2024年5月28日〜8月13日 9月11日〜9月25日 12月3日〜2025年1月23日
走行日数145日間
累計走行距離7485km(1回目3756km・2回目896km・3回目2833km)(151206km〜154962km・156346km〜157242km・158797km〜161630km)
◎道路
かなり良い。日本の約9倍という広大な国土にかなり細かく網の目状に道路が通っているが、少なくとも主要道路に関してはしっかり舗装されているし側道もあって自転車的には走りやすい。というか側道の存在が無かったらインドの主要道路なんて怖くて走れたもんじゃない。
一部の都市にしか信号機はなく、かといってラウンドアバウトタイプの交差点もそれほど多くない。なので交通マナー的に交差点の存在が非常にストレスとなる。
主要道路はどこも大体中央分離帯がガードレールとかで物理的に遮断されていて、下手に反対車線へ入り込めないようハード面で対策されているのだが、これが原因で普通に道路を逆走するドライバーも多いため油断は禁物。
基本的に路面状況も良好で、一部ガタガタだったり州によっては速度落とすためのバンプが大量に設置されていたりと特色があるものの、ラダック以外の土地ではアップダウンがほとんどないこともあって高速巡行で走り続けることが可能。小さな村とかに入ると一気にインフラレベルが低下するし未舗装のガタガタ道が大半だけど、単純に町から町へと移動する分には道路で困ることは少ないと思う。
ただし道路工事の規模が非常に大きく、2〜30kmに渡ってアスファルト掘り返して未舗装路が続いたりすることがある。1度こうした道に入ってしまうとなかなか別のルートに逃げられずドロドロにされながら走行が続くこととなるため悩ましい。
とにかく車両の数が多い国なので下手にマイナー道路に入っても「車両がいなくて快適」とはならず、むしろ狭い道路でインド人ドライバー盛り沢山というおよそ考えうる限り最悪の状況となる可能性の方が高いため、基本的には幹線道路を選ぶようにしてルート選定した方が良い。
あと都市部に関してはもう道路状況とか関係なく最低を煮詰めたような状況での走行を余儀なくされるため、極力人口が多い都市には近づかない方が良い。私は5月のデリー脱出で「これ下手したら死ぬかも・・・」とか思いながら走ってた。
◎治安
あまり良くない気がする。何というかインドは直接的に何があった訳じゃなくても「油断してはならない」と思わせるに足る感覚があったし、恐らくそれは間違っていないと思う。
とにかくインド人って地元コミュニティ以外の人間が現れると多くの人間が声をかける訳でもなく「じっと見てくる」傾向があり、何処にいても人から監視されてる節がある。それはある意味安全なのでは?と思うのだが、彼らはその一方で私が自転車から離れると、直ぐに自転車を勝手に触り始めブレーキを握りライトを点灯させる。要するに他人の物だからとかそういった遠慮が全くない人たちなのであり、このため人のいる場所では「常に監視されている&自転車から離れると勝手に触られまくる」という事態が多発することから不安感が強い。どう好意的に見てもインドは貧富格差の凄まじい国であり、貧困から起因する窃盗系の犯罪は低くないように感じるため、こうした状況は常に不安を覚えつつ活動していたし宿に自転車置くときは最低でも建物内でないと安心できないと思っていた。日記には書いてないけど、自転車から目を離した隙に手持ちライトを盗まれたし。
だがまぁ盗難以外のアグレッシブな強盗だったりインドで悪名だかい詐欺とかに関しては所詮デリーとかの大都市や観光地及びその周辺に限定した出来事であり、そんな人の多い場所には絶対行きたくなかった私的には全体を通して危険だなと感じたことがない。夜中も平気で出歩いてたけど何とも思ってなかったな。とにかく沢山の人が声かけてくる国だけど、結局私は1度も詐欺どころか宿の営業すら受けたことはない。悪者が一部の地域に集まり過ぎているため、むしろ地方は落ち着いているという状況だと言えるのかもしれない。
◎ビザ・出入国
