自転車ときどき世界1周

2021年04月

 食というのは自転車にしても海外旅行においても、楽しみや興味を抱く筆頭項目であるといえよう。

 そんな旅行に限らず人生においても大きなウエイトを占める人が多かろう人の三大欲求でもある食事だが、実は「自転車」と「海外旅行」が混ぜ合わさると絶妙な化学反応で「我慢」だとか「苦痛」といったスパイスが加味される。え、ナニそれどういうこと?

 人が住んでいる土地である限り、そこには必ず生活するためのインフラと食料が存在する。だから現代において、後進国であろうと首都クラスの大都市や観光地では、食べられる物がなくて困るということはまずない。

 しかしちょっと人口密度の低い田舎に入ってしまうと状況一変、お店やメニューを選択できる段階で躓く地域というのはかなり多かったりする。食堂は営業してるのに「食べ物なんてないよ!」と言われるとかさ。それじゃあ私はどうしろと?

 ともあれ「健康のため1日に30品目の食品を」・・・というふた昔くらいに前よく聞いた言葉だけど、この内容を実践できる環境下にあるのは一部の先進国の僅かな人だけであり、世界中結構な地域で人は毎日・毎食同じ食材を食べ続けているのが現実。健康なんざ知ったこっちゃねぇ。

 冷凍されてる肉が売ってりゃ御の字(パタゴニア)の場所もあれば、日中は電気が通ってるので冷たい飲み物だけは飲める(砂漠・人口過疎区域)という地域や、そもそも電気が通ってないため自給自足と物流に頼り肉・魚に至っては生でしか取り扱いがない土地(アマゾン川流域)とかもあった。

 そうした環境では「食べられるだけありがたい」・・・というのが現状で、種類や味といった点で妥協が必要になるのは必然だと言える。山の上で豪華な食事を摂るのは難しいのと同じ理屈だ。なお現地の人には悪いが、あんまりな食事環境に「移動を続ける旅行者で心底よかった・・・」とか思ったことも少なくない。

 これの重要なポイントがあくまで「満足な食事を摂るのが難しい地域での話」という点で、こうした場所を脱出してしまえば食事事情というのは改善することが可能なのである。

 しかし自転車×海外旅行ではそうはいかない。移動速度が遅い自転車だとそうした地域を通り抜けるのに時間を要するのは仕方のないことで、その間の食事はひたすら「エネルギー補給」と割り切って栄養を摂取することとなるのでして。

 これがね「味があんまり美味しくない」とかそういうのだったら(良くはないけど)いいんですよ。過疎地域ってのはさ、つまり人が生きていくのに大変苦労をする環境下であることがほとんどで、そういう土地を自転車で走るってのは私としても限界ギリギリだったりするのでして。

 そんな場所で疲れ切った体に「油まみれのフライドチキン」とか出されるとね。しかも同じメニューが毎日、ひどい時は昼・夜と続くとか・・・キッツいですよ30代後半にもなったオッさんには。

 結局、食事ってのは「楽しむべき場所で楽しむ」モノだと私は捉えていて、自転車における長期移動で過疎地域を通過する時なんかは「基本は自炊!食堂でおいしいもの食べれたらラッキー」くらいの感覚でハードルを下げに下げて対応している。

 余談だけど食事情の悪化でよりダメージを受ける人種は圧倒的にアジア系だと思う。アジア圏ではどんな僻地でも美味しく食事を摂ることができたのであり、ギャップの大きさに衝撃を受けるのは欧米人の比ではない(偏見有)。だってアイツら茹でた塩パスタで「サイコー」とかいうし。

 そンなアジア系で一定数の海外自転車旅行者がいる国は圧倒的に日本である。一応数は少ないけど台湾・シンガポール・インドネシア人の海外サイクリストには会ったことあるが。

 つまり日本人ワールドサイクリストというのはさ、世界で1番旅行中の食事に対してのっぴきならない思いを抱えている人たちなのだ!そう私は声を大にしてお伝えしたい!

