2025年5月20日〜6月13日 6月23日〜6月26日
走行日数29日間
累計走行距離1656km(1回目1490km・2回目166km)(169584km〜171074km・171602km〜171768km)
◎道路
個人的に意外というか道路はかなり良い。中央アジア最貧国に加えて山ばかりの国土であるため交通インフラ整ってる方が不思議なくらいに思っていたが、主要な道路はしっかり舗装されているし路面も良くて走りやすい。そりゃパミールハイウェイはどうしようもないほど酷い未舗装の道もあるが、そもそもパミールはそういう点を考慮したサイクリストがやって来る場所なので文句言うのも違う気がするし。そのパミールハイウェイに関しても本線を走る限りは8割以上がアスファルト道であるため実はそこまで厳しくない。
この国における道路の大変さはむしろ山岳国であるため、どんなルートを選ぼうともアップダウンが避けられない点にあると思う。全体的に斜度は緩やかにするよう努めており自転車に対して優しい造りではあるのだが、ちょっとでも主要道を外れて小さな道に入ると未舗装&急斜度の道がお出ましして苦労する羽目になる。
あと道路のイメージ良いのが「良い道路」と「悪い道路」の差が極端なところがあるからかもしれない。ホジェンドの東部田舎道なんかガタガタの酷い路面が続く道だったのだけど、都市へと入る手前からは新しい綺麗な路面に切り替わったりと抑えるべきところをしっかり整備してる印象が強い。この点ウズベキスタンなんかは全体的に60点くらいの「やや微妙」という塩梅な道が多くを占めており、全体を通して思い出すと「なんか走るのに苦労した」となってしまうのに対し、タジキスタンはそこら辺が非常に上手かったなと感じる。
◎治安
非常に良い。というか犯罪絡みが発生しそうな都市部の数が少なく、山中の田舎町ばかりのため単純に危険なことに遭遇する可能性が低いと思う。
ただしパミールハイウェイを走る自転車旅行者には有名な話だが、2017年に欧米7人組のサイクリストがパミールハイウェイを走行中に銃殺される事件が起きている。これは隣国アフガニスタンのイスラム原理主義による犯行とされているが、タジキスタン国内でもアフガニスタンとの国境沿いにおいては外務省も危険レベル3の認定を出してるし、実際その土地を走ってみて「やたら軍の駐屯地が多いな」という感想を抱いたので未だに緊張感がある土地なのだろうと想像できる。雰囲気的には牧歌的なんだけどね。
◎ビザ・出入国
日記本文でも書いたがノービザで30日間の滞在が可能な国で、国内に1週間以上滞在する場合はOVIRという施設で滞在登録の申請手続きを実施する必要がある。
しかしパミールハイウェイを走行する予定のサイクリストにとってこのノービザ入国は罠であり、走行ルートにもよるがパミールハイウェイをしっかり堪能しようとすると30日間の滞在期限ではギリギリになってしまう。
故にタジキスタンの入国はeビザ手続きをして滞在期間60日間を確保しておくのが賢い手段。このビザ手続きをすることでOVIRでの滞在登録手続きも省略することができるし、パミールハイウェイを走行するためのパミールパーミットもビザ申請時の手続きで併せて取得できるため無駄も少ない。特にキルギス側から入国する場合は首都ドゥシャンベに辿り着くまで1週間以上の期間を要する関係(OVIRでの手続きは入国から1週間以内にせよとされている)で、どう転んでもビザの取得が必要になる。ということで諸々考えるとタジキスタンはビザを取得しておく方が良い国だった・・・ということに気付いたの入国してからなんだよね。
◎交通事情
運転マナー自体はかなり残念なレベルだけど、車両の総数が少ないためそこまで腹を立てることが少ないという点で「中央アジアではかなり良い方」という評価になるの笑えるな、いや笑えないが。
田舎の山道で怖い思いをしたということはそれほどなくて、完全にパミールハイウェイ上における道路工事区間でもなければ道路幅自体に余裕があるのか案外余裕を持って走行できる。