入国にはビザが必要な国である。2024年現在でそのビザ自体の種類が複数存在しており、主要な国際空港からの入国であればアライバルビザも発給されたりする・・・と書くと案外入国簡単そうなイメージだけど、インドという国のイメージがそうであるようにルールもかなり適当でしょっちゅう規定が変わったりする不確実なアライバルビザは確実性に欠ける手段として人気がないらしい。
ということで一般的な旅行者なら他に大使館に出向いて取得する領事ビザかネットからの申請ができるeビザを選ぶことができる。そんでここ最近の状況だと圧倒的にeビザが便利で簡単となったため、私はeビザの手続きをとって入国した。ビザのタイプもマルチプルビザ(期間内に何度でも出入国可能)だし、何度も大使館に足を運ぶ上にビザ発給までパスポート預かられてしまう領事ビザと比べて特にマイナスとなる要素がない。今なら基本的にeビザでの発給が1番だと思う。地味に1度発給すると最大5年間有効なビザ(期間は選べるのだがどれを選択しても料金は同じ)らしく、再訪するかどうかは知らないけど当然のように5年間有効ビザを取得した。
手続きのやり方に関しては日本語でも細かく説明してくれるサイトがたくさんあるので調べれば良いし、申請してから1日後にはビザが発給されたとメールが来たくらいにはスピーディだった。ただし到着する飛行場や初日の宿とかを記載する欄があるため事前に航空チケットを購入しておくことが条件となり、ビザ発給にはある程度前もって準備をする必要がある関係上自転車旅行的にスケジュールを縛られてしまう航空券を早いタイミングで購入するというジレンマが。私はフライト期限に遅れるのが怖くてかなり余裕持ったスケジュールで予約したのだけど、そのためバトゥミに到着してから時間持て余したりした。
それと面倒臭い点で「eビザでの初回入国はフライトのみ」という謎の制限がある。このため例えばネパールに入国して陸路でインドへ渡ろうとした場合、過去にインドへ入国してないとeビザでは入国することができないという問題が。私がこの地域で最初にデリーからスタートしたのもこの問題を解消するためである。
なお肝心の入国審査はeビザのデータ印刷した書類さえ準備しておけばほとんど問題にはならないが、入国時に書かされたカードとビザ書類との内容を確認してたので、私みたいに電話番号や宿泊地の住所を適当に記載してると齟齬が出て詰問されるかもしれない。
◎交通事情
ゲロカス。オブラートな言葉に包むことすら不可能な世界最低レベルの運転マナーとクラックションの嵐。自転車でインドを走ると他にどれほど魅力的な面があろうとも、この運転の酷さから魅力が大きく減退してしまうことに疑いの余地はない。
とにかく自己中心的な運転が目立つ上にインド人の運転技術そのものもかなり低いと感じさせる。なので車幅を見誤って隙間に突っ込み接触事故起こすとかしょっちゅうやってるし、先を見通した運転なんかできないため限界まで車間距離を詰めて、その結果反対車線からの車とかち合い逃げ場がなくなりお互いに「邪魔だ」とひたすらクラックションを鳴らし続ける不毛な光景が出来上がる。
というか意味なんか無くてもクラックション鳴らしまくっており、それが凄まじい数であちこちで聞こえてくるため本来の意味である「危険を知らせる」といった方向に活用されてない。この国でクラックションに一々反応してたらマトモに運転なんかできないという話。
大概の国ならバス・トラックやリキシャと呼ばれる三輪タクシー、バイクと車種によって危険度に差が出るものだが全て満遍なくクソ運転してくるので逆説的に「どれが1番危ない」というのが存在しない。ただ自転車的に1番おっかない思いをする確率高いのがリキシャで、コイツら自転車をオーバーテイクした直後に急ブレーキかけてくるヤバい運転を躊躇なく行うため洒落になってない。救いなのはラダック地方や高地のエリアでは姿を見かけないことか。
基本的に「ルールを守る」という概念が存在しないため遮断機の降りた踏切や赤信号でも関係ないし、むしろコチラが信号表示に合わせて停車してるとその脇を凄まじい速度でぶち抜いて行く輩がいるため下手なタイミングで停車しない方が安全という始末。彼らが停車するのは「自分が危ないから」であり、それ以外の理由はない。
