自転車ときどき世界1周

2016年07月

 アラスカ27日目 トックの町

 目を覚ましたのはテントが雨に当たる音。昨日は「次にあるデカい町ことホワイトホースまで休みなしで走りきろう!」という思いで横になった私であるが、その決意は僅か1日すら保たなかった。雨に弱い系サイクリストである。

 まぁここで無理しても仕方がない。先は長いのだし休める時は休むべき!・・・という感じで自分への言い訳はスラスラと出てくる不思議。雨が降ったらお休みです。

 そんなわけで近くの図書館へと移動しネット。途中で対面の席に座った人が日系っぽい顔してるな〜とか思っていたのだが、ずばり日本人だった。しかもサイクリスト。普通に下手くそな英語で応対していたのであり、向こうは私の様子見てさぞや楽しんでいたに違いない。

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 フレーム以外を日本メーカーで構成しているマシン

 本日はこの町で終了とのことで、せっかくだから夕食一緒に作ることに。俗に言う「シェア飯」というやつであり、これを実施すると値段は安く、量は多く食べられるのが素晴らしい。あと肉野菜炒め以外のメニューを考案するのはマンネリ打破になるし。

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 スーパーのコーヒーが無料サービスで驚く

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 ということで肉じゃが

 あんまり変わりないんじゃ?とか思われるかもだが、私にしてみれば炒め料理と煮込み料理で全く別物だと言い張れるほどの違い。どちらも手間いらずで料理といえるのか怪しい難易度であるのも素敵だ。手間暇よりもお手軽さこそがキャンプ料理を作る上での重要事項である。

 んでこのタカ君。自転車で世界一周はいいのだが、結構なアルピニストであり海外を自転車で回る最中に5大陸最高峰の登頂を実施するという変態サイクリストでもあった。

 北米最高峰のマッキンリーも登頂してきたわ、普通にダルトンハイウェイを走破して北極海まで走っているわと一流変態チャリダーの凄さをまざまざと見せつけられたのであり、先日の神保さんもそうだが世の中には私の物差しでは測りきれないようなスケールの人がいるんだなぁ、と。

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 15時くらいから晴れてしもうた

 結果的に面白興味深い話を色々聞くことができたので、無理して走らず大正解だったのだが。しかしこんなアラスカの僻地にある小さな町に、私を含め長期自転車旅行者が6人いるぞこのキャンプ場。

 どれだけ夏のアラスカが自転車旅行者に人気であるのか分かるというものであり、自転車旅行者って不思議と似たようなキャンプ場に惹かれ合う傾向があると思うんだ。その傾向は「値段が安いこと」という一言に集約できてしまうのが悲しいところなのだけど。

 明日晴れなければ、もう1日停滞するのも辞さない覚悟

 2016年7月23日(土) 走行距離4km 累計42767km
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 アラスカ26日目 ドットレイクの町〜カナダ国境から北西に約130km トックの町

 完全な2日酔いで頭ガンガンしながらの起床。全身だるくて自転車に乗るような気分ではないのだけれど、既に工場の人達働き始めてるし私がここでダラダラしててはダメでしょう。ということで必死にテントから這い出し、時間も遅いので朝食兼昼食に大量のパスタを作る。とりあえずたくさん食べれば体調も良くなるよ。

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 素晴らしい夜でした

 お礼を言って出発するが、昨日ほど強くはないが雨が降り続いてる状況に変化が見られず。アラスカってず〜っとシトシト雨が降り続くっていうより、一気に豪雨が降ってその後は晴天になるようなイメージだったのだが。アラスカ後半戦になってからはこんな感じの天気ばかりで気が滅入るよ。

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 遠くに山々が見えるだけマシか

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 大きな川があるととりあえず撮影してるな私

 最初は体がフワッと浮いてるような感覚で運転していたかもだが、交通量が全然ない上に路肩の広いアラスカ道路。これがインドネシアとかだったらと思うと・・・多分走ってないな。

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 山を迂回するように道が伸びる

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 結構急流なのにカヤックで遊んでいる人が

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 火事とかあったのかな?

 本日は75kmほど走り、トックの町にて終了とする。というのもこの次にちゃんとしたスーパーがある町は、600kmほど先のホワイトホースなので、ここで食料の買いだめ必須。というか出発が遅かったので結構いい時間になってしもうた。

 一応この次に出てくる町はもうカナダだったりするわけで、そう思うとアラスカも終わりに近づいているのだと感慨深くもなったりそうでもなかったり。

 なお、本来の予定では2週間ちょっとでカナダに入国しているハズだったけれど。どうしてこんなに遅くなったのかサッパリ分からない。

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 本日私と全く同じルートだったらしい

 スーパーでこれでもか!と食材を購入し、その足で図書館にてFreeWi-Fi使ってのネット作業。アラスカの図書館は夏の時期、日によっては19時とかまで営業してるのでありがたい。

 そんな時間まで利用してたので、必然的にキャンプが遅くなる事実。夕食作り始めたのが20時近くになってからだったりして、遅い時間まで日が沈まないとこうしてズルズルと作業は後へとずれ込んでいくモノなのですね。

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 町中なのでキャンプ場にて

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 やっぱりね、シャワーは重要

 最近朝に起きるのが辛いのは、こうして夜型の生活になっているせいなのか?アウトドアをしている限りは、早寝早起きを基本にしたいと思っているのだけれども。とか思いつつ23時半にようやく就寝。

 2016年7月22日(金) 走行距離79km 累計42763km
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 アラスカ25日目 デルタジャンクションの町〜カナダ国境から北西に約190km ドットレイクの町

 夜中は雨が降り続けていたようだが、私が目覚めるのとほぼ同タイミングで降り止むあたり、分かっていらっしゃる。日中の約10時間だけコンディションが良ければとりあえず自転車旅行はどうにかなるものだし。

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 お礼しに行ったら何故か朝ごはんを頂いてる

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 さぁカナダ国境も近づいてきた

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 こういう家ってなんか気になる

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 ムース注意

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 午前中は道路を横切ったりすることも多いらしい

 まさか走り始めて1時間後に雨が降り出しレインウェア着用することになろうとは。これが出発時だったら色々と諦めて「走らない」という選択もできただろうが、1度走り出してしまうと今更途中で止められない。周囲20kmには森しかないし。

 黙々と走り続けて50km。運良く屋根付きのレストエリアが出てきたので寄ってみると、そこにいるのは日本人サイクリストではないですか!

