2019年12月2日~2020年6月16日(第1回)

 2022年10月5日~2023年1月28日(第2回)

 2023年2月27日~2023年7月10日(第3回)


 訪問国数    13カ国

 走行日数    448日間(第1回199日間・第2回115日間・第3回134日間)

 累計走行距離  21769km (第1回7144km・第2回5910km・第3回8715km)


 アフリカ各国のまとめはこちらから

 エジプトスーダンエチオピアケニアウガンダモロッコモーリタニアタンザニアマラウイザンビアボツワナナミビア南アフリカ


 他地域と同じく私が走行してきた各国において、独断と偏見で点数評価してみた。


道路交通物価食事宿治安総合
エジプト63887234
スーダン661094540
エチオピア 52767128
ケニア73889237
ウガンダ61967231
モロッコ97688644
モーリタニア12391218
タンザニア411069535
マラウイ24948835
ザンビア54846734
ボツワナ97261833
ナミビア38355428
南アフリカ99466337
日本893921038

 

 ※最低1点、最高10点 物価はコスパが良いほど点数高い


 自転車乗りとしての視点から感じる国の特徴であり、国の善し悪しについては意識していない。物価が高い国は宿も高くなる傾向があるし、点数が高ければ良い国という意味では勿論ない。あくまで1旅行者が感じた感想である。数字に出すのが好きなのだ。

 なお各点数は私が訪問した当時の状況を元に評点している。今2023年現在ならスーダンの治安は1となるだろうし、現在の円安傾向で考えれば物価の数字も変わってくるかと思う。なのでこれらの国を旅行する際の参考程度に捉えてもらえればと思う。


<大陸の分類>

 アフリカ大陸全体として捉えると、サハラ以北と以南で分類することが可能なイメージ。国でいうと東アフリカならエチオピア、西は入国しなかったけどセネガルからガラッと人種も雰囲気も変わると思ってもらえれば。具体的には北部だとアラブ世界の感覚が強く、宗教もそうだし人種もアラブ系が多数を占める。これがサハラを超えると所謂「ブラックアフリカ」と言われるサバンナと黒人が多数を占める多くの人が想像するアフリカの世界となっていく。


 もう1つ歴史的な関係でエチオピアを除く全ての国が西欧列強に植民地支配された過去を持つが、その多くはイギリスとフランスである。現代においても支配国の影響は強く残っているといえ、つまり言い換えると英語やフランス語を母語若しくは第2言語としている国が多いため、特に英語に関しては旅行者的に助かることいって良い。

 当時の植民地政策の関係でフランスは東西に支配し、イギリスは南北に植民地を広げため実はエジプトから南下して南アフリカまで東アフリカ縦断ルートを取ると、かなり英語が通じる割合が高かったり英語を主語としている国が多い。特にケニア以南は道路も左側通行の国が多かったりしてイギリスの影響を感じたし、英語がよく通じたので言語的な苦労は非常に少なかった。この辺が「東アフリカは西アフリカより旅行が楽」と言われる理由の一因になっている気がする。

 ちなみにフランス人は割と西アフリカを旅行する人多いのだが、やっぱりフランス語話者が多いのと、フランス人だと西アフリカの多くの国がノービザで入国できる点があるかららしい。


<食>

 サハラ以北の土地はほとんどが砂漠の地であるため、食事もバリエーションはそれほど多くないし都市部を除くと大体毎日同じ物を食べている。でもアフリカで最も食事が美味しいと感じた国の1つがスーダンだったりするのは私自身も意外な気持ち。

 エチオピアから南に進むと牛・鳥を中心とした肉が安く全体的に普及しており、それに加えてヤギや羊といった種類の肉が続く。イスラム教の国ではなくなっても豚肉は南アフリカまでほとんど姿を見せないのだが、恐らくアフリカの農業レベルが低く豚を育てる余力のある農家が少ないことが原因だと思われる。

 この根拠としてあげられるのがアフリカ多くの国で野菜の種類が非常に少ないことと、野菜それ自体の大きさが小ぶりであること。未だに焼畑農業を継続している地域もあると聞くが、要するに肥料を活用して品質の良い作物を育てるとかはできず、痩せた土地と低賃金というか家族単位での小規模農業を営むことで成り立ってるパターンが多いため。アフリカ途上国の家族に子供がやたら多い1つの原因だと聞いた。