またブレーキ使って減速・停車することを「負け」と考えてる節でもあるのか、速度を落とすのは最後の手段として運転していると思われる。つまり前方に自転車がおり道路幅が狭い場合「広い場所まで待つ」ではなく「クラックション鳴らして退かせる」というのが第一行動となり、例え状況的にどうやっても道を譲れなかろうが関係なくひたすらビービー鳴らし続けるか無理矢理狭い隙間に突っ込んでくる2択となる。そこまでして急ぐ理由があるインド人は多分0.1%もいない。
あと地味に気分悪いのが運転しながら平気でゴミを投げ捨てまくるしその辺に唾を吐きまくる点。特にインドは「パン」と呼ばれる一種の噛みタバコのような嗜好品が広く好まれており、これで真っ赤になった痰をそこらじゅうに吐きまくっている。一説ではインドの車両が後方からクラックション鳴らしまくるのは「脇を通るから痰吐くなよ!」という意思表示なのだとか。
まぁ全体的に「クソ運転する車両の数が多い」ということが最大の問題となってる感じで、つまり非常に小さな交通量の少ない道を選ぶか、若しくは完全主要道路で最低でも片側2車線に側道があり中央分離帯がしっかりしてて反対車線にはみ出して来れない道を走るか・・・という両極端で考えた方が正解だと思ってる。ただし後者は側道を逆走しながらクラックション鳴らしまくり突撃してくるバイクや車両がいるため一言で「安全な道」とは言えないが。ともあれ中途半端な大きさの道が最も危険。
後ろを全く確認せずにバックを始めたりガードレールとの間に自転車がいるのに外へ寄ってくる車両に相対することも多く、褒められた行為では無いがこういう輩に対して遠慮してても怪我するのはコチラ側なのであり、そうした際には車体を蹴り飛ばして気づかせる・・・くらいの覚悟を持っておいた方が良い。大声上げたくらいじゃインド人は止まらないので。
まぁ色々あるけど自転車乗り的にインド人のイメージが悪い理由の半分以上は交通マナーの悪さが起因している。むしろこの国の人は緩やかで親切な人が多かったイメージなのだが、それらを全て覆すくらいには酷い運転してるということだ。
◎特徴
あんまり人に関することは国別まとめに記載しないようしてたのだが、この国ではインド人の独特な文化や考え方こそが他の何より重要で把握しておくべきことだと思うのでまとめておくことにする。
私も色々体験したし、その手の文章読んだりして最も腑に落ちた説明が「インド社会には現代社会の規範である公平・平等という概念が尊重されていないこと」という説明であった。インドにはもちろん親切で気の良い人も多数いる反面、平気でゴミを捨てル・時間や約束を守らない・都合が悪くなると言い訳で逃げる・周囲の迷惑を顧みない行動等々、自分の権利を守るためには他者の権利を踏みにじっても構わないと思える行動を平気で取る。
要するに相手にも自分と同じ権利があるという公平性や社会性が乏しい人間が多い。この考え方に極めて大きな影響を与えているというかインド人のアイデンティティーとして機能しているのがヒンドゥー教であり、この宗教で語られる生死感だとか悪名高いカースト制度が土台となっているのは当の(日本語話せる)インド人から色々話を聞いて強く感じた。
要するにインド人と我々現代日本人(というか近代以降の西欧社会全般)が持っている価値観・倫理観は非常に大きく剥離しているということだ。海外旅行していると「異なる価値観に触れ合うことが魅力の1つ」というのはよく語られる言葉だが、それは「基本的人権を尊重した上で」という枕詞が隠れている。何が言いたいかというと、他人の権利を侵害して平等さに欠ける行動をして「これがインドの考え方なのだ」と好意的に解釈するのは難しいということだ。少なくとも私は列に横入りされれば腹が立つし、隣のインド人と同じ商品を購入して私だけぼったくられれば文句も出る。そんなのは途上国であれば何処でもあり得る話なのだけど、インドという国(特に北部)ではこれが余りにも頻繁に起こりすぎるのであり、ある臨界点を超えるとインドの全てが嫌になる。