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 いや、すげー荷物だわ

 私は現在世界1周している日本人サイクリストで、継続して読んでいるブログが4つあるのだが、この神保さんのブログがその1つである。こうして出会うことができて何というか、ファンの心理的な感じですごく嬉しい。

 雨の中ではあるが30分ほど立ち話し、握手してお別れ。この後ダルトンハイウェイを走るのだそうで、それは大層苦労してください。

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 ちなみに神保さんはここで1泊したらしい

 私も1日ここで停滞してしまおうか悩んだりしたのだが、明日も天気は良くないらしい旨を聞いたので重たい腰を上げて走り始める。寝るときにロシナンテ号が屋根の下にあればそれ以上文句はないのであり、それくらいならばどうにかなるだろうという判断の元。

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 アラスカの川ってやたらデカくて色が汚い

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 晴れてればいい景色なんだろな〜

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 変化なし

 雨の中のサイクリングは決して楽しくはなかったが、どうにか当初予定していたドットレイクという小さな集落に。最初は教会の敷地にテント張ろうと思ってたのだが、道路工事のオッちゃんが「ウチの会社敷地使っていいぞ」と言ってくれたので移動する。

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 ありがたいことです

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 手持ちのお米が尽きました

 夕食済まして日記書いてたタイミングで、オフィスにてパーティしているから一緒にどうだ?とお誘いを受ける。いやぁ私は人見知りだし、いきなり部外者が入ってきたら迷惑ではないかしらん?

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 とか思ってすらいない

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 すっごく楽しい

 印象的だったのが、会社のメンバーをして「素晴らしいファミリーよ」という表現をしていた点。日本で仕事仲間のことを同様に評する人たちはどれほどいるかなぁ・・・とか考えてしまった。

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 雨降ってる中でテンション上がりすぎたの図

 ビールもそうだがウイスキー飲みすぎてヘロヘロになり、テントへ倒れこむようにして就寝。翌朝日記帳を見てみたら、ミミズが暴れまわったような酷い字で書かれていた文章がいきなりぶつ切りに終わっていた。ここで力尽きたのだということがよくわかる。

 2016年7月21日(木) 走行距離106km 累計42684km
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 アラスカ24日目 教会脇〜フェアバンクスから南東に約130km デルタジャンクションの町

 昨日聞いた話だと、この後4日間続いて雨が降るとか言われたのだが、いくら私がやる気なくともそれだけ停滞させられるのは勘弁願いたい今日この頃。

 幸いにして目を覚ましてみれば雨は降っていないのであり、教会の設備使わせてもらって朝食作らせてもらうどころか、出がけに本日のゴール予定地であるデルタジャンクションで無料でキャンプができる場所を記したメモをもらってしまう。昨日は昨日でシャワーも使わせてもらったりと、至れり尽くせりなのであり、せめてお返しの折り鶴は丁寧に折らせていただきました。

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 お世話になりました

 フェアバンクスからここまで、どフラットの道が続いていたのだが、徐々にアップダウンを含んだ道が出現し始めてくるのであり、待て待てそういうの要らないから!そういうの持ってくるんだったら、上り坂を処分してダウンヒルだけ楽しませてよ。

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 とはいうものの、それほど大した坂ではない

 別に坂道好きじゃないけど、坂を登りきって景色が開ける瞬間は最高だと思う。足の痛みも全身の疲れも、あの景色を見ると「まぁ悪くはなかったかな?」と甘々の採点が入ってしまうのも致し方なかろう。

 こうした点で、日本の峠は山頂にトンネルを作ってたりが多く、私は一言も二言もいくらでも文句を申し上げたい!

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 こういう景色が見たいのよ

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 やたら川面と路面の距離が近い

 小さな町は、その中心部でもポツポツとしか建物を見なかったりするアラスカ。そのため郊外に出てもあまり景色の変化が少なくて、気づけばいつの間にか建物がないエリアを走っている・・・ということがままある。

 別に大きな問題にはならないが、集落地帯を離れるとテーブルや椅子を使用した休憩が極めて難しくなるため、お昼休憩が地べたに胡座をかいての形となってしまう。

 どんなボロくてもいいのでテーブルと椅子を使って食事したいもの。何というか、テーブルと椅子というのは文明の利器を象徴するアイテムであり、辺鄙な場所を走っていればいるほど「座る」という行為に対してありがたみを感じたりする。自転車のサドル?あれは座ってるようで座ってないというか。

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 こういう景勝地ポイントにテーブル欲しいよね

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 仕方なくお昼ご飯は地べたで

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 途中でドライバーの人からリンゴもらう

 アップダウンを繰り返しつつも全体的には登っていく道。ときどき高度計を見てみるとフェアバンクスから100mだとか200mほど標高が増えていたりするのであり、こういうのは割と嬉しい。たいして疲れもしないのに、後で下り坂として楽しめると思うと得した気分になるというか。

