2025年6月13日〜6月20日 7月4日〜8月8日
走行日数44日間
累計走行距離1731km(1回目264km・2回目1467km)(171074km〜171338km・172387km〜173854km)
◎道路
悪い。というか幹線道路でも側道が狭くて走ることが怖い系の国。山奥に行かなければアスファルトの舗装率はそこそこ高いし、路面状態もそこまでボコボコではないのだがキルギスにおける道路の印象は「道の狭さ」という点ですこぶるイメージが悪い。
タジキスタン程ではないがガッツリ山岳国であり、広い平野部が広がるのは首都ビシュケク周辺とオシュから西部のバトケン州にかけてのみ。そんでこのバトケン州というのは領土問題を抱えており治安の悪い土地である(周辺の国境も外国人は通れない)ため旅行するのに適さない。つまりマトモに移動しようとすれば峠越えを余儀なくされる国である。その山も3000m超えるような高山が多くて難易度高め。
ただし最大の観光地と評されるイシククル湖周辺ルートに関しては、湖北部を通るルートでカラコルまでは絶賛道路工事中で近い将来に完全舗装されることが予想できる。2025年夏の時点でこの区間の舗装率は8〜9割といった感じか。
ある程度都会になると道路とは別に自転車も走れる歩道が出てくるのだが、整備状況が悪かったりアホな車両が歩道ど真ん中に駐車していたりと使い勝手が悪くビシュケク以外でほぼ利用すること無かったかな。
◎治安
中央アジア4カ国の中では1番悪かったように思う。とは言っても全体的な印象としては「治安良い」という評価になるが。特にビシュケクでは昼間っから酔い潰れて道路に倒れ込んでる人とか物乞いの姿が結構目につくことが多く、やや嫌な雰囲気を感じることもあったかな。
それと西部のバトケン州という地域に関して色々聞いてみたり調べたりしたのだが、治安云々もそうだが国境問題における民族間の対立やそれに伴う戦闘行為も発生してる上に、この事件でキルギスとタジキスタン間の国境紛争が原因で閉鎖されてしまったという出来事が2022年の話だったりする。
ちなみにパミールハイウェイの国境は外国人ツーリストの利用需要が高かった関係で2024年に許可証を取得することで通過できるようになったものの、これは外国人のみのサービスでありキルギス・タジキスタン両国の人々はいまだに陸路国境を超えることが出来ない。
◎ビザ・出入国
ひと昔前の中央アジアといえば「どの国へ行くにもビザが必要で大変な地域」と評されていたのだが、その中で唯一の例外(ノービザで簡単に入国できる国)がキルギスであった。現代では中央アジアの国々もトルクメニスタンを除いてビザを必要としなくなり入国のハードルは大きく下がったが、それでも国土の割に滞在日数が短かったり入国後に滞在証明の手続きを必要としたりと面倒な点はある。
そうした点で余計な手続き必要なし・60日間の滞在が可能というキルギスは今でも非常に有難い存在であるといえる。こうしたメリットがあるためルート次第だがビシュケクに滞在してビザ取得の手続きに精を出したりする人も多かったとか。私も荷物の到着を待っていたしな。
イミグレーションの審査も特別面倒なことはなく荷物検査がややしっかりチェックするな・・・程度の印象なのだが、タジキスタンからパミールハイウェイを通って入国する場合だけは要注意。キルギスの旅行代理店等で発給したパーミットがないと出国手続きしてくれないのだが、このイミグレはタジク側イミグレより未舗装の道を20km以上、高低差1000m超を走って辿り着く場所にありしかも道中に補給できる場所がほぼ無い。自転車的には下手すると詰みかねない状況となるため、この国境利用したい人はパーミットの制度がどうなっているのかしっかり調べた方が良い。2025年の夏も「間もなくこの制度無くなるみたい・・・」という噂が流れたが、実際行ってみたらそんな事実は無かったので。
