2023年5月24日〜6月23日
走行日数31日間
累計走行距離2006km(132453km〜134459km)
◎道路
舗装されてるアスファルト道路が非常に少なく、国の主要道路以外はかなりの割合で未舗装路となっている国である。ナミビアは道路名が頭にアルファベット表記でBとかCとか割り振られるタイプ(例:B10号線)の国だが、この記号がCなら8割未舗装路、Dは100%未舗装路だと思っておけば大体あってる。
んで正直アスファルト道路はそれほど語ることがなくて、ナミビアでは面白い道を走ろうとすると、必然的に「如何にして未舗装路を走破するか」という話になる。今回「ナミビア未舗装路」でまとめを作らなかった関係で、その代わりここで少々深掘りして書いているため興味ない人はこの項目スルー推奨。
全ての未舗装路を走ったわけではないため断言できないが、傾向としては大都市に近い場所ほど路面状態がマトモになる傾向にある。未舗装のタイプとしてはコルゲーションが多いガタガタ道系で、砂漠地帯に近づくと細かな砂が増えて埋もれてしまうタイプの割合が増える。
ただでさえ人口密度の低い国だが、その中でも更に過疎地域となっているため比較的よく使われている道で車両は1時間に10台程度、人家は平均して50kmに1軒とかの割合。私の通ったルートではヴォルビスベイからソリタイレまで2日半に渡って人家が出てこず、無補給区間としてはここが最長であった。
また海沿い海抜0mから山岳地帯まで広範囲での地形を網羅しており、場所によっては標高2000m近くまで登らされる。一応一部の急斜度区間だけは未舗装からアスファルトになっていたりと救済措置が設けられてはいるのだが、まぁ99%は未舗装の坂道と考えて間違いない。登りは体力的な問題で大変だが、下り途中に砂が深くなっていたり視認しずらい段差が紛れていたりするため油断してると大クラッシュに繋がり気が抜けないので要注意。
区間的にはセスリエムから南下するC27号線というルートが砂が深くて自走可能区間が少なく厳しいポイント。セスリエムはナミブ砂漠への観光拠点であると共に、数少ない商店とガソスタを併設している補給基地でもあるため立ち寄るコース設定をしやすい点が罠。砂地で自転車押したくないならば並行して東部を走っているC19号線を活用するのが正解。回り道になっても確実にこちらのルートの方が速く移動できるので、エグいルートを走りたいという人以外はこちらがオススメ。
また頭文字がCよりDの道ほど路面状態の悪い印象があったが、実際走って見た限りCだからといって路面状態が安定してたり質が良いという訳ではなかった。むしろ町や観光拠点を結ぶ主要交通ルートに選ばれているか否かが重要な点で、これから外れた道だと頭文字Cの道でもガッタガタだったりする。私の通った道だとC37号線という道なんかがそうだった。
ただし全体を通してセスリエム南部の区間以外、荷物満載のフルパッキン自転車でも多くは乗車して移動が可能だったのでそういう意味での難易度は低い。この地域の難しさは未舗装地帯が非常に広大かつ補給可能箇所が限定的である点にあり、1日における食料消費量と走行距離を計算して走っていける計画性とそれを継続できる体力・根性に焦点がおかれると考える。
感覚としては1日の走行距離が「アスファルト道路の8〜9割」程度になるとしておけば良いと思う。ただしこれは冬季での話。夏は気温が40度越えてくる環境だそうで、水の携行量・疲労の蓄積度合いが段違いだと想像するためこの限りではない。なお私は今回の未舗装地域に水は合計で約8ℓを搬送していたが、これが空になったのは最初の補給地であるソリタイレに到着する時の1度のみであった。
未舗装区域というのは走れるコース自体はそれほど種類の多くない土地が多かったが、ナミビアの場合は広大な土地に大小かなり多くの道が交錯しているため、自分で独自のルートを色々と考える余地があるのが良い点だと思う。国内北部にも未舗装地域は広がっているし、面白そうな観光地はそちらにもある。
私が走行したルートなんかは2箇所の有名観光地を巡って回る、言ってしまえば王道ルートだとも表現できる。それでも宝石の道やアウストラル街道と違って自転車旅行者自体が少ないこの土地は、まだまだ一般に知られていない未知のルートを開拓する楽しみが残っているのでなかろうか?
