2023年10月23日〜10月30日
 走行日数8日間
 累計走行距離404km(142373km〜142777km)

◎道路
 クロアチアやボスニアといった国よりずっと良いし、割と最近まで同一の国であったセルビアと比較しても道路状況に関してはモンテネグロに軍配が上がる。
 これは道路幅がやや広くなったことと、多少なりとも側道のある道が増えたことの2点が大きい気がするかな。国名の通り国土の多くを山で占めている国のため、海岸線以外のルートを走ろうとすれば必ず峠越えを要するのだが、モンテネグロの山脈は道路の最高地点が大体1000〜1500mで構成されており、それを乗り越えるとある程度の町が出てくるため案外無理なく走れる印象。
 凄いなと思ったのが旧道であっても路面がとても綺麗に整備されていて、郊外を走行してて怖い思いをすることが少ない点。山岳国ということはダウンヒルの機会も多いため、下り坂で怖い思いせずに走れることは重要だ。もっとも東部の国境に近づくほど路面のレベルは下がっていったため、基本的に海沿いや首都近郊といった需要ありそうな道から離れるほど怪しい。なお車両は右側走行。
 そもそも国内における道路の数が少ないため、この国を走る旅行者はある程度似たルートとなるかと思われるが、山好きならば内陸部そうでないなら海岸線と大きく区分けできる感じ。

◎治安
 悪いとは全然感じなかったけど、それはそれとして首都のポドゴリツァでは物乞いからの金くれアクションがあったり貧困を感じさせる地区も見かけた(町の南東部地域)ので注意した方がいいかもしれない。
 基本的に海沿いのエリアは観光地化されてて旅行者も多く町並みも洗練されてる感じだが、山中に入ると都市部以外は人が住んでる場所も少なく、その数少ない家屋も廃墟となっていることが多い。最も「人がいない」という意味でむしろ安全と評することができるのだけど。

◎ビザ・出入国
 出入国の審査は特に何も聞かれず問題なかったが、出国時は手続き処理のみでスタンプは押されないためこのルールを知らないとやや焦る。
 私はコソボへと抜けるルートで出国したのだが、地図で見る限りコソボへ抜ける道は2本あるものの南側を貫くルートは恐らくイミグレーションが存在しない道であるため出入国できるか怪しい。この国境もガッツリ峠越えした果てに出てくる場所にあるため「とりあえず行って確認してみようかな」とはならなかった。

◎交通事情
 周辺国と比べて抜群に運転マナーが良い国という印象。なんと横断歩道で待ってると車両が停車して道を譲ってくれる国である。
 郊外での走行ではそもそも車両の数が少ないため危険を感じる状況に遭遇し辛いというのもあるが、首都のポドゴリツァとか走ってても「無茶な運転するなぁ・・・」といった印象を覚える車を見ていないので、モンテネグロのドライバーは全体的に安全運転に対する意識が高いと考えるべきだろう。クラックションも「後ろから抜くよ」という意味で短く軽く鳴らす人は多いが、「どけ邪魔だ!」と馬鹿みたいな鳴らし方して無茶なオーバーテイクする輩は見た記憶がない。旧ユーゴスラビア諸国において運転マナー優等生の国といって差し支えないでしょう。

◎特徴
 この国もユーゴスラビア解体の流れを受けて、2006年にセルビアから独立した比較的新しい国。セルビア=モンテネグロという国名に聞き覚えがある人も多いのではなかろうか?
 旧ユーゴスラビア諸国の独立は激しい紛争が繰り広げられた国が多い中で、幸いなことに血が流れることなく比較的平和的に独立できた貴重な国。
 私が相対した人たちはセルビアに対する印象が悪いようには見えなかったし、そもそも宗教がセルビア正教メインであるため見た目にはセルビアと近しい国であるように感じられる。

◎気候
 山がちの土地であるため天気予報が当てにならない。滞在中かなり天気悪い予報が続いてたのだが、降水確率90%の状態が1日続くような天気でも実際にはほとんど雨が降らなかったり下手すりゃ青空が見えることもしばしば。
 海沿いと内陸部とでは標高差が大きい国なので、必然的に気温の差も激しい。今シーズン初のテント泊でフライシートが凍りついたのはモンテネグロの山中にて野営をしていた時だったワケだが、その一方で日中に海沿いを走ってた時は気温25度の夏日となることもあった。特にこの時期は1日における寒暖差も大きいことが予想されるため、細かなレイアリングが重要になると思う。

