自転車ときどき世界1周

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 2025年12月17日〜12月27日
 走行日数11日間
 累計走行距離717km(183943km〜184660km)

◎道路
 本文中何度も書いてるが、韓国の出入口2大拠点である仁川と釜山を結ぶ韓国縦断自転車道があり、韓国で自転車旅行するならこの道を利用すると車両に邪魔されることもなく、信号でのストップもごく僅かで大変快適な走行をすることができる。この自転車道路は他にも幾つかルートが設定されており、例えば南の済州島1周自転車道とかも人気高いらしい。なお車両は右側走行。
 んでこの自転車道を利用している分には快適なのだけど、この自転車道を外れて一般道路を走行しようとすると日本とどっこいどころかそれ以下と言えるレベル。幹線道路でもないと道路上に側道が存在しない道が多く、特に町中で自転車は車道じゃなくて歩道を走るようインフラ構築されている。でも日本と同じく歩道には段差があって自転車を走らせるのに邪魔となるし、歩行者の数が多い上に自転車走行レーンでもお構いなしで歩き回る人が多いのでとにかくストレスが溜まる。なので自転車道を外れてしまうと途端に走りにくくなる環境だというのは心に留めておいた方がいいと思う。
 素直に縦断自転車を走る場合は500m強の峠を1本越える程度で他に大きな峠も存在せず楽しく走れる道ではあるが、山中を進んだりする道でどうしても既存の道路に合流のためだったりで無茶な斜度を登る道が一部存在する。それ以外だと川に沿う形で自転車道は続いているため、川が蛇行している地形の影響をモロに受ける。このため単純な国土の縦断では400km程度の距離となるのだが、自転車道の総距離は633kmに及び地図で確認した感覚以上に距離を走る必要があるため注意が必要。

◎治安
 非常に良い。自転車道脇にある丸見えの東屋でテント張ってても「まず大丈夫だろう」と感じさせる雰囲気があった(やってないが)ほど。一部の都市に人口集中していて国内の大部分が田舎であるという点も大きいと感じさせる。
 言い換えるとソウルや釜山といった大都市では一部雰囲気の悪いエリアもあったし、浮浪者の溜まり場となっているダンボールハウスが連なっている場所には幾つものキャリーバッグが置かれており、素直に考えるなら旅行者の品物を盗難したのでは?と思うので、そういう事例もままありそう。
 忘れちゃならないのが北緯38度線ラインこと北朝鮮の存在で、扱いとしては現在でも戦争が継続中とされている点。実際のところ国境線付近はそこそこ観光地化されてると聞くし、直接的には危険となることは無いと思うがまぁ一応。

◎ビザ・出入国
 日本人の場合はノービザで90日間までの滞在が可能な国である。そのこと自体は非常に有難いし、東アジアの隣国である特権なのか入国審査でも有人の係員対応ではなく自動ゲートを通過して審査が行われたりした。そんでもって出国時に「パスポートにスタンプが押されていない」と言われて一悶着あったのであり、個人的にはそんな間抜けなこととなるなら外国人は全てスタンプ押させろよと思うたが。
 あと出国時の荷物審査がやたら厳しく(フェリー乗船だったからかもしれない)、調理用の包丁を没収されそうになったのは焦った。友人から頂いたずっと旅行を共にしていた大切な相棒なんですと丁寧に説明して何とか係員預かりの形で許してもらえたが、最後の最後でロストするところだったので本当に参ったね。

◎交通事情
 自転車道を走ってる限りは車両と交錯する機会が非常に少ないためそもそも交通状況を気にすることが少ない。なので空港周辺や都会の一部といった地域のみの感想となるのだが、運転マナー自体はかなり悪い。クラックションを鳴らすような国民性ではないのだが、特に大型バスは自転車に恨みでもあるのかというような荒っぽい運転をするし、自転車を追い越した直後にブレーキかけて右折(日本でいう所の左折)するとか洒落にならない危険運転に複数回遭遇している。
 総じてルールはしっかり守るけど、運転自体は非常に荒いし自転車等の軽車両に対する配慮した運転などは期待しては駄目というのが私の感想かな。なので韓国自転車旅行においては自転車道以外の道を走ると相当しんどいだろうことが想像できる。やはり素直に自転車道を走るのが正解か。

◎特徴
 北朝鮮とは戦争を継続している訳ではなく「休戦」という扱いらしいが、まぁ北はあんな調子の国であるため韓国側も相応の対応をしている。兵役の義務みたいな制度は分かりやすい影響だが、旅行者的にはGoogleマップの経路サービスが利用できない・・・というのが直接的に影響を受けるポイントだと思う。
 これについて韓国側は北朝鮮との緊張関係が続いているため詳細な地図データの国外持ち出しを制限しているから・・・というのが理由らしい。結果的に旅行者にとっては地図による経路確認ができないという結果なので大変迷惑である。
 このため韓国で地図アプリを利用する際は「NAVER Map」又は「Kakao Map」という韓国製地図アプリどちらかを利用する人が多い。でも前者は経路サービスで獲得標高を出してくれないし、後者は言語が基本韓国語のみで使いにくい・・・とそれぞれ若干の問題を抱えている。他の手段としてオフラインマップを活用する場合は韓国の規制に該当しないらしく普通に活用することが可能。ただし私が利用しているMaps.Meなんかは韓国内のデータ量が少なくて、施設とか諸々の建築物を調べるには不向きで使い辛いところがある。

◎気候
 いやぁ日本と距離近い国だしそこまで気候変わらないだと思っていたのであり、この寒さには苦労した。12月の韓国はー10℃以下まで気温下がる日もあったりと相当な冷え込みを見せる国であり、特に北部のソウル周辺は寒い地域のようで、私が韓国滞在していた時期にー18℃を記録したとニュースで出ており戦慄したことがある。
 また寒さに拍車をかけるようにこの時期は北・西からの風が吹き付ける日が多く、そこまで強い風力ではないものの自転車道は田舎の川沿いを走る地形が多かったことから風を遮る遮蔽物が存在せず数字以上に風を受けて翻弄されることが多かったように思う。
 なおこれだけ寒い割に何度か天候悪くて雨には降られたが雪に降られることはなかった。クリスマスイブも韓国で過ごした訳だが、雨は夜更けすぎに雪へと変わらないというヤツだ。でもサイレントナイトではあったな。雪は降らなかったけど雨でも低気温で水溜りが凍ってしまい、しかも日中でも全然溶けないため日陰とか一部の道が非常に危険となるので気は抜けない。雪が降ったらそれはそれでアイスバーンの危険が残るためどちらにしても油断できないのだが。

◎言語
 韓国語。東アジア圏において中国語の影響から完全脱却し、ほぼ0ベースで作り上げた言語であるため言語的な価値とかはともかく旅行者としては勉強してないと全く読むことも発音することもできない。
 韓国人自体は英語話者がそこそこいるのと外国人慣れしてる人が多く、コミュニケーション自体はそこまで苦労すること無かったのだけど、看板とかにも英語が併記して使われてるといったことが非常に少なく、特に自転車道におけるルートや方向指示看板においては壊滅的なレベルで韓国語オンリー。私の場合は韓国縦断自転車道路のロゴマーク記号を記憶して「このマークが描かれているから正解の道はこっち!」みたいな原始的な方法で情報拾っていた程だ。

◎宿(野宿)・Wi-Fi
 ソウルや釜山といった大都市さえ離れてしまえば人口過疎地域が続くので野宿の場所探しで困ることは少ない。自転車道沿いにはレストエリアとして東屋が設置されてる場所も多いし自転車旅行者を対象にしたゲストハウスもちょいちょい見かけるため、どんなスタイルで旅行してても対応できるのが嬉しいところ。
 なお都市部の宿代は安いところで2000円を切る所もあったが、田舎の場合は競争原理が働かないのかそこまで安い宿はなかったように思う。
 ネット環境に関しては流石の先進国といった感じで、都市部でなくとも市内FreeWi-Fiとかを簡単に見つけられる具合ではあるのだが、台湾と違ってセブンやファミマといったチェーン展開してるコンビニにWi-Fiが飛んでないため「ここなら確実にネットができる!」と確証を持てる感じではない。確かemart24ってコンビニではWi-Fi使えたけど全店で同じサービスしてるかは怪しい感じある。素直に公共施設とか駅舎を利用するのが正解かな。

◎動物
 クソ寒い時期だったので山中とかでも昆虫とかの微小生物を見ることはほぼ無かった。犬も吠えて来るようなことはほとんど無いし動物絡みで危険を感じるようなことはまず無い。
 ただ田舎の野山にはコラニ(若しくはキバノロ)という角が生えてない鹿みたいな生き物が数多く生息している。体長1mくらいあって相当な速度でテントの側を駆け回ったりするため結構ビビるし下手にテントに衝突されたら大惨事になること間違いなしなので意外と怖い存在だ。
 それ以外では1回くらい綱で連れられt牛の姿を見たくらいであまり動物の印象ないかな。

◎自転車店
 基本的にスポーツ自転車で構成されてる国であるためか、自転車ショップもスポーツバイクを取り扱ってるショップしか見た記憶がない。都市部でなくとも縦断自転車道を走るサイクリストに対応する形で自転車道沿いには多くのショップがある(特に北部)ため問題となるようなことはほとんどない。ただし自転車道沿いのショップはレンタル業が主だったり、ウェアとかオシャレアイテムの販売ばかりに注力しており自転車そのものの知識やレベルに関しては疑問符が付くショップもあった。
 そもそも国土が小さかったのと日本が目前に迫っている関係で「ショップを利用する」という機会そのものが無かったこともあり、商品ラインナップとか値段に関してはあまり真剣にチェックしてなかった(お店自体は幾つか訪問した、趣味なので)ため、それほど言えることが無かったりする。

◎物価・食事
 バチクソに高くてビックリした。日本なぞより遥かに物価高い国で、アジア圏全体で比べても韓国より物価高い国は存在しないのでは?と思うほど。少なくとも私が訪れた当時のシンガポールより高い。
 ただ品目等によって結構波があるというのはあって、案外一般食堂の価格はそこまででもなく10000ウォン(約1090円)以下でも食事できる場所そこそこある。
 アルコール関係も税率が低いのだろうかかなり良心的な値段設定となっており、ビールに関してはロング缶で150円くらいの物もあるしその価格帯でマッコリとかも楽しめる。
 だがコーラが500円超の世界だし、キムチとか本場だから安かろうと思ってたら400g容器で1000円以上するのがザラ。帰国して再確認したけど日本はその半額以下だったぞどうなってんだ?
 ただし食事のレベルに関しては非常に高く、外が寒すぎて呑気に自炊してる余裕がなかったという面もあり結構外食も利用していた。定食系のメニューにはほぼ必ずキムチを始めとした付け合わせの小皿とスープが並ぶというのが定番で、ご飯とこうした付け合わせはお代わり無料方式多いのが嬉しい。
 ただキムチ以外の食べ物も辛い物が多いし発酵食品が多くて苦手な人はそこそこ居るかと思う。特にスープ系の料理は唐辛子をバンバンに入れた激辛メニューも多く、実は韓国滞在中はトイレで用を足す際刺激物が排出されてしんどい・・・ということが多かった。

◎総括
 最後の海外となった韓国。当初この国には訪問する予定なくて、台湾からそのまま沖縄へとフェリーで帰国するつもりだったのだけど、結果的にこうしてこの国を走れたことを今は良かったなと思っている。いやフェリーの就航予定遅延に関しては最悪だと思っているけどさ。
 季節的に寒さが厳しくはあったけど、ハードな山もなく快適な自転車道路をのんびりと走ることは改めて「自転車で走ることの楽しさ」というものを実感させてくれたように思う。こうして地道にペダルを踏み続けて私は世界中を走り回ってきたのだなという気持ちと共に、国内を端から端まで自転車道使って走り日本海を眺めて終える・・・というシチュエーションは自転車世界1周行における最後の国として訪問するのに満点の土地であると表現して良いと思う。
 もちろん海外自転車旅行の経験がない最初の国に選ぶのも良い選択だと太鼓判を押せる国ではあるが、やはり私は日本人なら韓国を最後の訪問国とするのをオススメしたい。
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 2025年11月14日〜12月17日
 走行日数34日間
 累計走行距離1631km(182312km〜183943km)

◎道路
 自転車大国だけあってかなりの割合で側道や自転車専用のレーンが整備されており走りやすい国。流石に台北とかの大都市部では車両が多く道は狭くなる関係でしんどい部分もあるけれど、そういった都市でも主に川沿いに走りやすい自転車道が造られており、そうした道に合流するよう走行してれば問題となることは少ない。
 ただ都市部の道路基礎インフラが日本統治時代を基準にしてるのか町並みが思い切り日本を感じさせる。これの何が問題かというと、都市部においてあらゆる場所に信号機が立ち並ぶ構造となっている点だ。このため町中を走行しようとすると必要以上にストップ&ゴーの連続となり時間も負荷もかかることこの上ない。
 その他の点で、台湾は海沿いの環島ルートを走行する分にはそこまでアップダウンもなく、斜度も比較的緩やかなものが多くて自転車にも優しい造りだが、ひとたび内陸部へ進むと無茶苦茶な山岳国でありハードな登りが連発することを覚悟しておいた方がいい。国土としては九州と大体同じくらいと言われているが、その中に4000mに迫る最高峰が聳え立っているし、私が無茶苦茶苦労した武嶺も日本の道路最高地点より高い。その他にも獲得標高が2000mを超えるような超絶弩級の峠がゴロゴロしてるので、臨むならばしっかり下調べして覚悟しておくべき。

◎治安
 非常に良い。台北の一部とか以外は危険に合うような雰囲気も感じられないが、超絶観光地である九份の旧市街には「荷物の盗難に注意」という張り紙があるのを見つけたのでまぁそういう問題も有るっちゃあるのだろう。
 この国では食堂でTVを流しっぱなしな関係で、ニュース番組から都会では轢き逃げとかの出来事を繰り返し映像で見せられたりもしたのだが、そんな事件より日本と中国の関係悪化に関する報道のがよっぽど時間割いて語られていたのが印象的。そりゃまぁ切っ掛けは台湾有事の際にどうするか?っていう話だったからな。
 環島チャレンジしてる人口が多い関係か、野宿してて地元民に見つかっても「お疲れさんだねぇ」といった反応をされることが多かったのが好印象だ。流石に都市部じゃそうはならんと思うけど、基本的に台湾において深刻なトラブルに遭遇するような可能性はあまり考えなくても良いんじゃないかと思うたよ。

◎ビザ・出入国
 日本人の場合はノービザで90日間の滞在が可能であり、国土的に鑑みても旅行目的ならまず時間的な制限を気にする必要がない。
 なお入国審査はネットからアクセスしたページにて個人情報を記入する必要があるのだが、私が到着した南竿島の小さなフェリーターミナルにすらFreeWi-Fiが飛んでおり、スマホ1つで完結できる仕様となっている。そのページも日本語による表記となっており海外に慣れてなくても安心できるし。
 だがまぁ私みたいに何度データを入力しても謎のエラーで弾かれてしまい、最終的に昔ながらの紙カードにペン使って情報記入する場合もあるみたいなので過信は禁物か。なおイミグレ職員がわざわざ日本語の話せるスタッフを呼んできてくれたりと大変親切にしてくれたのでイレギュラーあったものの困ってしまうことはなかった。

◎交通事情
 先進国として見るとそこまで良くはない。中国の後だったので最初は驚くほどマナーが良いし、車両がクラックションを鳴らすこともないなんて素晴らしい!とか感動してたけど、よく考えるとそんな褒めるようなポイント違うしなぁ。
 一般乗用車とかは普通だと思うけど大型バスとかトラックが結構乱暴な運転をする傾向があって怖いのと、とにかく原付バイクが数と共にマナーの悪い輩が多くて危険。流石に逆走までしてくるアホは稀だけど、危険予測を立てられないライダーが多く走行中の自転車の脇スレスレを平気で爆速でぶち抜いていく。自転車とバイクは道路上でも同じレーンを共有していることが多いのだが、これを毎回のように繰り返されると此方としては気が気でないというのが正直なところ。抜かれる際に一瞬でもフラついたら大クラッシュなんだぜ?
 んでスポーツバイクに乗ってる人は流石にまともな運転してる人が多いけど、ママチャリみたいな一般自転車乗ってる人は平気で道路を逆走して正面から突撃してくる割合がかなり多い。要するにしっかりとした自転車教育が周知されておらず、傍若無人の運転してる奴が田舎を中心に相当数いるのが問題か。
 ただまぁ自分の都合で信号を無視するだとかクラックションを鳴らしまくって邪魔な存在を威嚇するといった行動を取るドライバーがほぼいないだけで大分走行におけるストレスは低い。道路事情が良いことも相まって全体的には悪くない印象なんだよね。

