2024年3月5日〜4月21日
 走行日数48日間
 累計走行距離2533km(147297km〜149830km)

◎道路
 トルコよりは1枚落ちるが主要道路は広い側道が確保されてる場所が多く走りやすい国だといえる。割と小さな道路走ってもアスファルト敷かれているのが好印象で、その上山岳地帯でも斜度が緩やかで登りやすい道が多い。いろんな意味で自転車が走りやすい国だと思う。なお車両は右側通行。
 路面はそこそこギャップや穴が空いてたりするうえ、ちょっとでも郊外に出ると外灯は全く存在しないため日が落ちた後の走行はリスクが高い。町中でも郊外でも車両の速度を落とさせるためのバンプが所々に設置されており自転車的には邪魔で仕方なかった。
 車両のタイヤ片が散らばっている系の国なため、マラソンプラス履いてようがパンクするときは容赦無くパンクする。それが不思議と側道狭くて避けにくい場所だったりするのが性質悪い。
 西部の山岳地帯では普通に3000m超えてくる道路も頻発するが、そんな道でも主要道路は完全に舗装されてるし、町と町との距離も大して離れてないのが一般的で割とチャレンジングなルートを選んでもエスケープが用意なことからか、ガチガチの未舗装路を走るという自転車旅行者にも会った。国内で様々な気候が分布してるので、地味にどの時期でも快適に走れる場所があるのは嬉しいところ。むしろ滞在期限が短くて色々走ってみたい場所があっても走りきれないことの方が問題かもしれん。

◎治安
 国としてはアメリカを始め敵対している国家が多く、特に現在イスラエルとは非常に緊張感が高い状況にあるとされている。そんな背景もあって「悪の枢軸国」なんて名指しで呼ばれることもあるイランだが、旅行者的な実感からするとこの国の治安はかなり良いと思う。少なくとも治安の面でアメリカがどうこう言える立場ではない程度には。
 ただし隣国のアフガニスタン・イラク・パキスタン近郊、特にパキスタンの近くは治安が悪いからそっちへ行かないようにと複数のイラン人から注意を受けたので、地域によっては相当危険度高い場所があるのは間違いなさそう。
 私が走った一般的な町では夜中になっても女性が1人で町歩きしている光景を見かけるし、割と人通りの多い公園やガソスタといった場所でも地元民が「野宿?大丈夫問題ないよ!」と言ってくれる程度には安心感がある。
 一方で貧困の問題から都市部での窃盗にはかなり慎重になっている人を見かけたし、町中で車から離れる時はハンドルを固定させるロックを噛ませて盗難防止対策してる車両が多かった。車上荒らしじゃなくて車両本体を盗むのだろうか?私もカメラ盗まれたし。
 町の規模をそれほど気にする必要もなく、全体的に出会う人は朗らかで親切なのだが軍事施設や警察関係の施設、その他大きなモスク等における写真撮影とかは相当厳しく対応しているようで間違ってもカメラを向けたりしちゃ駄目。滞在延長の手続きで利用した入国管理局でも入場時に全ての電子機器を預けさせられたし、荷物に関しても全てチェックが入った。これは素直に考えるならテロ等の対策だと思われるので、そうした対処を厳格にやっている国という意味では治安的な不安はあるっちゃある。
 そして4月14日にイランがイスラエルに向けてミサイルを発射してしまった関係で一気に緊張感が高まったのは間違いない。町の雰囲気は至って平和そのものだったが、イランを発着する航空便は軒並み欠航というか空港そのものが非常事態となり便が無かったと聞いた。イランに滞在している多くの旅行者も様子を見る組と早々に出国する組とに分かれていた印象。出国に動き出したのが6〜7割って感じだったかな。今後どうなるかは分からないが、滞在してる最中に治安状況が急激に変わってしまった国ということになるか。

