2024年9月25日〜12月3日
 走行日数70日間
 累計走行距離1555km(157242km〜158797km)

◎道路
 これは文句なく最低レベル。別に登山道を無理矢理走ったからとかそういうワケじゃなくて、普通に一般道路の質が悪すぎる。私の訪問ちょっと前に大規模な洪水がカトマンズ周辺を軸に多数発生してかなり道路が崩壊したとニュースが流れたけれど、驚いたのは一見しただけじゃ「どれがその崩壊した道路なのか分からない」という程に道路が何処もボコボコガタガタで未舗装だらけ土砂崩れだらけなこと。
 山道がそうなら平地は大丈夫なのかといえば全然そんなことはなく、こちらも国道1号線という国内における最大手道路であろう道が中央分離帯すらない道幅に平気で未舗装路が混じったりとお世辞にも「良い道」とは呼べないレベル。インフラ補修をするだけの予算が全然足りてないことが火を見るよりも明らかで、アスファルトであっても突如謎の穴が出てきたり変なギャップがあったりと「安心して走り続けられる道」というのが僅かしか存在しない。故に山の多い国であっても下り坂でスピード上げるなんて私は怖くて絶対できないわ!と思っていた。かといって路面を気にして下ばかりに注視してると、逆走してくるバイクなんかも多くて気が抜けない。全く恐ろしい国である。
 なおアンナプルナサーキットは自転車を活用して1周できることで有名な道だが、MTBならともかく旅行用自転車での走破はかなり上級者向けの道で、川の渡河だけで大小100本はあるし泥道やマトモに乗って進めない未舗装路、自転車を持ち上げないと登れない段差や乗車したままでは登れない坂も多数出てくる。でも不思議なことにここ走ってる時がネパールで1番楽しかったので道というのは本当に分からない。

◎治安
 かなり良いとは思うのだが、ネパール人は喧嘩っ早い印象で道端とかで何が原因なのか争ってる姿を複数回見かけた。私も1度前方の車両を抜きたいがために周囲確認せずこちら側に寄って来たヘタクソバイクに「接触するわクソボケ!(日本語)」と罵倒したら、現地語で文句言いまくった挙げ句にサイドバックに蹴り入れて逃げていったゴミカスと遭遇してる。そういうことから無用なトラブルが起きそうな確率は高いかもしれん。
 昔はカトマンズ〜ポカラの道とか週末になるとゲリラが出て来てバスを襲うとかそう言った事件がよくあったそうだが、現代ではそう言った過激な犯罪は数を減らしたと聞いたし同じ山中でもエベレストベースキャンプやアンナプルナサーキットみたいな人気のトレッキング道では危険はほぼ無い。ただ今でも山中では野宿をしないほうが良いと言われたのだが、それは動物的な危険ではなく山賊に襲われるからという理由だったのでいるところにはまだ残っているのだろう。ちなみにゲリラ・山賊は平日は普通に農作業してる農民がほとんどだそうで、そのため休みとなる週末や祝日に事件が起きるというのがちょっと面白い、いや面白くはないのだけど。

◎ビザ・出入国
 入国時にアライバルビザが取得できるので、特に事前準備をしなくても国境で15分もあれば申請手続き自体は簡単にできる。その際に滞在日数が15日・30日・90日と3種類から選べるのが特徴的で、それに伴い必要料金も30ドル・50ドル・125ドルと変化する。
 曲者なのがアフリカ諸国と同様に折り目やシミ1つ無いお札でないと受領できないシステムとなっていることで、私はここでほとんど難癖に近いダメ出しを受けて100ドル札を使うことが出来ず止む無く15日でのビザを取得している。
 ポカラ・カトマンズにあるイミグレーションのオフィスで滞在日数は最大(年間で)150日まで好きな日数だけ延長することが可能だが、その費用は15日追加までは一律で45ドル、それ以上の場合は1日につき3ドルずつ加算されていく。要するに滞在延長する方が割高となる計算だ。
なお手続き自体はポカラだと人数も少なくあっという間に完了するが、カトマンズの場合は何十人もの人たちと一緒に並んで2〜3時間は待たされたので選べるならばポカラが楽。そもそも最初に90日ビザを取得してればそんなこと気にする必要もなかったのだが、1つだけ利点を述べるならば滞在延長の場合は米ドルでなくて現地ネパールルピーでの支払いが可能だということはある。
 さて、もう1つ問題となるのがネパール→インドへと陸路移動する際に通過できない国境が存在する点。調べた所でネパールとインドには現在6カ所の外国人が利用可能な国境が存在するが、これらの国境全てでインド→ネパールの移動は可能な反面、ネパール→インドの移動が確実に可能な国境は私が確認したところで「スノウリ」と「ビルガンジ」の2カ所しかなく、それ以外は実際に国境まで行ってみないと分からないというのが実情らしい。この辺のルールはしょっちゅう変更されるらしく旅行者泣かせの罠状態になっていると思う。

