2019年11月1日〜2019年11月6日 2023年12月6日〜12月12日 2024年1月18日〜3月5日
 走行日数61日間
 累計走行距離3216km(1回目293km・2回目178km・3回目2745km)(103464km〜103757km・144374km〜144552km・144552km〜147297km)

◎道路
 主要道路には基本大きな側道あるのが素晴らしい。私の走行したルートがそうだっただけの可能性もあるが、割と海側の道でも平坦路が続くということはなく、むしろ急峻なアップダウンが連続して大変な行程となることが多い。反面内陸部は標高1000m前後で割と安定している場所も多く、案外坂道で大変な思いをすることは少なかったのが面白い。流石に東アナトリア地域に入ると厳しい山岳地帯となるが、それでも2000mを越える峠は最後の最後まで出てこなかったので、2月の時期でも何とかなった感がある。
 メイン道路を外れると相当な急斜度の坂をお出まししてくる国であり、しかもそういうローカル道には側道が無いためやや怖い。というかトルコはドライバーの運転荒いので側道のない道は大体怖い。
 そんで町中の道も側道ないのが普通だけど、ある程度規模の大きな町なら自転車道があるのが救い。海沿いに位置してる町なら海岸線に沿う形で自転車道が造られているため分かりやすいが、そうでない場合は自転車道を見つけることが都市部走行の第一歩と言えるかも。なお車両は右側走行。
 ヨーロッパ諸国と比べれば路面の質は落ちたと感じるが、むしろこれだけ広大な国土で道路の数もかなり多い国としてはかなり頑張っているというのが個人的な印象か。完全に消えたワケじゃないけど旧市街でも石畳み出てこなくなったことも自転車的にはありがたい。
 総じて道路はかなり高いレベルで纏まっていると思うのだ。というか道路レベルが高いからトルコ人ドライバーの運転に我慢が出来ていたというべきか。

◎治安
 総じて治安的な危険は少ないように思われる。ただときどき出てくる小さな村とかの雰囲気がゴーストタウン一歩手前だったり排他的な雰囲気を感じたことはある。綺麗で先進的な町の中でも幼い子供が物乞いしてたりということもあり、あまり治安の良さを過信しすぎるのは良くないかな・・・とは思っていた。
 それと東部のシリア国境付近とディヤルバクルの町周辺は危険度が高いと外務省も注意喚起を促してる地域。実際に訪れたわけでないので危険云々をいえる立場ではないが、他に無数のルートがある中でわざわざ危険と評されてる場所へ向かう理由もないかと思った次第。

◎ビザ・出入国
 日本人なら90日までノービザでの入国が可能。陸・海・空とそれぞれ別の方法でイミグレーション利用したけど、基本的にどこも面倒なことはなくスムーズに出入国できたと思ってる。
 ただイランとの国境は逆方向で長蛇の列が形成されており、イラン→トルコの国境越えは割と面倒そうな印象を受けた。いや、キャプキョイの国境が基本混んでるだけかもしれんが。

◎交通事情
 悪い。これはヨーロッパの後だからそう感じただけで、実際にはよくある途上国の交通マナーとさほど違いはないのかもしれないが、相当自分勝手な運転してる車両に相対して腹立てることは多かった。
 まぁよくよく考えればクラックション鳴らしまくったり、反対車線を確認せずに追い越しを行う車両や後方確認せず突然ドア開ける運転手といった輩は途上国だと当たり前の存在であり、むしろトルコはクラックションを鳴らす車両の割合が少ないだけお行儀が良い国だと言えなくもない。少なくともこの国のドライバーは信号を守るし、横断歩道を通過中の歩行者に対しては停車して道を譲る良識がある。
 むしろトルコは歩行者の意識が相当に低い国であり、運転マナーの悪い国だと歩行者は危険を配慮した通行をしているものだがトルコ歩行者はそこら辺の意識が低く、平気でスマホ見ながら道路を横断したりする。すぐ隣に広い歩道があるのにわざわざ自転車レーンを横一列に広がって歩いてる人が大勢いたりとインフラを整備しても利用者の意識が追いついてない印象があるな。
 東部地域へ入ると片側2車線で側道も広い大型道路に対して交通量が非常に少ないため怖い思いをすることはほとんどない。最初ヨーロッパ側から入国したのでマナーの落差と交通量の多さにイライラしたが、先へ進めば進むほど印象が尻上がりにイメージ上がっていった国ではある。