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 こういう岩に落書きはよくあるけど

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 命がけで書いたんだろうか

 途中で昔10年ほど日本に住んでいたという牧師さんに声かけられる。何故だか私の旅行の無事を祈ってくれるとのことで、ありがたく了承した。早口の英語なので8話方何いってるかは分からなかったが、こういう経験は始めてじゃなかったりして、何とも不思議な気持ちである。

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 あとお菓子と果物を頂く

 そんなこんなありつつも、ようやくスーパーが存在する町ことデルタジャンクションに到着する。名前の通り、アラスカにおける主要の道3本が三角形に交差しており、そしてここが有名なのか知らんが「アラスカハイウェイ」の終点に当たるポイントでもある。

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 ある意味ここから先はアラスカではない、と

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 アラスカハイウェイってのが「アラスカに通じる道」らしい

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 時間があると図書館ばかりだね私は

 これから先はアラスカハイウェイを逆走して行く形になるわけだが、道路長は実に1422マイルときた。結構長いような気がする反面、案外たいしたことないなぁとか思ってしまう自分がいるのであり、要するに距離が長いだけなら日数かければいいだけなので、大して気にならなくなっている。

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 朝に教えて貰ったポイントへ

 こうして今日もシャワー浴びれる素晴らしい場所を提供してもらい、本当に感謝に堪えないであります。割と寒かったし、湿度低いのであんまり汗かかないとはいえ、やっぱりシャワーくらい毎日浴びたいよ。人として大切な何かを失わずに旅行したいと思ってます。ダルトンでは完全に失っていましたが。

 2016年7月20日(水) 走行距離102km 累計42578km
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 アラスカ23日目 フェアバンクスの町〜フェアバンクスから南東に49km地点 教会の脇

 結局丸2日使っても写真はバックアップを取りきれなかったワケだが仕方ない。すでに休みすぎなほど休んでいて、むしろ体がダルいという本末転倒な状態になっていることだし、そろそろフェアバンクスを出発するとしましょうか。

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 どうにかパンケーキ食べきれた

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 フェアバンクスの街中を抜けて

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 このデルタジャンクションから州道2号線へと入っていく

 一応昨日の深夜に降り止んだ雨ではあるが、空には灰色の雲が鎮座しており気が気でない。せっかく一昨日整備してチェーンからの異音もなくなり気分のいいサイクリングであるというのに、これでは一抹の不安が拭いきれないではないか。

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 しかし平坦な道って素晴らしい

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 君の造形はそれほど素晴らしくはない

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 道端にあったサンタ像だが

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 顔が怖い

 なんか連日、平均10km/hとかの日々が続いていたからか、やたらと速いペースな気がする不思議。それでいてちっとも体疲れないのであり、こういう物事が上手く運びすぎている時って、不安になってしまうタイプの人は割といると思う。私なんかまさにそれ。

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 お昼休憩したお土産屋さん

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 木彫りの熊ってヤツですね

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 オマエかー!! 

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 実にいい雰囲気のお店

 お昼を済まし、それじゃあちゃちゃっと午後を走り切っちゃいましょうか〜と走り始めて300m。いきなりの大雨が降ってくるのであり、すぐ側にあった工場の軒下へ緊急避難。

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 こんな場所でもFreeWi-Fiがあった

 ネットが使えるので焦ることなくじっくり腰を据えて長期戦の構えを見せていた私だが、従業員のオッちゃんが「暇なら一緒に車で俺たちの仕事場見にいくか?」とお誘いをいただく。暇ですヒマヒマ、どうしようかと思ってたくらい。

 そのままオッちゃんの車両でドライブして回っていたのだが、戻ってきたのは彼の家。曰く「50分後に仕事終えて戻って来るから一緒に夕食食べようぜ。」とのことであり、いつの間にそんな話になったのか、当事者の私が一番驚いているのですが。

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 アラスカの家がどんな感じが体験できて嬉しい

 夕食を頂き「気をつけて旅行続けてな!」と握手を交わし家族と外出してしまうオッちゃん。おいおいおい、私1人家に残されているのだが、これは好きなタイミングで出発して良いぞということなのだろうか?自由すぎるぞアメリカ人。

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 結局19時に出発

 といっても時間も時間なので、数km走った先で見つけた教会の敷地に許可を貰ってテント張らせてもらう。降り止んだに見えた雨は、再び活動を再開し始めたのであり、せめて自転車だけは軒下にて濡れずにいて欲しいところ。

 しかしアラスカ滞在すればするほど好きになっていくな。私の訪れた国の好き嫌いは、その多くの割合を「出会った人の印象」で左右されるのだが。つまりはアラスカという地域もまた、良い人たちばかりだということです。

 2016年7月19日(火) 走行距離67km 累計42476km
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 せっかくマイナーなダルトンハイウェイを走ったのだし、この貴重というわけでもない経験を情報にしてまとめておこうと思う。私はこういう人様の役に立たないようなことに対しては情熱を燃やすタイプなのである。


◎北極海への道

【基本情報】
 アメリカ大陸で2016年現在において北極海へと抜けることができる唯一の道路。この言い方は、カナダで同様に北極海まで走れるテンプスターハイウェイという道路が建設されているという裏があるため。

 最寄りの町ことフェアバンクスから北に向かって計799km。エリオットハイウェイ133kmとダルトンハイウェイ666kmで構成されている。道中にはレストランの施設が2ヶ所(3ヶ所)のみ存在し、食料を補給できる商店等は存在しない。

 北極海に面するプラドーベイという湾からの原油を搬送するために作られた道路で通年走行が可能。厳冬期の気温はー62℃を記録したことがあるほど寒いため、自転車における走行は基本夏季に行うこととなる。個人的に冬季でダルトン走破するのは「旅行」よりも「冒険」に近いレベルかと。