◎交通事情
 道路も悪けりゃドライバーも悪い。インドから入ったので最初は「なんてクラックションの少ない紳士的な国だ!」とか勘違いしてたけど、普通にネパール人の運転は危険だしクラックションも鳴らしまくる。更にバイクと大型バスやトラックが性質悪い。ただトゥクトゥクやリキシャーと呼ばれる3輪タクシーが少ないのでその辺は多少気が楽。
 路面の悪さ故に動きの遅くなった大型車両を我慢できず無理矢理抜いていこうとするバイクが多いのだが、そうした際に反対車線を確認せず飛び出して無意味な渋滞を引き起こすとかよくやってるし、都会で数が多くなると周囲を確認しないで車線変更して接触起こしてるヘタクソライダーが多数いるので非常に危険。タメル地区みたいな歩行者の数が多く道が狭い場所をスピード出しながら走り回るわ、下手すりゃ一方通行を逆走してる輩もいる。こうしたバイクが厄介というのは特にアジアで感じることが多く、嫌な意味でアジア圏の国に戻って来たんだなぁと感じる。
 信号なんかは大都会にしか存在しない上に大半は壊れてるのか通電してないだけなのか動かず無用の長物と化していて交差点なんかは行けると信じて飛び出さないと永遠に渡れないベトナム方式。本当道路周りで褒めるところが見当たらないなこの国は。
 道路の狭さも関係してくるのだろうが、オーバーテイクしてる途中のトラックがそのまま自転車側へと迫って来て、そのまま道の外(崖下)へと押し出されそうになることが複数回あった。恐らく対向車が来てたから慌てて道幅開けたのだろうけど、そんな状況でも平気で追い越しをかけようとしてくるのがネパールドライバーということだ。

◎特徴
 世界最高標高の山を含むヒマラヤ山脈が国内全域に渡って広がっている。このために国全体がとても標高の高い場所に位置してるという誤ったイメージを持たれてる節がある。実際のところ標高の高い場所に位置するある程度大きな町は僅かであり、首都のカトマンズは約1350m、第2の都市ポカラで約800m程度。
 多くの都市も山脈から離れた標高200m前後の国内南部に集中しており、ネパールにおける自転車旅行は普通の都市間移動する場合むしろ暑さに注意しなくてはならない。
 幾つかの山には非常にエキサイティングな自転車で回れるコースが用意されており、そうした道で私は5416mまで登ったりもしたが、流石にこうしたルートを世界1周仕様のフルパッキンで走るのは無理があるので長期旅行者がネパールの人気山岳コースを走りたいなら、どこか拠点を決めて荷物をデポした方が賢明。別にアンナプルナサーキットじゃなくても魅力的な自転車コースはカトマンズやポカラの書店で売られてるガイド本で沢山紹介されているので色々参考にしてみては。

◎気候
 カトマンズでは「日本と大体同じくらいの気温」と言われたが、確かにそんな気がする。緯度が低く標高が高い関係でちょうど日本の東京かそれよりやや南(九州くらいか?)の気温となるのだろう。
 なお標高の高いカトマンズでそんな感じなので他の南部の都市ではもっと気温は高い。10月上旬では連日30度を超える暑さが続いてた。11月の終わりの時は流石に気温も落ち着き日中でも20度ちょっとの過ごしやすい環境になっており心地よかったな。
 特にカトマンズ周辺だが大気汚染で空気が非常に悪い。晴れてる日中に町中を歩くと日射しの中にキラキラと小さな塵だか埃が舞っているのを視認できるレベル。そんな環境なので天気が良くても抜けるような青空を拝むということは難しいし、エベレスト街道から帰ってくる際に痛めた喉がカトマンズ滞在中ずっと治らなかった(薬も飲んでいたけど)一因になっていると思われる。
 他にネパールは雨季が5〜9月頃とされていて、特にトレッキングが人気のこの国では冬を避けた時期で尚且つ雨の降らない10〜11月及び3〜4月が人気のシーズンとされている。トレッキングという意味では残雪が無い10月が1年の中で最大のピーク。
 山の上はちょっと特殊な世界なのでそっちの気候は別記事のアンナプルナサーキットとエベレスト街道についてで記載してるのでそちらを参照。