なのでストレスを感じるのはやっぱり都市部になるのだけれど、この国における都会ってのが地形的に巨大都市になり得ない構造(平野部が少なすぎる)をしてるので「いつまでも走りづらい都会が続く」という状況にならないメリットがある。ある意味で山岳好きなサイクリストにとっては理想的な環境だと言えるかもしれない。
◎特徴
国土の9割超が山という超絶山岳国である。同じく山岳国家とされる日本が大体70%、ラオスでも80%とされる中で驚異の93%という数字はこの国を走ることが如何にヒルクライムかと教えてくれる。
更にその山々も標高6〜7000m級の高山が豊富に連なっており、パミール高原を指して「世界の屋根」と評される理由もここにあり、そこに住む人は大変かもしれないがこうした山々を魅力と捉えて大勢のトレッカーやサイクリストがやって来るのもまた事実。
特に東部に広がるパミールハイウェイは自転車旅行者にとって1度は訪れてみたい聖地と評されることも多く、大陸横断系の自転車乗りにとってハイライトとなるべき土地として大変人気が高い。なおパミールハイウェイの詳しい内容は別記事に記載してるので興味ある人はそちらを参照のこと。
◎気候
山だらけな地形の影響か思ってたより雨が多かった。降雨時間は少なくザッと降ってパッと止む印象だけど、山中の過疎地域ではそういうのが1番困るのよね。逃げ場がないことも多々あるので。
平地の方が少ないような土地であるため気温は標高に左右されると考えてた方が正解で、首都のドゥシャンベとかホジェンドみたいな低地の平野部では35度を超える気温になる一方で、標高2000mを超える土地だと精々20度前後の過ごしやすい気温となることが多かった。ということでタジキスタンを走るなら夏のシーズンこそがベストでしょう疑いもなく。国土の半分くらいはパミールハイウェイでもっと気候的に厳しい環境となることを鑑みても。
◎言語
かなりの多民族国家でありそのため言語に関しても多岐に渡るとのことだが、公用語はタジク語である。これが所謂スタン系国家と近い言語かと思いきやイランのペルシャ語に近い言語らしく、他の中央アジア諸国とのつながりという意味ではロシア語を活用して意思疎通するとのこと。
英語の使用率はかなり低く都市部を離れると30%も通じれば良い方か?やたら子供たちから「Hello」「What’s your name?」と話しかけられるが、この2フレーズ以外の言葉を話せる子は稀。外国人観光客だらけであろうパミールハイウェイの宿泊施設でも英語の通用率は半分程度と思っておいた方が良い。ロシア語使えればこの地域での旅行は大分違ったものになるのだろうなぁ・・・とかそんなこと思っていたが、その辺はまぁ仕方がない。
ちなみにホログより東のパミール高原などのエリアではパミール諸語と呼ばれるそれぞれ独自の言語を使っている人たちが多いとのこと。私は言葉を聞いただけでは違いがわからなかった。
◎宿(野宿)・Wi-Fi
首都のドゥシャンベには1泊1000円以下の安価なホステルが存在するが、ここ以外は都市や観光地だろうが料金2倍近くする宿しかなかった。タジキスタンの物価を考えるとかなり割高という印象なのだが、山岳地帯の厳しい環境下を全行程野宿で過ごすのは流石にキツいのでそこそこ利用してたりする。
なおタジキスタンは多くの宿泊施設で夕&朝食付きのスタイルを採用しており、特に小さな村となるほどこの傾向が強い。想像してるよりしっかり食べさせてくれたことが多く、そういう意味で多少値段が高くともまぁ許容できるよな・・・とは思っていた。ちなみにWi-Fiを始めとする設備はパミールハイウェイに突入するとかなり設置率が落ちるし仮に付いてても速度劇遅で利用に支障が出るレベルも多い。私もこれを予想していたのでタジキスタンでは入国初日にSIMカードを購入しており、30日間10Gの利用で1500円しない程度だったように記憶している。想像してるより使える範囲が広かったこともあり、タジキスタンではとりあえずSIMカードを入れといて損はないというのが私の結論かな。