【情報収集】
 フェアバンクスのビジターセンターにて職員にお願いすれば「Dalton High Way Visitor Guide(ダルトンハイウェイビジターガイド)」と「Bicycling the Dalton Hwy(バイシクリング ザ ダルトンハイウェイ)」という2種類の冊子がもらえる。

 前者はダルトンハイウェイ道路の主要ポイントとそこにある設備等の情報、後者は道路を区分ごとに分けて路面の状態や峠の標高等が歌われており、この2冊で自転車旅行者が確認したい主要なポイントは抑えることができる。

 なおダルトンハイウェイ上には道路ポストが完全に配置されているため、すべてのポイントはMP(マイルポスト)表示で記されている。エリオットハイウェイは州道2号線から入り0MP〜72MPまでの116km。ダルトンハイウェイは州道11号線の0MP〜414MPまで666km。


◎ダルトンハイウェイ走破のために

【道路状況】
 エリオットハイウェイは全面舗装だが、ダルトンハイウェイで舗装されている道は全体の2〜3割程度。よってかなりの割合で未舗装路を走ることとなる。

 また前半部分にはアップダウンが集中しており、平坦路がほとんど出てこないレベル。グーグルマップで調べると800kmの行程で約8000mくらいを上り下りすることになるのだが、このうち前半部分で6000mほどが消費される超山岳地帯。

 特にダルトンハイウェイに突入して35MP辺りまでは、鬼畜としか表現しようのない凄まじい峠の連続に見舞われる。ダルトンを走破できるか否かはこの前半部分で気持ちが折れないかどうかであると思う。なお後半にはアティガンパスというダルトンハイウェイ上の最高標高を誇る峠が存在するが、正直大した問題はない。

 ダルトンで完璧な舗装をされている場所が35MP〜50MPとコールドフット(175MP)〜220MPの2ヶ所。その他にも所々で舗装された道も出てくるのだが、工事状況が古くアスファルトとダートが交互に出てきたり、ガタガタであったりする場所も多い。あんまり期待しすぎないほうが吉かと。なおビジターガイドに舗装されている道路は表記されている。

【食料搬送】
 ダルトンの何が厳しいかといえば、800kmに渡って無補給であるという点が挙げられる。必然的に大量の食料を持ち運ぶことになるのだが、前述の通りダルトンはアップダウンの連続を繰り返していく山岳路。荷物の持ち過ぎはそのまま自分にダメージが返ってくる諸刃の剣となってしまう。

 ガイド情報には北極海までは8〜15日が必要と書かれており、各個人の走力によって重量にバラつきは出るものの、予備日を考えると最低10日分の食料は欲しいところ。私の場合は雨での停滞なども考慮して12日分の食料を準備し、実際には9日間で走破した。

 また水を補給できる場所も2ヶ所しかなく、特に後半は400kmに渡って無補給地帯が続くことになる。周辺に川は無数にあるが、「細菌がいるからそのまま飲んじゃダメだ」と言われた。まぁ飲んだけど。

 浄水器やタブレットの薬がフェアバンクスの町でも各種販売しているので、水を大量に持ち運ぶよりこちらを準備するのも良いと思う。浄水器は100ドル前後、タブレットは15ドルくらいだが薬臭くて不味いらしい。

 私の場合、どうせ浄水器なんて今後も使うことはないと踏んでいたので万が一の場合のタブレットだけ購入し、水は前半戦で5リットル、コールドフットで空のペットボトルをかき集め後半戦は7リットルを携行した。気温が低く水の消費量が少ないこと、道中で何度も水もらう機会があったこともあり、道中にて水がなくなってしまうことはなかった。

 裏技として中間地点であるコールドフットの町には郵便局があるため、事前に食料の半分をここへ郵送するという方法がある。これを使えば荷物の重量が大幅に削減できる関係で、ダルトンの難易度が一気に下がりオススメの方法だと思われる。私はやってないけど。

 この方法の注意点として、コールドフットの郵便局は夏の時期の月・水・金曜日で13時半〜18時の間しか営業していない。ちゃんと計算していかないと、最悪ここで2日も足止めを食らうことになる。

【補給】
 エリオットハイウェイに入り20㎞ほど走った場所にあるガソリンスタンド以降、レストランを併設している補給可能ポイントが56MP地点のユーコンリバー、175MP地点のコールドフットに2ヶ所ある。ただし携行食料品にあっては僅かばかりのスナックやチョコバーがある程度で期待してはいけない。なおこの2ヶ所にはガソリンスタンドが存在するため、バーナーの燃料的な心配は必要ない。ガスバーナーを使う奴のことなど知らん。

 一応60MP地点のキャンプ場にも小さなレストランがあるが、大抵のサイクリストがユーコンリバーで休憩する関係上、こことの距離が近すぎて利用価値がほぼない。朝食だけ摂るならば・・・と思いきや、開店時刻が10時からなのでよほどスタートが遅い人でないとここの利用は難しい。

 あと189MP地点から5kmほど脇道に逸れた場所にワイズマンという小さな村があり、ここには宿泊施設や博物館があるらしい。私はコールドフット(175MP)で1泊したためこの村に寄る理由がなく、スルーしている。

【キャンプ場】
 アラスカ州が正式に出しているキャンプ場が4ヶ所。このうち180MP地点のマリオンクリークキャンプ場のみ8ドルの施設使用料が必要となるが、その他のキャンプ場は無料で使用可能。詳しくはビジターガイドを要確認。