◎言語
 ネパール語。文字もネパール文字なのは良いとして、数字も独自の文字なのが大変。そもそも売ってる品物の値段が表記されてるの都会くらいしかないので影響は少ない方だけど、例えば道路ポストとかあっても次の町まで名前も距離も分からず情報が全く読み取れないと言った問題はちょいちょい発生する。
 ただ英語の通用率は非常に高く、インドなんかより遥かに英語でのコミュニケーションが円滑にできることが多かった。特に都市部と登山道に関しては言語関係でほぼ苦労をした記憶がない。そんな登山道でも結構な割合でネパール語表記のみの看板があったりして、何というか「母国語にプライドがあるのかな?」とかよく分からないこと考えてた。旅行者には意味のない内容だから英語で併記してないだけだと思うが。

◎宿・Wi-Fi
 全体的に安価な値段にも関わらずレベルが高くてコスパに優れるネパールの宿。特にネット関係は優秀で、ヒマラヤの山奥を含めて70日滞在してWi-Fiが無かった宿は1軒だけしか存在しなかった程。1泊の料金も500〜1000ルピー(約550〜1100円)といった程度で、都市部だとホステル系を探せばもうちょい安い場所もあるという感じ。ただし低地の宿にホットシャワーの設備はまず付属していない。 
 割と多くの宿で敷布団(マットレス)に全くクッション性がなくカチカチだったり、縦尺が足りず背が高いと足を伸ばして眠れない大きさのベッドが出てくるので、チェックイン前の部屋確認は重要。なお低地だとブランケットが無いというパターンもままある。
 トレッキングをする場合は道中の山小屋(ロッジ)に宿泊することもあると思うが、この場合「その宿に併設している食堂で夕・朝食を注文する」という条件で、宿泊料金を極端に値下げする独特のルールが存在する。アンナプルナサーキットとエベレスト街道どちらも僻地にある宿で場合によっては宿泊費無料にまで値下げしてくれるため大変有難いサービスであった。
 ネットの速度も全体的に速くストレスを感じるようなことはまず無い。カトマンズではあんまりサクサク動くものだから動画のデータを全てクラウド上にアップロードしたりもしたが、地味にこれを簡単にできる途上国というのは珍しい。
 山奥の場合はそりゃ通信環境も悪化するのだろうけど、そうした場所のWi-Fiは1日の利用料で宿代以上の値段が必要になったりするのでそもそも私は利用してなく言えることがない。私は事前にそれを見込んでSIMカード購入して行ったのだが、個人SIMでは使えるエリアがかなり狭く有用であったかどうかは怪しい。
 とはいえ28日間で10Gくらい使っても500円程度の料金プラン、インドと違って系列店に行けば簡単に手続きしてくれるのでネパール旅行の際には「とりあえず契約しとくか」程度に確保しといても良いと思う。停電の多い国なので、それが原因でWi-Fiが使えなくなってもネット接続できるのも強みだし。

◎動物
 象や虎が出る道を走ったりもしたが姿を見るようなことはなく。南部の方だとインドの(ヒンドゥー教の)影響が強くて路上で牛の姿を見かけることも多い。山岳地帯に入ると険しい土地に強いヤギの姿が増えたのが印象的かな。犬は一部の山岳地帯にいる奴が攻撃的だった。
 山に入ると低地ではロバかと思いきや馬とロバとの交配種であるラバが荷運び動物として活躍していた。顔も体格も本当に馬とロバとの中間という感じで見た目が面白い。なおアンナプルナサーキット方面では全体的に馬が多かったが、エベレスト街道ではナムチェの町を境にそれより標高の高い場所ではヤクの姿を見ることが多かった。一口にヤクといっても毛の長いタイプもいれば牛に近いタイプもいたりと様々なヤクが見れて面白い。このヤクを見たことで世界で活躍している一般的な「家畜」として扱われている動物(体重45kg以上で全14種)は全て見たんじゃないかなと思う。働く動物は偉くて賢い。

