2022年7月12日〜7月15日  2023年7月31日〜8月4日  8月10日〜8月12日  9月7日〜9月9日
 走行日数15日間
 累計走行距離763km(1回目166km・2回目203km・3回目214km・4回目180km)
(112371km〜112537km・137081km〜137284km・137338km〜137552km・139332km〜139512km)

◎道路
 本格的な峠以外は自転車の専用道なりルートが作られており、それに従ってるだけで国内における大概の場所にはたどり着けるようなっている。このため自転車に対して非常に優しく走りやすい国として非常に優秀である。
 ・・・のだけど何故か坂道の斜度が凶悪設定を崩さない国でもあり、そこらの峠が平気で10%を遥かに超える急斜面となっており、フルパッキンの自転車では何処も厳しい場所ばかり。そもそも国自体が多くの場所でアルプス山脈に属しているためオーストリアを走るとなったら厳しい坂道登ることを覚悟しなくてはならない。最もこれは国内西部の山岳地帯における話であるため、ウイーンとかザルツブルグみたいな平坦地域にある都市だけ観光するならこの限りではない。
 ということでその自転車フレンドリーな環境の割に走行するのが極めて大変・・・という特色ある国だと言える。国内最高峰のグロースグロックナーを登る峠は12%で1000m登り続けなくてはならず、私が色々登ったアルプスの山で最も大変だった峠だ。

◎治安
 滅茶苦茶良い。都市部でも浮浪者の姿を見ることが非常に少ないし、小さな町や村だと危険と感じる場所自体が出てこないこともあるレベル。
 普通に道端で出会った人がにこやかに挨拶してくれることが多く、そういう雰囲気があると旅行者としては安心感があるし、実際治安の維持にも一役買っているのではと思う。
 ウィーンやザルツブルグといった大都市は観光客の数が凄まじいため、恐らくそう言った輩を狙うスリなり詐欺師なりも一定数いることが想像できるが、普通に首から一眼レフカメラぶら下げて観光してる外国人があちこちいるほどで、私が見た限りではそこまで気にしなくても大丈夫なのでは?と感じた。良い国ですよ全くもって。

◎ビザ・出入国
 シェンゲン協定内の国なので他国からの陸路国境は完全フリー。昔の名残でイミグレーションの建物が残されているのを見ることができるくらい。ということでオーストリア1国ならば自転車旅行的には90日の制限に引っかかることはまずないでしょう。シェンゲン協定で問題なのはオーストリアを含む広い範囲の国全体で90日以内の出国という制限があることなので。

◎交通事情
 こちらも素晴らしい。横断歩道の前で停車していれば、どの車両でも停車して優先的に通過を促してくれる程には歩行者・自転車に対する交通配慮がなされている。
 そもそも自転車専用道が充実しているため、あまり車と同じ道路を使って走行するタイミングが無かったりするのだが、峠道みたいな自転車道も側道もない場所もあり、でもそういう場所走ってて怖い思いをした記憶がほぼない。自転車を抜く時も対抗車両が見えないカーブの手前とかでは速度を落とし、クラックションも鳴らさず自転車の後ろに低速で待機してくれるし。
 ちなみにサイクリングロードには、自転車以外にもランナーの他にローラースケートやスキー板に車輪がついた乗り物使って利用してる人が数多くいるため、そういう人たちと譲り合っての利用となる。基本的にそうした乗り物の中では自転車が1番速く移動してるため、追い抜く時など注意が必要。

◎特徴
 歴史的にドイツと同一国だった時代もあり、言語や町並み、販売商品に至るまでドイツの影響がそここに感じられる。でも物価に関してはドイツよりずっとお高いという不条理さを出しているのだが、ドイツの物価が比較的安いのは国内企業における競争が激しいからだと聞いたので、オーストリアではそうした原理が働いておらずの結果なのかもしれない。
 ドイツ繋がりでもう1つ。ドイツ系スーパーのALDIというお店は何故かオーストリア国内のみHOFERという店名に変更されている。理由は知らんがオーストラリアのハングリージャックス(他国のBurger King)とかこういうパターンは稀にある。

◎気候
 夏のオーストリアは日中もそこまで激しくならず、夜は涼しい心地良さで最高の気候だといえる。湿度も低くて低地でも暑さを感じにくいのだが、気温自体は割と35度を超えてくることもあるため水分補給はまめに行う必要がある。西部の山岳地帯は2000mを超える山々が連なっている関係で、真夏の時期でも山頂付近は気温が低いし、日中ではない時間帯や悪天候だとTシャツのみでは厳しいレベル。グロースグロックナーの山頂では気温7度とか表示されてて洒落にならない寒さだった。
 なお冬季は国のほとんどが雪に覆われてしまうとのことで、相当厳しい環境なのだということはちょくちょく目にする大量の薪や道路幅を示すライン、縦型消火栓などからも想像できる。自転車旅行的には夏に訪れる国なんだろうな。

◎言語
 ドイツ語が公用語。もちろん基本会話も全てドイツ語であるが、やっぱり多くの人が英語を解するので意思疎通自体は大変楽であった。いやまぁ私の英語力が残念なレベルなので「楽」という表現には些か疑問が残りはするけどさ、他の言語と比べればやっぱり英語で話せるのは随分気楽なものですよ。

