2023年9月27日〜10月5日 10月12日〜10月23日
走行日数21日間
累計走行距離830km(1回目455km・2回目375km)
(140981km〜141436km・141949km〜142324km)
◎道路
側道がある道はほぼ出てこないのだが、都市部周辺以外の道は交通量が非常に少ないので問題なし。山岳国らしくアップダウンの連続である一方で、山間部における渓谷の道を伝うようにルートを組めばそれほど坂道を登ることなく快適な走行ができるのは魅力的。実際私はサラエボから後のルートは回り道だけどアップダウンの少ないルートで走行しており楽ができた。
なお峠自体は1000mそこそこの標高が多く、斜度も緩やかに作っているし特に北部は急カーブやつづら折れが出てくることのない道でダウンヒルも安心感がある道で「ボスニア偉いぞ!」とか思ってた。南部では「ボスニアしっかりしろ!」って思ってたけど。
サラエボを代表とする(南部の)町の多くが山間に作られている構成のため、狭い土地で道路も片側1車線だったり車両は川を挟んで反対側まで迂回しなくてはならない造りとなっていたり走りにくいことが多かった。サラエボに関しては市内観光で自転車を使わない方がいいと思う。逆にバニャ・ルカや北部の町だと自転車使わなければ全然回りきれないのだが。
◎治安
四半世紀前まで激しい紛争をしていたイメージからか、どうしても治安に対して不安を持ってしまう向きがあるが実際にはボスニアにおいて治安的な危険を感じることはほぼない。
確かに廃墟の数は多いしサラエボの町中とか至る所に落書きが書かれてたりもするし、ジプシーが物乞いしてたりもするため声を大にして「安全な国だよ!」とは言いづらいところもあるのだが、正直ボスニアで何らかのトラブルに巻き込まれるビジョンが見えないくらいにはこの国の雰囲気は良かった。ただしサラエボ周辺はこの限りではないし、ジプシーっぽい子供からお金をせがまれたりとよくない雰囲気の場所もチラホラあった。
ちなみに現地の人に「ボスニアって治安どうなの?」と質問したら「安全な国だけどすべての場所で問題ないというわけではないから、特に都市部では気を抜かないで注意してね」・・・という国の内情を知らない外国人に対して100点満点の回答されたことが印象に残ってる。私が外国人から日本の治安に対して質問されたらこのような返答をするだろうし、これは治安の良い国だからこそできる返答でもあると思うし。
◎ビザ・出入国
シェンゲン協定のエリアを抜けたため陸路移動でも通常の出入国審査が実施されるようになった。とはいえ私が通った国境は地元も車両が日常的に通過するような土地にあるイミグレーションで、建物内に入って手続きをするとかそういうこともなく、高速道路の料金所みたいな感じのボックス内にいる職員にパスポート渡してアッサリスタンプ押され終了した。行き先どころか滞在日数すら何も聞かれなかったのであり、非常に気軽な国境越え。シェンゲンなんて必要ないのでヨーロッパ各国はこんな感じで頼みますと自転車乗りとしてはお願いしたい。
◎交通事情
最初は非常に良いじゃん!とか思ってたけど、それは北西部のほとんど交通量がない道を走っていたからで、特にサラエボ近郊からアドリア海へと抜ける辺りは谷底で道路が狭いのに交通の要所としてあるため車両の数が多い。
そんでボスニア人も自転車のことなんて気にもせずすぐ隣をぶち抜いてくる危険ドライバーやクラックション鳴らせば全て解決すると勘違いしてるヤバいドライバーの割合が結構高い。サラエボの町では私が走ってる道の真正面から普通に突っ込んできた車両があって、危うく正面衝突になりかけた一幕があったのだが、あのドライバーは完全によそ見というか車両以外を気にしてない運転してたりと運転技術が未熟な姿も目立つ。