◎自転車店
 ポカラとカトマンズにはキチンとしたプロショップがある。なんならカトマンズにはトレックの正規販売店まである。ただし扱ってるのはほぼ100%MTBタイプなので必然的に取り扱ってる部品や用具も全てMTB系で占められている。私の場合はバーテープがボロボロで交換したいと思っていたが、結局ネパールでは見つけることが(正確には1店舗だけ売ってたが合う色がなかった)できなかったりしている。
 それでも人件費が滅茶苦茶安い系の国でしっかりしたショップがあるという条件もあって、まだガタのきてないBBや消耗していた部品の交換を実施している。隣国インドが思ってたよりずっとスポーツ自転車に縁のない世界だったので、バングラディシュは知らないからなんとも言えないが、南アジアで自転車のトラブル解決するならネパールが第1候補になると思う。
 なおこれらの町以外でも自転車ショップの姿を目にすることはあれど、ほとんどの場合は完成してる車両をそのまま陳列してるだけの販売店で修理やパーツの販売には一切関わっていない系とか玩具用品の一角に自転車コーナーが展示されてる程度の扱いであるため利用価値が低い。まぁそんな大きな国じゃないので、何かあればカトマンズかポカラに行けば良いと私は考える。

◎物価・食事
 非常に安い。山は別としてカトマンズやポカラでは若干全体的な物価が上がるものの、元の値段が食事だったら1食150円が200円になるとかそんなレベル。その食事も南部ではほぼインドと同様のメニュー構成だが、北部に入ってチベット文化が混ざると味やメニューに幅と彩りが出て俄然美味しくなる。有名な餃子とよく似た料理「モモ」には付けダレに黄土色した独特な調味料を付けて食べるのだが、ネパールではモモ意外にもこのタレを使って味付けする料理が非常に多い。
 国民食として親しまれているダルバートはご飯に豆のペーストを流してジャガイモのカレー等と一緒に食べる料理だが、これを食べてると途中で必ずご飯とダル(豆)のお代わりが大量にお出しされるのでお腹いっぱい食べたい時のマストメニュー。山ではとりあえずコレを頼んでおけばOKという便利な品。なお似たような料理でカジャセットとか色々あるが基本スタイルは同じみたいで食べてると追加で米とおかずが提供される。ただし無料で追加してくれるのは米・芋や野菜系のみで、例えばチキンダルバートを頼んでも鶏肉が追加でお出しされることはない。
 なおアルコール関係は一気に規制が緩みそこらの商店でも気軽に購入できるようになったものの、その料金はかなり高め。ビールに関しても500mlのロング缶だと場所にも寄るが270ルピー(約300円)とか相当なお値段する。
 安く飲みたいならラクシー(ロキシー)という地酒が多くの食堂で自作されており、大体1カップ50ルピー (約60円)で注いでくれる。ただしこの酒、度数が5〜60%と無茶苦茶に強いのでお店側で予め薄めてない場合は自分で割って飲まねばぶっ倒れること必死。
 他にカトマンズでしか見なかったが木製ジョッキにキビを敷き詰め発酵させたトゥンバという酒もある。こちらは1杯150〜200ルピー(約170〜220円)とやや高価だが、一緒に提供されるポットでお湯を注ぎ足すことで3〜4回飲み直すことができるシステムなのが面白い。もちろん徐々に味は薄くなるんだけどさ。
 全体として南部だとインド料理色が強く、山を登るとチベット文化の色が濃くなる感じ。なお私個人の好みとしては、圧倒的に北部のチベット料理を食べてる時が幸せだった。

◎総括
 国民や文化の魅力も多々あるのだが、やはりこの国に来たのであれば世界最高の土地であるヒマラヤの山々へ訪れてみるべきだと思わずにはいられない。正直いって低地のネパールは暑くて道が悪くて食文化もインドとほぼ変わらず面白味に欠けるところもあったと思っているが、山へと登っていくことで眼前に広がる素晴らしい世界に加え、その美しくも厳しい環境で生活する人たちの文化や生活といった別の姿が見えてくる。
 そうした地域を自転車で走るのは相当大変だし、トレッキング道とかを進もうとすると生半可な覚悟では走れない道となるが、そうした苦労を掛けるだけの価値があったと断言できる素晴らしい体験ができる。いやまぁ普通にトレッキングで歩いても最高だったが。
 ともあれここまで雄大な高山地帯を楽しめる土地は世界でもそう多くない。入国時に迷った場合、とりあえずビザ代は90日で支払って、入国してからじっくり何処のトレッキングへ行ってみようか調べれば良い。お金をケチって短期滞在にしてはネパールの魅力を充分に味わうことなく終わってしまう。ただし雨季の時期を避けることが大前提としてあるのだが。
 そこまで大きくない国土にひたすら続くヒマラヤの姿。眺めるもよし、近づいてみるのもよし。手頃な山へと登ってみるのもよし。山が好きな人にとって、本当にこの国は最高の聖地であったと思う。