◎特徴
 1、中国が「1つの中国」という名目を挙げてる関係で、国家承認している国が非常に少ない国である。私個人の意見としては台湾は完全に中国とは別の国だったな・・・と思うが国際的な見方や表明というのはまた違うものなので仕方ないのは分かるけど。
 こうした立場もあってか台湾人には中国のことを嫌ってる人の割合が高く、私も何人かそうした人と会話したりもしておりその辺の表現には気を遣う。それと例えば中国のアプリであるTrip.comなんかは台湾を「福州省の飛び地」として表記しており、当然台湾側からしてみればこんな表現は受け入れられないということか、アプリに出てくる掲載施設が極端に少ない。なので台湾では普通に利用度の高いBooking.comとか中国では役に立たなかったアプリを利用していた。要するにルーツは近しい国だけど、台湾は完全に西欧諸国の文化圏にある別種の世界として捉えて行動する方が旅行的にも何かと都合が良い。
 2、世界最大の自転車メーカーであるGIANTの本拠地であり、自転車に対する取組みの度合いが非常にしっかりしている。環島のような島1周の道路状況だけでなく、列車の多くに自転車をそのまま持ち込み乗車ができる点や、多くの場所でスポーツ用バイクのレンタルサイクルショップが営業していたりと本格的に自転車乗らない層まで幅広くカバーしているのが素晴らしい。こういった点からも初の海外自転車旅行で台湾を選ぶという選択肢は非常に利点があると言える。

◎気候
 南国に位置する台湾は11〜12月こそ観光におけるベストシーズンだそうで、実際この時期の気温は日中20度前後と快適になる。ただし面積の大きくない島国だけあって沿岸部は大体どこも湿度が高いという問題があり、夏の時期だと高音&高湿度という日本と同様のしんどい気候になることが予想される。
 それと結構風が強く吹いてくる国でもあって、私の場合は1ヶ月ずっと変わらず北東から風が吹き続けていた。自転車である程度長期間の台湾走行する人は、必然的に環島こと台湾1周を考えることになると思うが、この風が最も強く影響する場所が台湾東部になるため、この時期向かい風で大変な思いをしたくないというのであれば時計回りをオススメする。私個人としては反時計回りの方が楽しかったと思っているが、私は数ヶ月前にモンゴルの無茶苦茶な強風に晒され続けて耐性があったため多少の向かい風を気にもしていなかった人なので。
 何気に雨が降ることも多く、特に台北は地理的な特徴から12月は半分近くが雨降るそうだ。雨の降り方自体は南国地域らしくスコールのように短時間で一気に振ることが多いと聞いたけど、私が体験した分にはむしろ弱い雨が長時間に渡ってダラダラ降り続いてることの方が多かったな。気温が高い関係で、山とかでもない限りは雨でも寒くて仕方ないということはない。
 後は東部地域は朝晴れてても午後になると雲が迫ってしまい曇天又は雨となるパターンが繰り返される。夜になると雲が晴れるというサイクルが繰り返される感じで、景色の良い道を走りたいなら早起きして午前中をメインに走行計画を立てた方が吉。

◎言語
 中国語なんだけど使用している文字が中国本土とは異なる「繁体字」という文字である。余談だが中国は「簡体字」とのこと。昔ながらの中国漢字をあまり変化(省略)させずに用いてる文字らしいのだが、日本人的には台湾の繁字体のが意味が通じる単語も多く、読める感じの割合も豊富であると感じた。簡字体は省略しすぎてむしろ意味不明なことが多いのよ。
 これに加えて中国より明らかに英語話者の数が多く、また年配者を中心にカタコトながら日本語が話せる人が数多くいるのも有難い。中国人と違って外国人がいることを当然のこととして捉えてるのもあり、向こうから中国語で話しかけられることはあっても「スマン、俺中国語分からないんだ」と返すとちゃんと理解してくれる。それでもお構いなしで中国を捲し立ててくる国とは大違いだ。
 ということで日本人的には世界中トップクラスで言葉の苦労が少ない国だったなと思う。私は最終盤に訪れた国となったけど、むしろ海外旅行するなら最初に訪問すると苦労が少なく慣れるのに良いんじゃないかと感じる。

◎宿(野宿)・Wi-Fi
 ある程度の大きい町ならゲストハウス系の安宿が幾つかあるのが普通で、台湾を走行するにおいて基本的にテントは必須のアイテムではない。私は安く済ませたいので野宿も繰り返したが、1泊3000円を出せる人なら台湾で「宿が見つからない」と困るパターンは少ないと思う。
 なお私が利用した台北・台南・花蓮の3都市は特に宿泊費用が安かった町で、1泊1000〜2000円だったが流石にこれは平均的な価格ではない。でもそうした価格でも基本的なサービスはしっかりしてたし、Wi-Fiはどこの宿でも満足な速度が出ていた。というか台湾では大都市なら「I-taiwan」というFreeWi-Fiが飛んでるし、地方の田舎であっても中心地とかだと同じ名前のFreeWi-Fiがあること多い。そもそも国内中部数にあるセブンイレブンとファミリーマートにもFreeWi-Fiがあるためネット関連で困ることがほぼない。よっぽど山奥を何日もかけて走り続けるのでもない限りは1日走っていたらネットに接続できる機会は何度も訪れるため気にする必要ないかなというのが私の感想。
 なお野宿に関してだが、西部の大都市圏さえ避ければ基本的にテント張る場所探して苦労することは少ない。雨の割合が多い国なので、できれば軒下にテント張りたいな・・・とか贅沢なこと考える日も多かったが、その条件であっても大体どうにかなっていたというのが正直なところ。そういう意味でも自転車旅行のしやすい国でした。

◎動物
 そんなヤバい生き物居ないと思いきや、テント張れそうな場所探してたら草むらから1m近い大きさの蛇が出て来たことあってビックリした経験がある。地域的にハブとか生息してるだろうし、あんまり草木が生い茂ってる場所に入り込むのはオススメしない。
 それと山中や南部の田舎では猿の数が多く、人間を見かけたら逃げてく一方で食料を剥き身で携行してると盗まれる可能性が高いため気を使うことがある。キャンプしてると余計に。
 後はムササビだかモモンガっぽい生き物が逃げてったり滑空してる姿を数回見かけた程度かな。犬は結構吠えてくる国なんだけど、鎖やロープで繋がれてないフリーの犬が少ないため結果的に危険度は低い。

◎自転車店
 大体どこの町行っても自転車ショップあるので心配ない。環島のルートを外れない限りは最低2〜30kmに1つの割合で補給地点が設置されているのだが、そこに簡単な工具も置かれており自己整備ができるパターンも多い。
 私は利用してないが、地方部では列車にそのまま自転車を乗せることも可能であり過疎区域でトラブルに遭遇してもショップのある場所まで移動することが難しくない点も評価高い。
 それだけじゃなく自転車製造のトップランナーである国だからか、各種部品の値段がかなりお買い得である点も見逃せない。流石にメーカー正規品は一般的な価格だが、ヘタってたバーテープとかチェーンやブレーキシューといったパーツが安く手に入るのは嬉しいところ。しかも種類が無茶苦茶豊富だし。
 総じて自転車旅行をするのに困る点はほとんどない。シュワルベのタイヤも豊富に見かけたので探せばマラソンプラスすら見つけられると思う。日本人的には長期自転車旅行で台湾にてタイヤを探すこと少ない(最初か最後に訪れるパターン多いだろうから)と思うが、西欧と比べても遜色ない自転車サービスの行き届きっぷりには頭が下がる思いである。

◎物価・食事
 当初抱いてたイメージよりそこそこ高めかな・・・という印象。昔は1台湾ドル=約3円計算だったらしいけど、2025年現在で1台湾ドル=約5円となるので、単純計算で物価1.6倍になってる訳だし。
 それに加えて台湾自体も物価情報の煽りを受けているらしく、アジア全体で見ると物価安い方の国とまでは言えなくなってしまった感がある。ちなみに食事は1食3〜600円くらいが目安だが、台湾の食事って量が少ないことが多いためサイクリスト的には物足りず追加で注文しなくては我慢できないことがよくあった。悔しいことに無茶苦茶美味いのに加えて種類も豊富で選び甲斐があるため思わず食べまくってしまう危険が。
 アルコール類は日本とどっこい程度に高くて1番安いビールロング缶で200円くらいするのが普通。何故か日本のチューハイが沢山売っていたけれど、これなんか1本500円くらいしてとても買う気にならなかったぞ。
 中国と同様に自分でおかずを選んで装って貰う「自助戒餐」という名前のビュッフェスタイルがあるのだが、これも本人が好きなだけ載せられるのではなくお店の人にやって貰う方式となっており、こうしたことから台湾では「お腹いっぱい満足に食べれた」というパターンが割と少なかった。
 宿も自炊の設備が充実してることは少なくて基本は「外で食べて下さい」というパターンであり、自炊したくても難しいというのが私が感じた感想。そうはいっても日本と比べりゃ(物にもよるが)物価安いというのは間違いないし、これに関しては事前のハードルが高すぎたことと中国の飯が安すぎたこととが影響してる部分もあると思う。

◎総括
 想像していたよりもずっと自転車で走りやすい国であり、想像以上に親日的でフレンドリーな人々との出会いが楽しめた国だった。ゆるふわな島1周のサイクリングを楽しむもよし、内陸へ入ってハードなヒルクライムを楽しむもよしと幅広いサイクリストに対応した構成をしている上に宿も豊富で電車によるワープも可能と短期間のライドでも満足できるようインフラからサービスまで各種行き届いてるのが素晴らしい。
 でも台湾において最も良い点はそんなポイントではなくて、このくにに住む多くの人が自転車旅行に対して暖かく親切にしてくれるというその文化にあると思う。台湾を自転車で走っているというだけで、どれだけ多くの人が応援してくれ話しかけてくれたことか。
 実は中国からフェリーで韓国に渡ってそのまま日本へ帰国するというルートもあったのだけど、私は台湾という国に興味があったし、実際この国を訪れて見て本当に良かったなと思っている。最後、石垣島行きのフェリーに載れなかったことだけは本当に残念であるが、こうした新しいフェリールートが出てくることによって特にサイクリストには新たな輪行しなくても海外に出れるルートとして台湾へのアクセスが確立されることをとても意義あることだと思っている。だから沖縄本島と石垣島のフェリーも新しく運航して欲しいというのが本音だが。
 ともあれあらゆる点において日本人が海外自転車旅行するのに適した国であることは疑いようがない。私も旅行経験のないサイクリストにおすすめを聞かれたらニコニコ顔で「最初は台湾が良いと思うよ」と答えるであろう魅力満載の土地である。
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 2025年8月26日〜9月13日・10月16日〜11月14日
 走行日数49日間
 累計走行距離4646km(1回目1562km・2回目3084km)(174709km〜176271km・179228km〜182312km)

◎道路
 これは素晴らしい。アジア地域では文句なしにNo.1というレベルで、これだけ広い国土に不足なくしっかり広い側道が敷かれているという点では他に追随を許さない程。なお車両は右側通行。
 偉いなと思うのが、走りやすいのが郊外のみでなく都会でもしっかりと自転車レーンを確保しており、それが自転車の使いやすいよう設計されている点。このため町中を走行してても段差や信号といったポイントでストレスを感じることがほぼなく、また交差点や分かれ道等が出て来ても自転車で走行するレーンを道路と色分けして分かりやすく案内しており初見の人間でも立ち止まったりする事なくスムーズに移動できる構造になっている。ハッキリ言って全体のレベルでいえばオランダやデンマークといった自転車先進国とも良い勝負できるレベルだとすら思う。むしろ国土の大きさを考えると中国の自転車に対する意識の高さには頭が下がる思いだ。
 なお国内の東・南半分くらいはほぼ海抜0mに近い平野部が広がっており、中国におけるガチ山岳エリアは西部か北部へ行かないと楽しめない。でも西部のウイグル・チベット自治区は外国人が自由に走行できない道があったりするのが問題で、しかもこうした情報が非常に把握しにくい国であるため「予定してたルートが走らせてもらえず計画が滅茶苦茶に」といったことが起きやすいのが問題。滞在期間が短い上に(ノービザだと)延長手続きも出来ない国なのが恐ろしい。

◎治安
 非常に良い。私が旅行してるのと近い時期に「現地在住の日本人が暴行を受けた」といったニュースが流れて来たこともあったけど、それでも中国の治安は文句なしに良い国だと言える。
 ただこの治安の良さって中国の凄まじい監視社会の元に成立してる感があって、感覚で言えばシンガポールやドバイと近い気がする。特にウイグル自治区に関しては「何をそこまで・・・」と不気味に感じるほど警察と監視カメラが乱立しており、旅行者の立場からするとひたすらに気味が悪い。
 1つ例を挙げると中国って都会と田舎の格差が凄まじい国なのに、スラムや浮浪者の姿を見ないんだよね。私はこの事実をとても不気味に感じたし、あらゆる点で「禁止」と書かれた看板を見かける中国という国において貧困者は何処へ追いやられたのか?とか想像すると怖い気持ちになる・・・という意味で野宿に別のリスクを感じるのはある。
 ただ私が出会った現地で生活する中国人たちは皆さん親切で朗らかだったし出会って嫌な感じを受けるような人はほぼおらず、そんなガチガチに規制しなくても不安を感じるような場所がなかっただけに異様なまでに厳しく思える雰囲気には違和感覚えざるを得ない。
 でも相対する警察官とか軍人の方々がまた腰が低くて旅行者に対しても親切なのよ。途上国における田舎の警察なんてロクでもない応対する輩の方が多いとすら思っているが、こと中国に関してはイミグレーションの職員含めて横柄な対応してる人と出会った記憶がない。恐らく相当厳しい教育実施されてるなコレ・・・と思ったのは、民間企業である宿泊施設の受付とかは普通にクソ対応してくる人の割合高かったから。公務員の対応が丁寧な国って日本が断トツだと思っていたが、中国はそれに匹敵する程しっかりしてますよマジで。

◎ビザ・出入国
 コロナ禍以前は日本を含めた僅かな国のみノービザで15日までの滞在が認められてた国で、これに加えて中国はビザの取得が非常に難易度高いことで知られる国であった。なので全日程の旅行予定表提出が求められたりする中国ビザって自転車旅行でなくとも取得が鬼門で全世界的に外国人の旅行者が少ない国だったのよね。
 この傾向変わってきたのが2023年で、コロナ以降ガチガチに締めて(日本のノービザ入国もコロナで解除されて)いた入国条件をヨーロッパの一部の国に緩めたことが当時大きなニュースとなった。その流れで2024年の12月からはノービザ滞在日数も最大30日間と拡大されて、日本もこのタイミングで再びノービザ入国できるようになり一部旅行界隈では大変盛り上がった次第。1年間の試験施行も先日無事期間延長が発表され、少なくとも2026年末まではノービザで30日間の滞在が保証された状況にある。
 そんで出入国に関してだが、荷物検査とかのチェックは厳しいものの、そこまで突出してるとは思えない一般的な出入国の審査で割と普通にスタンプ押してくれる。
 ・・・のだが、新疆ウイグル自治区に関しては完全に別モノ。やたら厳しい検査もそうだったが、印象深いのは中国からモンゴルに向かうイミグレーションの「出国審査」が非常に細かく厳しかった点。イミグレーションの立場では、外国人が自国に入ってくるなら不法滞在とか危険な荷物を持ち込む可能性を考慮して厳しいチェックとなるのも理解できるが、大体何処の国も他所へ去っていく外国人に対しては緩やかになるものだ。
 でもここのイミグレはちょっと執拗なまでにチェックが厳しくて、そうするとウイグル自治区で行われてるアレコレといった情報を他国に広げたりしないように!・・・みたいな厳命が出ているのではないかと想像してしまう。素直に考えればそれだけ後ろめたい行為をしてるからこその厳格さなんだろうな。
 まぁ国の文句を言いたいわけではないのでそれは置いといて、日本語で書かれた本とか日記まで1冊づつ取り出してチェックを受ける徹底っぷりなので、非常に時間がかかること請け合い。それと中国に関することが書かれてる本でなくとも表現や思想に制限が掛けられてる国である以上、没収どころか最悪中国に対する批判と捉えられて問題になる可能性がある。ウイグル自治区の国境に関してはこの点を考慮して対策しておく方が良い気がする。なお話に聞く「撮影した写真を1枚1枚チェック」というのは私の場合なかった。

