2024年4月21日〜5月11日
走行日数21日間
累計走行距離742km(149830km〜150572km)
◎道路
トルコやイランから入ってくるとレベルの違いに愕然とする。とにかく路面状態が悪くて特に市内の凸凹っぷりは相当酷い。最初はインフラ整備する予算がないのかと思っていたが、その割に道路工事してる人たちは結構見かけたので理由が分からんな。
そして路面よりも問題となるのが国内全域が坂だらけの国であるということ。しかも斜度がかなりキツいパターンが多く、特に南部の山岳地帯では標高高くて斜度もキツいという自転車殺しの道。しかもイランへ向かうには実質1本しか道がなく、東西の国々との国境が通っていないため嫌でも厳しい山越えを余儀なくされる。そして本当に怖いのは下り坂で、急斜度の下り坂が頻発するにも関わらず、路面状況が信頼できないというのは相当怖い。下手にスピード出した状態でギャップに突っ込んだりしたら・・・と思うと慎重にならざるを得ない場面が結構あった気がする。なお車両は右側走行。
側道に関しても無かったりほとんど幅のない道が多く、アルメニアは自転車に対してかなり厳しい国であるといえる。いえるのだけど無茶苦茶景色が良くて走ってて楽しかったのも事実だが。
◎治安
地域住民と直接的なトラブルが発生する雰囲気は少ないものの、この国の男どもは野外でウォッカを飲みまくる悪癖があり、しかも酔っぱらい方が性質悪い。悪い人ではないと感じつつも適当な対応されたり荷物を無理矢理引っ張られたりして破損したことから割とアルメニアのイメージは悪い。
もっと広い意味での治安でもこの国では町や道路上で軍隊や警察の姿をやたらと良く見かける印象だったし、アゼルバイジャンに近い国境付近では無数の軍事基地と共に周辺監視している軍人の姿からも3ヶ月前にナゴルノカラバフ地域をアゼルバイジャンに奪取された影響が残っているのかも?と思わされた。
実際アルメニアの大統領はナゴルノカラバフ地域を強奪されたことに際して柔軟な対応を示し、アゼルバイジャン側とはこれ以上争わず友好関係を築いてく方向に舵を切ったとされてるが、アゼルバイジャン側は「飛び地との間にある領土も寄越せ」と迫ってる話も聞いた。何にしてもアルメニア南部は緊張関係で通れない道路があったりと諸手を挙げて治安を保証できるような土地ではないということだ。
◎ビザ・出入国
日本人の場合はノービザで90日までの滞在が可能であり、国土を考えると自転車移動でも滞在期限的な問題は考える必要なく滞在できる。
では何も問題がないのかといえばそうでもなくて、特に入国審査が謎に厳しい上にその審査方法が「やたら写真を確認する」という独特な方法。別にそれは良いのだが、その後に控えてる荷物審査が異様な程に時間をかけて行われる上、チェックのラインが1つしかないため長蛇の列に並ぶこととなる。私はリアボックスとフロントバッグの2つをチェックされたのだが、中身全てを取り出して米を入れてる袋の中まで確認する徹底っぷりであった。その割に他のバッグはノーチェックだったの「こいつは大丈夫」と判断されたのか面倒になっただけなのか?