私もリシケシュを出発して少々経った頃、インド人のあらゆる点が嫌になり彼らが声をかけてきても無視して会話しないことでこれ以上ストレスが増えないようしていた時期がある。今思えば色々ギリギリの精神状態だったのかもしれない。
悩ましいのは改めてこうした特徴を整理し把握したとしても、この価値観の違いによって生じるストレスを軽減する具体的な術がないということだ。ただ私は物事の要因がなるべく言語化できている方が良しと考えるし、相手の行動原理が一部でも知れれば共感は出来ずとも理解に繋がるかもしれない。
あと1つ断っておきたいのが、こうした特徴を強く持つ人が多い一方で、そうでない人もまた沢山いるという当たり前の事実があること。特にインドは地域によって人の特徴が大きく変わる国とされており、個人の性質をこうだと当て嵌めることなど出来ないのだ。あくまでも全体的な傾向くらいに思って頂きたい。
◎気候
山に向かわない限りは基本的に何処でも暑い。しかも湿度が高くてベタつく日本的な不快指数の高い暑さであるのが厄介な点。インドという国はちょっと変わっていて北半球の一般的な国と比べて暑さのピークが1〜2ヶ月早い時期に訪れる気候であり、つまり4月後半から5月にかけてが最も暑い。恐ろしいことにその気温は50度近くまで上昇する場所もあり、このレベルだともはや自転車旅行とかそんなこと言ってられるレベルじゃない。そんな環境でもインド人は結構な人が日中でも外で活動しており驚いたものだが。
6月くらいから徐々に雨が降るようになり雨季となるのだが、これで多少は気温が抑えられたとはいえ猛烈な湿度との兼ね合いで旅行するにはまだまだしんどいレベル。要するにインドの平地を快適な環境で旅行できるのはウキが終わってから始まる乾季こと冬の期間のみである。この時期ですら南インドへ行くと気温が30度超えてくるのが恐ろしいところ。
夏の時期は南西から、冬になるとヒマラヤから吹き下ろした北からの風が吹く。国土の多くが平野というか農地なので風向き悪いと1日中向かい風を受け続けることになるのだが、あまりこの国では風でしんどい思いをした記憶がない。そもそも風の影響が低いのか、他にもっとストレスとなる要素が大きすぎて風なんぞにどうこういうほど気を回してられなかったのか不明。
何にしても夏のインドは耐えがたいほどの厳しい環境なのでこの季節は避ける方が賢明・・・なのだけど、ラダックのベストシーズンが6月から始まる関係でバスや飛行機ワープをしない限りは嫌でも地獄のような気温のインドを走らなくてはならない。デリーからだと気候が落ち着くシムラーの町まで約350kmほどの距離があり、この間をいかに凌ぐかで苦労する自転車旅行者はかなり多い気がする。
◎言語
多種多様な民族がおりそうした人たちが独自の言語を使っている。よく言われたのは「1つ地域を超えると全然別の言葉に変わるのがインドだよ」とのこと。
こうした中でインド人全体の共通語という認識としてヒンドゥー語が使われているらしく、更に国際的な仕事や外国人との会話に用いる場合は英語が使われるというのが言語的な序列とのこと。他に主要で使われる言語にベンガル語というのもあるそうだが、私にはこの辺の区別がついていない。ともあれ旅行者も多く利用する交通機関関係だとかは英語の通用率は高い。
なおほぼ全てのインド人が第2言語であるヒンドゥー語までは話せるが、英語に関しては地方部ほど使用率が下がる傾向にあり体感で3割くらいのイメージかな。イギリスの植民地時代が長かった印象強いだけにやや意外。というか正しくは英語話者自体はもっと多い気がするのだけど、ことコミュニケーションという意味でインドは「英語が通じてる筈なのに会話が通じない」という状況に遭遇することが多く、そっちの方が問題。
これは独特なイントネーションやインド英語で使われる単語が独特なものが多いとか色々原因あると思うのだが、私が思うにインド人は「自分が話したいことしか話さないし興味ないことは聞く耳を持たない」という点が大きいのではないかと感じている。
