北マケドニア
 2023年11月5日〜11月13日
 走行日数9日間
 累計走行距離324km(142937km〜143261km)

◎道路
 バルカン半島南下するほど道路が良くなっていくというのは私の想像と真逆の現象で驚いている。路面状況も良好だし、狭いながらも側道のある道が増えたことで自転車的にはかなり安心できるようになった。いくつか峠も越えたけど、アルバニア国境沿いにあった坂を除いて10%を超えるような厳しい斜度はなく、緩やかに登っていくことができる自転車にも優しいタイプのものばかり。オマケに登坂車線がしっかりあるので車両のオーバーテイクに怯えることもない。なお車両は右側走行。
 強いて挙げるならちょいちょい出てくる自転車道が整備されてなかったり、突然未舗装路へと切り替わる「町の周辺だけしか配置してないよ」系のため、こうした道を利用するより素直に道路を走る方が良い。というか酷い目にあった。
 スコピエ周辺だけは交通量も多いので怖い思いすることあるかもだけど、基本的にそれ以外でストレス感じることは稀で非常に優秀な国でした。

◎治安
 基本的には問題ないが、スコピエの周辺は貧困を感じさせる場所が多くそうした人が住むスラムっぽい地区だったり不法投棄されたゴミの山があったりと治安的に不安を感じさせる場所もチラホラと。
 町中の落書きはともかく放置されたゴミの量は一気に増えた感じで、あまり良い感じはしないというのが正直なところ。
 大きな町の周辺には似たような感じでボロボロの家屋だったりプレハブ小屋みたいな家が立ち並ぶ地区があるみたいなので、あんまり町の近くでテント張るのは躊躇われる感じがある。ビトラでの野宿も完全に日が暮れてしまったので止むを得ず・・・というところがあり、あんまり気軽にテント張りたくはないかな。

◎ビザ・出入国
 パスポート渡して特に質問があるワケでもない簡単なタイプの国境でした。その割に北マケドニアのイミグレーションには車両が長蛇の列をなしており、コソボ側のイミグレーションとあまりの違いに「北マケドニアって審査厳しい国なのか?」とか不安になったし。アッサリ通過できたのは日本人だからかもしれないが真偽の程は不明。

◎交通事情
 これがすごく良くなった。無理な追い越しも無くなったし、アホみたいにクラックションを鳴らしてくるクソドライバーの割合も劇的に減り、側道が配備されてる道が多い事もあって非常に安心して走れることが多く自転車旅行に向いてる国だったなと感じる。
 ただ全く問題が無いわけじゃなくて、スコピエを中心として一般自転車が道路の左側(車両は右側通行)を逆走してる割合がとんでもなく高いと思う。ここまで逆走多いのザンビア以来だぞ。
 あとマナーは向上したけど運転技術に難あるドライバーも多い感じで、自転車をオーバーテイクした直後に急ブレーキかますとか、右折してあわや巻き込み事故になりそうな場面があって、要するに自転車に対する危険予測なんざちっとも出来て無いのが現状であるため、こちらが集中して危険回避しないとならず、安心できる環境とはいえ気は抜けない。

◎特徴
 元々は「マケドニア共和国」という国名だったのだが、歴史的にマケドニアという土地はギリシャとの国境に跨って存在するエリアであり、むしろ面積的な点ではギリシャの国内にマケドニアと呼ばれた土地は多くを占めていたりする。正確にはマケドニアが約4割、ギリシャが約5割、ブルガリアが約1割と言った塩梅。
 そもそも古代マケドニア王国はギリシャ系の言語を使っていたとされる人々で、北マケドニアの多数を占める南スラブ系とはそもそも直径の子孫か怪しいとされている。
 そんなワケで旧ユーゴスラビアから独立後にマケドニアと国名を名乗った際にギリシャから「なに勝手にマケドニアを名乗っているんだ!」と物言いが付き、紆余曲折あった末2019年に北マケドニアという国名に変更することで決着がついた。
 国際的には一応の解決がついたものの、この国の人は自国のことを「マケドニア」と呼ぶし、ギリシャの人は北マケドニアのことを「スコピエ」とか別の名称で呼ぶらしい。

◎気候
 スコピエ周辺は年間通して晴天に恵まれている土地とのことだったけど、私が訪れる前日は雨だったし数日後の天気予報も雨となってた関係で早々に移動している。なので個人的には天気の良いスコピエという評判には懐疑的。
 ちなみに他の場所でも散々雨に悩まされた北マケドニアで、特にオフリド周辺では度重なる雨によってなかなか移動ができず難儀した。バルカン半島入ってから雨の割合が増えて難儀すること多かったけど、ここまで足止めを食ったのは北マケドニアが始めてである。でもこれは地形的なものというよりこの季節が比較的雨の多い時期で、私はそのタイミングに嵌ってしまったのだと予想する。この時期周辺諸国の天気も軒並み悪かったので。
 ちなみに天気が良ければ平地を走る分にはまだTシャツ1枚でも走行可能なギリギリの気温。私は比較的寒さに強いタイプなのでそんな服装だったけど、多くの人はそれでは厳しい気温だと思うし、実際地元民の服装はコート羽織っている人までいたので参考程度に。