なんにしてもアフリカ北部から南下してきたサイクリストならばこの時点でそれなりに経験積んでいると思うので、その積み重ねを全力でぶつけられる稀有な道としてナミビア未舗装路はオススメです。
◎治安
町の治安は決して良いとは思わない。特に首都のウィントフックは住宅街における防犯設備も厳重だったし、目抜き通りはチラホラ雰囲気の悪さを感じる場所も目立った。でも第2の都市であるスワコプムントはそれほど治安の悪さを感じなかったんだよね。観光都市だからかな?
治安の不安を覚えた理由はそれまでのアフリカ諸国と比較しナミビアが一気に先進的になったため、近代的な建物や施設とアフリカ何処にでもいる浮浪者とのコントラストをより強く感じたから・・・とも思うので、そこら辺の判断は難しいところだが。
とりあえず町さえ離れてしまえばほとんど人を見かけることのない国であるため治安もクソもないというのが本当のところ。特に幹線道路ではなく未舗装路が広がる地域は実に牧歌的な雰囲気だったし「ここで自転車盗む奴なんていないよ」と言われることも多かった。まぁ私もそう思ったし、そもそも盗んだ自転車で何処に行こうというのだろうか?
そういう意味で全体的に治安の落差が激しい国であったと思う。なお私は大きな町で買い物する際は必ず警備員にお願いして自転車見張ってもらったのだが、結構な頻度で浮浪者が「俺が見ててやるから大丈夫だ!」と言われることがあり、申し訳ないが私はそういう人を一切信用していなかった。後で料金請求される程度ならまだしも、最悪ソイツに荷物盗まれるかもしれないと感じる程度にはナミビアという国に対して警戒心を持っていたということだ。
◎ビザ・出入国
ノービザで最大90日まで滞在が可能。アフリカにしては珍しくイミグレーションで初日の滞在先やルート予定とか色々聞かれたが、適当に答えてもスタンプは押してくれるので問題ない。
審査の前に入国カードを書かされるタイプの国だが、ここの内容事項に滞在予定期間を2ヶ月と書いてたら滞在期限も60日になっていた。未舗装走行を考えている人だと1ヶ月じゃ期間厳しい国なので余裕を持って記入しておくのが望ましい。
◎交通事情
主要国道を走るのが怖いタイプの国で、ウィントフック近郊以外の道には側道が無いのに制限速度120km/hで自転車のすぐ脇をぶっ飛ばしてくる大型車が一定数いる。単純な車両交通量自体もボツワナに比べて増えており、これは人口が少なくとも国民の所得が上がって車を持つ人の割合が増えているためだと思われる。
運転マナー自体はかなり良く、反対車線に車が見えたら自転車を無理して抜こうとせずに減速し、やり過ごしてからオーバーテイクする・・・という行為をしてくれる車両が出てきた。これは途上国では一切見られない「配慮できる運転」というヤツで、ナミビアドライバーのレベルが高いことの一端だといえよう。
ただしトラックを代表とする大型車両は他国から入国したクソドライバーの割合も多く、特にザンビアマークが貼られた車両の運転にはヒヤリとさせられることが多かった。なお車両後部に「ZA」と書かれたシールがあったら南アフリカの車両。ちなみにナミビアは「NAM」でボツワナは「BW」だったかな。
未舗装区域では1時間に2〜3台しか車両とすれ違うことがなくなるため、全く気を使う必要はない。というか自転車側も走りやすい箇所を選んで道の中央だったり右側に寄ったりして走ることも多く、車側も同様なのでお互い様という感じ。遥か遠くから砂埃巻き上げてやってくるのが見えるし、後方からでも爆音響かせてくるので接近するのはハッキリ気付ける問題なし。ただし毎日全身砂埃まみれにされる。
◎特徴
アフリカで最も人口密度の低い、というか全世界比較でも2番目に人口密度が低い国である。国土がかなり大きいこともあり、一旦町を離れると長距離に渡って補給が難しい土地が続くし、未舗装地帯を走ろうものなら1週間くらい町に辿り着けないルートが無数に存在している。
このため事前のルートプランニングが大切で、更に主要道路以外はほとんど未舗装路であるため1日に走れる距離も自ずと短くなる。1日に消費する水と食料を把握し計画的な走行ができる、自転車旅行するのに上級者向けの国であると言えよう。
なお人がいないので野宿は無茶苦茶簡単かと思いきや、道路脇はかなりの割合でフェンスが張り巡らされており「ちょっと道を外れた見えない場所にテント張る」といった行為が難しい。道路が未舗装である区域の夜間に走行してる車はほとんど無く危険度自体は低いと思うが、枕を高くして眠れるかというと私は少々不安なタイプ。