 その割に何処でも「美味い美味い」言いつつバクバク食べまくってるように見えるけどさ、ニコニコ顔の裏側で私も大変な思いをしてるんだよきっと。
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 日本国内において普通に自転車が走り回る道・・・という表現を使えば、その舗装率は100%に近い。この言い方はズルい統計詐欺をするつもりじゃなくて、むしろ国交省の統計を参考にすると色々騙されるので便宜上(だって国内道路舗装率28%ってさぁ)。

 とりあえず実感として日本という国は狙って行かない限り未舗装路を走ることは無い。私が日本1周した時の走行距離約15000Kmのうち未舗装路は30Kmもなかったくらいだ。

 しかし海外に出ると主要道路であっても未舗装という状況が往々にしてある。そんな道をいくつも走っていると気づくのが「一口に未舗装といっても千差万別なのだ」ということ。そりゃそうだとは思うけどさ、知識と経験から来る実感は違うのだ。


 さて未舗装といっても重量級の貨物車両が速度を出して走っても問題ない道もあれば、そもそもこれは道なのか?と疑いたくなるレベルの道もある。未舗装路が続く美しい道として名高いチリのアウストラル街道なんかは「未舗装路」という区分で見れば非常に走りやすい道だといえる。

 では何が未舗装路における「走りやすさ」を分けるのか?だが、これは自転車の沈み込み具合が最大の要因となると思っている。

 そもそも未舗装といっても、ちゃんと圧接して地面を固めた道ならば自転車で走るのはそれほど難儀なことではないのだ。砂利や石が散乱していてハンドルを取られやすい等といった問題こそあるものの、ペダルを踏めばタイヤが回って前に進むのであれば、後は運転テクニックやバランスの話となる。

 しかし地面が圧接されてない砂や泥みたいな「埋もれる道」だと大問題。かけたパワーが全く推進力に変換されず、そうなると自転車なんて重たい鉄の塊でしか無くなってしまうというね。

 車やバイクといったエンジン付き車両はさ、同様のコンディションでも自転車と比較して太いタイヤと有り余るパワーで割と走っていけるんですよ。高い出力を如何に速度へ変換するか?という乗り物なので。

 でも自転車ってのは人間という小さいパワーを如何に無駄なく利用できるか?というエネルギー効率を目指した乗り物であり、つまり路面が悪い(=効率が落ちる)と出力を上げて解決するということができないのだ。

 この変換率を少しでも上げようとするにはMTBバイクのように太い径のタイヤに履き替えるだとか、自転車の重量を減らす・・・といった方向になるのだが、それを自転車旅行で実施するのは難しいのが実情でして。

 未舗装路というより道と自転車との根本的な相性みたいな話になっているが、結局ある程度のレベルを超えて「走れない未舗装路」となると対応策が「押す」か「持ち上げて運ぶ」かの2択しかないからだ。それか引き返すか。

 だから未舗装路を移動しようとする自転車旅行者が知っておくべきことは、自分の自転車がどのレベルの路面まで乗って走れるのか?であり、どれくらい未舗装の道で荷物満載の自転車を押して移動できるか?ということなのだろう。

 こんなこと語っているが、自転車旅行なんてほとんど初めて訪れる道であり、未舗装の具合も分からなければどこまでダートが続いているのかも不明。一部の有名ルートを除くと情報も無ければストリートビューはおろか衛星写真すら見られないというのがザラ。だって未舗装路ってのはそういう重要度が低く交通量が少ないポイントにあるものだから。このため現実的には出たとこ勝負だったりするのがツライところ。

 ちなみに私は過去2回ほど未舗装路で困窮してヒッチハイクで難を逃れた経験がある。1度目のカンボジアは経験不足や不用意な点が大きかったと思っているが、2度目のブラジルでは転倒したことや逆ヒッチハイクであったこと、ここまでの行程と私の体力、あとフライト予約してて地味に時間もなかったなどの複合的な要因から判断した。

 色んな状況があると思うけど、海外未舗装路は下手すりゃ野垂れ死ぬ可能性を孕んでいるため慎重であって然るべき・・・というのが今の私のスタンスだ。自転車旅行者は道で倒れてはいけない。
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