田舎は本当に車両を気にせず気軽に走れる一方で、危険な道は心底注意してかからないといけないボスニアという国は、全体的な評価をすればセルビアより悪い。ルートを選ぶ際は慎重に。
◎特徴
日記中に何度か述べているがボスニア・ヘルツェゴビナ連邦とスルプスカ共和国という2つの主体から構成されてる連邦国家である。これは主に民族にて分かれており、ボスニアは「ボシュニャク人」スルプスカは「セルビア人」がメインで構成されている。これに加えて隣国のクロアチア人も多く3つの民族が混在している国というワケだ。なおクロアチア系の人々は彼らの人口比率が高い南部地域にクロアチア系の主体を作るべきだという主張をしているらしい。
ボシュニャク人の多くがイスラム教であるのに対して他2民族はキリスト教を信仰しており、ボスニア国内の都市ではモスクと教会がそれぞれ立ち並んでいる姿をみることも珍しくない。
使用言語であるボスニア語・セルビア語・クロアチア語はほとんど同じ言語でありながら、使用文字がスラブ語とラテン語で分かれていたり、何かと対立の原因になりそうな点が旅行者の視点でも感じるほど。
2カ国の境界線も非常に複雑な形で引かれている上、町や首都のサラエボの中を通る形で通っていることもある。ボスニアでは民族問題かなりデリケートな扱いだとも聞いてたので、安易に「あなたは何処の民族なの?」とは聞かないよう努めていた。
◎気候
山岳地帯が多く標高による気温差がかなり大きい。また10月になると夜中に霧が発生して午前中はずっとガスってる状態となることも多く、サラエボの町で滞在中は晴れてると午前中は毎日霧で覆われていた。気温は下がるし湿度も凄くてテント泊してるとびしょ濡れにされるしかなり大変。
アドリア海から発生した雲が流れてくるためか、海側の天気が安定しないことが多く天気予報で向こう1週間に渡り悪天候が続いたりするようで、割と天気が安定してる間隙を縫う形で走行プランニングすることも多かった。なお山岳地帯であるためか、雨予報90%でも全然降ってこないパターンもあったりと旅行者泣かせな面があるように思う。
◎言語
ボスニア語。隣国クロアチア語・セルビア語・モンテネグロ語とは非常に近しい言語であり、本人たち曰く「違いなんてないよ」とか「アクセントがちょっと違うくらい」とのこと。特徴の項でも書いたが、その割に使用する文字は異なっているためなかなか実感しづらいところがあるけども。
英語の通用率はかなり低く、田舎だと英語話者は5割もいないと感じる。バニャ・ルカやサラエボといった都会ならそうした問題に直面することは少ないが、意思疎通は結構苦労する国ではあった。
◎宿(野宿)・Wi-Fi
クロアチアの直後だったから宿代も安いと感じてたけど、正直周辺の国と比較すると若干高い程だった気もする。最安値でも1泊10€(都市部はユーロ換算の方が多い)で泊まれる宿見つけるのはかなり難しい印象。サービスは良し悪しあったが、キッチンの設備が割と貧弱であったことが共通してるの面白い。逆にWi-Fiに関してはどの宿でも全くストレスを感じることがなかった。
なおボスニアから民家を一部改装して宿泊施設にしたタイプが出始めた印象で、こうした宿はホステルより値段が安くてサービスも良い傾向にある反面、やや町の郊外に位置してる場合が多くアクセスが大変。つまり自転車旅行者にとって非常に都合の良い施設となっており、バニャ・ルカの町で利用した宿とかがこれに該当する。
野宿も気軽に実施できる国だし規模の大きなガソスタには大体FreeWi-Fiが飛んでる印象であるため、都市部を避ければ全行程野宿というのはしょど難しく無い国だと思う。私の場合は道中で雨となる日が多かったためかなり宿を利用したが。他にBingoという大型スーパーではよくFreeWi-Fiがありこれを利用することも多かった。
◎動物
