2023年7月11日〜7月31日
走行日数21日間
累計走行距離1443km(135638km〜137081km)
◎道路
一般道路には側道がほぼ存在しないし急斜度の坂道が多く、オマケに路面の整備状況も今イチでボコボコになってる箇所も多数。正直ヨーロッパ諸国の中ではかなりレベル低い。相当文句言ってたフランスより走りづらいということで、3大グランツールにおける一般道路の格付けするとスペイン>フランス>イタリアということになる。
しかしイタリアをある程度走って経験すると、この国における自転車走行はそれほど悪くないというか、自転車専用道路が道路とは区分けされて多く造られている事に気付き、そうした道を利用するとむしろ速度の遅い自転車旅行的には快適に走れたりする。大きな町の中心部が石畳なのは周辺国同様自転車には走りづらい道で困りものだが、イタリアの都市はそうした地域も小さくむしろ走りやすい傾向にある。
斜度が厳しいというのも主に半島で小規模なアップダウンでのことで、アルプスにおける本格的な峠はむしろつづら折れをたくさん入れて斜度を抑え自転車でも登りやすい配慮の効いた道が展開されている。そうした有名な峠道は本格的な上り坂入るまで自転車道が併設されてるためヒルクライマーにも優しい仕様。ルート的に半島から北上して大陸側へと向かったこともあり、時間が経つほどイタリアの道路事情は良くなっていったイメージだ。イタリアではとにかくサイクリングロードを探してそれに合流することが大切で、一旦乗ってしまえば隣接する町や村まで自転車推奨ルートが示されるため無理して幹線道路や地図的にショートカットとなる道を探す必要はない。むしろそれを行うと前述の超急斜面とかにぶち当たる事になる。
◎治安
特に都市部の治安が悪いと聞いてたけれど、嫌な雰囲気を感じたことはなかった。とはいえローマのコロッセオ周辺で物売りしていた黒人が警察にしょっぴかれたのを目撃しており、有名観光地でのスリ被害には充分気を付けたいところではある。
アフリカの後ということで序盤こそ高い警戒心を維持していたが、フルパッキンの自転車置いてても誰も気にしないの見てるとヨーロッパだなと感じ、主に野宿方面でガンガン気にせずテント張るようになっていった。流石に都会では緊張感持って行動してたけどね。
◎ビザ・出入国
シェンゲン協定加盟国に戻ってきたワケだが、協定加盟国1カ国目なので普通に入国審査はあった。あったのだけど、パスポート見て質問の1つすらなくスタンプ押されたのには驚いたというか、1年前ドイツ入国した時とは雲泥の差。イタリアの入国審査は無茶苦茶緩いと話に聞いてたが、私の体験ではこれは紛れもない事実。
◎交通事情
結構な頻度でクラックション鳴らすし、横断歩道で歩行者が止まっていても全然停車し道を譲ったりはしない。運転も正直かなり荒っぽいドライバーの割合が多くてイメージそれほどよろしくない。あくまでヨーロッパ内での比較だが。
でも例えば峠道なんかで先の見えないカーブに差し掛かると、超鈍足の自転車に合わせてちゃんと速度を緩め、無理なオーバーテイクはしないため峠道での走行で怖い思いをすることは非常に少ない。
そんで普通の道では道路と完全に別れてるサイクリングロードを利用するパターンが多いため、それほど車両に対してストレスを感じる機会自体が少なかったり。
あんまりイタリアでの交通マナーに対し褒めたくなる気持ちは無いけれど、結果的にイタリアでドライバーに対して本気で腹を立てたことはほぼ無かったかもしれん。分からんものだ。
余談だが世界でも有数の有名観光都市であるベネチアは、自転車を含む一般車両の乗り入れが禁止されており、つまり自転車旅行で行程に組み込む場合は非常に面倒くさい事になる。私はこれを知っていたのでルート上に組み込むことは考えもしなかった。
◎特徴
スペインと同様に昼過ぎから営業を数時間取りやめるシエスタみたいなルールが存在する。このルール自体が日中の厳しい暑さを避けることから来てるのだから、そりゃ同じ南欧に位置するイタリアでも似たようなルールがあっても不思議ではないんだけどさ。
スペインほど徹底されていないものの、それでも小さな町だと全国チェーン展開しているようなスーパーであっても13時半〜16時の間は休業してることもあり、ちょっとペースが遅くなり時間に遅れると昼食でスーパーが利用できないパターンに嵌ることも。まぁイタリアは都市間の距離が短くて、案外隣町まで移動するとそっちのスーパーは営業中・・・なんてこと多いからそれほど飯では問題にならないが。
むしろ自転車ショップが日中に閉まることが問題で、特にイタリアではアフリカで発生するも無視していた数々の問題を解決するため頻繁にショップへ訪問しており、実はかなりの回数この休憩時間中で空振りしてたりする。