◎ビザ・出入国
 私が入国する直前の2024年2月より日本人はノービザで15日間まで入国が許可されることとなったのだが、自転車旅行的にはイランの広大な国土を15日間、しかもノービザ入国では滞在延長手続きが不可能という縛りがあるため自転車旅行車は実質ビザ取得が必要なことに変わりはない。
 ということでイランのビザ取得したのだが、近年の流れを受けてイランもeビザでのオンライン対応を受け付けているかと思いきや、ネットで対応してるのは各種データの入力までで、その後に直接イラン大使館へ赴き手続きをしなければならないため個人的には手間が増えたと思う。ネットでは滞在日数入力する項目があり、私は45日間と記入したのだが実際に発給されたビザの期限は30日間であった。このためイランの滞在期間が足りず、テヘランにて滞在延長手続きを実施している。なおイランにおける滞在延長手続きは割とよくある手続きで、私が調べた限りでテヘラン以外にもタブリーズ・イスファハーン・シーラーズ・マシュハド・バンダレアッバースの各都市に加えてヤズドでも手続きができるっぽい。私は23日目と滞在期限が7日残っている状況だったが問題なく処理してもらえたし、パスポートも即日返却されたのだけど、これはペルシャ語話せる友人が手伝ってくれたからだと思われる。
 なお入国に関してだが、運悪くイミグレーションでシステムがダウンしており3〜4時間ほど誰も国境を通過できない状況が続き、システム復旧後の大混乱時に入国審査受けたので恐らく通常時とは色々勝手が違ったであろうと想像できる。荷物の検査とか全てスルーだったし。出国の際には普通に荷物検査があったので偶然なんだろな。
 なお近隣国以外の外国人は普通のゲートではなく別室にて審査となる国境もあるようで、普通に列で待機してると2度手間となる可能性があるため事前に確認したほうが無難。ちなみに審査中に聞かれた質問は特になかった。

◎交通事情
 どう取り繕っても交通マナー良くないのだが、かといって「酷い」と断ずるのも憚られる不思議な国。というのもイラン人ドライバーはちゃんと人や自転車といった存在に対して配慮した運転をしているからだ。その上で交通ルールを守らなかったり自分勝手に逆走やれ後方確認もせずにバックしてきたりとやりたい放題なのだが、こうした大切なポイントがしっかりしてるためかこの国では本気でドライバーに腹を立てるということは少なかったように思う。ちなみにクラックションもそれほど鳴らしてこない。
 かなり車社会でバイクの割合は少ないのだが、町中で交通渋滞が酷い場所だとバイクが歩道上を爆走してることが多く、オマケにこいつら歩行者がいようとお構いなしの無茶っぷり。結構しっかり道路と歩道が分かれていたり、町中には所々に速度落とさせるためのバンプが設置されているが、そうしたインフラ側が頑張って境界線を作ってもどうにもなってないのが現状か。そういえば主要道路のほとんどが反対車線との道路をガードレールで区切ったり物理的に距離を離して構成されていたのだが、これも普通に道路造ったら平気で逆走する車両が多過ぎることへの対策なのかもしれない。そういうアホな運転が横行してる環境なのに、ボロクソにこき下ろすまではしないの私自身も何故だろうと思ってしまう節があるな。

◎特徴
 1、色々あるのだが、ネット規制関連は「宿(野宿)・Wi-Fi」の項に、カード現金関連は「物価・食事」の項で残しているため、ここではアメリカと敵対国家である点について触れておきたい。
 そもそも70年代においてはイランは非常に親アメリカの国であり、欧米文化の影響を受けてイスラム色も薄い時期があった。これに対し警鐘を唱えイスラム教の教義をしっかり守るよう方針を大転換し反米主義となったのが1978年のイラン革命だ。当然アメリカは大激怒、隣国イラクを誘導しイラン・イラク戦争のきっかけを作ったとされているのだが、その辺は各々調べてください。
 ともあれこのイラン革命における一連の流れでアメリカ大使館をイラン人が占拠した事件で2カ国は現在に至るまで国交断絶している。要するにスーダンと同じくアメリカが敵対認定している国であるためアメリカ系のサービスが使用できないという問題が。
 旅行者的に最も困るのがクレジットカードや国際キャッシュカードをイランで使用すると即座にロックが掛かり使用不能になるということか。他にイランの入国歴があると以後アメリカへ渡航する際にはノービザ(ESTA)での入国が出来なくなり、ビザ取得のためにアメリカ大使館で面接を受けてビザを発給する必要があったりする。
 なおイラン国内ではマックやKFC、スタバといったアメリカ企業のチェーン店は一切見かけないが、コーラやペプシは普通に販売されてるし、ホステルのマネージャーが使っていたPCはmacだった。国民感情としては革命前の自由で裕福な時代の方が好きだったという人も割と多く、現イラン政府に対して批判的な感情を持ってる人も多い印象。
 2、イスラム教における2大宗派はスンニ派とシーア派なのだが、人数比ではスンニ派が9割近くを占めており多くのイスラム教国はイスラム教スンニ派が多数派だ。それに対してイランは国民の大多数がシーア派であるイスラム教シーア派の総本山とも言える国。
 2つの宗派の違いは指導者における能力主義と血統主義の違いとか色々あるようだが、旅行者的にはモスクの形が異なっていたり、シーア派の方が割と偶像崇拝に関して緩やかな対応を取っているように感じる点が大きいか。アザーンの流れる内容(歌詞)とかも違うっぽい。このためイランでは革命の立役者であるホメイニー氏の写真や各町における名士の銅像といった物を様々な場所で見ることができる。過去のペルシャ文化として残る遺跡のレリーフ等が割と形を残しているのもこういったところが遠因にあったら面白いんだけどな。