◎動物
山だらけの土地だけあって家畜だとヤギや羊が豊富。荷運びに使われるのは主にロバが主役となっており馬の姿を見ることは少ない。でも案外牛を飼ってる家庭は多く、パミール高原でも乳製品は貴重な食材として活用されてる姿が目立った印象だ。
山の上まで行くとマーモットの姿を多々見かけるのが嬉しいのだが、やはり今回も雪豹の姿は銅像でしか拝むこと叶わずだった。
犬に関してはタジキスタンで犬を飼う習慣が多くないのか、追いかけられた記憶というのがほとんどない。全く姿を見なかったという程でもないが、牛や羊の群れを統制する牧羊犬以外に犬の記憶が出てこない・・・というのも珍しい気がする。
◎自転車店
首都のドゥシャンベでもスポーツバイクに対応できるようなショップは無いので期待しない方が良い。パミールハイウェイを走るにおいて何か準備しておきたいならタジキスタン入国前に済ましておくのが大前提だと思う。
なお西→東のルートであればドゥシャンベのグリーンハウスホステルに自転車旅行者が大勢宿泊しており、この宿で整備作業や段ボールに梱包してフライト準備してる人が沢山いるため、何かしら装備品を融通し合うことができる可能性はある。
◎物価・食事
これが結構お高い場所多くて困ったね。都市部における物価は非常に安いのだけど、タジキスタンという国を自転車で回るとどうしたって集落とも呼べるか怪しいほど小さな村で食事を取ることが多く、そうした村のほとんどが山中とかの非常に交通の便が悪い場所にある。
結果、そうした土地に物を運ぶ物流インフラの脆弱さから田舎における物価の上がり幅が非常に大きいと感じたし、でもこの点に文句は言えないよなぁとなってしまうのはその道を私自身が苦労して走って来たから。そりゃまぁ値上げするのも、分かるよ分かる。
ということで都市部だと2〜300円程度でできる食事は山中に入って行くにつれてどんどん値上げして行く傾向にある。パミールの辺鄙な場所だと低地の1.5〜2倍くらいになる印象かな。ビールだったら1.5リットルのボトルが18ソモニ(約270円)で販売されてるのだけど、1番高かった時は35ソモニとほぼ2倍に。それでも日本で飲むより安いのだけども。なおタジキスタンで作られてるビールの銘柄はそこまで多くないそうで、私が効いたところではシルシルという名前の水みたいなビールを聞いた程度。個人的にはYAKというビールを好んで飲んでたけど、これあタジキスタン産ビールなのかは人によって返ってくる答えが違うためハッキリとしたことは言えない。
ちなみに食事における内容をスルーしたのはワザとであり、中央アジアにおける代わり映えのないメニューがこの国でも繰り返されることになるため。個人的にタジキスタンは食を楽しみに来る国では無かったかな。
◎総括
多くのサイクリストがパミールハイウェイを走りたいと思って入国してくる国だけど、その山々を走っているとこの国の実に沢山の人が旅行者に対してフランクに接してくれ、また多くの親切を受ける機会に恵まれてと山だけでない魅力も多々感じる国であったと思ってる。中央アジアの国々では最もハードである反面、最も走っていて楽しかったと胸を張って答えられる魅力が満載であり、しかしそうしたタジキスタンの良さを心底楽しむためには険しい山岳走行が必須となるハイリスク&ハイリターン系の国。
でも私は思うのだ。中央アジアの国々を自転車で走るのならばタジキスタンを外すなんて選択肢はあり得ないだろう!と。それは苺の乗っていないショートケーキの如く、タジキスタンがこの地域における魅力の凝縮された土地であることを強く確信しているから。
幸いにしてパミールハイウェイは路面の整備状況も進みルートの選択肢も複数存在する道だ。後悔はさせないので是非とも多くのサイクリストにもっとこの道を走って欲しいと思っている。