◎交通事情
 クソの一言に尽きる。道路が素晴らしいから成り立っているものの、基本的には周囲の状況を確認せず好き勝手走りまくる運転をしてる輩が多いため事故も多いし道路が狭まったりすると、誰もが我先にと身勝手な運転初めて結果大渋滞を引き起こすことも多い。
 流石にインド人ほどゴミカスではないが、そもそもインド人の運転マナーを比較対象にされる国というだけで世界最低レベルの交通事情なので。塩梅的には0.6インドくらいかな?
 車両別に見ると大型トラックやバスといった車両が危険だしクラックション鳴らしまくりながら幅寄せしてきたりコチラが優先道路走っていようがお構いなしに出てきたりと「小さな自転車は人に非ず」くらいにしか思ってない奴が多い。ただしコイツらは基本信号を守るし逆走をぶちかましてしてくることは少ない。
 これに対して電動バイクや3輪バイクといった小型車の方が好き勝手な運転をしているという意味で危険度は高いと私は考える。コイツらは自分が交通ルールの外側にいると考えてる節がある感じで、逆走や信号無視は日常茶飯事、ノーヘルなのは中国の法律で許可されてるっぽいから良いとしてもスマホで動画見ながらノールック運転してるのはどう考えても取締るべきだろと思うぞ私は。
 とにかく身勝手なので常日頃町中ではクラックションが鳴り響いてるし、その理由のほとんどは「邪魔だからどけ!」といった身勝手な理由によるものだ。赤信号で停車してたら「信号無視して先に進みたいから」とクラックション鳴らしまくってくるのよコイツらは。
 そのクセ運転技術も低いし車両の動き予測が立てられないので、交通量の多い都市部だと結構な頻度で交通事故の現場を目にすることになる。いくらコチラが慎重な運転してようとスマホ見ながら突っ込んできたりされる可能性を考えると怖くて仕方ない。
 なお普通の乗用車は割合マトモなのかと言えばそんなことはなく、相対的に危険度が低いというだけに過ぎない。なまじ軽くて加速が速い車種だけに反対車線へ飛び出して追い越し運転してくる車が多く、もちろんその際に反対車線で自転車がいることなぞお構いなしであるため、狭い道だったり側道無かったりすると逃げ場がなくて危険すぎる。加えて自転車の専用レーンでも普通に入り込んでくる奴がいたりして、幅員いっぱい使って走行してるのはもちろん、これで正面から逆走してきたりすると逃げ場なくてどうしようもないだろクソが。そんでどうするかってさ、クラックション鳴らしまくれば解決すると思ってるのだからタチが悪い。
 総じて世界最低レベルの運転マナーであり、特に国内東部における人口過密地帯の都市部がヤバい。というか他の地域だとレベルの高い道路事情が運転マナーの酷さをかなりリカバリしているため悪辣さが表面化し辛いという側面がある。今回ウイグル自治区から突入したので「10年前と比べて大分マシになったな!」と誤認したのもそこが大きな理由だ。

◎特徴
 色々あるのだが、全体を通して感じていたことが「あらゆる点で政府の意向に沿うよう行動の自由を制限している」国であることだ。宿泊施設やネット・政府批判における規制は有名な話だが、それ以外にも膨大な監視カメラや警官の多さ、観光地だけでなく様々な場所で身分証明書を提示しないと手続きができないシステム。他国のウェブサービスが利用できず、中国独自のアプリでないと不便を強いられる構造(しかもそのほぼ全てに電話番号から個人情報を紐付けしないと中途半端にしかサービスが使えない不自由さ)といったあらゆる点で国民や旅行者を縛る方向に向かっている雰囲気を感じる。近未来モノのSFにある「監視社会」を目指している国というのが私の感想。
 自転車旅行者的に影響の大きい点がネットのアプリサービス関連で、中国入国する際にはVPNサービスに加えて事前に「高徳地図(AMAP)」「Trip.com」という2種類の中国アプリはDLしておいた方が良い。どちらも電話番号の登録が必要となる関係で中国滞在にはSIMカード契約が半強制的に必要とされるの嫌だけど、10年前と比べて外国人をダマで泊めてくれる宿泊施設は非常に少なくなったためもう直接出向いて1軒1軒確認するような行為が現実的で無くなってしまったので仕方ない。
 なお金銭の支払いは9割以上がスマホに紐付けした電子決済で実施されてる国だけど、幸いなことにこの点に関しては国が「現金に支払いを拒否してはならない」という御触れが出てるそうで、実際キャッシュでの支払いを(お釣りが無いから嫌がられるというのは別にして)断られたことは1度もなかった。

◎気候
 今回大雑把に国を縦断した感じだが、広大な国土と内陸部の標高高い土地とが影響して洒落にならない程寒いことから真夏のスタイルでも全く問題ない気候まで一通り体験した。走行時期が9〜11月にかけてだったが、特に内モンゴル自治区は10月後半に走るの気候的にはかなりギリギリと言えるくらいにゃ寒かった。確か最低気温はー12℃まで下がった日があった筈だし、最高気温がー2℃までしか上がらない日もあった。何なら雪が降り積もった日もあったので、もう少し時期がズレていたら割と洒落にならない状況に陥ってしまった可能性はある。
 秋の中国は全体的に北からの風が吹くため寒さを別にすれば南下する分には割合楽な日が多い。とはいえ風の影響が大きい土地は私が走った地域でウイグル自治区と内モンゴル自治区くらいで、他はそれほど気にすることがない。
 国全体の傾向として北部は乾燥しており半砂漠地帯で雨量も少ない土地だが、南部は高温多湿で雨も多い東南アジアに近い環境。私の場合は宣城市の辺りから明らかに雨の割合が増えたと感じていた。緯度でいうと杭州より南部になると山の割合も増えて雨が増えるという感じか。

◎言語
 もちろん中国語で、細かく区分けすると広東語とかはまた別種の言語らしいがよく分からん。英語の通用度は非常に低く、大都会か超観光地でもないと英語話者が居る可能性は0に近い。私の場合は現地中国人で英語話せたのはウルムチと北京におけるユースホステルの受付くらいだったと思う。
 日本人が他国外国人と比べて明らかに有利な点が「漢字圏の国である」という点で、看板や食堂のメニューに関して発音したり読むことができなくとも「何となく意味を理解できる(ものもある)」というのは非常に大きい。分かりやすい点ではスーパーマーケットは「超市」だし、コンビニは「便利店」と表記されててパッと見で理解できる。道路標識とかにも英語で併記されてることが少ない国であるため、食堂でメニュー見れば内容が想像できるという1点だけでも大分助かる。

◎宿(野宿)・Wi-Fi
 10年前から全く良くなってないどころか外国人の宿泊可否という点ではより厳しくなっている気がする。以前中国に訪れた時は旅舎とか招待所といった明らかにボロく、でも1泊1000円もしないという安宿が無数にあったが、これらの宿泊施設はグッと姿を減らして酒店や賓館といった見た目にも立派な施設が目立つようになった。
 とはいえそうしたホテルでも特に地方では外国人の宿泊が出来ない施設はザラで、この問題を解消するために最も役立ったのがTrip.comというアプリ。これは中国のみならず宿泊施設や観光地におけるチケットやツアーの予約と旅行関連全般のサービスが利用できるという意味でBooking.comとかAgodaのポジションに近い。
 中国の会社が作ったアプリなので中国国内の宿泊施設が他の類似アプリの100倍くらい差があり、というか他のアプリが中国国内では使い物にならないレベルなので、必然的にこれを利用することになった。
 日本語モードがあるので操作自体に苦労することはないが、検索して出てくる宿は「外国人宿泊可能」と歌いながら実際には「登録の仕方分からないから無理」とか平気でちゃぶ台返してくる施設があるため特に地方の宿は注意が必要。私の場合は宿の口コミ情報を確認し外国籍の人がコメントしてるか、宿に「ハロー中国」という外国人の受け入れをアピールしてる施設の場合は予約してたかな。それ以外の場合は直接訪問して受付で「外国人だけど宿泊できる?」と確認したらその場で予約を入れる(アプリから予約する方が割引あるので安くなる)方式を取っていた。
 なお安宿の料金は1000〜2000円くらいだが、その値段で利用できる他国の宿クオリティとは一線を画すほどレベルが高い。大都会だと物価も上がるがホステル系の宿が登場するのでどれほど値段差なく宿泊施設は利用できるが、地方都市で広く綺麗な個室を体験すると北京のホステル泊とかアホらしくなってしまう。
 んである程度規模の大きな町が出てくるようになった東部地域では大体3〜4日に1度のペースで宿を取るペースで走行していた。つまり半分強はテント泊していたのだけど、中国は人口密度が高い東部地域でも案外人の居ない地域土地も多々あって想定してたより野営をすることは難しくない。というか町を抜けると農地ばかりが広がる系の国なので、人気のない場所は割と簡単に見つかる。
 序盤にSIMカード契約した関係で中国国内でWi-Fi利用は少なかったが、ホテルは安宿にも当然あるしそこら辺の適当な食堂に入っても壁にWi-Fiルーターとパスワードが表記されてて自由に使える店は数多い。ちなみに中国はネットのパスワード管理意識が低い国なのか、「12345678」「88888888」のパスが非常に多く、どうしてもネットが必要になった場合にそこらへんの電波拾って上記2つのパス入れれば3割くらいの確率で繋がるような印象だ。まぁSIMの契約日数が30日間で容量も30とか50G使えるため、滞在期限の関係もあってWi-Fiの存在はそれほど気にしていなかった。

◎動物
 なんか全然動物の姿見なかったような気がする。ウイグル自治区とか内モンゴル自治区は結構な数のヤギ・羊が放牧されてて中央アジアやモンゴルの風味を感じるけれど、あれだけ豚使った料理が豊富な割に家畜としての豚は片手で数えるほどしか目撃してないし。牛に関しても同様だ。
 南部に入って気温が上がってからは森林地帯だけでなく、宿の室内でもよく蚊が出てくるようになって難儀することが多かった。犬に関しては大人しいし、そもそも飼い犬の姿を見かける回数が少なかったのだが、稀にテリトリー内入ると吠えて追いかけてくるヤツがいたりするため安心できるほどではない。何なら犬叩き棒が2度ほど火を吹いたりもしてる。

◎自転車店
 ある程度大きな町なら大体スポーツバイク扱ってる自転車店があると思って良い。中国らしくGIANTとMERIDAの正規店が多いが、国内独自(だと思う)の謎ブランドショップも多数見かけてなかなか面白いのだが、その多くが完成車を取り扱ってるのみでパーツ等を個別に取り扱ってる店は案外少ない。
 ただまぁショップに大体メカニックがいるし作業スペースあるので、単純に自転車トラブルが発生したという意味で持ち込んだのなら何かしら対応してくれそうな雰囲気はあった。英語が話せる定員は1人も出会わなかったがその辺のコミュニケーションはどうにかなるし。
 他の物価もそうだけど各種パーツの値段も新疆ウイグル自治区が高く東部になると安価になる。自転車旅行者が走りたがる土地は主に西部となるかと思われるため、ショップの少なさも考慮に入れて東部地域又はカザフスタンでしっかり下準備しておいた方が何かと安心。
 まぁヨーロッパ以外の土地でこれほど自転車トラブルに対して対応可能な国も少ないと思うので、そういう意味で中国という国は自転車旅行に優しい国であると言えよう。他の点で色々大変なことがあるんだけどね。

◎物価・食事
 これは文句なしに最高と評して良いレベル。安い・美味い・量も多い上に種類も豊富で日々食事の時間が楽しみであった。ただ全方位完全無欠というワケではなくて、基本的に油を目一杯使った料理ばかりで重たいメニューが多いし、日本で食べる中華料理は日本人好みにアレンジされているため本場の中華はややテイストが異なり苦手に感じる人もいそう。ニンニクとか盛り盛りに入ってるし唐辛子大量のメニューも多いし。
 ウイグル自治区とかだともっと値段高いが1品の値段は大体10〜20元(約220〜440円)程度。朝食とかだとその半分以下が相場でありながらサイクリストが十分満足できる量があるの嬉しいところ。
 こんな状況なので自炊するのは食堂の出てこないウイグル自治区の一部だけだったし、そもそも中国では食材を大量に買い込む文化なのか1kgとか2kgの米が全然販売されておらず、パスタの姿もほぼ見かけない。つまり安くて腐らない自転車旅行における主食2品の入手難易度高いこともあり、そもそも自炊が難しいという弊害がある。ウイグル自治区はガソスタの出入口にバリケードと監視員がいて敷地に入るのすら身分証が必要という土地なので外国人がガソリン(調理用の燃料)を入手するのも難しかったし。
 あとそれなりの規模の町でも大型スーパーが無いことが多く、仮にあっても品揃えは案外悪い。食材を自分で購入して自炊するという人が極めて少ないためか、自国内で経済回せるからわざわざ外国から食料品輸入しなくても良いと思っているのだろうか?とりあえずお茶の国なので、茶葉は種類も豊富で専門店も多々見かける一方でコーヒー豆に関しては姿を見る機会も少なく選択肢自体がほとんどないレベル。
 流石にマックやKFCクラスのチェーン店はそここで見かけるものの、中国の食事が合わなかったりすると他に逃げ道となる食事が極端に少ないのでその点は大変だと思う。
 なおアルコールの値段も世界トップクラスに安価で、ビールのロング缶が1本50円を切ってる物まで存在するし、中国酒も多種多様なヤバそうな酒から美味い酒まで揃っておりこれがまた中華と相性抜群なんだ。でも外国から輸入してる酒は普通に高いが。
 総じて中国国内で製造・消費されてる品に関しては非常に安く買い求めることが可能だが、やっぱり中国なので清潔度合いとか信頼感といった点で嫌だと感じる人がいるのも分かる。私だってラーメンの汁にハエが浮いてたのを目撃したの1度や2度じゃないし。その辺を考慮しても物は安いし飯は美味い、この項目だけでも間違いなく中国という国は訪れる価値があると思うのだ。

◎総括
 こんな感じで良いところと悪いところの差が極端に出る国というのは幾つかあったが、中国というのはその中でもトップクラスに良し悪しが激しいと感じる。アピールポイントとか魅力が豊富であること間違い無いが、それと同時に批判したくなる酷い点も挙げればキリがない。
 ただ世界1周という旅行をするにおいて、これほど特徴的でありつつ広大な国というのも他にない。強いてあげればインドが似たようなポジションではあるが。
 加えて2014年に訪れた時と比べて国から受ける雰囲気が大きく異なったと感じたのは、私が旅行経験増えただけではなく、この国がどんどん姿を変えつつあることが影響していると思う。
 世界中多くの国から批判の的にされやすい国だし私も問題が大いにある国だとは思うけど、実際中国に住んだり仕事するならともかく、旅行で訪れてみれば大勢の人が当たり前の日々を過ごし、見慣れない旅行者に対しても親切にしてくれる気持ちの良い人たちが沢山いることがよく理解できると思う。
 だからこそ近年中国が他国に対してノービザでの入国を始めたことは大いに意義があると感じるし嬉しくもあった。今回の中国はそうした恩恵を存分に活用しての滞在となったワケで、こうして中国自転車旅行を楽しめたことに心からの感謝を伝えたい。
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 2025年9月13日〜10月16日
 走行日数34日間
 累計走行距離2957km(176271km〜179228km)

◎道路
 舗装されてる道は非常に走りやすく快適だが、地方の町中とか幹線道路を外れると途端にボロくなるどころか一気に未舗装路となる両極端な構成。そもそもモンゴルの地方において道という概念は極めて希薄であり、車もバイクも自分が好きなルートをガンガン突き進む光景が見て取れるなかり独特な国だと思う。
 未舗装のタイプは凸凹が続くコルゲーションのみならず深い砂に埋もれて進めなくパターンや大小無数の石がゴロついてて転倒する危険の高い道まで多種多様。車両の轍が続いてるからといって気軽にフルパッキンの自転車で突っ込むと身動き取れなくなり悲惨な状況となることあるので慎重さが求められる。
 モンゴルは恐らくここ10年以内にもの凄い勢いでアスファルトによる舗装率を上げており、これが路面状況の良さにつながっている要因かと想像する。中国が関与してる雰囲気感じるのだけど確証ないから何とも言えんが、自転車的には恐ろしく長い距離で補給もできず未舗装路を走り続ける・・・という環境は減っているため有難いのは間違いない。
 全体的にはウランバートルへ近づくほど路面状況は悪化し凸凹やギャップ、亀裂といった問題は増える。恐らく交通量と建設時期が影響しているのだろうが、その代わりウランバートル近郊の方が多少はローカル道でも舗装されてる確率が高く一長一短と言えなくもない。モンゴルらしさを求めるのであれば、如何に首都から距離離れた場所へ行くか・・・という点が重要で、ウランバートルから遠のくほど自転車的には気分良く走れるのは間違いない。なお車両は右側走行。
 イメージからつい地平線まで続く平坦路の国かと思ってしまうが、実際には大小様々な峠を越えていくタイプの道が多く斜度はキツくないもののむしろ登りか下りのどちらかを走っていることの方が多い。全体的に標高1000mを越えている国だが、私のルートでは西部アルタイ山脈内でも3000m到達しなかったので「ガッツリ山を登る」という感じではないのが救いか。
 首都近郊以外は町と町との距離が離れているため、他のアジア諸国と同様のテンションでいるとかなり大変。ただし遊牧民の国だけあって所々にゲルテントの姿が散見され、こうした施設の一部では食料品の販売等も行っている。地図で見るより案外補給する機会は多いと言えるかな。

◎治安
 人が少なすぎるので危険に遭遇するような確率は少ないが、割とモンゴル人は昼間っから酔っ払って酒の臭いを撒き散らしてる酔っ払いがいる。こういうのが平気で食堂とかに入ってくる世界らしく、思ったより戸締りとか厳重にしていた印象が。私も食堂の脇に置いといたロシナンテ号勝手に跨がられて写真撮影してるバカとか遭遇してるため、治安とはちょっと違うかもしれないが印象そこまで良くない。
 あとモンゴルの人がいない場所で野宿してても文句を言われる確率は0に近いが、それはそれとして彼らは異様に目が良くて、遠くからでもテントを見つけてバイクや車で走り寄ってくる傾向があるためテント設営した後でテントから見えない場所まで離れてしまうの(買い物とかで)抵抗あって1度も実施していない。

