自転車ときどき世界1周

2021年01月

 自転車での海外旅行では所謂「外国人慣れ」してない人と会話する機会が多い。というか後進国の田舎だったりすると出会う人間のほぼ100%がそうした方々である。

 そんな状況でもコミュニケーションってのは交わせるものだし、場合によっては(ネット環境があれば)Googleさんに翻訳して貰うこともできる。何より実際に顔を合わせて行うコミュニケーションってのは思った以上に通じ合える・・・ような気がするよ。

 ちなみにおそらく多くの日本人サイクリストは語学が堪能ではないと私は(勝手に)踏んでいる。私もその例に漏れず英語での会話すら目を覆いたくなる残念なレベルなのだが。

 さてさてそんな茶壺さんだが、スペイン語やれアラビア語圏の国で本当にちゃんとコミュニケーション取れてるのか?話した気になってるだけじゃないの?とか思われる方も多かろう。

 だが問題ない。何故ならそうした外国人慣れしてない人がする質問というのは「どこから来た?」「結婚してるのか?」「家族・子供はいないのか?」「何で結婚しない?」のほぼ4項目で占められているからだ。「何で旅行してるんだ?」とか「仕事してるのか?」と聞いてくる人すら珍しい。

 民度の低い国だと日本人と答えた時点で「金持ってるのか?」とか「日本人は幾らくらい稼げるんだ?」みたいなパターンに発展していくこともあるけれど、基本的に彼らが質問してくる内容というのはほぼ同じなのだ。

 国にもよるが場合によって1日10回近くこうした会話を繰り広げるのがサイクリスト。必然的にこの辺の単語は覚えるし、いくら物覚えの悪い私でも受け答えくらいできるようになってしまう。

 面白いのが相手が旅行者だったり外国人慣れしてる人の場合、このテの質問がほぼ出てこないということだ。

 これは後進国の田舎に住む地元民がコミュニティ外の人間と触れる機会をほとんど持っておらず、その地域内のみで生活が完結しているからだと思っている。

 知らない外国人に興味を持って話しかけてくる人は多いのに、その人が何故この地(国)に来たのか?ということには興味を持っていない。

 というのも「知らない異国を旅行する」といった考え方が彼らの世界にないから。考えもしないことは疑問に浮かばない。結局自分の物差しで計れることを聞く事になる。こういう土地というか地域は案外多い。

 私はこうした自分の周辺のみで構成された極々小さな世界で生きてる彼らに対し、もっと外の世界に興味を向ければいいのにという傲慢な考えと、だけど私も彼らと同じで自身の興味あることしか知ろうとしてないという寂寥感を感じてしまう。

 井の中の蛙は幸せか?みたいなことを私がどうこう語る気持ちはないけれど、海外を自由に旅行できる身分というのは非常に恵まれている存在なのだということは強く感じる。コロナで自由に海外旅行できない今の状況だと尚更。

 ちなみに私はこうした「お決まり質問」に返答するのが結構好きである。「独身だよ」と答えて「何でだよ?」みたいに返されるのは、大きなお世話じゃい!とも思うけど。
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 ある時点からかなり意識してるのだけど、長期的な旅行を行うならば「歴史」と「宗教」に関しては知識を深めといて損はないと思っている。余力があれば他に「地理」や「語学」も優先順位高い。

 というのも自転車旅行を志すと焦点がギアとかスキルみたいな実践的な方向に向かってしまいがちだけど、実はそういった技術的なことはいざ旅行を始めるといくらでも体験できるから事前勉強せずともトライアンドエラーで進歩できる分野だったりするからだ。

 そもそも自転車で海外旅行しようなんて発想が出る輩はアウトドア関係に興味ある人が多いし、少なくとも苦手意識を持ってるという層ではない。いやまぁそういうタイプもいるかもしれんが割合として。

 前回の記事でも語ったが、各人の基準が違うギアなりスキルってのは経験を経ることで自分のモノにしてかなくてはならない面が強く、経験に依存する割合が高いジャンルなのである。

 しかし歴史や宗教といった知識は違う。こうした物事というのは人々が根ざした生活に絡んで「日常の一部」という形で顕在しているからだ。それは誰にとっても同様にリターンが得られるということ。

 実際に旅行先で触れることになる対象は何でもいいのだが、その土地に訪れ自分の目で見て感じるというのは雑誌やパソコンを通して見るのと確かに違う。それは映像では伝えられない様々な付加価値が付属してくるからだと私は思っているのだが、そこに知識があると更に「見えなかった点が見えてくる」

 同じ国内でも海岸線と山岳地域で人種が違うとか、ヨーロッパのある地域を超えると豪華絢爛だった教会が突然簡素な造りに変わった・・・みたいな変化ならその場で疑問を知覚できることもあるが、イスラム教国のインドネシアに仏教遺跡であるボロブドゥールがあることやチリという国が異様に縦長であること、アメリカ南部の州や町名の多くがスペイン語由来だった点は事前知識がないとそもそも不思議とも思わない。

 こうした特徴には多くの場合、歴史・宗教が絡んでいるし自然物であれば地理的な要因が存在している。そうした物事は場所によっては(現地の言葉で)説明書きがあったり人に教えてもらえたりするのだが、それには現地の言葉を解する力が要るのでして。

 芸術系のスポーツがそうであるように、より深く知りたいと思うのであれば観測者にも最低限の知識土台が必要なのである。

 もちろん旅行なんてのは自由なのだから「何をしておくべき!」と強硬に唱えるべきではないのだが、海外旅行をより楽しむために何か考えているのなら、勝手に身につく旅行スキルなんぞより訪問国の特徴やどんな人が暮らしているのか?といったことに注視するべきだと私はお節介を言っておきたい。

 もっとも時間は有限なので、あらゆる方向に手を出しても結局どれも中途半端になってしまうことは明白。そうした時になるべく多くの国や地域で共通して影響力を持ち、多少なりとも知識があることでより深い見聞を得やすい項目が「宗教」と「歴史」なのだ。

 加えて言うとこうした知識は書籍や映画といった多方面での情報収集が容易な国内で実施しておくことが望ましい。ネット1本に頼ると偏り出やすい・・・というのは私の偏見入った意見かもだけど。まぁ学生の世界史と地理の教科書は使えますよ。

 余談だが、海外に行くと外国人から受ける質問の1つに「お前は何の宗教なのか?」というのがある。日本人なら多くは神道か仏教と答えることになるだろうが「日本人はどの宗教が多いのか?」「それはどういう教えであるのか?」等々興味ある人は突っ込んでくる。さて、ちゃんと(英語で)答えられるかな?

 そんなワケで知ってて損の無い分野であると同時に、私は学生時代に何を勉強してたのだろう・・・と思い知ることになるのでして。勉強はできるときにやっておくべし。
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