要するに相手のことを鑑みて会話するということを出来ない人が多く、一方的にヒンディー語混じりの英語で捲し立ててくるし、こちらが理解できなくても表現や言い方を変えて伝わりやすいよう工夫するといった配慮は一切してくれない。だからインド人と会話してると基本的な点でつまづいたりすることが多く、どんどんストレスばかり溜まっていく罠。
ちなみに地方に行くと平気で英語が併記されてない看板とかも出てくるため割と難易度が高い。まぁこの国で苦労するのはそういう点じゃないと思うので小事ではある。
◎宿(野宿)・Wi-Fi
インドの物価に照らし合わせると安宿はやたら値段が高いというのが本音。コロナ以後の世界的なインフレ傾向がある中で、インドにおいては宿泊施設の料金がその影響を強く受けたのだろうと感じさせる。
デリーやチェンナイといった特に大きな主要都市だとドミトリー形式の安宿でも1500円近い料金となる一方で、観光客が盛んな地方都市だと1泊500円そこそこで宿泊できる施設もあったりする。それ以外の地方や田舎に関しては500〜1000ルピー(約900〜1800円)位が相場かな。値段が上がったとはいえ、それでも一般的な国の相場よりは安いレベルではあると思う。
ただ都市部や観光地を除いたインドの宿泊施設は問題となる点が複数あり、まず「ネットの予約が信用できない」ことが挙げられる。今の時代で予約サイトを利用するのはむしろ主流の方法だと思うのだが、インドの場合はこうしたサイトを通じて予約をしても実際に訪問すると「満室だから泊まれない」だとか理由は後述するが「外国人は無理」と言われて宿泊できないパターンがある。特にインド発祥の「OYO」グループとか「Fab」「Spot On」といったチェーン展開している宿はこうした傾向が強い。
これはネットからの予約金額を安く設定している関係だそうで、宿側からすれば直接訪問する宿泊者を泊める方が利益に繋がることから「とりあえずネットで予約を受付する一方で、予約してない訪問客が来たらオーバーブッキングでも利益に繋がるそちらを優先して泊めさせる。結果として満室になるためネットの予約客が弾かれる。」というパターンが多いそう。私は序盤にこの罠を受けて以後、観光地等で外国人の口コミがあるホステル以外ではネットで予約をしないよう務めていた。性質の悪い宿だと事前にカード払いでお金を支払わせても泊めてくれない宿もあると聞いたし。
んでこれとは別にインドには外国人が宿泊施設に泊まると「FormーC」と呼ばれる、外国人宿泊登録制度みたいなものを記入して宿側が警察に提出する義務があるとのこと。田舎の安い宿ほどこうした手続きを嫌がったりそもそも記入の仕方を知らなかったりする関係で、外国人である場合は問答無用で宿泊拒否対応をされることがある。これは州によって厳しさが異なる印象で、特に旅行人気の高いラダック地域などでは1度も拒否を受けなかった反面、ビハール州なんかは合計で50回近く宿泊拒否を受けたりして馬鹿らしくなるほどだ。基本的にある程度ランクが高い(料金も高い)宿ではこうした拒否事案が発生することはまず無いのだが、長期旅行&田舎を繋ぐ自転車旅行とは非常に相性が悪い。
ということで施設内の設備だとかコスパというのは二の次で、自転車的にはまず宿が取れるか?という心配をしながら走っていたというのが本音。5〜600ルピーくらいの宿だとWi-Fiがないタイプもあったりするが、インドではSIMカードが安いので予めそちらの対策していればネット環境はそれほど問題にならないし。
それよりもホステル系の宿でもキッチンが使用できるタイプがほとんど出てこないことの方が嫌で、ネットの情報でサービス内容に「キッチン有り」とか書かれていてもゲストが利用不可だったりすることが多く、インドの食事に疲れて自炊がしたくとも不可能だった・・・というパターンに陥ることがあるので要注意。
他にやたら「Hostel」と書かれた建物が多い国だが、これは出稼ぎとか学生が長期的に滞在する人を対象とした施設のようで基本宿泊は断られると思った方が良い。地図で検索するとこうしたノイズがたくさん出てくるので益々宿選びが大変になるんだよまったく。