◎特徴
 国内の東西で大分雰囲気が異なる国。その理由は幾つかあるのだろうが、東トルコはクルド人が多く住んでいるエリアだから・・・という点は間違いなくあると思う。基本的に西部の方が人口が多く町と町との感覚も短い。主要な観光地もそちら側に固まっており、全体的に裕福な印象を受ける。
 カッパドキアより東に入るとそうした光景に変化が生じ始め、特に警察の検問や軍隊の監視所などの数が一気に増える他、トイレも様式からアラビア式が主流になるとか色々。走ってる限りでそんな物々しい雰囲気は感じなかったが、ちょいちょい小さな町で商店が軒並み閉まっており人気が無いゴーストタウン1歩手前といった場所に出くわすことが複数回あった。
 なお日記本文でも触れたがクルド人とはトルコ東部、イラン西部、シリア北部等の通称クルディスタン地方に広く居住する「国を持たない世界最大の民族」と称される人たちのこと。言語もクルド語というのがあるそうだが、実際私があった人たちはトルコ語を使って意思疎通というか翻訳していた。彼らに言わせるとトルコ人はクルド人のことを嫌っており、悪く言う輩が多いとのこと。

◎気候
 緯度が日本と同じくらいなので日本と同じくらいの寒さだろう・・・というのはある意味間違っていない。これは実際にイズミールからメルスィンまでの南西部海岸線沿いなら、1月中の最も寒い時期にもかかわらず無理なく走ることができたし野宿も気楽なものだったし最高気温も20℃近くまで上がったりする日もあった一方で、山岳地帯に入ると気温も氷点下どころか地域によってはー10℃を下回ることもあったことから。日本だって暖かな土地と寒い土地で全然違うでしょ?という意味で。
 単純に国内東部の平均標高が高いので、東部に向かうほど寒さは厳しくなっていった感じであり、最後は3月に突入してたものの季節の巡りによる気温上昇よりも標高による寒さの影響が強かったと思っている。
 大陸横断系のサイクリストにとってトルコは割とベストシーズンに訪れにくい国であり、というのも東西のヨーロッパ・中央アジアの両地域は冬季走行が非常に厳しい環境であるため。これらの土地を夏の走行に合わせようとすると必然的にトルコ辺りで無理が生じて寒い時期での走行を余儀なくされやすい。そういう意味でトルコは寒さの厳しい東部地域であっても何とかギリギリ(1月前半とかを避ければ)凌げる環境でした・・・と言っておこうか。個人差あると思うので参考までに。
 なおこの時期の風は多くの場所で追い風か無風であったため割と楽して走行できることが多かった。全体的には北から南へと風が吹く日が多かったような気がする。

◎言語
 公用語はトルコ語だが、東部地域になるとクルド人の割合が増える関係でクルド語もよく使用されているらしい。なんか歴史的にはアラビア文字だった時代もあるそうだが、現在では一部読めない文字があるもののラテン文字が採用されており、何とか発音が分かる・・・こともあるという感じ。実際に東部地域を走った感覚としては、基本的に意思疎通はクルド人相手でもトルコ語を介して行ってたので全体的にはトルコ語が使われていると言い切ってしまっても構わないのかもしれない。
 英語の通用率はガクッと下がり、都市部や観光地はともかく田舎で英語話者がいたら相当ラッキーと思える程度の通用率。確率でいうと都市部や観光地以外では英語話者は精々5%といったところか。その割に外国人旅行者を見かけた際に話しかけられる確率は大きく上がったため、何言ってるのか分からないので身振り手振りで意思疎通をすること結構多かった。