◎ラマダン
 イスラム教におけるラマダン月で実施される「日中における断食」を指す期間のこと。イスラム教はカレンダーが太陰暦で表されるため1年は354日となり、我々の感覚からすると毎年10日くらい日にちがズレていく。つまりラマダン月も毎年10日ほど手前にズレていくこととなり「毎年この日からラマダンなので注意!」とならないのが難しい。
 実はマレーシアでもラマダンに重なってたりするのだが、その際は特に意識することもなくスルーできた。だがそれは比較的戒律の緩いマレーシアだったことがあると私は考えており、ガチガチのイスラム教国であるイランでのラマダン月は相当厳しいこととなるかと想像していた。
 結果としてはラマダンはそれほど問題となることもなく丸々30日間を過ごすことができた。そもそも異教徒なので断食行為を行う必要がないこと、そうした人がいることに対応して都会だとレストラン等の施設も営業してる店が多い(一部閉店してたり垂れ幕で内部が見えないよう配慮してる場所も有)し、田舎にあっては通常通りの営業といった雰囲気であった。大量に準備していた予備食料も邪魔になるからと早々に片付けてしまった程度にゃレストランもスーパーも営業中です。
 そもそもイラン人でもラマダンに対するスタンスは様々で、ラマダン期間中でも平気でシートを広げてピクニックしてる人もいたりする一方でしっかりと断食を行っているっぽい人も見た。
 特に今年はイランの新年休暇期間とラマダンが重なり「レストランどこも開いてないのでは?」問題を気にしていたが、結局食事が出来ずに困窮するといったことはなくラマダン終了を迎えることができた。もっと戒律厳しいイメージのサウジアラビアはともかく、イランよりラマダンを厳しく行う国はちょっと想像できないため、基本的に自転車旅行するにあたりラマダン走行はそこまで気を揉む事柄ではないということだ。

◎気候
 中東だし砂漠のイメージが強い国だった私だが、実際のところ国土が広くて様々な地形を含むイランは非常に気候差が激しい国である。南東部には「世界で最も暑い地域」と評されるルート砂漠があったりする一方で、西武の山岳地帯は4000mを超える標高の高い山々が並ぶ土地だったりする。私は3月にトルコから国境越えて入国したワケだが、その頃は周囲で多々残雪を見かけたし気温も氷点下まで落ちる夜は珍しくなかった。
 この砂漠と山岳の間に位置してるのがイラン高原であり、標高的には1000〜1500mくらいで湿度も低く過ごしやすい土地となっている。イランの主要都市であるテヘラン・イスファハーン・シーラーズといった大都市ラインがこのイラン高原に沿う形で存在してるのは地理的に納得しやすい。土地的には高原といっても緑が溢れる感じではなく完全な砂漠の1歩手前、気候区分で言うならステップ気候のエリアらしい。町の近くでもないと基本畑すら存在せず、砂と岩石が広がる景色が続く。
 南下して海に近づくと標高が下がった上に低緯度地域となるため気温・湿度共に上昇してかなり厳しい暑さとなる。イランは国内で四季が分かれてるよ・・・などと言われたが、確かに場所によって気候は全く異なることを実感しつつ走っていたな。
 風は全体的に西から吹いてることが多く、走行ルート的に追い風となって楽できることが多かったのは嬉しいところ。特に砂漠エリアに入ると遮蔽物がなくなるためか風力も強くなる傾向にあり、ルートを考える際に風邪の影響を考慮した方が良いレベル。そういや久しぶりに乾燥で唇がカサカサになった国でした。