◎交通事情
まぁ悪い。狭くて走りづらい道路との相乗効果で交通量の多い道路は走ってることがとにかくストレスだった国。それとキルギスは結構信号の数が多い方の国だと思うのだが、この信号が青に切り替わる前から交差点に突っ込もうとしたり、青信号に切り替わったら交差点内に車両がいようと猛スピードで突っ込もうとする輩が多く危険極まりない。山が多くて平地面積が少ないからかラウンドアバウトの割合が少ないのよね。
それ以外は他の中央アジアと似ており、クラックション鳴らせば自転車は気にしなくて構わない運転をするとか追い越しの際にすぐ脇を猛スピードで通過していく身勝手さとか自分本意な運転が目立つ。中央アジアではウズベキスタンと並んで運転マナーの悪い国トップという印象だが、ウズベクドライバーは横断歩道で車両停まって歩行者を渡らせてくれる割合が多い分だけキルギスドライバーよりイメージが若干良い。
救いなのは主要道路以外の道なら交通量が非常に低いことで、そうした道がこの国は非常に多いため大都市を結ぶようなルートとかでなければ楽しいサイクリングができると思う。でも水溜りだらけの未舗装路でスピード落とさず追い抜いていった車両に思いっきり泥水をぶっ掛けられたこともあり、車両の数が少なくても他者への配慮がないドライバーが多いことには変わりないため気は抜けない。
◎特徴
中央アジア5カ国の中で唯一国名に「〜スタン」という名称が入ってない国である。この「〜スタン」というのは「〜の土地・住む場所」という意味で、カザフスタンなら「カザフ人の住む場所」みたいな意味。
過去にはこの国もキルギスタンという名称だった時代があるが、これはソビエト連邦時代に使われてた名前であり、独立後数年してキルギスタン共和国→キルギスと現在の名称に変わっている。
理由については諸説あるようだがソ連時代の影響力を下げるためだとか、国内に住む民族がキルギス人だけでない多民族国家において「キルギス人の土地」という意味の国名は思慮に欠けるとされたからとか言われてるが、実際の所はどうなのだろう?
余談だが語尾にスタンと付く名前の国はカザフスタン・ウズベキスタン・タジキスタン・トルクメニスタン・アフガニスタン・パキスタンの6カ国である。
◎気候
夏のキルギスは非常に過ごしやすい気候なのだが、それはこの国が山岳国で多くが標高の高い場所に位置してるから。なのでオシュとかビシュケクみたいな比較的標高の低い(1000mを切るような)土地だと7月は普通に35度を超える気温になる。ただし湿度が低いため凌ぎやすいし、大陸性気候なので夜間になると涼しくなるのでエアコンも必要ない程度には快適だ。そういう土地なので観光におけるベストシーズンは間違いなく夏。というか冬は寒いのに加えて多くの場所で雪が積もるため道路自体も閉鎖される場所が多いらしい。ソンクル湖なんかは夏の短いシーズンのみが賑わってる貴重な土地なのだそう。
一般的に8月はまだ雨が降りだす時期ではないらしいが今年(2025年)は8月ごろから雨の降る頻度が多く、特に山の中では雷を伴う激しい雨が続いたこともあって久しぶりにテント内で神に祈ってた。流石に丸1日に渡って雨が降り続くことはなく最長でも半日程度。山らしく雲の動きが速いため天気予報の信憑性が低いし、青空が広がっていても数時間後には大雨が降っていることもある。
風は全体的に偏西風の影響を受ける土地なので西から吹くことが多いが、なにせ山ばかりの土地なので実感としてはかなりランダムに吹きまくってる印象だ。イシククル湖を周遊してた時なんか東からの風が吹いてて「どうおなってるんだ!?」とか思ったことはある。日中に風力が強まるものの日が沈むと吹き止むので「風にテントがバタバタ吹かれる」という状況に陥ったことは1度もない。多分運が良かったんだな。