◎宿(野宿)・Wi-Fi
 探せばそれなりに安い宿があるし、設備に関しては不満を感じるようなことはまずなかったトルコの宿。地方都市のホテルと都市部や観光地におけるホステルが大体同じくらいの料金なので、どちらかといえば個室で気楽にできる地方宿を利用することが多かった。具体的な値段は300リラ(約1430円)を目安にしていて、カッパドキアみたいな町ではこれより高め、メルスィンやヴァンではもうちょい安い宿に泊まっていた。
 ホステルを歌っていてもキッチンが無かったり、ドミトリースタイルかと思いきや複数のベッドがある1室で部屋を借りる料金形態になってたりとフェイントが多いため、チェックイン前にその辺しっかり確認した方が良い。
 なお利用した宿は全てWi-Fiが使えたし、速度も速くて安定しており宿でなくともWi-Fiの普及率は高いため普通にトルコ自転車旅行するのなら、simカードを購入してまでネット環境整える必要は薄い気もする。とはいえヨーロッパみたく町中でFreeWi-Fiが飛んでる場所は多くないし、あっても電話番号の送信が必要なタイプだったりして結局sim契約してないとネットが利用できないパターンは多い。素直にカフェ入るのが無難だが、所謂都会のコーヒー屋とかにはWi-Fiあるものの、田舎のチャイ屋みたいな施設ではWi-Fi設備ないのが基本なので注意が必要。
 今回私は以前のスマホが死亡し幾つかのアカウント引き継ぎに電話番号必要だったからsim購入したが、普段ならトルコはWi-Fiのみで走りきってしまう国だったように思う。simカードは大手3社が存在し、料金の高いメーカーほど広範囲に電波エリアが広がっている傾向にあるとのこと。私は値段が中間に当たるボーダフォンを契約したが、野営中に電波が届かなかったのは1度のみ。なお初期契約の料金は5000円以上してクソ高いと思ったが、以後のデータ追加は1月7Gというプランで750円ほどと安くなる。

◎動物
 特に東部は相当数の牛が放牧されていると聞いてたが、時期が真冬だったことが影響してかそうした動物の姿を見ることは滅多になかった。家畜としては牛とヤギを見かけることが多かった他、どう見ても鶏とは違うデカい鳥が彷徨いてるのを何度かみたけどアイツは何だったのだろう?
 そしてトルコを自転車旅行すると「犬が無茶苦茶危険な国だから気を付けろ!」と方々から聞かされていたので覚悟してたが、結論から言えば全然問題なかった。東部に入るとカンガルー犬と呼ばれるデカくて凶悪な犬種がいるらしく、しかもコイツらが徒党を組んで追いかけてくるという話。実際仲間を呼ぶのは真実だったが、そんな吠えまくりながら追いかけてくる凶暴性はそんなにない。むしろ西武で見かけた小型犬の方がよほどギャンギャン吠えてやって来た印象であり、デカくて強い犬はそんな吠えたりしないのだ・・・と諺通りのことを思ったり。
 こんなこと言ってるが地味に1度犬叩き棒が炸裂してたりするので、場所や時期次第でもっと犬の危険があるともいえる。

◎自転車店
 県都レベルの町ならかなりしっかりしたショップがあると思って大丈夫。下手な東欧諸国よりマラソンプラスが入手しやすい環境にあるのが嬉しい点で、西部の2大都市ことイスタンブール・イズミールのどちらもマラプラの在庫を確認している。聞いたところではトルコ国内にマラソンプラスの製造工場があるらしく、それが入手しやすさに一役買っているのかもしれない。
 ややマクロな視点で見ると、トルコより東部の中央アジア諸国は自転車ショップのレベルが下がるどころかまともにお店が出てこないと言われており、事実か否かはともかく東進を考えているサイクリストはトルコ国内で十分な消耗品を調達したり、交換すべき部品は取り替えておくに越したことはない。
 ショップの分布に関しても東部に向かうほど数が減る傾向にあるが、少なくともイラン手前に位置するヴァンの町ではしっかりしたショップがあったのでここで準備することは可能。