◎動物
イメージ通りの牛天国。至る所を牛が闊歩しているのだが、酪農用に飼育された個体ばかりではないため痩せ細ったヤツとか病気なのでは?と疑いたくなるヤツも多々見かける。道路のど真ん中でも平気で歩き回っているということはそうした場所に糞が散乱してることを意味しており、地獄の交通状況に加えてウンコ爆弾まで設置されてるとか性質が悪い。ちなみに牛を食さないヒンドゥー教徒だが水牛は牛のカテゴリーから外れるらしく、そうした肉の用途なのか川の辺りに水牛がいることはままある。
その他だと家畜としてヤギやロバを見かけることが多いが馬は少ない。ラダックだと野生馬を見る機会も多かったけど。ヒンドゥー教の国ではあるがムスリム人口も多い関係で豚を見かけることもほぼなく食せる機会もまずないと考えて良い。その代わり羊肉が割と流通しており、羊の姿はちょいちょい見かけることがあったり。基本的に国内全体で出現するような危険な動物というのを心配する必要はない。
なお私もビックリしたがインドでは犬が大人しく自転車を見てもほとんど反応しない。何なら暑さでへばっているのかそもそもジッとして動かない。狂犬病で死亡する人の数が多い国の1つなのだが、少なくとも自転車走行中に犬を気にすることは最後までなかった。
それと冬の時期だと蚊の量が凄まじく、安宿の場合はどこに行っても室内に蚊がウヨウヨしてるのが常。暗くなってからそこらを歩き回ると肌の露出部分は刺されまくってボコボコにされるし、部屋内の蚊を全滅させたと思って横になると、どこから湧き出してきたのか耳元で嫌らしい羽音がして起こされるということが何度もあった。
ちなみに野生のインド象とかベンガル虎とかが居るらしいし、そうした動物の注意看板も見かけたのだけど最後まで姿を見ることはなかったな。
◎自転車店
インドは全体的な特徴として「スポーツが全く盛んじゃない」という点があり、クリケットを除いて一般人はほとんどスポーツという行為をしていない。自転車においても普及率は高いものの、その存在は完全に実用品として物を運ぶだとか移動手段として扱われており、要するにスポーツ用の自転車需要は極端に少ない。
なので何処の町でも自転車ショップはある反面、スポーツバイクを販売・修理しているお店となるとその数は極端に少なくなる。ラダックへ向かう場合はマナリの町に1軒だけプロショップがあるのでとりあえず尋ねてみるのが良い。というかここを逃すと山岳地帯では専門的な部品の入手は非常に難しい。
それ以外の平野部だと私が訪れた都市でデリーやチェンナイといったインドでも有数の大都市なら先進的なショップが存在する。それ以外だと人口100万都市のアムリトサルですらしっかりしたショップを見つけることは難しい感じで、むしろ隣国パキスタンやネパールに入る方がよっぽど対処出来たりするイメージだ。
一応ディスクブレーキを擁したスポーツバイクが走っていたり販売されてるのを見たりもしたのだが、そういった自転車もほとんど完成品として販売されてるケースでお店にメカニックがいるのかも怪しい。若しくは修理専門店みたいなお店で(恐らくインド製の)謎メーカーの部品を組んでる職人みたいなオッちゃんがおり、そういう店なら案外トラブル対処はしてくれるのかもしれない。ただしスポーツバイクの部品を取り扱ってはいないので、やはり消耗品に関しては極力自分で持ち運んでおくべきだと思ったな。
◎物価・食事
イメージの通りカレーが幅を効かせている国なのだが、インドのカレーというのは日本人が一般的にイメージするそれとは異なり、方向性としてはスパイスカレーのが近いかと思う。基本的に味付けをマサラを始めとした香辛料を何種類も混ぜ合わせて油と共に煮込むスタイルで、実はインド料理は油が非常に多く使われておりこれが合わずにお腹を壊す人も多い。
暑い国らしく唐辛子をバンバンに投入して凄まじい辛さとなってる料理が多く難儀する。食事の際に「ノンスパイシーでお願い!」と注文しても無視してるのか忘れたのか、そもそもからさの変更が出来ないのか知らないが普通に激辛をお出しされたことが何度もあるので要注意。