特別大型動物や悩まされた奴はいなかったけど、ボスニアには野生の熊どころか狼すら生息しているらしい。狼との邂逅は相当レアだと言われたが、熊に対しては割と現実的な脅威として対策しておく必要があるかもしれない。なにせ山だらけの土地なので。他にサラエボ以降の道では路上に轢かれた蛇の姿をよく見かけたのだが、大きい個体だと長さ1mとかあるヤツもいて下手に草地へズンズン入り込むのは躊躇われる。
あとボスニア入ってからいよいよ犬が凶暴化した。野良犬の数も増えたし飼い犬だったとしても敷地内で繋がれておらず、テリトリーに入ると猛烈に吠えまくり追いかけてくる凶暴さを発揮し始めたのであり、十分な注意が必要だと言える。犬叩き棒が本格始動する日も近いかと思われる。
◎自転車店
自転車人気がガクッと落ちて大都市やその近郊でもないと自転車を利用してる人の姿をめっきり見なくなったボスニアは、当然ながら自転車店の数も減ったしそのラインナップも貧弱になった。
基本的にちゃんとしたショップは首都かそれに準ずる大都市でもないと出てこないし、そうしたショップも完成品のバイクを取り扱っている割合が多く、部品や周辺道具の種類はあまり充実していない。というかスキーのショップと一体になってる店が多く、自転車1本で営業してる店自体が少ない。
今回ボスニアで後輪リムにクラックが入り交換を余儀なくされたのだけど、モスタルという国内最大級の観光都市であり訪問したショップもボスニアで最も大きな店であったため、26インチのリム在庫が出てきたが、多分これは相当運が良かったと思われる。謎メーカーのリムだったとかそいういうのはバルカン半島の国じゃ仕方ない。
その一方で結構な割合で取り扱いタイヤでマラソンプラスの姿を見かけたりと、案外自転車旅行者の欲しい商品が置かれていることも多くて侮れない。滞在期限的にシェンゲン協定内の国で自転車部品を探すのであれば、旧ユーゴスラビアの国ではクロアチア・ボスニア・セルビア辺りが良いのかなと思われる。
◎物価・食事
クロアチアから入国したので最初は「安いじゃん!」と喜んだものだが、冷静になってくると他の東欧諸国とそれほど変わらないどころか若干高いかもしれない。セルビアとは流通している商品がほぼ同じだったが1日の収支を比較すると大体ボスニアの方がちょっとだけ高くついてるイメージかな。
自転車的には両隣の国にデカトロンが展開されてるのにボスニアで店舗がないのも痛い。このため消耗品を安価で取り添える際の選択肢が減っており(Bingoという大型スーパーで多少の自転車パーツが販売されてる)、そうした点からも金銭的な面で僅かに落ちるかな。肉も高いし。
ビールはロング缶で1マルク(約80円)を下回る商品が1〜2種類くらいある印象だが、私はボスニアではペットボトルビールばかり飲んでいた。2マルクがほぼ1ユーロなので金額換算が楽な一方、数字上ではユーロの2倍に見えてしまうため心理的に物価が高いと感じてしまうところがある気もする。
◎総括
とにかく人の優しさが印象に残った国。それは直接的に泊めて貰ったり何か頂いたりといったのみでなく、自転車で道を走っているだけで多くの人が私に対して笑顔で手を振り挨拶してくれることがとても多かったからだと思ってる。
思いもかけずボスニア長居してしまったのは悪天候や自転車のトラブルが重なったためだけど、そうして滞在した国が親切な人が多く居心地の良いボスニアという国であったことは素直に幸運だと感じるな。
走ってる最中は「山ばっかりだなこの国」とか言ってたけれど、ちゃんとルート選べばそこまでアップダウンが頻発するワケでもないし、その割に見応えのある巨大な渓谷を走れたりと地形的にも魅力溢れる国だった。クロアチア国境に挟まれた海岸線沿い10kmしか走らないとか滅茶苦茶勿体ないので是非とも内陸部を色々回ってみてほしい・・・と余計なお節介を言いたくなる程には楽しい国でした。