◎ビザ・出入国
 日本人の場合はノービザで30日間までの滞在が可能である。なのだがモンゴルの国土に対して30日間というのは絶妙に大変な日数であり、自転車旅行で私みたく中国→モンゴル→中国といった陸路での移動を続けたい場合、利用できる国境に制限がある関係で似たようなルートになりがち。
 そうすると西部ブルガンから南東部ザミンウードまでの移動となり、これが30日間だとかなりハードなだけど走りきれないほどでもない・・・という塩梅に。ウランバートル寄らなければ大分余裕があるとは思うけども。
 ということでウランバートルにあるイミグレーションにて滞在延長の手続きを実施している。この延長日数は個人の都合で最大30日間まで(1回のみ)設定できるそうで、1週間ごとに料金が変わる。手続きは滞在リミットの7日前からできるらしく、事前にネットでt続きだけ済ませておいてスタンプのみ貰いに行っても構わないし、その場で直接手続きすることも可能となかなかサービスが良い。ただしイミグレ施設は市内の外れに位置してるためそこそこ訪問するのが大変ではある。
 手続き済ますと3〜5日後に処理完了のメールが来るのだが、この文面の中に「完了したからイミグレーションまで来てね」みたいな文言があり、コレが国境のイミグレーションでも構わないのかやや不安だったが、私の場合は中国との国境に位置するザミンウードで偶然イミグレ見つけて確認したら「延長可」みたいなスタンプ押されたので、やはり再訪する必要があったのだと思われる。
 ちなみに出入国に伴う検査はかなり適当で問題なかったが、ザミンウードの町からイミグレーションまでの間は自転車による自走が禁止されている区間でバスなりジープに料金支払って載せて移動しなくてはならない謎ルールが敷かれている。

◎交通事情
 運転マナー自体はかなり悪い。だがウランバートル市内とその半径200km以内でもなければ交通量が少な過ぎて問題を感じることは滅多にない。この点からもモンゴルにおける自転車走行はウランバートルから離れた場所を走る方が良いと言えるな。
 信号無視したり逆走してくるような無茶をしてくる車両は少ないものの単純に運転がヘタクソで、自分が待つことで詰まってる車両を通せば全体がスムーズに流れると一目瞭然な場面でも、無理矢理ガン詰めして身動き取れなくなりひたすらクラックション鳴らしてる姿がウランバートル市内のあちこちで見られる。
 郊外でも対向車の確認せずとりあえず前の車両を追い抜こうと反対車線に飛び出す輩が一定数おり、更にその中で悪辣なドライバーは自転車がいようとお構いなしに突っ込んでくる。モンゴルの道路は狭い上に側道無いのが常なので、これをやられるとたまったものではない本当に。
 ウランバートル〜ザミンウードまでのルートは総じてこんな雰囲気で、ゲルも無ければ家畜の姿も少なく、でも車の数だけは多くて路面も悪いといった、楽しく無いのに気が抜けないという酷い道だった。付近の陸路国境がここしか通過できないから嫌でもこのルート通るしか無いのだが、モンゴルの走行を楽しむならばお勧めはしない道だ。

◎特徴
 世界で最も人口密度が低い国。東アジアって人口大国の国が乱立してるのに、その中でモンゴルだけが国内に人スッカスカという地図を通してみるとかなり異端な存在であることが分かる。
 これに加えて人口の半分近くがウランバートル都市圏に居住しており、広大な国土の多くは砂漠か短い草が生えてる半砂漠の景色が広がる。
 人口密度が低い国は他にもあるが、モンゴルは高い緯度&海から遠い内陸国という条件が合わさって非常に寒く水の補給が難しい土地になっているのが厄介と言える。更に偏西風が大地を吹き荒らし、加えて物価の高騰が激しいけれど国の実態は途上国であるため先進国的なサービスの良さは期待できない。
 ・・・という自転車旅行する上でおよそ苦労する条件が揃いに揃ってるという点で非常に難易度の高い国だと思う。実際モンゴル走行は私の経験でも5指に入るほどハードな国だったと言って差し支えないレベル。それでも西→東ルートを選択したり、本格的に寒くなる前の9月入国だったりと比較的条件の良い環境だったと言えるのが恐ろしい。なのでモンゴルを自転車旅行する人は事前に計画を十分に練ってから望むことをオススメする。

◎気候
 西のアルタイ山脈ではそこそこ雨降るが、それ以外の土地はゴビ砂漠か半分砂漠の極めて雨が少ない土地。だからこそ木々が育たず独特な草原ばかりが広がる国になったと言えるのだけど。
 緯度が高い上に大陸性気候で寒暖の差が激しく、9月の後半には夜間の気温は氷点下まで下がる。首都のウランバートルは「世界で最も寒い首都」としても有名で厳冬期の気温はー20度に達するほどだが、これは首都だけでなくモンゴル全域に通じる話といって過言ではない。
 私が走った9月から10月前半にかけてでも最も寒い日の気象予報で早朝ー12℃と表記されてる日があったし、この国を普通に走れる季節は5〜10月いっぱいくらいが精々かもしれないなと思う。これに加えて風が強いので体感温度は更に低下する上、10月以降はシーズン外となり田舎では多くの商業施設が営業休止してしまう。ということで秋から冬にかけてモンゴル走行するのは専門的な装備と経験を兼ね備えたサイクリストでないとなかなか厳しいのではないかというのが私の意見だ。
 そんでもう1つモンゴルで気にしなくてはならないのは、その広大な土地に対して少なすぎる人口が故に風除けとなる人工物も森林もほとんど姿を見せないことによる風の影響。一般的なサイクリストにとっては風こそがモンゴルにおける最大の脅威と言って差し支えないと思う。
 偏西風地帯に該当してる国なので基本的には西から東へと風吹くのだが、体感としては西からの風は5割強といったところで結構別の方向からも風が吹く日は多い。しかも平気で台風並みの爆風を蒸す可能性もあり、これが追い風なら良いけど向かい風となった日には目も当てていられないレベル。
 一応日中に最大風速となるパターンが多く、夜間は比較的弱まったり無風であることが幸い。かと思うと深夜に風向変わってしまいせっかく風が除けられる位置にテント張ったにも関わらず、別方向からの風でテント内砂塗れにされてしまったこともあるため油断できない。
 こうした風の影響が極めて強い国であるため、SIMカード購入してネットによる天気予報で風向き予測ができるだけでもモンゴル走行の難易度は随分違うと思う。

◎言語
 モンゴル語である。英語の通用率はウランバートルを除くと非常に低く、観光地の宿泊施設オーナーくらいしか英会話出来た記憶がないレベル。むしろ謎に日本語を話せる人がポツポツおり、こちらが日本人だと分かると日本語の話せる知り合いに電話して通訳してくれた・・・というパターンが複数回あった。
 ちなみにモンゴル語は文字を縦書きで表記する珍しい文字で、何故か横書きの場合はキリル文字が使用されている。理由は知らんけどキリル文字の方がまだアルファベットに近い字体なので発音の取っ掛かりにはなる。モンゴル文字はアラビア文字を90度回転させたような形しており、私には全く理解不能なので。

◎宿(野宿)・Wi-Fi
 ウランバートル以外はどう考えてもサービスに対して値段が釣り合ってない酷い宿の割合が多過ぎる。水が少ない国なので水関係の脆弱さは仕方ないとしても、最底辺の宿ですら1泊に2000円以上払う始末。これに加えてシャワーが無いとか当たり前だしトイレも外に掘られたポットン便所が基本、水栓トイレが使えるのは一部の大都市に限られる。このためシャワーを浴びたければ町中にある有料シャワー屋に行く必要が。
 これに加えて9月の後半になると観光シーズンを終えて営業終了始める施設が多く、県庁所在地クラスの町ですら下手すると泊まれる宿が1つも無いといった状況に陥りやすい。一応観光で栄えてる系の町にはホステルとかの宿泊施設があるものの、一般の宿と値段差が無くドミトリーとなる(代わりにアメニティはしっかりしてる)ため利用価値はそれほど・・・
 一応ほとんどの町でゲルテントや木造小屋に宿泊できるキャンプ場が存在しており、そういうのを利用すれば宿泊自体はどんな町でもイケるのだけども。ゲルでのテント泊に5000円とか出してらんないよ。水もないのに。
 そうすると残った選択肢が通年営業をしてるような値段の貼る宿泊施設しか選べず始末が悪い。このためモンゴルでは「休みたくても宿に泊まれず走り続ける」という状況に陥ってしまい苦労した。なお水に関してはシビアな国だが、電力事情については安定しており最初に訪れたブルガンの町以降で停電や電力が供給されていない・・・といった状況に遭遇することはなかった。
 一応ウランバートル〜ザミンウード間は主要交通ルートだったこともあってか大きな町だとしっかりした設備備えた宿が点在していたが、値段に関しては他と変わらずクソ高い。全体として西部の田舎へ行くほどサービスは低下する印象だ。
 ネットに関しても情報収集大変そう・・・という理由で国内最大手(らしい)モビコムという会社のSIMカード購入したが、30日25Gのプランで約1200円と他の物価と比較して異様に安いし割と郊外でも電波拾え、SIMカード購入して本当に良かったわ。安宿にはWi-Fi設置してない場合も多く、モンゴルではSIMを購入するメリットは大いにあると感じたな。
 そんで野宿に関してだけれど、実はモンゴル野宿するのも難易度が高い国でして。ちょっと町を離れれば人的な危険はほぼ皆無といって良い国だけど、木々が少なく人工物等の遮蔽物も僅かなであるのに風が強い。いやそういう土地だから風が強くなるのかもしれないが、とにかく強風時のモンゴルは下手するとテント吹っ飛ばされる勢いで強烈な風が吹き続ける環境のため風対策できる場所を見つけるため奔走する羽目になる。

◎動物
 放牧天国による家畜の国。馬を筆頭に主要な牛・ヤギ・羊・ラクダの5種はモンゴルにおける華とすら思う。これに加えて一部地域でヤクだったり豚の姿を見ることもあり、草原を走る上でこうした動物の姿が彩ってくれること間違いない。なので道路上に限らずあらゆる場所が糞に塗れているし、道路沿いには轢かれたのか死んだ家畜の残骸を目にすることも多いのだが。
 これ以外に猛禽類であるハゲタカの姿やシベリアマーモットといった姿も多々目にすることができる。なおマーモットに関してはペスト菌の媒介者らしく、テント泊中に残飯入れたビニール袋を漁られたことがあったりしたのでネズミの届かない場所に置いとく必要あり。
 犬に関しては遊牧民がそれなりの割合で犬を飼ってることがあり、自転車がテリトリーに近づくと吠え始めて近づいてくるが、そのまま道を進んでいく分には追いかけ続けるタイプとは1度も遭遇しなかったので問題ないと踏んでいた。
 ちなみに1ヶ月以上滞在してただの1度も蚊に刺されなかった国である。

◎自転車店
 ウランバートルにはTrekやGIANTの正規店舗の他、しっかりしたスポーツバイクを取り扱ってるショップが複数ある。言い換えると他の町にはそういったお店は存在しないので、自己対応できないトラブルに遭遇した場合はウランバートルまで移動してくるか中国に脱出するしか方法がない。
 特に今回はリムの破損という特大トラブル抱えて幾つものショップを行脚したが、現地の店員曰く「モンゴルのショップは基本中国からの輸入で成り立っており、そのほとんどは完成品が送られてくるシステムなので消耗品のパーツはともかくリム単独での取り扱いはこの国ではしていないと思う」とのこと。
 私もそこで諦めずしつこくショップ回って偶然中古のリムを売ってくれる店見つけたけれど、これはかなり運が良かったということは自覚している。今時リムブレーキで走行する旅行者は少ないけれど、途上国におけるリムブレーキ対応のリムというのは同様の理由で流通量減ってるそうなので要注意かなと思います。

◎物価・食事
 高い。紙幣の最高額が20000トゥルグ(約830円)の国なのに、一般的な食事が10000〜20000トゥルグなのどうなのよ?その他の一般的な物品も自国内での生産能力が低いようで輸入に頼っている節があり、それは仕方ないにしてもその値段が高過ぎる。キッチンペーパー(3本)の値段が1200円とか言われた時は最初ギャグかと思うたぞ。
 ただし食事そのものに関してはかなり美味しく、最初の方で「モンゴルには食事に関して期待していない」と書いたことを大いに反省したほどだ。ちなみに農業に適さない土地であるがためにモンゴルにおける食事内容は肉と乳製品(と小麦粉)がその多くを占めている。それこそビーガンの人間はモンゴルじゃ生きて行きないレベルで。
 中国の他に日本や韓国の商品割合が多く、地方の田舎商店とかでもスーパードライとか日本の商品を見かけることは多い。とあるお店では海苔巻きが販売されていたりして驚いたが、お金さえ出せば日本人的にモンゴルは結構恵まれた食生活を送れるのかもしれないが、そも自炊できる宿なんてウランバートル以外でまず見ないため旅行者的には何とも。
 ちなみに肉は羊肉の割合が最も多く、その他日本では珍しいヤギの肉などもある。飲み物に関してもお茶を出されるよりお茶1:ミルク9のモンゴルチャイを提供される方が一般的。食事の付け合わせに固いチーズやヨーグルトが出てきたりと家畜から得られる食材を最大限活用しているが、野菜に関してはジャガイモがある程度で、玉ねぎ入ってると珍しいレベル。
 なおアルコール関係は結構充実してるのだけど、全体的に値段が高く最も安いロング缶(500ml)でも4000トゥルグ(約160円)くらい。日本的な基準だと安いんだけど、世界基準で見るとかなり値段高い。ちなみに私はビールに毎回2ℓとか2.4ℓの大型ペットボトルを購入しており、これだと11000トゥルグ(約460円)くらいで割安にはなる。
 ちなみにモンゴルの地方にある町は9月も後半となって観光シーズンが終わり始めるとそもそも営業しないで店を閉めてしまうことが多いそうだ。そうでなくとも訪問客が少ない時間帯は人がいないというパターンが当たり前のようにあり、これに加えて数がそれほど出ない関係でメニューは注文が来て1から作り始めるため完成までに30分くらい待たされるのが当たり前。地方における流通の悪さ事情が影響してか、都会と比べて料金差が最大2倍くらいまで開くのも頂けない。それと田舎では注文してなくとも勝手にお茶かミルクを入れてきて料金加算してくるの嫌いだ。これが原因で何度か支払いのタイミングで揉めた。
 総じて味そのものよりも、モンゴル独自の面倒臭いルールや風習に翻弄されることが多く割とストレス感じることも多かった。まぁ僻地を走る自転車ならではの問題なのであり、これが嫌なら自転車旅行すんな!ということになってしまうのだけれども。

◎総括
 いや本当に大変な国だった。特に近年物価が急騰していることで食・住環境がウランバートル除いて非常に高額なのにレベル低いという西アフリカみたいな状況となっており、金銭を抑えて旅行しようとすると大変に苦労する筆頭国となってしまった節がある。
 ただそれでもモンゴルには他の国では見られない独特な光景と環境を楽しめる唯一無二な魅力が存在しており、特に首都から離れた西部地域ではそれが顕著だったように思う。旅行者がモンゴルに求めるのモノはウランバートルの都会では無いと思うので、一般的にはウランバートルで準備を整えてモンゴル地方に飛び出していく・・・というスタイルになるのだろう。それか私のように西の端から遥々ウランバートルへ向かっていくスタイルか。
 いずれにしても永遠と続くアップダウンと激しい風を掻い潜りつつの旅行となるのは必死なので、日程に十分余裕を持って無理のないスタイルで・・・と行かないのがこの国の難しさなんだよな。
 要するにどんなスタイルで走ろうと大変な思いをすることは間違い無いと思うし、でもそこに素晴らしい喜びを感じられるだけのポテンシャルがあるというのもまた事実。モンゴルでした。
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 2025年4月23日〜4月30日 6月29日〜7月4日 8月8日〜8月25日
 走行日数32日間
 累計走行距離1987km(1回目637km・2回目495km・3回目855km)(167646km〜168283km・171892km〜172387km・173854km〜174709km)

◎道路
 非常に広大な国土の割に路面・側道共にしっかりしてるなという印象。そもそも走った場所が南部の国境付近ばかりでより冬の寒さが厳しく人口密度が低い北部や中央部はインフラ状況が低下すること考えられるので、この限りではないけれど中央アジアでは文句なしにNo.1だと思う。
 ある程度大きな幹線道路ならしっかり側道がついてて自転車が安心して走れたのもポイント高いし、意外と坂道が多い国だったが斜度が緩やかで走りやすいように造られていた点も評価が高い。都市部になると側道が消失する代わりに自転車レーンが出てくるためそちらの走行を推奨するかな。自転車道自体は不可解な段差が多かったりちょこちょこ言いたい点もあるのだけれど。なお車両は右側走行。
 全体として国内西部ほど人口密度が低く、東部へ向かうに従って都市間にも集落の数が増えていくため補給に関しても楽になる。西部では一部ずっとガタガタのアスファルトを走り続ける場所もあったりして苦労した。この国を走るのであれば持ち運ぶ食料はやや多めに。