◎物価・食事
 インフレが凄まじいとされるトルコだが、実際2019年に訪問した際のビールが1本170円とかだったのに対し、2024年時は240円が最安だったので確かに相当値上がりしてるな。
 とはいえ食材自体はそれほどでもなく、自炊の場合は肉類さえ気をつけてれば1日の食費は500円を切るのも難しくない程度。むしろスーパーでの不満は食材の種類が少ない点にあり、トルコで食事作る場合は大体同じメニューになってしまったのが残念。
 それに対して外食は種類が幅広く揃っており、ファストフード系のケバブならば200円そこそこで食べれることも多い。個人的には大量の玉子を閉じて作るメネマンというオムレツっぽいメニューが好きだった。
 ヨーグルト文化も強く様々な物に使用されてるし、アイランというヨーグルトに潮見が加わった感じの飲み物はトルコでチャイの次に飲まれてる飲み物だと思う。甘味も様々な種類があるしナッツ類の専門店も豊富、かなり山の中でも魚介類が安く売られていたりと全方位隙がない印象。ただしトルココーヒーは基本的に粉末状態で売られているし、ローカルなお店で購入したコーヒー豆は大しておいしくない。そもそもドリップで淹れるタイプの豆じゃないのだと思う。あと有名なトルコの伸びるアイスだけど、あれを見たのは辛うじて観光地だけ。まぁ1・2月の寒い時期に走ってたので需要もなかったのかもしれないが、食べる機会すらなかったなという感じ。
 一般的にパン食が基本でスープや主菜系のメニューを頼むとパンは好きなだけ取り放題の形で付いてくる。米はピラウのがあるが、油をかけて炊いたり炒めたりしてるため日本のそれとは大分違う味。それと大抵の場合は食後にチャイを飲むか聞かれるのだけど、恐らくこれもメニューの中に組み込まれてるというかサービスしてくれてるみたい。少なくとも私は食堂で1度もチャイが料金に含まれていたことはない。というかトルコで100杯以上チャイ飲んだけど、チャイにお金を払った記憶がない。トルコにおいてチャイは人と相対した時最初に勧めるコミュニケーションツールみたいなものだと思ってた。
 食べ物や宿の物価の割に観光地へ入場料が尋常じゃないほど高い傾向にある。地味なところでATMの手数料も非常に高額な国であり、クレジットカード等においても同様らしい。要するに外国人から取れるところはどんどん取ってやれ!の強気なスタイルを取っており、観光立国として人気なことに国が胡座をかいているイメージがありよろしくない。その証拠に有名でない観光ポイントは料金も安いし何なら入場料など存在しない所もあった。
 とりあえず今現在もどんどんトルコリラの通貨価値は下がっており、それに伴う形で値段のインフレが発生し続けている状況なため、トルコは訪問直前に物価確認しておくのが正解だと思う。

◎総括
 程よく物価が安くて治安も良い、食事も美味けりゃ観光地も豊富で道路状況まですこぶるよろしい全方向に隙のない国。でもトルコの本当の魅力はそんなとこではなくて、そこに住む人たちの素晴らしい優しさとホスピタリティにあると思う。それは4年の時を経て遥かに物価が上がった2024年になっても変わらずあり続けてくれたこの国が誇るべきポイントだろう。
 英語の通用度合いが低いだとか観光地の価格が物価と比べてぼったくりすぎるみたいに決して文句がないとは思わないが、腹を立てることがあっても多くの人から頂いたチャイと共につまらない感情は飲み込んでしまい、そこにはトルコに対する感謝と喜びが残った気がする。
 恐らく自転車でない旅行でも充分楽しめる国であるが、自転車で走ると都会から田舎まで様々な人から声かけられてはチャイを飲み、お互い言葉分からないにも関わらずとても気持ちよくコミュニケーションが取れて別種の楽しさがあると思うのだ。そうした異国で自分と言う異分子が受け入れられてる喜びを存分に感じさせてくれるトルコは、また訪れたいと思わせるに足る良い国でした。