 とはいってもテーブルとトイレ、あとクマ対策用のフードボックスがあるくらい。しかもフードボックスはゴミ箱状態になっていて1度も使用できず。むしろ3日目くらいまで普通にゴミ箱だと思っていたぞ私は。(追記:ゴミ箱だった)

 別にキャンプ場を選ばなくてもそこら辺で野宿し放題ではあるが、常にクマの恐怖が付いて回るアラスカにおいて人が集まりやすいキャンプ場は比較的安心感がある。言い換えればキャンプ場に1人だけだった場合、「テーブルとトイレがある」以上のメリットは存在しない。

 実はダルトンハイウェイに入って以降、大体60マイル(96km)毎に正規/非正規の違いはあるがキャンプ場が点在している。私はこれを目安にして走行していたのだが、前半戦は厳しすぎ後半戦は楽すぎた・・・というのが感想だ。

 余談だが、ダルトンハイウェイで出会ったサイクリストは、私を含め全員ベアースプレーを所持していた。


◎帰り(行き)の移動手段

【バス・飛行機の利用】
 全長が800kmあるこの道は、片道だけを走って帰り(行き)道を他の交通手段を活用するのが一般的。少なくとも私が出会った他のサイクリスト達は全員その方法を取っていた。というか往復するとなると色々と大変だし同じ道は楽しく無いし。

 最も簡単な方法が飛行機での移動。毎日運行しているし、予約を取らなくても満席になることはほぼないらしい。しかも自転車は梱包しなくとも直接積載することができるとのこと。ただし飛行機なのでガソリン携行缶の中身は処分して乾燥させた状態でないとならないが。

 その他に私が最初利用しようとしたバス会社を利用する方法もある。フェアバンクスーデッドホース間の運行で自転車を含めて310ドル。飛行機よりはかなり安いらしい。

 ただしこのバスは毎日の運行をしているわけではなく、また意外に人気があるのか予約の段階で幾つか満員となっている便もあった。このためデッドホースに到着してからバスを申し込む・・・というのはリスクが大きい。

 とはいえ事前に予約して出発すると、天候が悪化したりトラブルに遭遇したりしても日程の変更が効かないという問題がある。途中で出会ったサイクリストは予約したバス出発日までのスケジュールがギリギリになってしまい、深夜の2時とかに走行してた。

 こうしたことからバスを利用するのであればデッドホースへ行くのに利用して、帰り道を自転車で走行するのが賢い利用方法だと思われる。

【ヒッチハイク】
 デッドホース〜フェアバンクス間がほぼ1本道であるため、ほぼ全ての車がフェアバンクスを通過する形となるダルトンハイウェイ。ユーコンリバーキャンプ場と、アークティックサークル(北極圏ライン)の2ヶ所で大幅に交通量が減り、それより北は1時間で10台前後しか車両は走らなくなる。

 しかもその大半はデッドホースにおける業務関連のトラックであり、テロの防止だとか何とかでこうした車両にヒッチハイクで人を乗せるのは一般的に禁止されている・・・らしいよ?

 が、私の感想から言えばダルトンハイウェイはヒッチハイクが容易な道路であると思う。そもアラスカはヒッチハイクにおける移動という考え方がキチンと存在しているようで、割と普通に実施している人を見かけもするし、この方法でデッドホースから戻ってきたサイクリストとも会った。

 確実性に欠けるし危険もあろうが、そもヒッチハイクの行為自体がそういう危険を孕んでいるのであり、今更そんなことのリスクについて言及するつもりはない。

 とりあえず実施するのであれば、デッドホースの町から1マイルほど手前の河川敷ポイントにキャンパー達が野営をする場所があり、彼らの多くが午前中にそこを出発する。午後になるとデッドホースを出発するのは、工事関係の車やトラックが多くなる模様。

 なおトラックはデッドホースで積み荷を降ろし、空に近い状態で復路の運行をしているようなので自転車の積載というマイナス条件をまったく問題にしないという意味で狙い目かもしれない。

【北上・南下】
 全体的に風は南から北に吹いてるため、この点のみを鑑みれば北上する方が楽かと思われる。だが最難関である序盤のアップダウン地獄を食料満載の状態で迎えることになってしまうため、どっちもどっちじゃないのかね?

 それより北上は「デッドホースにたどり着く=ゴール」ではなく「帰り道どうしようか?」という不安感があるため、この点における精神的な負荷が強かった。とにかくダルトンは精神をへし折ってくる道なので、体力よりも「ここを乗り切ればゴールだ!」という気持ちで走れる南下の方が頑張れそうな気はする。往路で道中の道を下見もできるし。

 ただし北極圏ラインの通過だとか、世界の端っこに向けて進んでいるだとか、そういった楽しさは段違いだとは思うけど。まぁ好みで決めれば良いんじゃないかと。


◎その他環境面

【気候】
 太陽の日差しが非常に強く、晴れている日とそうでない日とで気温が全く違ってくる。最終日のデッドホース付近では、午前中は汗かきながら走っていたのに、午後から天候悪化し強風が吹いてきた時は、上着3枚にズボン2枚穿いてもまだ寒かった。

 気温はおおよそ5〜30℃の間だが、湿度が非常に低いため不快な感じはほぼない。夏季は太陽が沈むのが遅い、または沈まないため天気が良ければ0時頃にならないと気温が下がらない一方で、下がり始めると一気に冷え込む。ただし太陽が登ってくるのもまた早く、場合によって5時前とかには暑くなったりも。

 ダルトンに挑戦するベストシーズンは5月後半から8月前半までらしく、8月の中盤からは雨が増えてしまい未舗装ということもあって自転車走行には適さない。また道中はコールドフット以外の施設が通年営業してないため、これらの施設が開いている夏の時期でないと走行が厳しいという事情もある。