◎治安
 非常に良い。というか都市部を除いて全然人がいない系の国なので危険もクソも無いという感想になるのだが、それでも似たような人口密度のナミビアなんかは治安が悪いと感じることが多々あったのに対してカザフスタンでは都会だろうと危険を感じることがほぼなかったあたり、そもそもの治安の良さをおしたいところ。
 一応アルマトイは最大都市だけあって若い子中心に深夜面倒臭い絡み方をしてくる人に少数あったかな。

◎ビザ・出入国
 日本人ならノービザで30日間までの滞在が可能。ただ出入国に伴う審査は結構厳しくて1度目の滞在時には入国・出国時どちらも全てのバッグを中身確認される念の入れようだった。それぞれフェリー・鉄道という通常とは異なるパターンだったのが影響してるかもしれないとは思う。
 それと中国との国境に関してだが、私が利用したホルゴス国境は北に位置するローカル道の国境が一般旅行者では通過できず、南の高速道路上の国境でないと駄目(らしい)という自転車的にフェイントとなりやすい状況のため要注意。国境に通じる高速道路自体は自転車が走ること構わないらしいし、何なら警察に道聞いたりとかして「高速道を走れ」と言われたし。
 そのホルゴス国境だが中国とのボーダーだからかカザフ出入国の中で最も厳しいチェックだったと感じた。出国審査なのにすべての荷物をX線検査した上に中身の確認まで実施されたし。
 それと他の車両利用者はカザフスタンイミグレ建物内の待合室で中国行きのバス待ちするのだが、自転車の場合は自走することをアピールして係員の許可を貰わないといつまで経っても建物から出してもらえないため注意が必要。

◎交通事情
 まぁまぁそこそこ。とはいえ中央アジアの中では断トツの運転マナーで、ドライバーは無茶な逆走もしてこないし無意味にクラックションを鳴らされることもごく僅か。むしろ中央アジアでカザフスタンの運転マナーを最初に経験し「この地域はこんな感じか」と基準を置くと、近隣国が軒並み酷い運転するためギャップに驚くこととなる。これで大型トラックが常識的なら文句なったんだけどな。
 それと広大な土地がある割に信号付き交差点の割合が高くラウンドアバウトがあまり出てこない。カザフみたいに人口(車両の数)が少なく土地が広い国でこそ活躍する方式だとおもうのだが、都会の外れでもないと出てこなかった印象だ。そんでカザフスタンの信号は切り替わりのタイミングが早い上にドライバーがせっかちなので、下手に点滅してる信号を走り切ってしまおうと無理して突っ込むとかなり危険である。

◎特徴
 世界最大の内陸国である。その面積はアルゼンチン(世界8位)とほぼ同じで日本の約7.5倍。これでカスピ海を除く海からのアクセスが存在しないため、物流に関しては鉄道網がかなり頑張っている印象だ。意外と海産物を見る機会も多い国だけど、そのほとんどはカスピ海とアラル海から取れた品を郵送していると聞いた。
 んでその広大な土地の多くが半砂漠みたいな土地なので、馬や羊に砂が多い土地だとラクダといった家畜を連れた遊牧生活している人も多い。キルギスと同様にユルト式テントを利用した人たちも見たが、全体的な標高が低いためかそれほど数は多くなかったかな。

◎気候
 国境挟んで南のキルギスだとヒマラヤ山脈等の山々が影響してか雨降ることも多かったが、カザフスタンまで北上すると雨に降られる確率は非常に低くなる。それでも春の5月とかには西部で少々雨に降られたが、長続きしない程度のレベルだったし。
 海から離れた大陸性気候に加えて高い緯度も相まって4月とかではまだ寒い。しかし夏の時期になると日中は猛烈な暑さとなる(しかも標高低い土地が多くて凌ぎにくい)ため、割と訪問時期がシビアだったりする。
 これに加えて全体的に偏西風の影響を受ける地域に位置しており国内何処でも西風が吹きやすい。ちょっとでも町を抜けると地平線まで何もない系の道が多いため、進路とルート次第では洒落にならないほど風の影響を受けて楽にも大変にもなるので要注意。私みたいに西→東のルートを走ってるサイクリストは恩恵を受けることが多くて楽しめることが多いぜやったね。

◎言語
 カザフ語らしいがロシア語も一般的な言語としてよく通じるらしい。そして英語はあまり通じない中央アジアらしい言語構成といえばそう。使用文字もいわゆるキリル文字(スラブ文字)なのでアルファベットと違いすぎて読むどころか発音すらままならないレベル。
 ただその割にカザフスタンではコミュニケーションで苦労したという印象が少なくて、これはカザフの人たちが謎言語話す外国人に対して理解するよう汲み取ってくれたり翻訳ソフトを使ったり(この発想がない国の人はかなり多い)と助け舟出してくれる機会が多かったから。
 とはいえ何もない平原が大部分を占めるカザフスタンは言語的に難しい方の国というのは間違いない。

◎宿(野宿)・Wi-Fi
 中央アジアでは頭1つ抜けて値段が安く、しかしながらサービスの質は変わらないという意味でレベルの高い印象だ。嬉しいのが都市部や観光地でなくとも安価な宿がそこそこ点在してることで、しかもそうした町に旅行者なんぞほぼ来ないからドミトリーだろうと1人で独占できるパターンがほとんど。田舎でもちょいちょい宿泊施設利用してたけど、1泊1000円以下の値段がほとんどだったように思う。泊まった全ての宿にWi-Fiが設置されてて苦労もなかったし、ガソスタにもFreeWi-Fiが設置されてることが多く、キャンプメインの生活でもネット環境が見つからずに苦労したことはほぼない。何なら最大都市のアルマトイで宿を探し回ってる時がWi-Fiに最も接続できず困ってた気がする。
 都会を離れてしまえば何処でもテント張れるけど、国境沿いの南部地域から離れると極端に水場が少なく地平線が広がってる環境のため、治安とかよりも「風を防げる場所がない」という点で苦労する。吹かない時は全然だけど、風が強い時は本当に洒落にならないので。

◎動物
 馬とラクダを多数見かける面白い国。というかこの両者の生息区域って重なるんだ!?という印象が強かった。広大な土地に多数の家畜が放牧されてる系の国なので他にも牛・ヤギ・羊といった動物の姿も多々見かける。なんだかんだイスラム教徒が多数占めてる国だからか豚の姿は全く出てこない。
 嬉しかったのは蚊に悩まされることが全くといって良いほどなかった点。カザフスタンに限らず中央アジアでは渦巻きスタイルの蚊取り線香が販売されておらず「どうしよう・・・」と思っていたが、なるほど需要がないのですね。それ以外だと路面にトカゲがやたら多かったのが印象的。
 なお犬は非常にアグレッシブに追いかけてくるようになり攻撃性が高い。牧羊犬として動いてるヤツとかは無意味に自転車へ吠えかかったりとかしないのだけど、田舎の家屋の前を通り過ぎる徒党を組み猛烈な勢いで追いかけてくるので怖い。
 自転車でこの国を走ろうとすると滞在日数30日ではとてもじゃないが横断できる広さではないため、現在の情勢的に南部のキルギスかウズベキスタンを経由しつつ日数リセットを繰り返すのが現実的だろう。

◎自転車店
 アルマトイの町にはしっかりしたスポーツバイクを扱うショップが複数存在する。現在私が利用してるアトラスのリムを吊るしてるショップもあったので中央アジアでリムトラブルにしっかり対処するならアルマトイだろう。私はキルギスのビシュケクで対応したけどさ。
 他に最西端に位置するアクタウにも複数自転車ショップがあった。こちらは直接店舗を確認してないのでラインナップ等は不明だが、この町のショップで梱包用の段ボール入手しフライトしてる自転車旅行者がいるのでそれなりに信頼できるお店だと推測できる。
 それ以外にも大きな町ではちょいちょいショップの姿を見かけはしたが、所謂「街の自転車屋さん」といった風情で完成品を販売してるだけのタイプでプロショップの姿は見なかったかな。それでも他の中央アジアの国よりは質・量共に都市部じゃなくても最も期待できる雰囲気ではあった。まぁトラブル起きたら素直にアルマトイまで移動した方が正解だとは思うけど。

◎物価・食事
 かなり安いし品物の揃えも中央アジアで最も良い。中国が隣接してる関係なのか中華系の食品の他にも日本や韓国系の食材が大きなスーパーだと普通に販売されていて、割と安価で蕎麦やうどんの乾麺が入手できる。余談だがコーヒーの紙フィルターが欲しければ大型電気店に行けばコーヒーメーカーとかのコーナーで販売されていた。普通のスーパーではまず発見できない品なので、これに気づいた時は結構テンション上がった茶壺さん。
 んで食事に関してはカザフスタンだからという点で特筆するようなことはなく。アルマトイ近郊の町でびっくりするほどしょっぱく不味い店に当たった(しかも高かった)ことがあったけど、それ以外では普通にプロフとかラグマン食べたりマンティ楽しんだりしてた。1食は300〜500円くらいが相場。
 むしろカザフで嬉しいのはビールの方で、この国ではアルコールの専門販売系のお店に大型のペットボトルにビールをその場で注いでくれる販売方式がある。これが普通に販売されてるビールと左程値段が変わらないのに抜群に美味しく見つけた際には好んで飲んでいた。なお他の中央アジア諸国と違ってカザフスタンではペットボトルのビールは売られておらず、缶か瓶での販売方式が一般的。ビールを缶で販売できる国は割と国力が高い傾向にあるため、この辺からもカザフスタンの立ち位置がやや高いことが窺える。

◎総括
 中央アジアにおいて最も発展している国。それは経済的な面のみならず、人々の生活面や車両の運転マナーといった様々な点においてレベルの高さを感じさせると共に、旅行者に対してすごく親切な人々が多く個人的な実感としても滞在してるのが楽しかった国だ。
 中央アジア諸国って観光資源が充実してるウズベキスタンに注目が集まってしまうところがあるし、自転車乗り的にはパミールハイウェイが走ってるタジキスタン、日本人宿がありノービザで60日間滞在可能なキルギスといった国々に対してややパンチに欠ける印象のあったカザフスタン。
 だが実際にこの国を走ってみて「カザフスタンは是非とも訪れるべき国だよ!」と自信を持って言える程には好きになれた。それはこの国の人たちが私を多々助けてくれて親切にしてくれたからだ。
 なので出来れば滞在日数上限を30日ではなくもうちょい引き伸ばして欲しいです本当に。国土が広すぎて隣国への出入りを繰り返さなくてはカザフ自転車旅行は難しいのに隣国割とクセのある国(トルクメニスタン・ロシア・中国・アゼルバイジャン)多くて出入国の難易度高いからさ。どうしてもウズベキスタンやキルギスといった国の近くを走るルートとなってしまいがちなの難しいポイントである。
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 2025年6月13日〜6月20日 7月4日〜8月8日
 走行日数44日間
 累計走行距離1731km(1回目264km・2回目1467km)(171074km〜171338km・172387km〜173854km)

◎道路
 悪い。というか幹線道路でも側道が狭くて走ることが怖い系の国。山奥に行かなければアスファルトの舗装率はそこそこ高いし、路面状態もそこまでボコボコではないのだがキルギスにおける道路の印象は「道の狭さ」という点ですこぶるイメージが悪い。
 タジキスタン程ではないがガッツリ山岳国であり、広い平野部が広がるのは首都ビシュケク周辺とオシュから西部のバトケン州にかけてのみ。そんでこのバトケン州というのは領土問題を抱えており治安の悪い土地である(周辺の国境も外国人は通れない)ため旅行するのに適さない。つまりマトモに移動しようとすれば峠越えを余儀なくされる国である。その山も3000m超えるような高山が多くて難易度高め。
 ただし最大の観光地と評されるイシククル湖周辺ルートに関しては、湖北部を通るルートでカラコルまでは絶賛道路工事中で近い将来に完全舗装されることが予想できる。2025年夏の時点でこの区間の舗装率は8〜9割といった感じか。
 ある程度都会になると道路とは別に自転車も走れる歩道が出てくるのだが、整備状況が悪かったりアホな車両が歩道ど真ん中に駐車していたりと使い勝手が悪くビシュケク以外でほぼ利用すること無かったかな。

◎治安
 中央アジア4カ国の中では1番悪かったように思う。とは言っても全体的な印象としては「治安良い」という評価になるが。特にビシュケクでは昼間っから酔い潰れて道路に倒れ込んでる人とか物乞いの姿が結構目につくことが多く、やや嫌な雰囲気を感じることもあったかな。
 それと西部のバトケン州という地域に関して色々聞いてみたり調べたりしたのだが、治安云々もそうだが国境問題における民族間の対立やそれに伴う戦闘行為も発生してる上に、この事件でキルギスとタジキスタン間の国境紛争が原因で閉鎖されてしまったという出来事が2022年の話だったりする。
 ちなみにパミールハイウェイの国境は外国人ツーリストの利用需要が高かった関係で2024年に許可証を取得することで通過できるようになったものの、これは外国人のみのサービスでありキルギス・タジキスタン両国の人々はいまだに陸路国境を超えることが出来ない。

◎ビザ・出入国
 ひと昔前の中央アジアといえば「どの国へ行くにもビザが必要で大変な地域」と評されていたのだが、その中で唯一の例外(ノービザで簡単に入国できる国)がキルギスであった。現代では中央アジアの国々もトルクメニスタンを除いてビザを必要としなくなり入国のハードルは大きく下がったが、それでも国土の割に滞在日数が短かったり入国後に滞在証明の手続きを必要としたりと面倒な点はある。
 そうした点で余計な手続き必要なし・60日間の滞在が可能というキルギスは今でも非常に有難い存在であるといえる。こうしたメリットがあるためルート次第だがビシュケクに滞在してビザ取得の手続きに精を出したりする人も多かったとか。私も荷物の到着を待っていたしな。
 イミグレーションの審査も特別面倒なことはなく荷物検査がややしっかりチェックするな・・・程度の印象なのだが、タジキスタンからパミールハイウェイを通って入国する場合だけは要注意。キルギスの旅行代理店等で発給したパーミットがないと出国手続きしてくれないのだが、このイミグレはタジク側イミグレより未舗装の道を20km以上、高低差1000m超を走って辿り着く場所にありしかも道中に補給できる場所がほぼ無い。自転車的には下手すると詰みかねない状況となるため、この国境利用したい人はパーミットの制度がどうなっているのかしっかり調べた方が良い。2025年の夏も「間もなくこの制度無くなるみたい・・・」という噂が流れたが、実際行ってみたらそんな事実は無かったので。

◎交通事情
 まぁ悪い。狭くて走りづらい道路との相乗効果で交通量の多い道路は走ってることがとにかくストレスだった国。それとキルギスは結構信号の数が多い方の国だと思うのだが、この信号が青に切り替わる前から交差点に突っ込もうとしたり、青信号に切り替わったら交差点内に車両がいようと猛スピードで突っ込もうとする輩が多く危険極まりない。山が多くて平地面積が少ないからかラウンドアバウトの割合が少ないのよね。
 それ以外は他の中央アジアと似ており、クラックション鳴らせば自転車は気にしなくて構わない運転をするとか追い越しの際にすぐ脇を猛スピードで通過していく身勝手さとか自分本意な運転が目立つ。中央アジアではウズベキスタンと並んで運転マナーの悪い国トップという印象だが、ウズベクドライバーは横断歩道で車両停まって歩行者を渡らせてくれる割合が多い分だけキルギスドライバーよりイメージが若干良い。
 救いなのは主要道路以外の道なら交通量が非常に低いことで、そうした道がこの国は非常に多いため大都市を結ぶようなルートとかでなければ楽しいサイクリングができると思う。でも水溜りだらけの未舗装路でスピード落とさず追い抜いていった車両に思いっきり泥水をぶっ掛けられたこともあり、車両の数が少なくても他者への配慮がないドライバーが多いことには変わりないため気は抜けない。

◎特徴
 中央アジア5カ国の中で唯一国名に「〜スタン」という名称が入ってない国である。この「〜スタン」というのは「〜の土地・住む場所」という意味で、カザフスタンなら「カザフ人の住む場所」みたいな意味。
 過去にはこの国もキルギスタンという名称だった時代があるが、これはソビエト連邦時代に使われてた名前であり、独立後数年してキルギスタン共和国→キルギスと現在の名称に変わっている。
 理由については諸説あるようだがソ連時代の影響力を下げるためだとか、国内に住む民族がキルギス人だけでない多民族国家において「キルギス人の土地」という意味の国名は思慮に欠けるとされたからとか言われてるが、実際の所はどうなのだろう?
 余談だが語尾にスタンと付く名前の国はカザフスタン・ウズベキスタン・タジキスタン・トルクメニスタン・アフガニスタン・パキスタンの6カ国である。