◎言語
 モンテネグロ語らしいがセルビア語との違いがあるのかすら微妙とのこと。そもそも2006年に独立するまでセルビア・モンテネグロという1つの国だったこともあり、感覚的には国の独立に伴って言語も独立しただけ・・・という印象だ。
 ということでクロアチア語・ボスニア語ともほぼ同じ言語である。なお使用文字はどちらかといえばラテン文字(アルファベット)がメインで使われていた感じで、キリル文字を使うセルビアとの関係性がちょいちょい気になる。
 なお英語の通用度合いは低いものの、学校教育で英語に触れる機会があるのか若い人ほど英語が話せた印象だ。なお私が利用した2つの宿ではどちらもオーナーは英語が話せず翻訳ソフト使ったり、子供に通訳して貰ったりしていた。

◎宿(野宿)・Wi-Fi
 両方とも利用した宿は個人宅を宿泊施設に流用した宿だったけど、下手にガチガチの旅行者が集うホステルより個人的にはずっと過ごしやすかった。こうした宿の特徴としてホステルと違いゲストが快適に過ごせる細々としたサービスが足りていない(コンセントの数が少ないとか食事用のテーブルが小さい等etc)ことが多いものの、利用客の数が少なくオーナーも色々融通を聞いてくれるパターンが多く「自転車を安心して止めておける場所があるか?」という問題を常に抱えるサイクリストとしてはこうしたタイプの宿はありがたかった。
 値段は1泊12€とかだったので2000円くらいとセルビア・ボスニア辺りと比べて僅かに下がったかな。クロアチアと比較すると半額くらいとなるので、アドリア海沿いのルートで走る場合はモンテネグロとの国境が物価の転換点になると思う。
 宿のWi-Fiは速度も早くて快適だったが、移動の最中におけるFreeWi-Fiの普及度合いは非常に厳しいものとなり、それまで使っていたスーパーやガソスタでのWi-Fiが大きく数を減らしたことが原因。コトルの旧市街みたいな観光地では普通にFreeWi-Fi飛んでいたが、そうした場所以外でネット利用するのは無料だと少々難しい。なお何処かの銀行がWi-Fi飛ばしてたのは覚えているけど肝心の名前忘れてしもうた。
 ということでWi-Fi使いたいのなら、そこら中にあるカフェを利用する方が下手にFreeWi-Fiを探し回るより正解だと思う。国土が大きな国ではないためそんなに何度も利用することも無いだろうし、物価も安い国なので、探し回るコストの方が無駄が大きいかと。

◎動物
 山中でやたら痩せてる牛を見ることが多かったかな。他の家畜では羊の割合が高かったと思う。
 その他に特別注意するような野生動物は遭遇することなかったが、犬はかなり凶悪で自転車追い回してくるので十分注意が必要だ。
 あと何気に猫好きな国っぽくて、特にコトルの町は猫をウリの1つにしてることもあり旧市街の散策では幸せな気持ちになれると思う。

◎自転車店
 意外と地元のサイクリストでローディもMTB乗りも複数回見かけたし、自転車人気が低いということは無いと思う。でもこの国で特に自転車トラブルも無かったし、町中を適当に走ってる最中に自転車ショップを見かけることがないまま出国したことから、そこまでショップの数が豊富にあるとは思えない。インタースポーツみたいな総合スポーツ店の中に自転車コーナーとかはあったんだけどね。そこで扱われてるバイクとは違う、もうちょいちゃんとした自転車扱ってるショップがあるのはこの国のサイクリストが乗ってた自転車から間違いないと思う。

◎物価・食事
 北部のバルカン諸国と比べてこれは明らかに安くなった。海岸線に位置するリゾート地区の町はガッツリ観光地値段だけど、ちょっと町から離れるなり内陸に入れば物価が明らかに下がったことを実感できて大変よろしい。
 特にビールの値段は非常に安く、2ℓの大型ボトルが200円そこそこで販売されてたりすることもある。基本的にモンテネグロは自炊で乗り切った国だけど、簡単なファストフード系のお店とかは長期旅行者でも手が届く料金まで物価下がったため、一応5€あればサイクリストでも満腹になるとは思う。
 そんなモンテネグロ特有の食事って見た覚えが無くて、肉だとチェバピ、酒ならラキアと他の旧ユーゴスラビア国と似たようなものが目についた感じ。まぁ全体的に物価が下がったことで予算的には助かってるので特に困ることはありません。

◎総括
 国内における多くの場所が山岳地帯で構成されてる自転車乗りにはややハードな国だけど、道・交通状況・物価・景色と多くのポイントが非常に高いレベルでまとまっており、走ること自体が楽しい国。シェンゲン協定の国と異なり、滞在日数気にしなくても問題ないこともあって精神的にも余裕があり素晴らしかった。
 海沿いの町も悪くないけれど、国名の通りに山を体験するとこの国の素晴らしさをより感じられると思うので、モンテネグロのルートを考えているなら是非内陸部へと足を伸ばしてみることをオススメする。ちなみにモンテ=山、ネグロ=黒だけど、この国の山色はむしろ白が目立ったというのが私の感想。かといって名前をモンブラン(カ)にすると、アルプス方面から文句が出てきそうなので致し方ないか。