◎気候
6月という真冬の時期に訪れたのだが、これはある程度時期を狙っていたし未舗装地域を走るにおいて大正解であったといえる。なおこの時期日中の気温は高くて25度程度、場所によってかなり違うが明け方の最低気温は0度近くまで落ちることがある。これが夏の時期だと気温45度とかに平気で上がると聞いたので相当ヤバい。
雨季は1〜3月の短い期間のみらしく、その時期でも雨量は僅かであるためそれほど心配する必要はない。
海岸沿いの町を除いて湿度は非常に低くカラッとしており毎日快晴の天気が続く。ちなみに夏は40度以上の気温となるそうで、そんな状況ではマトモに砂漠を走れない・・・というのが冬にナミビアを訪れた理由。
海沿いほど西風が強くなる傾向があり、中央部に位置する山脈が壁となっているのかその辺で北からの風に変わっているイメージ。首都のウィントフックが「風の曲がり角」という意味なので、イメージしやすい。
ただナミビアの風はそこまで恒常的に吹き続ける感じじゃなくて、割と無風だったり南や東からの風が吹くこともあったため過信は禁物。上手く天気予報を活用して走行日程を組み立てられれば、風に助けてもらえるルートを組みやすい国だとは思ったな。
◎言語
英語とアフリカーンス語というのでダブル主要言語となっているらしい。なので基本的に僻地であろうと英語が通じるため言語的な苦労は非常に少ない国である。
現地の黒人は結構(恐らく)アフリカーンス語で会話してるのだが、こちらとの会話は英語に切り替えてくれるしなんと浮浪者ですら同様である。
あとは歴史的にドイツ植民地だったことが関係してドイツ系の人が多く住んでおり、そのためドイツ人と出会うことが多かった。なのでそういう人達は当然ドイツ語で会話しており、都会の町並みがドイツ的なのもあってかドイツのイメージがやや強い。
◎宿(野宿)・Wi-Fi
主要都市には「○○バックパッカーズ」等と表記された安宿が幾つかあり、こうした宿でベッド泊ではなく敷地内に安くテントを張って宿泊するプランが併記されてることも多い。それ以外に町のやや郊外にキャンプ場があることも増えた感じで安く宿泊する方法は割と選択肢がある。テント泊の場合は大体150〜220N$(約1080〜1600円)くらいが相場で、アフリカ的には高いがその分使える設備も良いためコストパフォーマンス的には悪くない。ただし国立公園内に設置されてるキャンプ場は全く別で、テント泊に500N$(約3600円)とか町の倍以上の料金が請求される。場所も砂漠の中とかなので設備も期待できたモノでなし。個人的に利用する気は全く無かったのだが、アイアイスのキャンプ場だけは温泉施設が付属してた関係でテント泊した。感想は日記に書いてるので省略。
町であれば宿泊施設はキャンプ場も含めてほぼWi-Fiが設置されてると思って間違いない。ウィントフックのショッピングモールにはFreeWi-Fiが飛んでいたし、適当なカフェに入れば普通にネット利用することができる環境になった。速度も十分満足できることが多く、カメレオンBPのWi-Fiなんか場所によって異なるルーターが3箇所もありレベルの高さを感じさせた。
砂漠でもソリタイレのキャンプ場にあるWi-Fiは爆速で動いたし、セスリエムのキャンプ場でも一応ネットを使うことができたので、観光地に限ればネット環境は見つけられる。
◎動物
結構色んな動物見たけど自転車旅行に影響するものに絞ると、砂漠エリアで食料を狙って出没するジャッカルという動物には要注意。ちょっと目を離した隙に食料滅茶苦茶に漁られてしまう事例が頻発しているそうで、特に夜間の活動時間帯は気をつけるよう言われたし、私も何度か姿を見かけたけど人に慣れきっており全然逃げやしないため気を抜けない。
野宿的な方では野生のレオパルドこと豹が生息しており、砂漠地帯では普通に姿を現すこともあるので気をつけろ!と注意を受けた。砂漠といっても砂地の砂漠ではなく山岳地帯が主な生息区域らしいが、モロに私が走行した区域と被っており結構ドキドキすることもあった。
イボ猪なんかも食料に惹かれて寄ってくることがあると聞くが、正直なところ豹のインパクトが強くて他の哺乳類にはそこまで気にしていなかったような気もする。