◎気候
 夏のキルギスは非常に過ごしやすい気候なのだが、それはこの国が山岳国で多くが標高の高い場所に位置してるから。なのでオシュとかビシュケクみたいな比較的標高の低い(1000mを切るような)土地だと7月は普通に35度を超える気温になる。ただし湿度が低いため凌ぎやすいし、大陸性気候なので夜間になると涼しくなるのでエアコンも必要ない程度には快適だ。そういう土地なので観光におけるベストシーズンは間違いなく夏。というか冬は寒いのに加えて多くの場所で雪が積もるため道路自体も閉鎖される場所が多いらしい。ソンクル湖なんかは夏の短いシーズンのみが賑わってる貴重な土地なのだそう。
 一般的に8月はまだ雨が降りだす時期ではないらしいが今年(2025年)は8月ごろから雨の降る頻度が多く、特に山の中では雷を伴う激しい雨が続いたこともあって久しぶりにテント内で神に祈ってた。流石に丸1日に渡って雨が降り続くことはなく最長でも半日程度。山らしく雲の動きが速いため天気予報の信憑性が低いし、青空が広がっていても数時間後には大雨が降っていることもある。
 風は全体的に偏西風の影響を受ける土地なので西から吹くことが多いが、なにせ山ばかりの土地なので実感としてはかなりランダムに吹きまくってる印象だ。イシククル湖を周遊してた時なんか東からの風が吹いてて「どうおなってるんだ!?」とか思ったことはある。日中に風力が強まるものの日が沈むと吹き止むので「風にテントがバタバタ吹かれる」という状況に陥ったことは1度もない。多分運が良かったんだな。

◎言語
 キルギス語で、公用語としてロシア語も認められている。やはり他の中央アジアと近しい言語でありウズベク後やカザフ語とはお互いに会話ができると聞いた。文字もキリル文字が使われるため私のような旅行者には「何のこっちゃ?」状態なのは多くの日本人が同様だと思う。
 英語の通用率はかなり低く、観光地以外では外国人相手のホステルとかでもないと英語はほぼ通じないレベル。一部の学生が英語を勉強するらしく、若い子ではときどき英語話者がいるかな・・・という感じ。
 食堂でメニュー注文するのとかすごく大変だった国1つであり、つい面倒臭くて何処にでもあるラグマン(プロフは田舎食堂だと無い事が多い)ばかりお願いしてしまう傾向が。

◎宿(野宿)・Wi-Fi
 ちょっとでも山中に入ってしまえば基本野宿し放題の国。そもそも遊牧民が多いので適当な場所でテント張っていてもよほど都会でもない限りはスルーされるという点で野営の難易度が非常に低い。水場も豊富に見つけることができるため、様々なシチュエーションでキャンプを楽しめると思う。
 宿に関しても首都やある程度の観光地では安価で設備の良いホステルが揃っており便利に利用していた。ただ観光地を離れた山中の村とかだとホステルの倍以上と値段が跳ね上がるし、キルギスという国は少しでも僻地に入ると宿泊費の上昇率が激しい印象だ。まぁ国土の7割以上が山という環境で物流にかかるコストも高いだろうし仕方ない気もするが。
 料金は1000円弱から選べるが、カラコルのホステルでは自分のテントに泊まることで1泊300円とかあったな。それに対してサル=タシュなんかは2食付きとはいえ2300円以上の宿が最安だった。まぁ全体を通してどこも良い宿だったと思ってる。ビシュケクには中央アジア唯一(正確には違う)の日本人宿があるし。
 宿のネット事情は優秀で設置率も速度も必要十分といった感じ。ちょっとした規模の町なら正しい意味でのカフェ(この国は普通の食堂も「カフェ」という看板が掛かっている)ならWi-Fiが利用できるため、山中に入り込まないなら3日以上に渡ってネットに触れられないという心配はしなくて良い。ただしカザフスタンと違ってガソスタとか大きな施設でFreeのWi-Fiを拾える確率はかなり低い。ビシュケク以外だと郊外のガソスタで1度、他にバイルクチのSPARというスーパーでWi-Fi使えたくらいかな。心配ならsimカードが1000円しない値段で買えるので、ガッツリ山に入る方なら契約する方が良いかもしれない。山の中でどれだけ電波入るか疑問ではあるけど。

◎動物
 遊牧民が多い国だけあって馬や羊を数多く見かける。タジキスタンの使役動物主役がロバだったのに対してキルギスでは完全に馬が主役であり、ユルトで移動生活してる人たちは大体馬か羊を飼っている印象だった。馬は現代でも主要な移動手段として活用されてる節があり、ちょっと山奥とかに入るとまだ幼い子供とかでも達者に乗馬している姿を見かける。
 これに加えて羊を管理する用途で犬の数も多いし、そういうタイプの犬は結構自転車に対して攻撃的なのが嫌だ。牛やロバもよく見る動物だが、やはりキルギスの主役は馬というのが私の感想だ。
 この他にオシュの宿裏庭で自転車整備をしていた際、毒虫に足を刺されてボコボコに膨れ上がった事があった。多分毛虫じゃないかと思うのだが、この時期に木々の近くいると運が悪けりゃ同様の問題に出会す可能性があるかと。あとごく一部の場所で凄まじい量の蚊が飛び交っていたことがあり、雑木林にテントを張るの躊躇ってしまうほどだった。でも日差しが強い関係で木陰にテント張りたいため、運が悪いと滅茶苦茶刺される場合がある。

◎自転車店
 首都のビシュケクにはしっかりとしたスポーツ用のショップが複数店舗存在する。私がみてきた限りだが、中央アジアでビシュケクより西はアゼルバイジャンのバクーまでしっかりとした自転車店が存在しない状況なので、西進するサイクリストはここでしっかりとした準備をしておかないと後々苦労する。そういう意味でリム割れしたタイミングがキルギス国内だった私は相当運が良かったよなとも思っている。
 なおリムに関しては店舗を構えたショップではなく市場の中にある自転車屋街のブースで購入したのだが、一般的に市場の中にある自転車店ってスポーツバイクに適してないグレード低い部品を取り扱ってる場合が多い(実際多かった)ため、ある程度自分で部品を把握できるとか品名の型番を検索して対応するといった自己防衛が出来ないと粗悪品を掴まされる危険は大いにある。私も幅員が違ったりスポーク穴の本数が異なるリムを「これなら大丈夫」とか調子の良いこと言って売りつけてくる輩を躱しながら部品探ししてたので、最低限の知識がないなら市場系のショップは行かない方が良いとは思う。その代わりというか値段は無茶苦茶安いけど。

◎物価・食事
 中央アジアの国々における食文化は変化が小さくどの国行っても大差がない・・・というのはまぁそうなのだけど、でもキルギスはその中で最も食事が美味しい国だと感じていた。立地的に中国が近いため食に対するこだわりが強いのか?とか考えたけど実際どうなんだろ?
 スーパーに並んでる商品のラインナップとかは明らかにカザフスタンの方が充実してるのだけど、その辺の食堂で注文し出てくる食事のレベルが明らかに高く、毎回よく分からないメニューを指差し注文して運ばれてくる品を待つのが楽しみだった。ソンクル湖の麓では焼き魚とかも食べたけどこれも安くて美味しかったな。
 近年すごく物価が上がったとされるキルギスだが、普通の食堂なら1食300円くらいで美味しく食べられる。ちょっとしっかりしたお店だともうちょい高くなる上に10%の税が上乗せされるため「思ったより高くついたな!」と感じることがままあるけども。
 ビールは大型のペットボトルに入ったタイプが売られているがその最大容量は1.8ℓとウズベキスタンと比べてやや控えめ。その割に値段は400円以上するので中央アジアの国にしては案外酒代が高くつく。個人的にウイスキーが安くてとても美味しい国だったため、商店が近くにない山中へ入る際にはポケットサイズのウイスキーを持ち運んで夜にちびちび楽しんでいた。イスラム教の国だけど酒類を販売してない店は稀なので酒飲み的にはありがたい国だった。でもやはりというか豚肉は全然取り扱いしてるお店なかったが。

◎総括
 リムが割れるという特大トラブルあったけど、これがキルギスだったのは本当に助かったと思ってる。しっかりした自転車ショップの少ない中央アジアでありながら拠点としやすい日本人宿があり、オマケにしっかりしたプロショップが揃ってるビシュケクの町は長期自転車旅行をする際に大変利用しやすい環境だからだ。
 加えて日本からの荷物も郵送したりと長逗留していたビシュケクだが、私に限らず多くのサイクリストがここで暫く羽を休めるようである。
 しかしキルギスは準備終えたらそのまま走り去ってしまうには惜しい魅力溢れる国だということを強く感じた。特に自転車旅行だとこの地域ではパミールハイウェイが注目されてしまいキルギスは早々に通り抜けてしまう人も少なくない。だがタジキスタンに負けず劣らずキルギスも走り甲斐のある様々な高山が連なっている国で、特にソンクル湖でのサイクリングは走った気持ちよさがピカイチであった。
 以前はノービザ60間日と余裕のある滞在期間を利用して他の中央アジアビザ取得をキルギスで実施するのがセオリーだったが、それらの国におけるビザ発給待ちが必要なくなった今、この滞在日数を使ってもっとキルギスという国を具に見て回るのはとても楽しい選択であると思う。それだけの魅力がこの国はありますよ。
    mixiチェック

 2025年4月30日〜5月20日 6月20日〜6月23日 6月26日〜6月29日
 走行日数29日間
 累計走行距離1689km(1回目1301km・2回目264km・3回目124km)(168283km〜169584km・171338km〜171602km・171768km〜171892km)

◎道路
 これはかなり悪い。大都市間を繋ぐ道路であれば割と新しく綺麗な舗装された道が多いものの、ちょっとでもそうした道を外れるとボコボコでひび割れしまくった道の割合が一気に増える。意外に完全な未舗装路というのは少ない印象で、アスファルトが穴だらけだったり長期間整備されておらずに凸凹になっているタイプの路面が多数。
 側道はやや狭いながらもしっかり確保されてる一方で、やはり路面状態が悲惨でまともに走れないといった場面も多くちょいちょい怖い場面に出会す可能性がある。
 国土の多くが平坦または非常に緩やかな坂となっており、登り坂で苦しめられるといったことはほぼ無いのは有りがたい点か。
 意外と信号の数が多く、やや田舎町の小さな交差点なんかでも信号機が立ってたりしてストップ&ゴーの回数が多い。でも切り替えのタイミングが早いので何分も赤信号の前で待たされるといったことにはなりにくいが。
 観光地でも完全な旧市街は路面完璧に整備している反面、その周辺の一般住宅街エリアだともうボロッボロのガタガタ道で降るパッキンの自転車ではまともに走れないレベルだったりする。結局ウズベキスタンは観光地に関しては多大な設備費を投資する一方で、それ以外の場所に関してはインフラへの意識が低いというのが私の感想かな。

◎治安
 良い。ブハラやサマルカンドでは夜中も普通に歩き回ったりしてたけど、そんな時間帯でも一眼レフ首から下げた観光客がウロウロしている程度には治安が良い。田舎はそもそも人がほとんどいないし。
 都会や観光地といった場所でそれほど緊張感なく動き回れるという意味ではかなり安心感が高かったように思う。もちろん旅行者としてトラブルに遭遇しないようある程度の注意は払っていたが、治安に関してウズベキスタンは相当良い国だと思いますよ。

◎ビザ・出入国
 日本人の場合ノービザで30日間まで滞在が可能。んで宿の項でも述べてる通り、出国時には国内滞在中に宿泊した宿の滞在登録証を提出&確認する作業が求められると聞いていたのでドキドキしていたが、結局3回とも出国時にその手の確認を求められることはなくアッサリ手続きしてくれた。拍子抜けといえばその通りだが、係員が出国者の中からランダムに登録証の確認するという話を聞いたりもしてるので運が良かっただけかもしれず、この制度自体が効力を失ったと断言することはできないかな。
 ただし出入国にかかる手続き自体は非常に面倒くさいパターンが多く、特にキルギスからウズベキスタンへ入国する際には「パスポートか汚い」と文句が始まりイミグレのボスまで出張ってくる事態となり大変苦労した。やたら荷物検査が多かったのも印象的で、超絶適当だったパターンとの温度差で風邪ひきそうになるくらい。個人的には大人数が利用する都市部に程近い国境だと面倒なイメージがあるのでそうした国境は避けれるならそれが良いと思うのだけど。そもそもウズベキスタンの小さな国境は自国民以外利用できないタイプがあったりするため、あんまり辺鄙なルートを走ることもできないのが悩みどころ。事前に外国人が通過できるかのチェックがとても大切。

◎交通事情
 悪い。結構クラックションを鳴らしてくるタイプの国であり、何故か乗用車の8割以上がシトロエンであるため同メーカーのイメージまで悪く思えてくる程度には運転マナーの酷いドライバーが多い気がする。
 といっても南アジアみたいにルールも何もない無茶苦茶な運転をするのではなく、道路を逆走してくるのは自転車と電動バイクのみだけど高速道路を何百mも平気でバックしてくる・・・みたいな「致命的な行動はしないけど、その運転はどうなのよ?」的な運転は平気でやってくるくらいの認識だ。あと単純に運転が下手というか、道路脇に停車・発進する際、他の車両を確認せず飛び出す/飛び込んでくるため自転車的にはとても恐ろしい存在。目の前で急にドアを大開で開けたりするので安全マージン取って運転してるのだが、そうすっと後ろからクラックション鳴らされたりとか地味なストレスが大きかった。
 あとそこそこ信号機が多い国なのだけど、ウルグアイのドライバーは赤信号が切り替わる前からフライング気味に飛び出してくるのに加えて信号自体が切り替わった後のタイムラグが少ないように思う。なので青信号が点滅してる位のタイミングで交差点突入すると交差点途中で車両が横からバンバン迫り出してくる・・・という状況に遭いやすいと感じたので無理しない方が良いかと。

◎特徴
 世界に2カ国しかない二重内陸国の1つ。なおもう1つの国はヨーロッパのリヒテンシュタインで、自転車でも数時間で国内横断してしまうほど小さい国であるためウズベキスタンの特異性という意味で非常に大きい。
 なお二重内陸国とは「隣り合う国が全て内陸国」という条件であるため、ウズベキスタンは海に出るためには最低2度の国境越えをする必要がある国ということ。
 ウズベキスタン的には貿易の運送コストが非常に高く付くデメリットが大きそうだが、旅行者的には海から遥か遠くに位置している大陸性気候の影響が強い国という面で影響が大きい。要するに寒暖の差が非常に激しい土地であり、オマケに国内の8割以上が砂漠気候のため日中は激しく熱く、そのクセ夜間は震えるほど寒い。年間の晴天率が高いことでも知られている町が多く、直射日光の影響を避けて走行することが難しい国なので特に過疎地域が広がる国内西部を真夏の時期に走るのは相当難易度が高い。

◎気候
 海から遠いことが影響してか正に大陸性気候の特徴を思わせる日中すこぶる暑いが湿度は少なく、夜になると一気に気温が下がる・・・という5月6月であった。国土の半分くらいは砂漠なので全く雨が降らないが、別に東部地域だからといって雨が降るかというとそんなことはない。天気予報とかで雨マークがあったとしてもごく短時間に少量の雨降る程度で走行スケジュールを把握しやすいという点では良いかもしれないが。
 標高の低い土地では5月の時点で40度近い気温になるため湿度云々とかで耐え凌げるレベルを超えており、特に西武の人口希薄地帯では何十kmにも渡って人工物すら出てこない土地が続くので熱中症の対策必須。
 なお風は全体的に西→東へ吹いているものの、恒常的ではなく普通に丸1日に渡って逆方向からの風となったりするので信頼しすぎると痛い目を見る。これも西部の砂漠地帯の方が風力強い傾向にあり、30km/h以上の風が吹き続ける日も珍しくなかったので運次第では滅茶苦茶快適な走行ができる。向かい風だったら地獄だが。

◎言語
 公用語はウズベク語で、やっぱりロシア語の通用率も高いらしい。というか中央アジアの国々は割と言語帯が近いそうで、半分くらい意思疎通が可能なのだとも聞いた。そういう流れからかやはり英語の通用率は低めなものの、観光関係が強いためか主要な都市だと普通に食堂の定員が英語話せたりする場面に遭遇することも多くカザフスタンほど困る場面は少なかった。ただし田舎で食事注文するのは結構大変といえばそう。キリル系の文字を使ってるのでメニューがあっても読めないからさ。