◎言語
キルギス語で、公用語としてロシア語も認められている。やはり他の中央アジアと近しい言語でありウズベク後やカザフ語とはお互いに会話ができると聞いた。文字もキリル文字が使われるため私のような旅行者には「何のこっちゃ?」状態なのは多くの日本人が同様だと思う。
英語の通用率はかなり低く、観光地以外では外国人相手のホステルとかでもないと英語はほぼ通じないレベル。一部の学生が英語を勉強するらしく、若い子ではときどき英語話者がいるかな・・・という感じ。
食堂でメニュー注文するのとかすごく大変だった国1つであり、つい面倒臭くて何処にでもあるラグマン(プロフは田舎食堂だと無い事が多い)ばかりお願いしてしまう傾向が。
◎宿(野宿)・Wi-Fi
ちょっとでも山中に入ってしまえば基本野宿し放題の国。そもそも遊牧民が多いので適当な場所でテント張っていてもよほど都会でもない限りはスルーされるという点で野営の難易度が非常に低い。水場も豊富に見つけることができるため、様々なシチュエーションでキャンプを楽しめると思う。
宿に関しても首都やある程度の観光地では安価で設備の良いホステルが揃っており便利に利用していた。ただ観光地を離れた山中の村とかだとホステルの倍以上と値段が跳ね上がるし、キルギスという国は少しでも僻地に入ると宿泊費の上昇率が激しい印象だ。まぁ国土の7割以上が山という環境で物流にかかるコストも高いだろうし仕方ない気もするが。
料金は1000円弱から選べるが、カラコルのホステルでは自分のテントに泊まることで1泊300円とかあったな。それに対してサル=タシュなんかは2食付きとはいえ2300円以上の宿が最安だった。まぁ全体を通してどこも良い宿だったと思ってる。ビシュケクには中央アジア唯一(正確には違う)の日本人宿があるし。
宿のネット事情は優秀で設置率も速度も必要十分といった感じ。ちょっとした規模の町なら正しい意味でのカフェ(この国は普通の食堂も「カフェ」という看板が掛かっている)ならWi-Fiが利用できるため、山中に入り込まないなら3日以上に渡ってネットに触れられないという心配はしなくて良い。ただしカザフスタンと違ってガソスタとか大きな施設でFreeのWi-Fiを拾える確率はかなり低い。ビシュケク以外だと郊外のガソスタで1度、他にバイルクチのSPARというスーパーでWi-Fi使えたくらいかな。心配ならsimカードが1000円しない値段で買えるので、ガッツリ山に入る方なら契約する方が良いかもしれない。山の中でどれだけ電波入るか疑問ではあるけど。
◎動物
遊牧民が多い国だけあって馬や羊を数多く見かける。タジキスタンの使役動物主役がロバだったのに対してキルギスでは完全に馬が主役であり、ユルトで移動生活してる人たちは大体馬か羊を飼っている印象だった。馬は現代でも主要な移動手段として活用されてる節があり、ちょっと山奥とかに入るとまだ幼い子供とかでも達者に乗馬している姿を見かける。
これに加えて羊を管理する用途で犬の数も多いし、そういうタイプの犬は結構自転車に対して攻撃的なのが嫌だ。牛やロバもよく見る動物だが、やはりキルギスの主役は馬というのが私の感想だ。
この他にオシュの宿裏庭で自転車整備をしていた際、毒虫に足を刺されてボコボコに膨れ上がった事があった。多分毛虫じゃないかと思うのだが、この時期に木々の近くいると運が悪けりゃ同様の問題に出会す可能性があるかと。あとごく一部の場所で凄まじい量の蚊が飛び交っていたことがあり、雑木林にテントを張るの躊躇ってしまうほどだった。でも日差しが強い関係で木陰にテント張りたいため、運が悪いと滅茶苦茶刺される場合がある。
◎自転車店