◎言語
 イラン語というのは存在せずペルシャ語が使われている。まぁペルシャってイランの旧称なので意味はほぼ同じ。使用文字がアラビア文字だけあってアラビア語とは言語的に一部通じているところがあるらしい。多民族国家なので地域によってはペルシャ語を使わない人も多いと聞いたな。
 文字が読解不能なのは仕方ないとして、数字に関しても独自のペルシャ数字が使われており多くの場合はこれが使われている。つまりペルシャ数字が読めないと単純な買い物すらおぼつかないので最低でも0〜9までの数字は理解しておく必要がある。なおアラビア語の数字と表記は大体同じだが、一部の数で文字が異なるという意地悪な仕様。
 ローカルな道路とかだと道路看板もペルシャ語オンリーだったり、イミグレーションみたいな多国籍の人間が訪れる場所でも英語表記がされていないことは多い。しかも後者はスマホの持ち込みが禁止されており、翻訳ソフトも使えないという罠があるので手続き関係ではペルシャ語知らない外国人は相当苦労することになる。

◎宿(野宿)・Wi-Fi
 宿代が非常に安い国であるため定期的に利用してはいた。大都市や観光地のホステルでは米ドルやユーロ払いができる宿も一部あるが、この手の外国人をターゲットにした宿は一般的に値段が高い(7〜10ドルちょい)傾向にある。中規模都市程度の宿なら個室で500〜1000円程度で宿泊することも可能。ただしそういう宿にWi-Fiがついてることは滅多にない。設備はしっかりしておりネット以外の点では非常にコストパフォーマンスの高い宿泊施設が多い国だけど、そもそもイランでは現地の方の家にお泊まりする機会が多かったので、それほど宿は利用してなかったりする。なお標高下がったバンダレアッバースでは利用したどちらの宿にも全室クーラーが付いており24時間回しっぱなしでフル稼働していた。野宿もちょいちょいやってはいるが、レストランが安い関係で夕食は自炊する気になれず、夕食をレストランで食べてから野営地を探すスタイルだったため、人のいない場所は多々あれど町の近くとかSAみたいな場所でしかテント張ってない。なお割とイラン人はそういった場所にテント張る人が多く、SAとかでも私のようにテント張って夜を明かしてる家族連れとか見た。都市部の公園とかでもテント張ってる人は多いのだが、こちらは浮浪者っぽい感じであまりキャンプはよくなさそう。実際、出会った自転車旅行者は公園野宿で金をせびられ、断ったら深夜に荷物固定用のロープを切られたと怒っていた。
 さてイランは厳しくネットを規制している国であり、これの弊害なのかWi-Fiの速度は遅いし安定もしていない。SIMカードが15Gで4〜500円とか非常に安価であり、オマケにWi-Fiより速度が速く安定してるため普通に考えるならイランはSIMカードを利用した方が良い国だと言える。ただし旅行者用のSIMは何故か1ヶ月ほど経つと利用出来なくなるトラップがあり、私の場合はSIMのスロットを1→2へと入れ替えて、SIM会社から送られて来たデータをインストールしたら以後使用することができた。パケットは追加購入してないので本当に謎のロックだったな。
 イランが規制しているネット関連は個人ブログ系の他に各種SNSは大体駄目。数年前までインスタグラムは規制の対象から外れていたそうで、イラン人はみんなインスタやっているのだが現在ではこれも規制の対象となっている。地味にGoogle系のサービスは規制の対象外でGoogleマップもGメールも普通に使用可能だったりと何が使えるのか分からんな。SNSも例えばLINEは完全に使えないが、messengerなら送信はできないがメッセージの受信だけは可能だったりと、時期とサービスによって状況が変わっていくため結局自分の目で確かめてみるしかなさそう。
 ということでこうした規制を掻い潜るためにVPNを利用する必要がある。私は細かい理屈まで分かってるわけではないが、これを起動することでイラン外の第3国からネットを発信していると誤認できるシステムで、規制を気にせずネットの利用が可能。ただしデータの通信料と電池の減りが速くなってる感があるため私はVPNつけっぱなしにせず、毎回利用時のみ起動してVPNを扱っていた。
 PCをメインに扱いたい人はイラン入国前に充分な下準備が必要だし、イラン政府も色々対策してるみたいで「このVPNなら大丈夫!」というのはハッキリしないらしい。というか対策されて使えなくなったり、かと思うと復帰したり色々あるとのこと。安心したいなら複数のVPNを事前にインストールしておくべきだが、今は信頼性の高いVPNは大抵月額有料支払いのシステムなので使えるかどうかも分からないVPNを複数入れておくのは金銭的な無駄が多いとは思う。イラン入ってしまうとVPNのインストール自体がネットに接続できず難しいし。
 これに対してスマホのみなら対策は割と楽であり、仲良くなったイラン人に「どのVPN使えば良いの?」とか聞けば親切に色々教えてくれると思う。アプリならBluetooth通信とかでネットを利用せずデータの受け取りが可能なためイラン入国後でも問題ない。ある程度スマホに明るいイラン人ならほぼVPNのサービスを利用しているので気軽に聞いてみるのが良いんじゃないかな。