◎宿(野宿)・Wi-Fi
 当然のように野宿(か人様の家に泊めてもらうか)で乗り切ったオーストリアだけど、実はキャンプ場に関してはイタリアみたいに法外な料金設定しておらず、利用するのも吝かではない料金形態の場所もあった。
 ただまぁ全国何処でも野宿が簡単にできる上に綺麗な河川が豊富に流れており、よっぽど雨が降り続ける状況でもない限り、夕方になったら適当にテント張ればそれで良し!と思っていた事も事実。
 少なくともWi-Fiに関しては宿泊施設など利用しなくても、町中の様々な場所で利用できる程に整っている。私は基本的にスーパーでの買い物ついでにWi-Fi利用していたが、その他の場所でも数多くネットに接続できるチャンスはあるため気にしないで良い。しかも速度は安定して高速だったし、接続に面倒な入力とか要らずコネクトボタンを押すだけの方式。隣国スイスもこれくらいネット環境に優しければ良いのに・・・と思ってしまう。

◎動物
 森林の中でテント張ってると偶に鹿と遭遇したりすることはある。基本的に危険な生き物は出てこない雰囲気だけど、キャンプする場所次第では蚊・蟻・ナメクジ・蜘蛛あたりの生物がウヨウヨしており邪魔に思うことはままある。
 あと観光地には馬に車を引かせて市内を回るツアーが人気を博しているのか、結構な割合で馬の姿を見かけたな。牧場とかでも馬の飼育してることが多かったし、馬を運ぶためのトレーラーが使われているのもよく見かけた。
 なおオーストリアの犬は危険度ほぼ0なので気にする必要はない。自転車見かけると敷地内から吠えてくる犬がいるものの、管理が徹底されてるこの国ではトラブルとなるパターンが想像できないレベルで犬に関しては問題ない。

◎自転車店
 これもドイツのラインナップとほぼ同じ物が並んでいる。割合としてショップ自体が自転車&スキーショップとなっている店を多く見かけた気がするが、夏と冬とで主要ラインナップが逆転するのだろう。自転車乗り的には真夏でもスパイクタイヤが陳列されているのを珍しいと思ったりしたかな。
 マラソンプラスも数多く取り扱っているので店舗購入するならオーストリアはオススメの国。とはいえ隣国がドイツなのでそれが大きなメリットにはならないけれども。
 英語がバッチリ通じるので細かい部品を探してる時にも頼りになるし、作業をお願いしてないものの店員の技能や知識はかなりレベル高いと感じた。多分人件費も高いので気軽にお願いできないというのもある。
 他の欧州諸国と比べて国内におけるデカトロン店舗の数が少ないため、自転車用の部品が必要だとショップに行く確率は高い方だと思われる。ある程度の規模の町ならしっかりしたプロショップがあるし、仮にそうなっても安心感はあるな。

◎物価・食事
 これは非常に高い。イタリアみたいに変な商品が強烈な値段で売られている・・・といった不可解さはほぼ無いが、その代わり全ての商品が順当にお高く気軽に買い物もできやしない。流石にスイスほど物価高という訳ではないが、ヨーロッパ全域でもフランスより高く上から数えた方が早いのは間違いない。イメージとしては北欧の国より若干安い程度。
 でもガソリンに関しては隣国ドイツやイタリアよりずっと安価で扱われていたのが不思議。自転車旅行じゃガソリン購入する機会は限られてるのでそんなメリットないけどさ。
 レストランはおろか、普通にスーパーで食材購入の生活でもちょっと気を抜くと1日2000円を超えてくる物価でかなりしんどかった国。その代わりというか期限の近い食材が割引セールされてる光景を見ること多かったので、そういう商品を狙っていけば貧乏旅行者でもなんとか凌げる。
 ビールは安いタイプだと100円割ってくる物が幾つか散見されるため、その点に関しては他のヨーロッパ諸国と同様割と気軽に一杯飲むことが可能。オーストリアのスーパーはレジの近くに飲み物を冷蔵している一角あることが多く、このエリアで格安ビールも販売されてたりするので、上手くいけば野宿でもキンキンに冷えてるビールを楽しめる可能性がある。

◎総括
 いやはやヨーロッパにおけるアルプス山脈で、最難関と感じた国がオーストリアとは全く思わなかった。ドイツと同様のネット等インフラレベルの高さを持ち、スイスに並ぶ自転車道と美しい山々(と物価)を備えるオーストリアは自転車旅行にとても適した国である一方、荷物満載のサイクリストを殺しに来てるとしか思えない鬼の山岳をお出ししてくる2面性を併せ持つ。
 これはある意味でオーストリアという1カ国で、自転車初心者から上級者まで幅広いサイクリストのニーズに対応していると表現する事もできるのであり、この国を旅行するときは自分の脚力に見合ったルートの選択が非常に大事。特に国内西部のアルプス山脈は相当な覚悟を持っていないとキツすぎて泣きをみるため要注意。
 でもオーストリアで思い出す光景はやっぱりそうした土地だったりするのであり、個人的には是非ともアルプスにチャレンジして欲しいところ。オススメできないけど、本当にオススメの場所なのです。そんな簡単には言い表せない奥深さを感じる国でした。