 何にしても質は悪いが野菜・果物共に非常に安価で購入できるし、田舎の食堂では1食100円とかザラの料金ではあった。ケニアからは米食文化も入ってくるので日本人的にも主食でご飯が食べられるのが嬉しいところ。これと対をなす東アフリカ主食のウガリだが、いくらか形を変えつつも似たような主食は南アフリカまで幅広い地域で地元民に愛されている。私はウガリやシマがあまり好きになれず、多少高くても米を選ぶことが多かった人。


 食堂の基本スタイルはワンプレート方式で、主食と肉・豆それにスープがついてくる方式が一般的。味付けも基本は塩のみのシンプルスタイルで、タンザニアより南の土地では割と飽き飽きしており、キッチンのある宿で自炊してる時が1番食を楽しみにしていたり。

 逆にアフリカ北部は東西それぞれ特徴的だったり独自の食べ物が多くて食事の楽しみは大きかった。その代わりイスラム教の国が多いためアルコールの入手が難しい又はできない国が多いのは難点だけど。エチオピアは色々と特殊で食に関しても独自進化を遂げた国であるため、好き嫌いがはっきり分かれると思われる。


<宿・キャンプ場>

 アフリカを走っていて助かる点の1つが宿泊施設の安さかもしれない。といってもこれは私が走行した東アフリカに限った話で、西アフリカには全く当てはまらない。モーリタニアの時点で既にサービスと値段が全く噛み合わない凶悪な宿泊料金となっていたけれど、西アフリカは全体的に何処も似たような宿泊事情だと聞いた。

 そういう意味でアフリカは途上国であってもやたら宿泊費用の高い国が罠みたいに点在してるのだが、幾つか基準として「国力が低すぎる(貧困な)国」「観光産業がない国」「政情(治安)が安定してない国」が揃うと宿泊費用がバカ高くなる傾向にあると思われる。ボツワナなんかは宿の値段は異常に高いのだけど、数は少ないながらホステル系の宿もあるし宿泊費用という面ではキャンプ場が充実しており一応バランスが取れてたりする。


 ちなみにキャンプ場、若しくは宿の庭にテントを張るキャンプスタイルが国内各地に出てくるのはザンビアからで、それより以北の国でキャンプ場は極めて少ない。現地の裕福層が車でキャンプレジャーをしたりサファリツアーの拠点としてピンポイントで幾つかキャンプ場が固まっていたりはするが、自然を楽しむキャンプ場とかそういう類よりもグランピングみたいなイメージに近い。そもそもアフリカの大部分でかなりの人が半キャンプみたいな生活をしてるのに自然と触れ合うもクソもないわな。


 私が訪問した国では宿かキャンプ場、どちらか一方で最低価格1000円を下回る施設があった国ばかりのため、基本的に野宿をするのは宿の無い場所であった。特に中央の国々は町でなくても人の数が多くてテントを張れる場所が見つけにくかったし。

 設備と金額とを考えると全体的なコスパはそこそこ良いと思うのだが、テントで寝た方がマシじゃね?と感じてしまう汚かったりボロかったりする凄まじくレベルの低い宿がポツポツ出てくることは普通にある。宿で1番コスパの良かった国はタンザニアだけど、ケニアやウガンダも相当レベル高かった。全体的にWi-Fiの設置率が低く、あっても速度劇遅だったり接続できないパターンも多く、なんだかんだブログの更新が止まらず続いたのはかなり運が良かったと思ってる。


<気候>

 アフリカというと季節問わず常に暑いイメージがある、少なくとも私はそんなイメージだったがもちろんそんな単純ではない。地域としてはやはりサハラ砂漠のエリアが最も暑い土地であり、特にスーダンは真冬の時期でも困窮してしまうほどの気温となる。西サハラに関しては走行ルートが海岸線に寄っていることもあり、東に比べて大分落ち着いた気候だった印象だ。