スペインや南米でも似たようなこと言ってる気がするが、クソ寒いアルプスの山岳地帯だろうと(多分)真冬の時期でも関係なく一律同じルールで変な時間に営業しないのやめて欲しいです。その分を遅い時間帯まで働いてるのかもしれないが、そんなだからイタリア人も宵っ張りだと評されてしまうんだよ。
◎バチカン
世界一国土面積の小さな国であり、キリスト教のカトリック総本山。ローマの市内中心部の一角に居を構えており、キリスト教でない旅行者的にはローマ観光の際に訪れる観光名所の1つくらいの軽い立ち位置に添えられることも。
パブリックなエリアにおける国内は自転車の乗り入れが禁止されており、押して進む分には問題ない。というか狭すぎてそもそも自転車に乗ってどうこうするような国ではないため、単純に人が多いローマで自転車から目を離さない為だけに自転車を持ち込んだようなもの。普段は小国でも一応走行距離を表記するんだけど、バチカンに関しては1km未満だったので省略した。要するに自転車旅行者的な視点から感想をどうこう語る国ではない。
◎気候
2023年の南欧は観測史上初となる気温を記録するほどの熱波が襲来していたらしく、そんな時期に真冬の南半球から到来したため身体が慣れてないこともあり強烈な暑さに疲弊していた。
地中海性気候なので暑くとも湿度が低くてカラッとしている筈だけど、どっこいそんなこと全然無くてジメッと蒸し暑さもあり非常に苦しめられた。ただし夜間は大きく気温が下がるため寝苦しいとなることは1度として無かったあたりヨーロッパである。
北部の山岳地帯まで行くと日中の気温も7月で25度前後と過ごしやすくなり、むしろ山の上ではこの時期でも10度そこそこまで寒くなるためサイクリスト的にはダウンヒル用の上着を忘れず用意したい。一部じゃ雪が残っているレベルだし。
ちなみに夏のイタリアアルプスは雨となる日も非常に多く、天候安定しないのが常らしい。実際私も走行ペースをかなり天気に左右されたこともあり、この地域を走行するなら予定はかなり余裕を持っていくことをオススメする。ちなみに山での天気予報はインフォメーションセンターが毎日張り出している天気予報が1番信頼性高いと感じたのだけど、どこのサイト(イタリア語だったので多分地元のサイト)における天気予報だったか確認しておけばよかったな。
◎言語
そらまぁイタリア語。英語の通用度合いはまずまずといった感じで、客商売してる人でも場合によっては全く英語が通じないこともある。
ときどき観光地等の看板や各種説明書きに2種類の言語で同様の説明文が書かれているのだが、1つはイタリア語だとしてもう1つがどこの言語なのか最後まで分からなかったな。少なくとも英語ではない。
歴史的な観点から南北で方言の差がかなり大きい言語だとか聞いたが、そもそも何言ってるのかさっぱり分からない私みたいな旅行者にとっては大した違いと感じない。それでは良くないという点はもちろん分かっちゃいるけれど。
◎宿(野宿)・Wi-Fi
キャンプ場含めて宿泊施設は一切利用せず。別に最初からそうしようと思っていたワケじゃなくて、序盤に幾つかキャンプ場を除いたりもしてるのだが、自転車利用でもキャンピングカーと料金変わらず1サイト1名で50€みたいな場所ばかりでアホらしくなり探そうとも思わなくなった。
町から離れてしまえば野宿出来そうな場所は無数に見つかるが、夏のイタリアで水場が無いのしんどいため、私は毎回川とか湖の近くでテント張れる場所を探しており、こんなことやってるからかなり遅い時間まで野営地見つからずに苦労することも多々あった。日が暮れるの遅いので夜間走行となることはなかったけれど。
Wi-Fiも最初はなかなか無料で利用できる場所を見つけられず苦労したが、ある程度滞在して慣れてくると1日1回くらいはFreeWi-Fiに接続できていたと思われる。基本のマック以外に大型スーパーやインフォメーションセンター、観光都市の中央広場も狙い目で、逆に図書館は電話番号が必要なパターンが多くて利用しづらい。速度はヨーロッパだけあって通常使用で問題を感じることはない。
◎動物
テント張ろうとすると大量の蚊に襲われることが非常に多く、でもコイツら夜中になると一気に数が減るの不思議だな・・・とか思ってた。あとちょっとでも湿気があると夜のうちにテント中をナメクジが這いずり回るのは他のヨーロッパ各国と同じ。
大型の動物は見る機会がとんと減って、牛ですら滅多に姿を表さないし見れても当然のように大きな牧場で完全隔離された家畜のみ。野生動物における危険性はほとんど考えていなかった。
犬も自転車乗り見かけて吠えまくるようなアホは出てこなかったし、動物関係気にする必要ないんじゃないかな?