それと怖いのが様々な種類の毒蛇が生息している点で、特にブラックマンバという蛇は割と東部地域や町の近くでも出現するらしく、噛まれた場合は30分以内に病院行かないとヤバいらしい。つまり自転車で野営中に噛まれたらほぼ100%死ぬ。それでなくともコブラだとかヤバい蛇が砂漠にゃわんさかいるらしい。ただ幸いなことにこれらの蛇は活発な活動をするのが夏の時期で、寒い冬はほとんど動かずじっとしている(冬眠か?)らしく問題となることも滅多にない。そもそも夏のナミブ砂漠に自転車で突入するのは動物以前に危険性の高い行為であるため冬季走行が一般的で、そこまで気にする必要はないと思われる。
◎自転車店
これは一気に改善したというか、アフリカもここに来てようやく先進的なプロショップが出現したと表現する方が正しいかもしれない。
少なくともウィントフック及びスワコプムントではスポーツバイクを取り扱うメカニックが勤務してるショップが存在し、陳列されてるパーツも種類が豊富までとはいかなくとも専門的な部品が散見されるレベル。チェーンリングやカセットスプロケットくらいなら割とアッサリ見つかる。
ケニアでロストに気付いたBB周りのスペーサーという部品もナミビアにて見つけることができたのであり、アフリカ南下してきたサイクリストにとってはようやく修理や不具合の専門的な対処を望める土地に入ったといえる。
ドイツとの歴史的な関係かドイツメーカーのリム(アレックスリム)とかもあったけど、扱ってるタイヤサイズはMTB規格が圧倒的に多く29インチが主流で27・28インチも多少は見かけたかな・・・という印象。そもそも私が使っている26インチというサイズはもう世界的にも廃れているため豊富に取り扱ってる店の方が珍しいのだが。
◎物価・食事
国土の多くが農耕に適していない土地であり、農作物の多くを輸入に頼っている関係から野菜を中心とした生鮮食品の値段が高い。それに対して肉類は牛肉を中心にかなり安価となっており、安い野菜を沢山食べて食費安く上げる・・・という行為の優位性が低い国だと思う。部位によって料金全然違うが安い牛肉だと100g辺り60〜70円とかかな。
よく覚えている点でケーキの値段が安く、小型のホールケーキなら60ドル(約470円)で購入できた。そりゃ町ではケーキばっかり食べてたワケだよ。
全体的にスーパーの割合が増えて市場の姿はほぼ消えてしまい、路上販売自体もスーパーや大型複合施設の前に座って細々と行われてる姿が目立つようになり、そうした場所で購入することがお買い得ではなくなった。
またボツワナよりも更に安価な大衆食堂という存在が減ってしまい、結局レストランに入って食事をしたことは1度もない。スーパーに惣菜コーナーみたいなのがあって、そういう場所でサンドイッチやミートパイを購入したことがあった程度。そういうのなら1ケ2〜30ドルで購入できる。
スーパーのラインナップ的にもかなり品揃えが良くなり、そこそこ先進国的な食事メニューが組めるようになった反面、まだまだ野菜の種類は少ないしチョコレート等の先進国で作ってるっぽい外国製品はバカ高くて手が出せない。結局長期旅行者が選べる安くてそこそこ食べれる商品の幅はそんなに多くない・・・というイメージだ。
あとナミビアではスマホを買い替えたけど、サムスンのGalaxyA04eという(定員の言葉を信じるなら)22年発売の機種で、2400ドル(約18600円)だった。日本だったらこの値段で性能的にはコスパが悪いとかあるのだろうけど、ナミビアの地方都市ではそもそもの選択肢が少ないので参考までに。
◎総括
物価も高いし町の治安も良くない、オマケに自転車で走るには相当厳しい道が大多数の国だけど、私はナミビアを実に素晴らしい自転車旅行ができた国だと思っている。
私はあんまりルートや走り方に対して強い言葉で断言するの好きじゃないけれど、ナミビアに関してはもう「未舗装路を走ったか否か」で感想が全然変わる国であり、悪いことは言わないから自分の走れる範囲でダートに突入してみなさい・・・と余計なお節介を言いたくなる。それほど刺激的な道であり、沢山の人と良い出会いができたということだ。
見所のある観光地も各種揃っているし、旅行者が滞在しやすい環境を揃えた先進的で良いサービスが提供されるようになった先進的な国・・・なんてのはナミビア魅力の一部分であり、自転車旅行者としては「そこを走っていることが最高に楽しい」と感じられる道にこそ真髄があると思っている。ナミビアの未舗装路はそんな道の宝庫であった。
繰り返すが自転車旅行経験の少ないサイクリストが気軽にホイホイ突っ込んでいけるほど簡単な場所ではないため、アフリカをじっくり走って経験を重ねてから是非望んで欲しい。ナミビアはそうして高く掲げたハードルを超えてくれる世界が広がっていると思う。