 これがエチオピアに入ると緯度が低くとも標高が上がる関係で気温は下がり、むしろ快適になるというのが面白い。ケニア北部とか海沿いといった標高の低い土地になると猛烈な暑さが戻ってくるが、こうした土地は大陸単位でみると局地的な範囲であると表現できる。なのでサハラ砂漠を超えてしまえば自転車走行に支障を来たすレベルで暑い環境が続くということはそこまで多くない。南部の国だとナミビアの砂漠地帯が厳しい暑さとなるのだが、ここまで南下すると夏・冬の気温差がかなり大きくなるため冬の時期に走行した私の場合はあまり問題とならなかった。なのでアフリカの走行におけるベストシーズンは基本的に冬の時期を選んで走ると良い。


 季節による寒暖差の少ない赤道付近の国々だが、これらの国では雨季・乾季による雨の降雨状況を気にして走ることになると思う。特にボツワナからは宿の宿泊料金が上がる関係でキャンプ泊を余儀なくされる頻度が増えるため、この地域を通過する際に雨季に当たると悲惨な目にあう。

 南アフリカは別として、マラウイからボツワナ辺りの乾季は大体4月後半から始まるイメージだと思っておけば良い。1年で乾季の時期の方が長いのでそこまで気にしないでも大丈夫といえばそうなのだが、この辺の南半球を走るのに12月とか真夏の時期だと今度は暑さがしんどいので。


 風に関してはサハラ砂漠において東西共に強烈な北風が吹いている。遮蔽物が全くない土地で絶え間なく吹き続ける風は自転車走らせるにおいて非常に厳しい存在となるため、アフリカ縦断を考えている場合北上と南下ではこのエリアで難易度が段違いとなる。もちろん南下していくほうが楽。

 その他にも幾つか恒常的に同じ方向から風が吹き続けていた地域はあるが、サハラ砂漠ほど猛烈に影響を与える土地はないので割愛する。


 こうした点から私が気候的に難しいと感じる国はスーダンとナミビアの2カ国。金銭的な意味では雨季のボツワナも極力避けたいところ。

 んで一般的なアフリカ縦断のルートであるカイロ(エジプト)~ケープタウン(南アフリカ)を走る場合、ペースにもよるが必要期間は大体8~9ヶ月とされている。これを考慮するとエジプトを11月位に出発しサハラ砂漠を12月の真冬に走破、タンザニアからマラウイの辺りで5月の乾季を走行。ナミビアの砂漠を真冬(南半球入るので)の7月位に走行する・・・というのが最も気候的に楽な時期を走行できるプランニングだと思う。


<注意点>

 政情不安だったり紛争状態となっている国の割合が他の大陸と比較して非常に多い。西・中央・東と各地域にとてもじゃないが旅行できるような環境でない国が配置されており、こうしたことが影響してアフリカ旅行というのは走行ルートの選択肢がかなり限られるし、行きたくてもビザの取得が難しかったりやたらと金銭が高くつく羽目になる。

 実はアフリカを陸路縦断というのはある意味で非常に難易度が高く、それは結局1本の線を繋げるようにして通れる国のルートが僅かしか存在しないためだ。私は正にそのルートでアフリカ縦断したワケだが、2023年現在ではスーダンにてドンパチやってて現状での入国は現実的ではないし、ちょっと前にはエチオピア北部で紛争しており、ここをまともに通過できる状況ではなかった。要するに金や時間で解決できる問題ではない時節による運が大きいと私は思っている。


 近年徐々に改善の兆しがあるものの、ビザの取得が必要な国が多いのも特徴で、特に西アフリカ諸国は必要要綱に訪問国での住所だとか無茶苦茶な要件を突きつけてくる場合もある。幾らか物好きな旅行者が西アフリカの陸路縦断を試みたりしていたが、彼らの多くはナイジェリアビザが取得できずにフライトしている。

 そういう意味では東アフリカは多くの国でアライバルビザが発給されたりネットによるeビザの取得が可能となっているため、必要なのはお金だけ・・・という意味で大分難易度が低い。スーダンビザだけは日本大使館から推薦状(レター)を発給してもらう必要があったりと少々難しいが。あとアフリカのビザ代は基本的に米ドルでの支払いとなるため、事前に米ドルを準備しておかないとレートの悪い両替をするくらいならまだマシで、自国通貨が弱く他国の紙幣と交換してくれない国だったりするとビザ代が捻出できずに進めなくなる危険性を孕んでいる。