◎宿(野宿)・Wi-Fi
 ウズベキスタンは宿の宿泊関係が非常に面倒くさい国であり、というのも宿泊した宿毎に通称レジストレーションと呼ばれる滞在証明書を発給してもらう必要がある。この滞在証明書を出国時に審査することで旅行者の動向を監視するという旧ソ連からルールを引きずってるらしいがはた迷惑な話である。
 んで自転車旅行者がウズベキスタンを横断する場合、道中に結構な人口過疎区域が存在しておりまず間違いなく宿泊施設を繋ぎながらの移動は不可能であるという点が問題だ。とても不安なので方々からこの制度について話を聞いてみたのだが、そもそもレジストレーション制度は2025年現在でかなり適当だったりなぁなぁになっているともされており、出国時に確認される滞在登録の紙(若しくはPDF等のデータ)について何も言われぬままスルーされたという報告も数多い。とはいえこの制度自体が完全に無くなった訳ではないらしく普通にチェック受けたとか滞在証明がなくてトラブルになった報告も見つけたので、係員が真面目かどうかだとか出国者の中からランダムでチェックする人を選んでるとか言われている。何にしてもトラブルを避けるために宿に宿泊したらチェックアウト時にレジストレーション頂戴とお願いするべき。これを言わないとそもそも証明書を発給しない宿も多いので要注意。
 さてこの滞在証明書だが、基本的には入国から72時間以内に宿泊した証明が必要だそうで、それ以後は最後に宿泊した施設から同様に72時間以内の滞在記録があれば審査的には問題ないという話。それでも私はヒヴァ〜ブハラ間を4日かけて走行してるので問題となるのだが、この点に関しては突っ込まれたら「自転車で宿泊施設に辿り着くのが無理だった」と説明するしかないと割り切っていた。幸いにしてこのルートを逆走してきた日本人サイクリストに2組出会っており、彼らは両名ともこの点が問題視されることなく出国できたので何とかなると思っていた節がある。
 そういう背景があるためウズベキスタンではある程度の規模の町なら多少値段が高くても宿を活用して宿泊していた。都市部を除けばいくらでも野営出来る場所が豊富にある国だけど、ホステルなら1泊1100円くらいからあるのでリスクを減らしたかった。値段の割に広くて設備の良い宿が多く、Wi-Fiは安定してないものの速度に関しては充分満足できるものだったのでコストパフォーマンス的にも優秀だし。
 ただし普通の民家を宿泊施設にしてたりレストランが併設しているタイプの宿が多く、宿泊客がキッチンを利用できた宿は私の場合サマルカンドのみだった。これに加えて観光地や都市部の場合は「観光税」なる料金が追加で必要となることが多く、またこれが宿泊施設の予約サイトとかでは総額料金に加算されていないパターンも多い。なんでこう細かい部分で嫌らしい仕様を加えてくるかなウズベキスタンは。

◎動物
 西部ではラクダとかも見たが、東へ進むに連れて羊やヤギといった家畜ばかりが目立つようになる印象。標高自体は1000mを超える土地もあったが全体的に平野が広がっている国でヒマラヤの山々で見かけた動物というのをウズベキスタンで見た記憶はほぼない。
 二重内陸国の割にそこそこ鮮魚店があったり釣りしている人を見かけたりと魚が豊富であることを感じさせることがあったのが興味深い点。それと砂漠らしくハエにまとわりつかれることは多かった反面、蚊の存在を意識したことはごく僅か。暑すぎて蚊が生存できる環境ではないのだろうか?
 タジキスタンではロバ、キルギスでは馬が存在感を見せていたがウズベキスタンだと半々くらいのイメージで、牛に関しては普通に沢山見かける。特に旅行していて危険と思われるような動物に関しては話を聞くことも姿を見ることもなかった。
 それと特に西部の砂漠地帯でバッタが飛び回っていることが多く、下手すりゃ道路や建物一面にびっしり集まって蠢いており非常に気持ち悪い。これって蝗害か?と疑いを覚えるほどである。
 ちなみに犬はそこそこ追いかけてくる奴に遭遇した。この暑さでよくまぁ元気に走ってくるなと思っていたが、向こうもしつこく駆け回る元気はないのか、ちょっと離れるとすぐにUターンして戻っていく姿をよく覚えている。

◎自転車店
 首都であるタシケントに辛うじて「それなり」レベルのスポーツバイクショップがある程度。サマルカンドやブハラといった大都市でも(しっかり探さなかったとはいえ)見かけたのは完成車をそのまま販売するだけのショップでトラブル対応やパーツの交換に対応してくれるかは怪しい店が多かった。
 かなり広い国土で全体的にこのレベルであるため割と自転車旅行している身としては難易度が高い。難しいのが中央アジアにおける周辺諸国も似たり寄ったりのレベルである点で、西からやってくる場合はアゼルバイジャンのバクー、運が良ければカザフスタンのアクタウでしっかり下準備をしておかねばマトモにチェーンすら購入できず困ってしまう可能性が高い。なお東から来る場合はキルギスの首都ビシュケクに先進的なショップがあるとのことで、装備品に関しては最悪この2点間で入手不能になる場合もあると想定しておいた方が良い。まぁアフリカ縦断よりは距離短いから大丈夫さ!

◎物価・食事
 中央アジアにおける4カ国(トルクメニスタンは知らん)ってかなり文化的に似通ってる印象があったのだけど、その大きな理由となるのが「どの国いっても食事メニューに変化が少ない」という点があったからだ。もちろん同じメニューでも国によって特徴が異なったりしてて興味深くはあるのだが、ウズベキスタンならでは!というメニューというのがとんと思い出せない程度には日々プロフやラグマンばかり食べていた気がする。ちなみにウズベキスタンは全体的に油をふんだんに使いまくってる印象で、全体的に重たい料理が多かった。
 そしてイメージ悪いのが郊外とかにある食堂だとプロフ単品で注文しても勝手にパンとサラダ、チャイの3点セットが付いて最初に提示された料金の1.5倍くらいの料金にされること。これが観光地とか都市部の食堂だとこうしたメニューはサービスで付けられてることも多いので酷い罠だと思ったよ。
 安い店なら2〜300円で食べれる店がある一方で、先に挙げた店では1食に7〜800円くらい取られたこともあり、観光国特有の「事情を知らない外国人から騙し取ってしまえ」という雰囲気を感じることが多かったように思う。
 これに加えてアルコールの販売許可店が少ない印象で、特筆するほどビールの値段が安い(2ℓで200円とか)のに、そもそもビールを売ってる店が見つからなくて飲むことができないというパターンが数回あった。特に東部、それも地方の中核都市レベルだと個人商店や大型スーパーでは酒類の扱いがなく専門のリカーショップに行かねば販売されてないパターン多いので注意が必要。イスラム教が主体となる国で酒を安く飲めることは有難いなと思うんだけどさ。

◎総括
 中央アジア5カ国の中で最も観光的な人気が高く有名な国と評されるが、自転車旅行的には野営の自由が制限される上に道も交通マナーも悪く、オマケに内陸部における盆地の土地であるため気候的にもしんどく大変だったという印象のが強い国。
 親切にしてもらったり楽しい出会いなんかも多々あったけど、それらの印象が強いのは圧倒的に国内西部における過疎地域に偏っており、むしろウズベキスタンの観光地はそれほど魅力を感じるものではなかったかな。やっぱアラル海跡地を見た時がこの国のピークという感じで、そこから徐々に落ちていく一方で気温だけはどんどん上がっていった感じ。
 色々あるけどとりあえずレギストレーションこと滞在証明証の制度は自転車旅行的に害しかないため早急に取り止めていただきたいと思っている。
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 2025年5月20日〜6月13日 6月23日〜6月26日
 走行日数29日間
 累計走行距離1656km(1回目1490km・2回目166km)(169584km〜171074km・171602km〜171768km)

◎道路
 個人的に意外というか道路はかなり良い。中央アジア最貧国に加えて山ばかりの国土であるため交通インフラ整ってる方が不思議なくらいに思っていたが、主要な道路はしっかり舗装されているし路面も良くて走りやすい。そりゃパミールハイウェイはどうしようもないほど酷い未舗装の道もあるが、そもそもパミールはそういう点を考慮したサイクリストがやって来る場所なので文句言うのも違う気がするし。そのパミールハイウェイに関しても本線を走る限りは8割以上がアスファルト道であるため実はそこまで厳しくない。
 この国における道路の大変さはむしろ山岳国であるため、どんなルートを選ぼうともアップダウンが避けられない点にあると思う。全体的に斜度は緩やかにするよう努めており自転車に対して優しい造りではあるのだが、ちょっとでも主要道を外れて小さな道に入ると未舗装&急斜度の道がお出ましして苦労する羽目になる。
 あと道路のイメージ良いのが「良い道路」と「悪い道路」の差が極端なところがあるからかもしれない。ホジェンドの東部田舎道なんかガタガタの酷い路面が続く道だったのだけど、都市へと入る手前からは新しい綺麗な路面に切り替わったりと抑えるべきところをしっかり整備してる印象が強い。この点ウズベキスタンなんかは全体的に60点くらいの「やや微妙」という塩梅な道が多くを占めており、全体を通して思い出すと「なんか走るのに苦労した」となってしまうのに対し、タジキスタンはそこら辺が非常に上手かったなと感じる。

◎治安
 非常に良い。というか犯罪絡みが発生しそうな都市部の数が少なく、山中の田舎町ばかりのため単純に危険なことに遭遇する可能性が低いと思う。
 ただしパミールハイウェイを走る自転車旅行者には有名な話だが、2017年に欧米7人組のサイクリストがパミールハイウェイを走行中に銃殺される事件が起きている。これは隣国アフガニスタンのイスラム原理主義による犯行とされているが、タジキスタン国内でもアフガニスタンとの国境沿いにおいては外務省も危険レベル3の認定を出してるし、実際その土地を走ってみて「やたら軍の駐屯地が多いな」という感想を抱いたので未だに緊張感がある土地なのだろうと想像できる。雰囲気的には牧歌的なんだけどね。

◎ビザ・出入国
 日記本文でも書いたがノービザで30日間の滞在が可能な国で、国内に1週間以上滞在する場合はOVIRという施設で滞在登録の申請手続きを実施する必要がある。
 しかしパミールハイウェイを走行する予定のサイクリストにとってこのノービザ入国は罠であり、走行ルートにもよるがパミールハイウェイをしっかり堪能しようとすると30日間の滞在期限ではギリギリになってしまう。
 故にタジキスタンの入国はeビザ手続きをして滞在期間60日間を確保しておくのが賢い手段。このビザ手続きをすることでOVIRでの滞在登録手続きも省略することができるし、パミールハイウェイを走行するためのパミールパーミットもビザ申請時の手続きで併せて取得できるため無駄も少ない。特にキルギス側から入国する場合は首都ドゥシャンベに辿り着くまで1週間以上の期間を要する関係(OVIRでの手続きは入国から1週間以内にせよとされている)で、どう転んでもビザの取得が必要になる。ということで諸々考えるとタジキスタンはビザを取得しておく方が良い国だった・・・ということに気付いたの入国してからなんだよね。

◎交通事情
 運転マナー自体はかなり残念なレベルだけど、車両の総数が少ないためそこまで腹を立てることが少ないという点で「中央アジアではかなり良い方」という評価になるの笑えるな、いや笑えないが。
 田舎の山道で怖い思いをしたということはそれほどなくて、完全にパミールハイウェイ上における道路工事区間でもなければ道路幅自体に余裕があるのか案外余裕を持って走行できる。
 なのでストレスを感じるのはやっぱり都市部になるのだけれど、この国における都会ってのが地形的に巨大都市になり得ない構造(平野部が少なすぎる)をしてるので「いつまでも走りづらい都会が続く」という状況にならないメリットがある。ある意味で山岳好きなサイクリストにとっては理想的な環境だと言えるかもしれない。

◎特徴
 国土の9割超が山という超絶山岳国である。同じく山岳国家とされる日本が大体70%、ラオスでも80%とされる中で驚異の93%という数字はこの国を走ることが如何にヒルクライムかと教えてくれる。
 更にその山々も標高6〜7000m級の高山が豊富に連なっており、パミール高原を指して「世界の屋根」と評される理由もここにあり、そこに住む人は大変かもしれないがこうした山々を魅力と捉えて大勢のトレッカーやサイクリストがやって来るのもまた事実。
 特に東部に広がるパミールハイウェイは自転車旅行者にとって1度は訪れてみたい聖地と評されることも多く、大陸横断系の自転車乗りにとってハイライトとなるべき土地として大変人気が高い。なおパミールハイウェイの詳しい内容は別記事に記載してるので興味ある人はそちらを参照のこと。

◎気候
 山だらけな地形の影響か思ってたより雨が多かった。降雨時間は少なくザッと降ってパッと止む印象だけど、山中の過疎地域ではそういうのが1番困るのよね。逃げ場がないことも多々あるので。
 平地の方が少ないような土地であるため気温は標高に左右されると考えてた方が正解で、首都のドゥシャンベとかホジェンドみたいな低地の平野部では35度を超える気温になる一方で、標高2000mを超える土地だと精々20度前後の過ごしやすい気温となることが多かった。ということでタジキスタンを走るなら夏のシーズンこそがベストでしょう疑いもなく。国土の半分くらいはパミールハイウェイでもっと気候的に厳しい環境となることを鑑みても。

◎言語
 かなりの多民族国家でありそのため言語に関しても多岐に渡るとのことだが、公用語はタジク語である。これが所謂スタン系国家と近い言語かと思いきやイランのペルシャ語に近い言語らしく、他の中央アジア諸国とのつながりという意味ではロシア語を活用して意思疎通するとのこと。
 英語の使用率はかなり低く都市部を離れると30%も通じれば良い方か?やたら子供たちから「Hello」「What’s your name?」と話しかけられるが、この2フレーズ以外の言葉を話せる子は稀。外国人観光客だらけであろうパミールハイウェイの宿泊施設でも英語の通用率は半分程度と思っておいた方が良い。ロシア語使えればこの地域での旅行は大分違ったものになるのだろうなぁ・・・とかそんなこと思っていたが、その辺はまぁ仕方がない。
 ちなみにホログより東のパミール高原などのエリアではパミール諸語と呼ばれるそれぞれ独自の言語を使っている人たちが多いとのこと。私は言葉を聞いただけでは違いがわからなかった。

◎宿(野宿)・Wi-Fi
 首都のドゥシャンベには1泊1000円以下の安価なホステルが存在するが、ここ以外は都市や観光地だろうが料金2倍近くする宿しかなかった。タジキスタンの物価を考えるとかなり割高という印象なのだが、山岳地帯の厳しい環境下を全行程野宿で過ごすのは流石にキツいのでそこそこ利用してたりする。
 なおタジキスタンは多くの宿泊施設で夕&朝食付きのスタイルを採用しており、特に小さな村となるほどこの傾向が強い。想像してるよりしっかり食べさせてくれたことが多く、そういう意味で多少値段が高くともまぁ許容できるよな・・・とは思っていた。ちなみにWi-Fiを始めとする設備はパミールハイウェイに突入するとかなり設置率が落ちるし仮に付いてても速度劇遅で利用に支障が出るレベルも多い。私もこれを予想していたのでタジキスタンでは入国初日にSIMカードを購入しており、30日間10Gの利用で1500円しない程度だったように記憶している。想像してるより使える範囲が広かったこともあり、タジキスタンではとりあえずSIMカードを入れといて損はないというのが私の結論かな。

◎動物
 山だらけの土地だけあって家畜だとヤギや羊が豊富。荷運びに使われるのは主にロバが主役となっており馬の姿を見ることは少ない。でも案外牛を飼ってる家庭は多く、パミール高原でも乳製品は貴重な食材として活用されてる姿が目立った印象だ。
 山の上まで行くとマーモットの姿を多々見かけるのが嬉しいのだが、やはり今回も雪豹の姿は銅像でしか拝むこと叶わずだった。
 犬に関してはタジキスタンで犬を飼う習慣が多くないのか、追いかけられた記憶というのがほとんどない。全く姿を見なかったという程でもないが、牛や羊の群れを統制する牧羊犬以外に犬の記憶が出てこない・・・というのも珍しい気がする。

◎自転車店
 首都のドゥシャンベでもスポーツバイクに対応できるようなショップは無いので期待しない方が良い。パミールハイウェイを走るにおいて何か準備しておきたいならタジキスタン入国前に済ましておくのが大前提だと思う。
 なお西→東のルートであればドゥシャンベのグリーンハウスホステルに自転車旅行者が大勢宿泊しており、この宿で整備作業や段ボールに梱包してフライト準備してる人が沢山いるため、何かしら装備品を融通し合うことができる可能性はある。

◎物価・食事
 これが結構お高い場所多くて困ったね。都市部における物価は非常に安いのだけど、タジキスタンという国を自転車で回るとどうしたって集落とも呼べるか怪しいほど小さな村で食事を取ることが多く、そうした村のほとんどが山中とかの非常に交通の便が悪い場所にある。
 結果、そうした土地に物を運ぶ物流インフラの脆弱さから田舎における物価の上がり幅が非常に大きいと感じたし、でもこの点に文句は言えないよなぁとなってしまうのはその道を私自身が苦労して走って来たから。そりゃまぁ値上げするのも、分かるよ分かる。
 ということで都市部だと2〜300円程度でできる食事は山中に入って行くにつれてどんどん値上げして行く傾向にある。パミールの辺鄙な場所だと低地の1.5〜2倍くらいになる印象かな。ビールだったら1.5リットルのボトルが18ソモニ(約270円)で販売されてるのだけど、1番高かった時は35ソモニとほぼ2倍に。それでも日本で飲むより安いのだけども。なおタジキスタンで作られてるビールの銘柄はそこまで多くないそうで、私が効いたところではシルシルという名前の水みたいなビールを聞いた程度。個人的にはYAKというビールを好んで飲んでたけど、これあタジキスタン産ビールなのかは人によって返ってくる答えが違うためハッキリとしたことは言えない。
 ちなみに食事における内容をスルーしたのはワザとであり、中央アジアにおける代わり映えのないメニューがこの国でも繰り返されることになるため。個人的にタジキスタンは食を楽しみに来る国では無かったかな。