ともあれ人数次第なところもあるが、イラン〜アルメニアの国境通過には2時間くらいはかかると踏んで望むのが良いと思う。それより早かったらラッキーくらいの気持ちで。なお出国は30秒フィニッシュ。
◎交通事情
イランと比較すると運転マトモな国だといえるのに、アルメニアドライバーには腹を立てることが多かったように思う。
一部のアホドライバーを除いて運転マナーは悪くないしクラックションもそれほど鳴らしはしない。何なら都市部を除いて車両の数自体が少ないため道路状況が良くない割に安心して自転車を走らせることができる方の国である。
ただまぁアルメニアは自転車(やバイクも)に乗ってる人の割合が極端に少ないためなのか、ドライバーが自転車に対しての運転常識という点で低いことが問題なのではと思ってる。要するに「歩行者には配慮した運転が出来るけど、自転車相手にどうすりゃいいのか分かってない」と感じた。具体的には自転車の目の前で急ブレーキかけて右折するとか自転車が後方に迫っていても平気でドア開けたり急ブレーキをかけたりする。要するにデカい車の存在には気づいても、2輪車の存在など見えてすらいないであろう行動がやたら多い。駐車場に自転車停めてたら出入口を塞ぐように車が駐車してきたりとかあって「悪気はなくても自転車に対する意識がない」というのはなまじ運転マナーが良い方な国だけに腹が立つ。なお車から自転車が見えてる状態だと車間距離広げて追い越ししてくれたりと無茶してくる車両は少ない。でも反対車線に自転車がいても平気で追い越しをかけてくる(自転車の存在を気にしてない・見えていない)ことは頻発する、そんな印象の国。
◎特徴
東西南北をそれぞれ別の国に囲まれた内陸国なのだが、その東西に位置するアゼルバイジャンとトルコとはそれぞれ問題を抱えており両国とも陸路の国境が通じていない。このためアルメニアに入国した場合は必然的にイラン→ジョージアかその逆ルート、場合によってはジョージア→アルメニア→ジョージアの別国境というルートを選ぶことになる。イランとの国境は長い1本道の果てにある国境しか存在しないため、一般的なルートプランニングでこの国境を複数回利用するとは考えづらいので。
なので飛行機を利用するのでなければジョージア又はイランへと抜けるようにアルメニアという国を走行する形となり、その上コーカサス地域はアゼルバイジャンが陸路の国境を閉鎖している(アゼルからの出国は可能)わ、カスピ海が物理的な壁となって移動が制限されるわと陸路移動のルート組みに苦労する状況となっている。
これはアルメニアに入国した時点で「次の国を好きに選べない」と思って先の先まで計画を立てておく必要があるということで、少なくともアゼルバイジャンがアルメニア南部を侵略しない限りはそんな状況が続くということ。そういう意味でイランに隣接してる国境があるアルメニアの現状はまだマシというのが旅行者的に辛いところ。これはトルコはともかくアゼルバイジャンは飛び地との回廊を造ることに積極的と言われており、果てはその土地を摂取し自国領土に・・・という話も聞いたのでまだまだ領土問題の係争地としてアルメニア南部は問題を抱えている土地であるという点からの意見。実際この周辺では町・田舎問わずやたら軍隊の姿を見ることが多く、それだけ緊張感が高い場所であることを思わせた。
◎気候
全体的に土地の標高が高く緯度の割に気温低めの地域が多いしなんなら湿度も低い。5月の時点でまだまだ残雪が残っている山を見かけたのだが標高2500mとかでのことであり、そう考えると日本の残雪が残る春山と同じだともいえる。首都のエレバンが大体1000mくらいの標高なのだが、ここだと5月の時点で掛け布団が必要ないくらいには夜も暖かかったな。雨降ったら一気に気温下がって寒くなったけど。
全体的には南からの風が吹くことが多く、追い風となって走るの助けてもらえることが多かった。山が多かったのでそれほど風が吹き付けることはなかったように思った一方で、谷底などを走る際には強烈な風が吹くこともあり油断は禁物。
◎言語
アルメニア語なのだけどロシア語もよく使われているようで、外国人の私を見てアルメニア語が使えないだろうことを理解してか「ロシア語話せる?」と言われる程度にはロシア語が幅を利かせている印象だ。英語の通用率はかなり低く、都会も相当だが観光地でもない田舎では20人いても1人英語が話せれば良い方というレベルかな。
なおアルメニア語というのは独自のアルメニア文字というのを使用しており、何というか丸っこいアルファベットみたいな見た目をしている。当然法則性も何も分からないのだが、例えばスーパーなどで販売されてる商品の説明がアルメニア語のみで他国語の表記がないため買い物に苦労することが多かった。ヨーグルトとクリームチーズと牛乳の違いが分からないんだマジで。
◎宿(野宿)・Wi-Fi
首都のエレバンは非常に安く、1泊1000円以下もザラにあるが戦争逃れの長期滞在しているロシア人が山のようにいる。対して他の都市ではホステルでもエレバンに比べて1.5〜2倍くらいの料金が常となっており、しかしこうしたことから利用客層は完全に一般旅行者のみとなっている。