 総じて山の標高自体は高くない。最高峰のアティガン峠で1440m程度で、その他の峠はいずれも1000m以下である。なおアティガン峠を境にして以北はツンドラ地帯へと切り替わる。

【動物】
 熊の対策に関しては他のアラスカ全域と同様。食事場所・食料の保管場所・就寝場所の3カ所を分けるということを守り、ベアースプレーを枕元に置いて祈って眠るくらいしか対処の方法がない。

 走行中に関しては実はそれほど問題ないと感じた。道路上で偶然出くわし、しかもそいつが腹ペコで人を恐れないタイプでこちらが全く対応できないほど不意を突かれる可能性もないではないが、道路上を走っていれば基本見通しは良いのでどうにかなるかと。

 それよりも蚊の対策をしておかなければならない。防虫ネットと虫除けスプレーは必須の持ち物で、できれば蚊取り線香もあった方が良い。

 未舗装路を走る関係上、走行ペースが遅いため走っている最中でも蚊が襲いかかってくることがままある。虫除けスプレーをしても服の上から刺してくるヤツ、ヘルメットの穴に入り込んで刺してくるヤツなど数に物を言わせて群がってくる。

 姿を消したと思っても、1匹見かけると仲間を呼ぶのだろうか何十匹にも数が増えてしまうので要注意。蚊に悩まされずに済んだのは、最終日のツンドラ地帯で強風が吹きすさんだ時くらいだった気がする。

【山火事】
 割と火災が多発する地域らしい。帰り道では近くで大規模な火災が発生したらしく、コールドフットの前後100マイル以上に渡って煙が覆っている状態が続いていた。

 この手の情報はユーコンリバーとコールドフットのビジターセンターで教えてもらえるので、道路の工事状況も含めてとりあえず覗いてみた方が良い。

 それにしても天気といい山火事といい、私は恵まれた状況で自転車走行が出来たのだなと今になって思う。


◎まとめ

 とにかくアラスカの他の道とは段違いでキツくて大変な道だったが、そこを無理してでも走る価値のあった道だった。なおゴールとなるデッドホースの町より以北、北極海に通じるプラドーベイまでの数kmは石油会社の敷地となっているため自転車での走行は許されていない。

 北極海自体はデッドホースからバスに乗って行くツアーが存在しており、合計3時間で60ドル強の値段とのこと。ボッタクリじゃねーかという文句は置いといて、私は「ダルトンハイウェイを自分の力で走りきる」ことが目標であったため、このツアーにはハナから興味がなかった。

 かなり厳しい道なので、じっくりと事前準備を行い万全の状態で臨んだ方がいい。なおダルトンに挑戦するバイク乗り・自転車乗りは「セブンズ ベースキャンプ ホステル」に集まる傾向があるため、直接話が聞けるこのキャンプ場を利用するのが吉。おそらくフェアバンクスの宿泊先で値段も1番安い。
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 アラスカ20〜22日目 フェアバンクスの町

 さて順調すぎる感じでフェアバンクスの町へと戻ってきた私であるが、あまりにも都合良くいきすぎて人息つく暇も無かったのであり、厳しいダルトンを走り続けた日々とジョンのトラックに揺られ続け、流石の私も寝こけるわけにいかず頑張り続けて12時間。有り体に言えば無茶苦茶眠い。

 空は明るいがまだ眠っている町の中を走り、とりあえずマックでキャンプ場が開くまで時間調整。セブンズベースキャンプホステルへと舞い戻り、預けていた荷物を回収しつつテントを設営。最後の力を振り絞って砂埃で汚れまくっているウェア類を洗濯して力尽き昼寝。

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 本気で限界ギリギリだった

 16時頃に目覚めてとりあえず食料の買い出しに。本来ならば自転車の掃除も実施したいところだが、それは明日に回すことにしてダルトン走破した自分への細やかなご褒美にビールを飲もうじゃないか!実に9日間もビール飲んでなかったのであり、こんなことでは健康になってしまう。毎日ワイン飲んでいたけれど。

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 スペアリブが安かったので夕食に


 翌日。ダルトンハイウェイのことを忘れないうちに午前中を使い、道の内容をまとめてみたり。天気が悪くて雨が降っているのだが、フェアバンクス初日に滞在したビリーズバックパッカーホステルへと宿を移動する。

 別にキャンプ場は快適で居心地良いのだが、ビリーの家はWi-Fiがすこぶる快速であり、この機会に撮り溜めしておいたオセアニアの写真データをクラウド上に移行しておきたかったのだ。コンデジだけでも軽く7000枚は撮影したし、こういうガッチリ休む時でもないとやらない作業だもんで。

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 どうせ今日は雨だし

 同時進行であちこちから異音がするロシナンテ号の洗浄作業をば。オークランドで受け取った荷物の1つ、チェーン洗浄器がついに活躍する時が来たのでありワクワクしないこともない。たかが掃除で楽しそうだね私。

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 相当時間短縮できた

 ガタガタ道が続いたので各部分のネジの締まり具合とかもチェックしたのだが、やはりというか緩んでいた。今の私ほど緩んではなかろうが、気持ちをしっかりと保ってないから緩んだりするのだと、いかにも消防で聞きそうなお説教をかましてギチギチに締め直してやった。

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 あとはず〜っとアップロード作業


 さらに翌日。もう雨はずっと降り続いてるし、そもそも私のやる気が限りなく0だしということで、昨日に引き続きひたすら作業を継続。これだけダラダラしていても、別段フェアバンクスの町を観光しようとか思ったりはしない。

 先日キャンプ場でパンケーキ作ってるのを見て羨ましくなり、私も作ってみたのはいいがアメリカの1箱のサイズは大きすぎるんだよ。朝食から4枚も5枚もパンケーキ食べて、まだミックス半分も残っている事実。完全に持って余しているけど持ち運びたくもない、されとて宿に残していくのは悔しい私。こういうのを後先考えずって言うんですね。

 今日だけで文庫本2冊も読んでしまい、荷物が軽くなるのは嬉しいけれど、この調子じゃそう遠くないうちに再び本が枯渇してしまうこと必至。まぁいっか、未来の私に苦労してもらおう。

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 休んでる間にこれで体重増えないかな?

