しく食べられる味。ホールで買っても4〜500円とかなので、かなりケーキを食べてたな。
ビールはザンビアと同様の種類を見かける他、セントルイスというボツワナビールが登場した他にも国際的に有名なビール(ハイネケンとかコロナとか)が普通に売られていたので流通が良くなったことを感じたり。缶ビールもかなり普及してきた印象で値段もビンと比較してやたら高いということもなくなった。なおロング缶で17プラ(約170円)くらいのイメージ。瓶だと750mlの大瓶で25プラ(約250円)というのが基本かな。
先進国の雰囲気を感じたのがスーパー等に自社ブランドの割安商品が販売されるようになった点。なお野菜なんかは下手すりゃ日本とそう変わらない一方で、肉だけは非常に安い。牛と鶏肉しか扱ってないのが残念な点だが、それでも牛肉がグラム50円とかで売られているためお求めやすい料金だった。なお肉の切り分けについては塊・ぶつ切り・ミンチの3種類くらいしかない。
なおボツワナプラは1プラ=10円であるため日本円に換算しやすいのが楽だった。
◎総括
それまでのアフリカと変わって一気に人の数が減り、何処に行っても人だらけだったアフリカとは大きく異なるイメージとなった。物価も一気に跳ね上がり、アフリカ東部を縦断する場合に明確な変化を強く感じる国境の1つであると感じる。
自転車的には普通の道を走っていながら大型野生動物を見ることができる・・・という嬉しくある反面危険でもある道を走れるのであり、世界広しといえどもそれが可能な場所は少ない。もちろん自己責任で対応になるのだが、私自身としてはボツワナでそうした道を走れたことは非常に嬉しく思っているし、実際剥き身の状況で象と至近距離で遭遇できたというのは何とも得難い経験だったと思う。
残念ながら国の北部地域しか走行せずボツワナを後にしてしまったのだが、この国の主要道路は私が曲がった道を直進すると国の南部を通ってぐるっと周り、元の場所に戻ってくる円の形をしている。つまりザンビアからナミビアへと抜けるサイクリスト的な定番ルートを考えると、短縮ルートか超大回りするルートしか実質選択肢がない(舗装路ならば)。
何にしてもそれまでのアフリカ走行とはガラッと変わった走行を求められることとなるため、ボツワナという国はなかなか印象深い国となった。