◎動物
 北西部の山岳地帯には野生の狼が生息してるそうで、現地民から「危ないから野宿は辞めとけ」と諭されることがあったけど実際に姿を見たことはない。それ以外で特に気になった動物は居なかったが、砂漠に近いエリアで足首を毒虫に刺されて2日くらい腫れが引かなかったことはある。
 豚はほぼ姿を見ることなく、牛は山岳地帯ならごく稀に見かけたような気がする程度。基本的には羊とヤギばかりが目に付く感じで、稀にロバ、市場の肉もマトンを見かけることが多い。
 それ以外だと町中で猫の姿を見かけることは比較的多く、犬は非常に緩やかでほぼ追いかけてくることはない。それでも1回犬叩き棒が活躍したような覚えがあるけど。そんな水が豊富な国だと思えないけど、家屋や宿だと蚊が出てきて対処に苦慮した覚えがある。標高1000mとか超えてても関係なく出没するので事前に対策グッズを用意しておくと便利だと思う。イランで蚊取り線香とか見た記憶ないし。

◎自転車店
 想像してたよりは自転車を見かけるしショップもあるのだが、残念なことにそのほとんどが完成車を並べているだけで細かい部品だとかを取り扱っている店ではない。聞いたところでは首都テヘランにはしっかりしたプロショップがあるらしいが、テヘランの町中を自転車で走り回る機会がなかったので特に調べたりはしていない。一応カーシャーンで会ったイラン人サイクリストがオルトリーブのバッグを使っていたり自転車旅行用のギアを持っていたのでイラン国内でもこうした道具が流通していることになるし、その後ショップでバッグが取り扱買われてるのも見た。シーラーズには自転車店街もあって玉石混合ではあったがしっかりしたショップもあった。
 割とアウトドアの需要が高い国で結構しっかりしたアウトドア用品を取り扱うお店は見かけるため、米国の製品はともかくかなりしっかりしたアウトドア用品を一揃えゲットすることが可能。もしかしたらその延長線上で自転車に関連する用品とか取り扱ってるショップがあるかもしれないけれど、私が見つけたアウトドア系のお店は全て個人商店系の割合小さなお店で専門系だったが。
 チェーンやチューブ、ブレーキシューといった消耗品関係ならどうにかなるが、スプロケとかの規格が細かい部品は他国・隣国で探した方が無難だと思う。トルコもそうだがUAEにもしっかりした自転車ショップは多数あるので。何より持ち込んだ現金を消費して旅行続けるタイプの国なので、下手に自転車関連でお金を使うことが躊躇われることもあり悩ましい。ただし物価の安さが自転車用品にも影響してるので、現金が余っているようなら新しく消耗品を買い揃えるとコストを抑えることができるという点でお得ではある。