 なんか何時までたっても雨が降り止まないのだけども。いくら私でもそろそろ出発したい気持ちが出てこないこともないのであり、どうしたもんやらと思案中。

 1つ分かったこととして、私は海外で特にすることがない日は大概読書している模様。

 2016年7月16日(土) 走行距離12km 累計42404km
 2016年7月17日(日) 走行距離 5km 累計42409km
 2016年7月18日(月) 走行距離 0km 累計42409km
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 アラスカ19日目 空き地〜フェアバンクスから北に約600km デッドホースの町

 北極海への道9日目にして最終日。長かったダルトンハイウェイを走る日々も今日で終わり。走っている最中は辛いことだらけだったダルトンも、今となってみれば坂道とか蚊の記憶が蘇ってくるのであり、人の記憶はそんなに都合よく改変できません。

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 なおこの夜が夜中1番暖かかった不思議

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 なお今日が道路のコンディション1番悪い

 道が悪かろうが何だろうが、残っているのは100kmにも満たない海までの道。前半あれほど苦しめられたアップダウンは姿を消し、北極海へと続く1本道が延びる景色はダルトンの終焉を飾るに相応しい寂寥感。

 このまま感動的にゴールしたいところなのだが、30kmほど走ったところで道路工事。しかも長距離に渡って実施しているため自転車の走行は認められないという仕様。まぁこれに関しては中間地点にあるコールドフットのビジターセンターで教えてもらっていたため覚悟はできていたけれど。

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 ということで30マイルほどピックアップ

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 標高100mもないけど雪が残ってる

 ようやく下ろしてもらえたのはゴールである町ことデッドホースの手前5km地点とかさ。地平に見え始めた町の姿を確認して感極まって云々・・・という、読んでる人が引いてしまいそうなポエミーな感想を書くこともできず。

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 なんかアッサリとしたゴールになってもうた

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 デッドホースの町

 まぁ町とか言ってはいるが、その実は油田採掘のために設けられた巨大な工場群であり、期間工が働いているのみで居住者がいるわけではない。そして北極海に面する湾こと「プラドーベイ」に至っては会社の敷地内となっているため一般人は立ち入り禁止なのである。

 つまり私の北極海を目指す走行は海から10㎞ほど手前のデッドホースにて終了なのである。一応「北極海を見るツアー」というのが、ここデッドホースから申し込めるのだが2時間で69ドルとのことで、ハナっから行く気はない。そんなお金あったらビール買うよ。

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 海じゃなくてここは湖

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 一般人用に開かれてる数少ない施設のプラドーベイホテルへ

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 ここのランチビュッフェを食べて終了とする

 飛行機なら2〜3時間でこれるのだと

 見るべき場所などほとんどないデッドホースの町。食事時間を入れても3時間も滞在せず町を後にする。いいんです、そもそもダルトンハイウェイを走破するという目的でここまで来たのであり、デッドホースや北極海自体は大切ではないのですよ。

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 自転車旅行ってのは道中を楽しむもんなのだ

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 それでは町のはずれでヒッチハイクの準備をば

 残りの食料は多めに見積もって3日分。つまり自走して帰ることは現実的ではないというか、あんな道2回目を走るとかマジ勘弁なのであり、ここで車を捕まえることは必須事項であると言えなくもない。究極は飛行機で帰れるけどさ。

 結果としては7代目の車でフェアバンクス行きのトラックに乗せてもらうことに成功。こう書くとあっという間に感じるが、時間的には1時間半くらいやってましたが。交通量が少なすぎるんだよね。

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 さぁフェアバンクスへと戻るぜよ

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 途中でお菓子やジュースを頂いたりとか楽しい道中

 実走で8日間かけた道をあっという間に通り過ぎていくトラックに乗って。帰り道では悪天候や山火事などいろいろと悪条件の中を走行していたことを思うと、私はなんと運が良かったのだろうとダルトンハイウェイに感謝したり。

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 山火事の関係で煙だらけ

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 実にデカくて楽しいドライブでした

 翌朝4時半。無事にフェアバンクスの町へと到着する。往路に9日間、復路は12時間。まぁ自転車1日分のペースが車1時間分を上回ったから上出来だと思いたい。どうもありがとうジョン。

 2016年7月15日(金) 走行距離42km 累計42392km
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 アラスカ18日目 道路脇〜フェアバンクスから北に525km地点 空き地

 北極海への道8日目。昨日余計に距離走ったのと、さすがに疲れが溜まっているとので目覚ましをセットせずに寝てみることにした。結果としては7時過ぎの起床であり、普段と比べて2時間ほどの寝坊。それではダルトン終盤戦にまいりますか。

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 ツンドラの上は別に寝心地良くない

 未舗装路で走りづらいのはもちろんなのだが、それ以外にも通過していく車が巻き上げる砂埃が非常に厄介。オマケに小さな石飛礫も弾き飛んできたりと迷惑この上ない。何故私が毎日無理してでも川沿いにテントを張るのかって、この砂埃に1日中身を晒しているからだ。