◎自転車店
3大自転車部品メーカーの一角であるカンパニョーロ本社がある国なのに、全然カンパの商品取扱ってないでやんの。むしろ部品売りに関してはSHIMANOは当然としてSRAMの方がよく見かけた気もするぞ。ヨーロッパ圏だけどシュワルベ製品のタイヤはあってもマラソンシリーズを取り扱ってるお店は稀で、旅行者的には隣国オーストリアまで移動した方が手間少ないかもしれん。相当な数のショップ巡ったけど結局イタリアではマラプラ買えずじまいだし。
基本的にどんなショップへ行ってもプロの整備士が常駐しているが、腕の差は割と大きいと感じたので信頼できるショップを見つけられるかが鍵。そんなの初見の旅行者じゃ無理だろ!となるが、実際イタリアで相当数のショップを回ったことからの感想なのでそうとしか言えん。
この国で痛感したのが、自転車部品も年月の経過でどんどん刷新されていき規格が変わっていくということ。ハブの内部部品が壊れた際に「こんな古い部品を今でも在庫抱えてる店はほとんどないと思うよ」と諭され、結局ホイール組み直して全交換する事になったりしており、旅行も長期化するとこんな弊害が出てくるのかと思ったものだ。
量産系のパーツならショップ行くよりデカトロンで購入する方が非常に安く済ますことができ、デカトロンのオリジナルブランドで無くともSHIMANOの同グレード部品(チェーンとか)が3割4割安く取り扱われていたりする謎。
◎物価・食事
ヨーロッパでも南欧の国は比較的物価の安いイメージだったが別にそんなことはない。むしろイタリアは基本的な物の値段が高くて嫌になってしまう。ドイツで3本セット1€弱で購入したライターは、イタリアだと1本3€だったりして約10倍じゃねーか!
別に全てのジャンルで高いのかといえばそうではなくて、例えばレストランだったりは(観光地でない店なら)他のヨーロッパ諸国より比較的安価ではある。でもスーパーで食材買い揃えていくスタイルの旅行者だとやや相性が悪く、特にイタリアは加工食品系の値段がやたら高くてやってらんない。ビールもそのスーパーが独自契約してる(日本でいう自社ブランド商品みたいなポジション)格安のタイプ以外は軒並み200円近い値段であり、これはヨーロッパ的にはとても高い。ちなみにガソリンはリッター300円くらいする地域も有。
逆に肉・野菜は比較的お手頃価格なので「旅行者は自炊しろ!」という天のお達しかと思いつつ。イメージ通りではあるがトマトが非常に手頃な値段で買える上に、瑞々しく美味しいタイプが多くてほぼ毎日のようにトマト使ってたな。パスタソースの種類が豊富で棚の一角を占拠してる辺りがイタリアっぽい。
コーヒー豆250gが15€だった割に、味も鮮度もそれほど良くなく観光地で展開してるカフェやレストランに対するイメージが悪いけど、田舎のカフェなら徳能エスプレッソが1.5€で楽しめるので悪くない。なお通常のコーヒー頼むとエスプレッソが出てくる辺り「そうだよなぁ・・・」と実感したことが。
ピザはともかくパスタは自分で作ってばかりで食べることはなかったが、本場のイタリアだからといって別格に美味しいとは思わなかった。ちゃんと有名なお店に行けば違うのだろうか?
総じて食が有名なイタリアだけに私の勝手なイメージが先行している点も多く「ですよね!」と「そうなの?」という感情が入り混じってる。これはどこの国行ってもそうなのだけど、それだけイタリア飯が世界的に愛されている故の感覚なのかもしれない。
◎総括
序盤の暑さとガタガタの自転車を修理する度に飛んでく大金、オマケにGo Pro無くすというヘマもやらかして、イタリアが悪いワケじゃないけど残念な気持ちがあったことは否めない。
しかしそうした私の凹みを刷新してくれたのは、素晴らしいアルプスの山々と美しい峠道だったことは疑いようもない事実。世界遺産の数が最も多い国だった気がするし、古代ローマ時代における数々の建築物や宗教関係での豪華絢爛な施設も枚挙に遑がない。
でも自転車的にイタリアで最も楽しめるのは間違いなく北部のアルプス山岳地域でなかろうか?ステルヴィオの素晴らしい峠道、ドロミテ街道の雄大ながらも険しい山々、溢れる森林と雪解け水が入り込む湖とのコラボレーション。アルプスというとスイスやフランスのイメージが強かった私だが、イタリアアルプスもまた素晴らしい世界が心底感動を与えてくれる場所だった。
ということでその人が旅行に何を求めているかで変わってくるが、イタリアという国は自然や道に興味を抱くタイプの自転車乗りでも十二分に満足させてくれる懐の深さを持っており、他のヨーロッパ周辺国に勝るとも劣らない素晴らしさがある。
この国を旅行するのであれば、観光地だけではなくそうした自然にあふれる土地にも訪問してもらえたら・・・と勝手に思ってしまうな。いやまぁ知られざる名所どころか有名な土地なのだけどさ。