個人的にはエレバンの狭くて人数も多い環境で宿泊するよりも、多少値段が高かろうと近隣都市なり観光地の宿を利用した方が良かったと思う。夜中にイヤホンも付けずYouTube流したり電話するような輩が気にならないならエレバンでの滞在も悪くないが。
町を離れてしまえばほとんどの場所でキャンプをするのに困ることはないし、天気が悪くても町の周辺に廃墟が残されていることが多く、テント泊でも雨を凌ぐことは難しくない。結構な頻度でレストエリアも出てくるしテント泊主体のスタイルでも全然問題ないと思う。
割とWi-Fiの設置状況も良く、特に私の場合はフードコートにおけるWi-Fi設置率が100%だったため、そうした場所で昼食食べつつネットするといったスタイルが定着していた。宿で多人数が同時接続しても快適に使える速度が維持されていたし、普通にネット作業する分には全く困らないと思う。イランから入国して初日は規制がないことと速度の速さに感動してネット使ってましたよ私は。
◎動物
家畜動物では牛を見かけることが増えた他、ヤギや羊といった動物も引き続き見かけることは多い。田舎だと牛が道路上に鎮座して車両の通行を堰き止めるようなこともあったりしたのが印象的。
それと犬が非常に攻撃的になっており、田舎道のガソスタとか商店みたいな他に人工物がない建物とかは犬を飼ってることが多く、奴らの縄張りなのか近くを走るとすぐ反応して吠えまくりながら追いかけてくる。自転車や人間に噛みつくようなヤバさはそこまで感じないが危険なことに間違いなく、犬叩き棒も複数回に渡り火を吹いた。
あと田舎の森林地帯は結構色んな場所で熊が発生するらしく、あんまり山の奥深い場所に入り込んで野営するのは憚られる。そもそもアルメニアの森林地帯は山の斜面に広がっていることが多く、テントを張ろうにも平坦で適した場所というのが森の奥に入って出てくるものではないため、あまり気にしなくても良いような気もするが。
◎自転車店
これがもう全然自転車ショップがない国だった。流石に首都のエレバンには幾つかスポーツ用の自転車を取り扱う系のプロショップがあるようだが、それ以外の都市ではマトモなショップを見つけるのは難しい。そもそも自転車は玩具とかを扱うようなお店で完成車が並べられてる位しか見かけたことがなく、交換用のチューブですらセヴァンのお店を何店舗も探してようやく取り扱ってるのを見つけることができたレベル。これはもうアルメニアで自転車トラブルあった場合、国内でどうこうするより他国へ移動した方が良いレベル。そもそも山ばかりの地形のためか、国内における自転車需要がほとんど存在しておらず、地元民のサイクリストはエレバンの近郊で1〜2度姿を見かけた程度。バイクもそうだけどアルメニアで自転車は人気がないようです。
◎物価・食事
イランほどではないがかなり安い。感覚としては食費・宿泊費ともに東欧の物価安い国と近いくらいかな。具体的には国名も似ているアルバニアとか。
ただ食材に関しては肉類が他の物価に対して相当割高な印象を受けたし、ビールに関しても格安で楽しめるというほど安くはない。1リットルのペットボトルタイプのビールだと800ドラム(約320円)よりちょっと安いくらいかな。調子に乗って買い込むと思ったより高くついて収支計算すると驚くことが何度もあった。
イランから引き続いて鉄の串に肉を通したスタイルのケバブが幅を利かせているが、イスラム教国ではなくなった関係で豚肉のレパートリーが増えており、単純にケバブ自体の味も良くなったように思う。少なくとも「選ぶほど種類がなくて毎日同じメニュー」といった自体になるようなことはない。
本場はジョージアだと聞いたが、餃子のような皮で肉を包んだヒンカリという大型の焼売みたいな食べ物が何処のスーパーでも存在し、その多くが量り売りスタイルであるためお求めやすいし、茹でても焼いても揚げてもイケるため重宝していた。これがまたビールのお供にちょうど良いのだ。
あとこの国では観光の多くが宗教関連施設であるため入場料金が無料であることが多いし、入場料が必要な施設もかなり良心的な価格に設定されている。そういう意味では旅行者の懐事情に優しい国だったと思う。その割に1日あたりの使用金額確認するとかなりお高いの不思議だな。
◎総括
とにかくキツい山が多くて体力的に大変な国だった。思い出してみるとアルメニアで平坦な道を走れたのはエレバン南部の僅かな場所のみで、他の土地では常に登るか下るかしていた印象だ。それを示すかのように標高が1000mを下回った土地がイランとジョージアの国境付近のみ。如何にアルメニアという国が山と共に存在してるかをこれ以上ないほど実感する結果となった。
ただそうした土地をこの時期に自転車で走れたということは、苦労とともにこれ以上ないほどこの国の美しさと気持ち良さを楽しめたことと同意であり、特に前半戦の晴天が続いた山々が織りなす見事な風景はアルプスや中央アジアの高山地帯(行ったことないが)と比べても決して劣ることがないと思う。
むしろ物価の安さと交通量の少なさから本格的な山岳地帯の自転車旅行を考えている人にとって、アルメニアという国はワンランク上の自転車旅行に挑戦するのにうってつけの土地であるといえる。私も訪れるまでほとんど知らなかった国だけど、大層楽しませてもらいました。