◎物価・食事
 物価自体は非常に安い・・・のだが、問題となるのは国内においてクレジットカードが使用できない点で、これが買い物及びキャッシングといったATMにおけるイラン国内で全ての行動に影響する。要するにイランでは入国前に予め用意した現金を両替し、それでやりくりするのが一般的な旅行者のスタイルとなる。このためイラン入国前に充分なUSドル又はユーロを準備しておかないと詰む。
 さて問題となるのだが「どれくらいの金額が必要なの?」という点だが、私の場合は結果的に1月半のイラン滞在で両替をしたのは3回、合計260ドルだった。これとは別に新年のキャンプ旅行と観光及びイランの滞在手続き延長処理で120ドル。これと大都市でのホステル泊は米ドル払いが一般的だったのでタブリーズ・ヤズド・シーラーズで合計50ドルちょっとくらい支払っているかな。なので合計すると約430ドルということになる。私は現地のイラン人宅にお泊まりさせてもらう機会がかなり多く、オマケに食事も頂く機会が大変多かったため一般的にはもう少し値段がかかると思われる。ちなみに持ち込んだ米ドルは700ドル弱。
 物価安かったので朝食を除く食事は基本的にレストランを活用していたが、1食の値段は100万〜200万リアル(約260〜520円)くらいと思っておけば良いかな。コーラの1.5リットルが30万リアルとかで80円しないくらい。観光地の入場料も大体100万とかで、人気の場所だと350万リアルといったところ。1日の使用金額は宿を利用しなければ1000円切ることが多い。
 なおイランは公定のレートが実際のレートと剥離している国であり、こういうの一般的に闇レートとか呼ばれる国が多いのだが、イランの場合は余りにもレートがかけ離れ過ぎてて公定レートの存在感が0に近い。だから名前も「実勢」レート。でもネットやアプリで表示される為替レートは公定レートであるため最初の頃は物の値段が判断しづらい問題が。多くの人はbonbast.comという実勢レートが表されるサイトを使って確認してるのだが、このサイトも政府のネット規制対象となっているためイラン国内では閲覧することができないという罠。しかもイランは通貨価格の変動もインフレも激しい国であるため割と短いタイミングでレートの数字が変わっていくというね。VPNのありがたみを感じる。
 問題はこれだけでなく現地イラン人は通貨を昔使われてた「トマン」という単位で表すことが多い。1トマン=10リアルで換算は難しくないのだが、これを理解してないと料金「25(万)ね!」とか言われ(書かれ)て、数字通りに支払った結果モメるということがあるので要注意。しかも上3桁のみを表記する「新トマン」なんて表し方まである。なお当のイラン人はカード払いが普及しており現金で支払うといったこと自体がほとんどないのが現状。これの弊害としてお店にお釣りが用意されてないということがあったり、小さな両替所だと交換する分だけの現金が無くて用意するまで待たされるといったパターンが発生することも。
 一応外国人でも20ユーロほどでイラン国内で使えるカードを作ってもらえるらしく、外国人が多く宿泊する系のホステルやそういった情報に強いイラン人にお願いすることでカードの利用をすることも可能といえば可能。後はイスファハーンのヘリテージホステルという宿なんかはスタッフにお願いすることでカードから現金の引き出しをしてくれるとか話を聞いたような気がするが。そういった抜け道はまぁ色々ある模様。
 んで食事についてだけど、基本的にレストランのメニューはケバブかチキン定食のみで、他の選択肢としてファストフードのハンバーガーやピザがあるくらい。全然種類が選べない上に割と都会に行っても他国の料理があまり普及しておらず、イラン料理以外を選べない状況は多い。正直いってかなりゲンナリしていたというのが本音。
 だがイランの料理が全て残念という訳ではなく、特に家庭におけるローカルフードは非常に美味しく食を楽しむことができた。何でこれを食堂のメニューに乗せないのかと文句を言いたくなる気持ち。恐らくイランにおける食の感想は家庭料理を食べる機会があったかどうかで大きく異なるのではないかと思っている。
 なおアルコールの販売が完全に禁止されており、持ち込みですら厳しく罰せられる国のためイラン国内での飲酒は絶望的・・・かと思いきや、何故か10回近くに渡って酒を楽しむ機会があった。種類もワインにビール、ウイスキーまで多様に飲むことができたしとても素晴らしいお味でした。もちろん全て自家製の言ってしまえば密造酒という扱いなのだが、その割に初対面のドライバーのオッちゃんが私を見かけるなり「ウイスキー好きか?飲むか?」とか聞いてくることがある不思議な国。流石に日記やSNSで飲酒をアップロードとかしてないが、プレゼントだ!とビール(容器は別)を丸1本受け取って1日持ち運んでいたことはある。

◎総括
 イランというだけで危険な国というイメージをあげる人も多いと想像するが、実際に滞在してみてこれほどまでに大勢の人に親切にされた国というのは同じレベルだとちょっと思いつかない。確かにイラン政府は敵も多いし現在進行形で他国と揉めたりする上、国民のみならず外国人にまで色々強いてくる褒められた存在ではないのだが。単純に旅行する国としては相当難易度の高い国であることは間違いない。
 ただそこに住む市井の人たちとの交流や、独特な文化に人類でも最も古くから続く歴史ある土地。中東を旅行するにおいてイランという国を訪れないのははっきり「勿体無い」と断じることができる。それほどまでに楽しく素晴らしい体験をさせてもらえた国だった。
 終盤にイスラエルとの緊張感が高まったことから慌てて出国する事態となってしまい、その際にはトラブルも重なり相当しんどい思いもしたけどそれでも私のイラン評が落ちるといったことはなかった。国というのが「政府」を指すのであればイランは割とクソだと思うが、個人的に国とは「人・民」を指すものだと思ってて、そういう意味ではイランは間違いなく素晴らしい場所でした。