ヒンドゥー教の国なので神聖な動物である牛の肉を食べることはご法度だし、イスラム教徒も2割ほどいる関係でか豚肉もほとんど流通していない。要するにインドで食べられる肉というのは鶏肉と羊肉の2種類くらいと思っておいた方が良い。どちらも全く食べれないという訳ではないけれど、一般的でないため旅行者が食するのは相当難易度が高い・・・くらいに思っておけば良いと思う。
そもそもベジタリアンが非常に多い国であり、インドのベジタリアン人口は全世界のベジタリアン人口過半数を超えている程。このためどんなお店に行っても必ずベジ用メニューとノンベジ用メニューが分かれて表記されている。そうでない場合は大体ベジメニューしか存在しないという徹底ぶり。
これに加えて飲酒に対してもかなり厳しい制限が課せられており、アルコール類を販売できるのは許可を得たリカーショップのみであるし、奏したお店の多くは鉄格子で囲われたカウンター越しに注文を口頭で頼むシステムを採用している。オマケに値段も非常に高く、州によって税率が異なるもののビールロング缶で大体300円以上することが多い。あと何故かインド産のビールはアルコール度数が7〜8%と強い品名が多い。更に州によってはアルコールの販売や持ち込み自体を禁止していたりもあり、私の走った所ではビハール州が該当していた。
以上の点から自転車で田舎を走行していると、辛くて野菜しか選べないカレーばかり食べ続ける上にロクにビールも飲めないという相当キツい食事情が展開される恐れがある。
インドの食事は都会でないとレパートリーが少ないのが難点で、カレーを避けた食事をするとなると選択肢が屋台の揚げ物かスイーツ店、ファストフード店及びピザくらいしか選べない。ビリヤニというインド風炊き込みご飯もあるのだけど、これもスパイシーな味付けでカレーの風味を効かせているため個人的にはカレーの亜種くらいに思っていたかな。
ちなみに北部は小麦文化で南部は米が主流。このため北部地域ではチャパティを主食とする人が増えると聞いたが、その辺は割と自由に選択できる感じで気にしなくても平気だった。ちなみにインドカレーでイメージする「ナン」はそれほど一般的な食材ではなく高級レストランとか行かないと出てこない。基本的に庶民が食べるパン系のものはほぼチャパティ。
かなり食に対してキツかった国だけど、その値段に関しては非常に安価でターリーと呼ばれるセットメニューが田舎なら100円切る程度、高い場所でも300円しないで食べられることが多く経済的には優しい。でもカレー以外を頼もうとすると高く付くのであり、如何に舌を「インド化」するかがこの国で食事を楽しめるかの肝であると考える。ちなみに私は4ヶ月超滞在して水を購入した記憶はほぼない。現地人が飲んでる水を飲む気概があれば食堂でもガソスタでも飲める水を補給すること自体は問題なくできる国である。それでお腹壊すかは人次第だと思うけど。
◎総括
いや〜ストレス溜まるし色々大変な国だった。1つ1つの出来事を個別に挙げていくと結構面白かったり興味深くあったりするし親切な人も多く悪くない国なんだけど、こうして全体的な感想を述べるとなると「自転車で走るには向かない国である」と言わざるを得ない評価になるというのはある。
少なくとも人口の集中しているアムリトサルからコルカタの「インド北部ライン」は走ってて楽しい土地ではないので私はオススメしない。というか正直インドはラダック地方を主眼にして、他の土地は極力走らないよう努めたほうが楽しめると言ってしまって差し支えない。それでも尚インド(平野部)を走りたいという人は南部の田舎をオススメする。自転車的にアクセスし辛いのが難点だが、私はインド南部を走れたことでこの国における印象が大分良くなったと思っている。
自転車でその土地を走るという意味ではもっと大変な土地が多々あったけど、自転車で楽しく走るという意味ではエチオピアと並んで最高レベルに難しいというか、道路状況だけに留まらず様々な点で問題がある国なため、ラダック以外の地域を走りたいという自転車旅行者は心して臨んで欲しい。