首都のビシュケクにはしっかりとしたスポーツ用のショップが複数店舗存在する。私がみてきた限りだが、中央アジアでビシュケクより西はアゼルバイジャンのバクーまでしっかりとした自転車店が存在しない状況なので、西進するサイクリストはここでしっかりとした準備をしておかないと後々苦労する。そういう意味でリム割れしたタイミングがキルギス国内だった私は相当運が良かったよなとも思っている。
なおリムに関しては店舗を構えたショップではなく市場の中にある自転車屋街のブースで購入したのだが、一般的に市場の中にある自転車店ってスポーツバイクに適してないグレード低い部品を取り扱ってる場合が多い(実際多かった)ため、ある程度自分で部品を把握できるとか品名の型番を検索して対応するといった自己防衛が出来ないと粗悪品を掴まされる危険は大いにある。私も幅員が違ったりスポーク穴の本数が異なるリムを「これなら大丈夫」とか調子の良いこと言って売りつけてくる輩を躱しながら部品探ししてたので、最低限の知識がないなら市場系のショップは行かない方が良いとは思う。その代わりというか値段は無茶苦茶安いけど。
◎物価・食事
中央アジアの国々における食文化は変化が小さくどの国行っても大差がない・・・というのはまぁそうなのだけど、でもキルギスはその中で最も食事が美味しい国だと感じていた。立地的に中国が近いため食に対するこだわりが強いのか?とか考えたけど実際どうなんだろ?
スーパーに並んでる商品のラインナップとかは明らかにカザフスタンの方が充実してるのだけど、その辺の食堂で注文し出てくる食事のレベルが明らかに高く、毎回よく分からないメニューを指差し注文して運ばれてくる品を待つのが楽しみだった。ソンクル湖の麓では焼き魚とかも食べたけどこれも安くて美味しかったな。
近年すごく物価が上がったとされるキルギスだが、普通の食堂なら1食300円くらいで美味しく食べられる。ちょっとしっかりしたお店だともうちょい高くなる上に10%の税が上乗せされるため「思ったより高くついたな!」と感じることがままあるけども。
ビールは大型のペットボトルに入ったタイプが売られているがその最大容量は1.8ℓとウズベキスタンと比べてやや控えめ。その割に値段は400円以上するので中央アジアの国にしては案外酒代が高くつく。個人的にウイスキーが安くてとても美味しい国だったため、商店が近くにない山中へ入る際にはポケットサイズのウイスキーを持ち運んで夜にちびちび楽しんでいた。イスラム教の国だけど酒類を販売してない店は稀なので酒飲み的にはありがたい国だった。でもやはりというか豚肉は全然取り扱いしてるお店なかったが。
◎総括
リムが割れるという特大トラブルあったけど、これがキルギスだったのは本当に助かったと思ってる。しっかりした自転車ショップの少ない中央アジアでありながら拠点としやすい日本人宿があり、オマケにしっかりしたプロショップが揃ってるビシュケクの町は長期自転車旅行をする際に大変利用しやすい環境だからだ。
加えて日本からの荷物も郵送したりと長逗留していたビシュケクだが、私に限らず多くのサイクリストがここで暫く羽を休めるようである。
しかしキルギスは準備終えたらそのまま走り去ってしまうには惜しい魅力溢れる国だということを強く感じた。特に自転車旅行だとこの地域ではパミールハイウェイが注目されてしまいキルギスは早々に通り抜けてしまう人も少なくない。だがタジキスタンに負けず劣らずキルギスも走り甲斐のある様々な高山が連なっている国で、特にソンクル湖でのサイクリングは走った気持ちよさがピカイチであった。
以前はノービザ60間日と余裕のある滞在期間を利用して他の中央アジアビザ取得をキルギスで実施するのがセオリーだったが、それらの国におけるビザ発給待ちが必要なくなった今、この滞在日数を使ってもっとキルギスという国を具に見て回るのはとても楽しい選択であると思う。それだけの魅力がこの国はありますよ。