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 せめて寝るときくらいはスッキリしたい

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 幸い道中にいくらでも川があるし

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 本日ダルトン2日目 この先は楽しい地獄ばかりだよ

 イメージで北極海が近づけば、寒さに震えながらの走行を余儀なくされるとばかり思っていたのだが、現実には暑くて汗ながしながら自転車走らせている。寒いよりは暑い方が好みだが、かといって暑い場所を走りたいわけではない。アラスカに来れば真夏のシーズンも涼しく過ごせると思っていたのにとんだ誤算である。

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 道路工事の人から水とオレンジを頂く

 やっぱり辺鄙な道だからか自転車乗りに対して優しい人が多いダルトンハイウェイ。気づけばほぼ毎日誰かしらに助けてもらっている私であり、皆様のおかげでどうにか走り続けてます。こりゃ途中で嫌になってリタイヤとかできないな。

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 この会社敷地でお昼休憩させてもらった

 勢い余って2時間くらい滞在していたのだが、何しろこのポイントは蚊が出てこない。どこへ行っても蚊に悩まされるダルトンにおいて、心休まる数少ないポイントなのであり、PCの充電がてら長時間居続けた私を誰が咎められようか?

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 久しぶりに出てきたトイレは使用禁止だった事実

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 もう道とツンドラしか出てこねぇ

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 道とツンドラとロシナンテ号しか出てこねぇ

 とにかく水浴びしたかったので川を探して走り続け、結果的に大きな湖の脇にて本日終了。川と違って流れていないためか水温が高く、5分くらい遊泳しても平気なのであり、久しぶりに水泳を楽しんだんだぜ。

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 ワインも肉もこれで最後

 いよいよ明日でダルトン走破の予定。走りきるのはいいのだが、ちゃんと帰り道を戻れるのか不確定なのであり、気持ちが一息つけるのは上手いこと乗せてくれる車を見つけた後だったりする。とりあえず明日の夜はデッドホースの町に泊まるのも辞さない準備だけはしてますよ。野宿の準備、だけれども。

 2016年7月14日(木) 走行距離92km 累計42350km
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 アラスカ17日目 チャンドラーシェルフキャンプ場〜フェアバンクスから北に446km地点 道路脇

 北極海への道7日目。寝るときは暑くて仕方がないのに、深夜になると寒くて凍えるという寒暖の差が激しすぎる毎日。体感ではあるが、気温は5〜30度くらいの間を上下していると思う。

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 ちょっと寒いくらいの方がウェア着込むので蚊に刺されずありがたい

 さて出発して早々にダルトンハイウェイにおける最高地点のアティガン峠への上り坂に差し掛かる。ここが最後の踏ん張りどころだと自分に言い聞かせ、気合を入れて来てみれば・・・

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 工事中で自転車は通行禁止とのこと

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 トラックにピックアップされてあっという間に頂上へ

 納得いかねぇ!そりゃ上り坂なんてできる限り回避したいし、坂道の途中で「麓から頂上までは自転車を載せれるリフトを作るべきだ!」とか思ったりしている私だが、こうして本当に回避してしまうと文句タラタラなのである。まぁルールに対してグチグチ言っても仕方ないのだけれど。

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 ということで楽勝だった峠を越えて下り坂に

 アップダウンばかりのダルトンハイウェイも、アティガン峠を越えると海まで下り基調の平坦路が続く。そりゃあ未舗装路の道ではあるが、ここまでこれたのならばダルトン走破はもう難しくない。

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 今日だけで10匹以上見た

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 山を下った先はツンドラの世界

 ツンドラなんて社会の授業で聞いて以来だが、こうして自分で訪れてみるとその美しさに息を飲むというものだ。こればっかりは「ダルトンの厳しい道中を自力で越えてきた」というファクターがなければ楽めなかろうよ。

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 今日も1人阿呆なサイクリストが

 前半戦の不安定な天気と打って変わり、連日晴天が続く。つまり凄まじく暑いのであり、ゴールまで補充が効かない水の残量を心配しながらの走行が続く。もう開き直ってガバガバ川の水飲んでやろうかしら?真夏なのに水温5度以下で実に冷たくて気持ち良い水なのだ。

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 と思ってたらトラックの運ちゃんから水と食料頂く

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 遮蔽物なんて存在しない世界

 これだけ僻地に来ても蚊の存在は消えないのであり、ちょっとでも立ち止まろうものならばあっという間に数十匹単位で周囲を取り囲んでくる最悪の刺客。たまに見かけたガードレールに自転車を立てかけての一休みもままならない。

 つまり、楽なようでちっとも楽にならないダルトン後半戦。体力的な厳しさから、とにかく我慢!という状況にシフトしたと思われる。

 ペース自体は速いので、当初計画していたキャンプ候補地には16時前に到着したのだが、話に聞いてたテント張れそうな場所が見当たらない。もうちょい先かなぁ・・・とかフラフラ進んでいるうちに、気づけば10マイル以上も走ってしまう。

 もうとにかく川辺だったらどこでもいいわい!と方針を変更するも、あれほど頻繁に見かけた橋や川がいきなり姿を消す。どんな嫌がらせだよ?と文句を言いつつ車のUターン方向転換ポイントで夕食&行水を済まし、近くの草地に無理矢理テント張って終了とす。

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 大変でした

 眠りたいのに沈まぬ太陽が強烈な日差しで照りつけて暑くて休めないテントの中。昨日までは山岳地帯だから、時間が遅くなると山の陰に太陽は隠れてしまっていたのだが、そこは地平線まで広がるツンドラ地帯。全く休めそうにありません。

 本当にどこまでもままならぬダルトンハイウェイである。

 2016年7月13日(水) 走行距離124km 累計42350km
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