◎言語
 マケドニア語が公用語らしい。旧ユーゴスラビアの国らしくセルビア・ボスニア語と似ているらしいので、つまりクロアチア語やモンテネグロ語とも近しい言語なのだろうと推測できる。
 でも言語的に近いのはブルガリア語だそうで、この2つに関しては方言程度の違いしかないとのこと。ここら辺は北マケドニアが歴史的にブルガリアの領土だったりとかが影響してるのだろうな。さっきから不確定な言い方ばかりで申し訳ない。
 とりあえず英語の通用度はそれほど高くない。スコピエとかオフリドではほとんどの人が英語話せた感じだけど、田舎町だと基本的に英語は通じないと考えておくのが無難。使用文字もキリル文字なので読むことができず、食堂のメニューが読めないけど質問しようにも英語が通じず適当に勘で注文!・・・というパターンを久しぶりに体験した。

◎宿(野宿)・Wi-Fi
 安宿なら10€前後で宿泊ができる印象。スコピエの町には多くのホステルあったので色々回ってみたが結構な割合で潰れている施設が多く、コロナ以前の宿情報は当てにならないと思った方が良い。
 設備もしっかりしてたし利用した2つの宿には両方とも寝室にエアコンが配備されていたのは好印象。時期が時期だから使ってないけど夏は相当厳しい環境だろうし。
 宿のWi-Fiは速度も速くて問題となることはなかったが、スコピエ・ビトラ・オフリドの3都市以外でFreeWi-Fiを掴むことは最後まで出来なかったため、田舎におけるWi-Fi普及率は決してよくない。ガソスタによく「FreeWi-Fi」といった表記が出ていたが、1度も本当の意味で自由に利用できるWi-Fiは出てこなかったし。なおあくまでFreeWi-Fiでの話であり、普通にカフェとかレストランといった施設を活用してネット利用するのなら全く問題ではない。

◎動物
 そんな大型動物見なかったな。いつもの家畜で牛・馬・羊にヤギあたりはちょいちょい出てくるものの、野生動物を見た記憶がない。多分というかコソボのベアサンクチュアリでは北マケドニアとの境界線上で捕獲した熊も云々とかあったので、間違いなく熊はいるのだろうけど。
 ボスニア以南は完全に犬が襲ってくる国のエリアとなったようで、ここでも多数の犬がテリトリーに入ると狂ったように吠えて追いかけてくる場合がある。特に北マケドニアでは犬の数を多く見かけたし、今回ヨーロッパに入って犬叩き棒が火を吹いた初の事例がここ北マケドニアだ。

◎自転車店
 コソボからやって来るとスポーツ自転車の利用者割合が一気に増えたことに驚く。その需要を反映してか、スコピエには先進的なショップもあると聞いたのだが、実際訪れたワケではないのでレベルとかラインナップは分からない。
 オフリドの町でも市場の近くで2店舗ほど自転車ショップを見かけたが、こちらはお世辞にもしっかりしたショップではなく取り扱ってるパーツもほとんど種類がなくグレードも低かった。レンタサイクルの商売を主としてるタイプのショップだったので仕方ないかもしれないが。
 とりあえず地方都市にはそれほどしっかりしたショップがある雰囲気ではないため、基本的にはスコピエのショップでアレコレ対応するのが正解だと考える。国土の小さい国だしそれで問題ないんじゃないかな。

◎物価・食事
 コソボとほぼ変わらず物価は安い。普通にスーパーや市場を活用してれば食費は1日1000円もしないレベル。私はこの国で初日に50€(約8100円)を両替してるが、これで食費に関しては丸7日間イケた。あんだけビール飲みまくってだ。
 そのビールにおいてもコソボよりは値段も下がり、お求めやすくなってはいる。東欧全体で見るとやや料金高めという印象ではあるが。
 食堂に関してはケバブ屋みたいなファストフードは何度か利用した。値段は最低300円から・・・というイメージで大体合ってると思うけど、店員が割り引いてくれたり奢ってくれたりが多くて正確な料金が日記に残ってないんだよね。本当にありがたい限りです。
 食事の内容に関しては相変わらず変化の薄い感じになってるけれど、北マケドニアではまだ酒と言ったらラキアの国らしく、ここでもラキアを頂けたのが嬉しかった。

◎総括
 歴史を調べてみた結果、旧ユーゴスラビアを構成していた国は全て訪問してみたい・・・と思っていたので、この北マケドニアを無事に走り切れたことは私の中で一区切り感がある。
 個人的な感想としてこれらの国々は近しいところもある一方で、どの国も独自の特色があり違いを感じさせることが多かったため、ユーゴという国が7つの国へ別れてしまったのは仕方ないと思えてならない。紛争を肯定してるワケではないのであしからず。
 そんな国々の中でも特に独自色の強かった北マケドニアだが、人は優しく親切だったし自転車で走るのに適した平地と山岳の割合に加え、適度な距離に置かれる安宿を配した観光地。物価も安く地理的な要因も相まって、自転車旅行してて非常に楽しかった国である。
 陸路旅行者は最初に旧ユーゴスラビアを構成していた国として訪れる人も多いと想像するが、北マケドニアでの滞在経験でその後のユーゴ諸国も良い意味で期待を持たせてくれる国になると思う。
 なお最後なのでユーゴスラビアという国を表す有名な言葉を残しておく。

「7つの国境、6つの共和国、5つの民族、4つの言語、3つの宗教、2つの文字を持つ、1つの国家」