<道>

 これが意外にも大陸全体的に「かなり良い」と私は評したい。これはアフリカ各国のインフラ設置能力が高いというよりも、日本を含む諸外国のODAによる援助で成り立っているという感じだが。なので国を貫くような大動脈であったり首都へ向かう幹線道路はしっかりアスファルトが敷かれている(場合が多い)という意味である。これで「かなり良い」という評価なのは私が相当アフリカを侮っていたということの裏返しともいえる。


 路面状況という意味では維持に回す費用が無いためかボロボロの道も数多く出てくるが、アフリカでは標高が高い山みたいな「単純にそこを走ることが厳しい場所」である筆頭のサハラ砂漠でしっかり道路が引かれているため全体的な難易度はそこまで高くないと感じた。注意だけど「高くない」だけで「低い」とは言ってない。少なくとも日本国内と比較するなら雲泥の差でアフリカの道は難しい。

 山の他に走行が難しい土地というのがナミビアの砂漠地帯くらいであり、その他の土地では町と町との距離がそこまで離れていないこともあって強烈に苦労したということが少ない。何度か言ってるがアフリカの難しさというのは人やルールに起因することが多く、純粋な走行という意味ではそこまで大変ではないのだこれが。

 一応サハラ砂漠には長距離に渡って人家の1つもない広大な無補給地帯も存在するが、そうはいってもその距離は精々200kmが良いところ。基本的に幹線道路における走行を続けている限りは野垂れ死ぬ可能性を考慮に入れる必要はない。

 ただし自転車にトラブルが発生しても多くの国で専門のショップが無いのが実情なため、ある程度消耗品パーツを自分で確保している&自分で修理・交換できる最低限のスキルは必要。自分の自転車トラブルを自分で対応できないならアフリカは走らないほうが賢明だと考える。別に全てのトラブルを解決できるようになれというわけじゃないが、何の工具も保持しておらず走ってるレベルだと、ちょっとしたトラブルで走行継続が不可能になる可能性もあるので。道の難易度が高くないこと=アフリカ旅行が簡単ということではない。


 他に特徴的なところでケニアやタンザニアの国立公園付近・ボツワナ北東部では大型の野生動物が普通に道を闊歩していたりする。野生動物の王国アフリカといっても人と動物が住むエリアは別れており、普通に旅行してるだけだと象やキリンとそうそう出くわすものではないのだが、そういった意味でこうした道は自転車旅行者としてアフリカの動物を見ることができる魅力的なポイントであるといえよう。なお普通に危険な場所でもあるため走行する際は充分に情報収集と下準備が必要かと。


<総括>

 いやまぁ思い返すと大変でストレス溜まって面倒が多い大陸だった。1つ1つの項目でアフリカよりも難しい国や大陸はたくさんあるが、総合してみるとアフリカよりも難しい土地はなかった。これは旅行経験のない中央アジアの存在を押して尚そう断言している。というかそうであってくれないと私が困る。


 でも同時にこれほど印象深く悲喜こもごもあった大陸というのも他にない。コロナという特大のイベントをぶち込まれ、アフリカ縦断どころか旅行の再会も危ぶまれたワケだが、それでも私はこの土地に戻ってきて北から南まで(西アフリカも一部)轍を繋いだ。エジプトのアスワン南部における車両専用道で湖を車に乗せてもらった数kmを除き、ほぼ完全に私とロシナンテ号のみで縦断に成功している貴重な大陸。大抵の場合はトラブルに遭遇して近くの町までヒッチハイクとかすることになるのであり、それは気にしても仕方のないことだけど「自走できる場所は全て自分で走った」という成果には素直に喜びたい。


 アフリカ全体としてみるとかなり多くの国が未訪問になっているが、自転車で走って面白そうな国というのは大体網羅したと思っている。治安が良かったりビザの取得難易度次第ではちょっと訪問してみたい国もあるっちゃあるけど現在の情勢と自転車走行ルート的に最大限面白そうな場所へ回り回ったつもり。こうしてアフリカという大陸を思い返してみて「やりきったぞ!」感があることをとても嬉しく思っている。