◎総括
 多くのサイクリストがパミールハイウェイを走りたいと思って入国してくる国だけど、その山々を走っているとこの国の実に沢山の人が旅行者に対してフランクに接してくれ、また多くの親切を受ける機会に恵まれてと山だけでない魅力も多々感じる国であったと思ってる。中央アジアの国々では最もハードである反面、最も走っていて楽しかったと胸を張って答えられる魅力が満載であり、しかしそうしたタジキスタンの良さを心底楽しむためには険しい山岳走行が必須となるハイリスク&ハイリターン系の国。
 でも私は思うのだ。中央アジアの国々を自転車で走るのならばタジキスタンを外すなんて選択肢はあり得ないだろう!と。それは苺の乗っていないショートケーキの如く、タジキスタンがこの地域における魅力の凝縮された土地であることを強く確信しているから。
 幸いにしてパミールハイウェイは路面の整備状況も進みルートの選択肢も複数存在する道だ。後悔はさせないので是非とも多くのサイクリストにもっとこの道を走って欲しいと思っている。
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 2025年4月3日〜4月20日
 走行日数18日間
 累計走行距離921km(166725km〜167646km)

◎道路
 バクーの都市圏さえ抜けてしまえばほとんどの道に側道が設置してあり割と安心して走ることが可能。隣国ジョージアがこの点かなり酷かったので、アゼルバイジャンの道路状況にはかなり好感持っている。
 全体的に国の南部は平野部が多く、北部になると山岳地帯の割合が増えていく。国の東はカスピ海に面しているため海抜0m以下まで標高下がる一方で、北西部の最高地点は標高4000mを超える高い山がそびえるアップダウンの激しい国だ。国土もそれほど広い国では無いため坂の斜度が急になりそうなイメージあるが、幹線道路で斜度10%を超える厳しい坂は1度しか出てこなかったな。斜度12%と書かれた道路標識は3度も見たけど全部嘘だったし。なお車両は右側走行。
 信号の割合が少なく交差点はラウンドアバウト方式となってることが多いのだが、田舎はともかく都市部や交通量の多い場所だと交通マナーの悪さから非常に危険。
 それ以外だと町の中心部に大きな道路が通っておらず、一方通行となってる道の割合が高かった。これに加えてアゼルバイジャンは駐車場が非常に少なく路上に駐車する方式が一般的のようで、この2つが合わさって通行スペースが非常に狭くなるという状況に陥りやすい。郊外と都市部における走りやすさの差が大きな国だった。

◎治安
 非常に良い。少なくともアグレッシブな強盗とかに遭遇する感は全く無いし、バクーを除けば盗難問題とかもそれほど気にする必要ないと思う。ただバクー近郊のレストランとかスーパーで子供から「金くれ」とせがまれたことが2度あり、都会から離れると生活レベルがかなり低下することを見ても貧富の差が大きいことが察せられる。得てしてそういう土地は治安が悪くなりがちなので。
 それと全国的に軍隊や軍人の姿をとても多く見かける国で、ちょっと田舎町に入ると戦争で亡くなった軍人の慰霊碑や写真が数多く祀られている。ナゴルノカラバフの土地を巡っての紛争は既に終結し、アルメニアとの外交も回復へ向けて進んでいるとされる状況の割に物々しくないか?とは感じたな。

◎ビザ・出入国
 2020年のパンデミックで多くの国が国境閉鎖したことは記憶に新しいが、2025年現在でもアゼルバイジャンは陸路における入国を解放しておらず、この国に(観光で)入国するには航空機を使うしか選択肢がない。もう何年も「◯ヶ月後には入国制限を解除する」と表明しながら期日になると「まだその時期じゃない」と延期してるので、今後陸路国境が解放されるのはかなり大きな変革でもないと難しそう。
 よく分からないのがアゼルバイジャンからの「出国」は陸路(海路)の国境でも構わないという点で、私もこれを知っていたのでカスピ海フェリーを利用してアゼルバイジャンを出国することができた。このカスピ海フェリーはユーラシア大陸を横断する際の陸路ルートとして一部の界隈に人気なのだが、現状カザフスタン及びトルクメニスタンからアゼルバイジャンへ航行するフェリーには乗船できず、しかしアゼルバイジャンからこの2カ国へ航行するフェリーは乗船可能ということだ。
 注:トルクメニスタンはビザ取得が非常に難しい国なので海上ルートの選択肢としては難しいところなのだが、2025年4月にトルクメニスタン政府がeビザの発給を開始したというニュースがあったので今後新たなルートとして利用する人が増えるかもしれない。
 ちなみにアゼルバイジャンは通常入国にあたってビザが必要。これは空港のアライバルビザで簡単に入手できるので手間はほとんど必要ない。嬉しいのが世界で唯一日本人だけビザ代金が無料という点で、アゼルバイジャンが親日国と言われる由縁はこういうポイントにあるのかもと思ったり。なおビザ発給の際に宿泊先の宿を入力する欄があって、私はここで慌てて宿予約し手続きしたのだが適当に入力しても大丈夫だったような気もする。
 なお滞在可能日数は30日間なのだが、この国で15日以上の滞在をする場合は宿泊先の情報を受け取って関連する役所に赴きレジストレーション(滞在証明証)を受領しなくてはならないという罠がある。私は首都のバクーでこの処理を実施したが、他の町でどの規模なら同様の処理をしてくれる役所があるのかは不明。滞在中に1回証明証を発給してもらえばOKなので、よっぽど変なルートを走らなければバクーを経由すると思うし素直に首都で手続きするのが正解だと思う。
 出国に利用したカスピ海フェリーは貨物船に僅かな乗客が乗り込むスタイルということもあってか一般的な出国手続きと若干異なったと思われる。この辺はカスピ海フェリーについての方で詳しく書いたので気になる方はそちらを確認してほしい。 

◎交通事情
 悪い。全体的に運転が酷かった中東から来て即「アゼルバイジャンの運転酷いな!」と思ったので相当レベル低いと思う。クラックションも鳴らしまくるし道を間違えた車両が平気で100m以上の距離をバックしてたり、下手すりゃ普通に逆走してくる車両もいた。
 ただ信号表示は守るし土を越した無茶苦茶な運転をする訳ではなく、あくまで通常の範囲内で危険という感じ。ときどきこちらが優先車両にも関わらず「俺が通るからどけ!」とばかりにクラックション鳴らして横行するバカドライバーがいたりするので気は抜けないが。
 この国は自転車旅行者に対して気の良い人が多いのだけど、ドライバーが挨拶がわりにクラックションを鳴らしてくるパターンが多く、しかもそれが1日に何十回もある。自転車的にはクラックション鳴らすという行為は非常に怖いしマジで危険な運転で鳴らしてくるクラックションと区別つかないので本当辞めてくれないかな・・・と常日頃思っているのだけども。
 なおアゼルバイジャンの田舎を走るバスはほぼ全てバンタイプで大型バスが出てこない。一部ツアーバスとかは見たかなという程度。国民とか旅行者的には困ることあるかもしれないが、自転車乗りとしては大型バスが少ない国って安心感高くて好きなんだよね。

◎特徴
 2023年まで凡そ40年間に渡って隣国アルメニアとナゴルノカラバフという土地をめぐって紛争が続いていた。現在この紛争は完全に終結したとされ、土地はアゼルバイジャン領に。アルメニア側も再度この土地を奪取するため攻撃を仕掛ける考えはなく、両国間の関係も改善に向かっている・・・というのがニュース見た限りでの状況である。
 ということでナゴルノカラバフは現時点で外国人が(アゼルバイジャンの国として)入域することは可能となったが、そのためには許可証が必要とのこと。それ自体はネットで手続きして数日後には発給される物らしく大した手間とはならないが、紛争の名残りでこの地域は未だに地雷が埋まっているらしい。
 そんな土地なのでどこまで自由に移動できるか怪しいところがあるのは確か。とりあえず自転車的に安心して野宿できる環境ではないため訪問するのは辞めといた裏があったりする。

◎気候
 4月のアゼルバイジャンは低地なら非常に快適な気候でのサイクリングが楽しめる。最高気温が20度ちょっとで走っているのが実に気持ちいい。対して山岳地帯だと夜間は氷点下まで気温下がる場合もあるし、この時期だと山脈に雲が引っかかるのか天気の良くない日が多い。全体として低地:快適、高地:寒いという印象。いや高地と言っても精々500〜1000m程度なのだけど。一応北部に標高2000mを超える風光明媚な村があり人気だと教えてもらったのだが、ここへ向かうにはバクーから北上するルートに乗らないと他の道が無いため行ってない。ちなみにアゼルバイジャンではぐるっと国内周遊するようなルートを走っているが、1度も「ずっと向かい風に吹かれ続ける日」というのが無かったのは幸運というしかない。このことから言えることはアゼルバイジャンの風向きはあまり一定方向から続くタイプでは無いということか。
 なおカスピ海沿岸は日によって非常に強い風が吹き、特に秋だとより激しいとのこと。4月という春の時期は比較的風が穏やかな季節だと聞いたが、それでも後半のバクー滞在してた雨の2日間は時速40kmを超える強烈な北風が吹き荒れていた。もちろんカスピ海フェリーも運休してたのであり、カスピ海フェリーを利用したい人はアゼルバイジャンの風が安定する時期を選んで向かえば長々と出航を待たされる可能性が減るかと思われる。

◎言語
 アゼルバイジャン語だが、結構な割合でロシア語を使う人も多かった。この2カ国の言語がどのくらい近いのかは知らないけど、使用してる文字はキリル文字っぽいアルファベットが多々見られたので近しい言語なのだと思ってた。
 バクーか観光地でもないと英語の通用率は非常に低く、特に年配の形で英語が話せる人はまず出てこない。田舎で20人以上に囲まれることとかあったけど、誰1人として多少でも英語話せる人がおらずジャスチャーのみでコミュニケーションしたのは良い思い出だ。
 道路看板とか標識関係でサブ言語として英語表記されてる割合が低い国で、アゼルバイジャン語は英語的な発音ともだいぶ異なるため道路看板の文字を見て行き先の町か否かを判断することが非常に難しい。全体として言語的にはかなり難易度の高い国という印象だ。

◎宿(野宿)・Wi-Fi
 バクーには1000円以下で利用できるホステルが多数ある。値段の割に綺麗だし設備も良くて有難い限り。ただ2度の利用で両方とも長期滞在してるロシア人がおり、我が物顔で勝手な行動(人の食材盗んだり深夜にベッドで音流して動画みたり等)してて大変迷惑だったのが印象悪い。それと中心部の宿はアパートの一室だったりするタイプが多く、場合によっては自転車を外に置かねばならずこうした点を事前確認したいのだけどアゼルバイジャンは入国ビザに宿泊先を記入する必要があったりしてなかなか難しい。
 町を外れてしまえばキャンプできる場所は幾らでもある国で野営は楽だった。ただ水の補給に難があるというか水道水が飲めない系の国らしく、その割に水補給の大変手段が少ない感じで水の確保が難しい。戦没者の慰霊碑には大抵水道があってこうした水を汲んでる人も見かけたことから飲んでたけれど、実際この水が飲料用だったのかは分からない。煮沸してたから大丈夫理論。
 宿のWi-Fiは高速で安定してた一方で、町を外れると案外ネット環境が乏しかったアゼルバイジャン。この国はマックを始めとするアメリカ系チェーン店が首都バクー以外ほとんど進出していないため、田舎だと必然的に地元のカフェみたいな施設を探さなくてはならなかった。結果としてWi-Fiの設置率は五分五分といったところか。カフェの数自体は沢山あるため、何日もネットに接続できなくて困るといった状況に陥ることはそうそうない。地味にヴィエンダムの町で泊まったホステルにはWi-Fiが無かったけど、多分これ珍しいパターンだよなとは思ってる。

◎動物
 家畜では羊の割合が一気に増えた。放牧してる羊の群れを馬に乗ってコントロールしてる光景はアゼルバイジャンでよく見かける光景で微笑ましく思いながら眺めていたかな。牛やヤギの姿もそこそこ見かける一方で豚の姿がないのはイスラム教の国らしい。
 それと久しぶりに犬がアグレッシブに追いかけてくる国で、それほど長く滞在したわけじゃないのに計20回は追い回されたと思う。犬叩き棒も1度火を吹いたし。
 危険な動物が人里近くに生息してる雰囲気ないし、そうした動物注意の看板は山道を走る道路でクマ注意の標識を見かけたことがあるくらい。でもこの国でテント張るという会話した際に「動物に食い殺されるぞ」的なジェスチャーとともに犬っぽい鳴き方をされたのでもしかすると狼でも出るのかな?とか思ってた。なおハエを見ることは少なかったが場所によってはデカい蚊がワンサカ飛んでてキャンプ中に苦労した。そのくせこの国には渦巻き式の蚊取り線香が売っておらず困った思い出。

◎自転車店
 バクー市内には複数のプロショップが存在する。ここから中央アジアを横断する場合キルギスに到着するまでスポーツ用自転車のちゃんとしたショップが存在しないと聞いたので予備のチェーンとか購入したのだがかなり値段は高かった。その割に地方都市で見つけた自転車ショップで購入したチューブは1本2マナト(約170円)とビックリするほど安かったので、何が影響してるのかよく分からんというのが正直なところ。
 ある程度専門的な部品がダメになったらバクーまで移動するしか方法ないが、そもそも現在のアゼルバイジャンは飛行機でしか入国出来ずほぼ間違いなくバクーからのスタートとなるため1番トラブルの発生しそうな飛行機輪行の直後でカバーできる環境となっており、問題起きることは少ないんじゃないかな。

◎物価・食事
 全体的にかなり安い。石油がバンバン出る国でありながら物価の安い国というのは珍しいなとか思ってた。ベネズエラは色んな意味で外れ値の国だし。ガソリンは1ℓ90円くらいでアラビア半島の国ほどではないが日本人としては羨ましくて仕方のないレベル。
 イスラム教徒が大多数で構成している国だが、しっかり教義と政策を分離しているらしく普通にそこら中で酒類が販売されてるし値段も安い。ビールは2.5ℓの大型タイプで7マナト(約590円)ちょっとの商品がありよく飲んでたな。それとアゼルバイジャンはワインも人気の国だけあって、安価ながら美味しいワインが多く安いタイプだと1本4〜5マナト(340〜410円)くらいで販売されている。
 こうした品に比べて肉類の値段はやや高く、そもそも田舎になるとソーセージみたいな加工肉か冷凍肉しか取り扱ってないお店がほとんど。肉専門店もあるっちゃあるが、値段表記一切ない上に部位と必要量をお願いして目の前に吊るされた肉をカットしてもらう方式なのでやや難易度が高い。個人的には1kg15マナト(約1250円)を切ってたら「結構安いな」と思ってた。なお鶏肉はもっとずっと安い。
 外食するのもアリかと思ってたのだけど、田舎で気軽に利用できそうなのがケバブ屋ばかりで結局1度も活用することなく。カフェは2〜3度利用したのだけど、全て「お題は要らないよ」と言われてしまい料金知ることなかった嬉しい思い出。

◎総括
 アゼルバイジャンという国は当初「陸路による入国が出来ない」ということから訪問予定の無かった国だったりする(コーカサスの国を走行中当時の話)。その後アラビア半島走行中に「中央アジア横断するに当たってアゼルバイジャンからスタートすれば、カスピ海横断フェリーを含めて走りたかった土地がほぼ走れる!」ということに気付いて入国した経緯がある。
 そんな紆余曲折あった末に訪れた国ではあったが、私はこの国を訪問出来て本当に良かったなと思っているし、そう思わせてくれたのはアゼルバイジャンの人たちがとてもフランクで親切にしてくれたからだ。
 訪れるまで知らなかったが、唯一日本人にのみビザ代金が無料の親日国とか、イスラム教徒が9割超える構成でありながら政教分離がしっかり行われているとか、興味深いポイント幾つも備えてるポテンシャル高い国だったんだなと今になって思う。やはり実際に行って見ないと分からないことは多い。
 石油や天然ガスといった資源に恵まれる親日国・・・と書くとアラビア半島の国を想起させるが、アゼルバイジャンはそうした国とはまた違った印象を抱かせる国であり、言葉によるアウトプットでは表現しきれない居心地の良さを感じられたことが1番の収穫だと思う。
 ということで本当に好きな国なので、早いとこ陸路の国境を開放して下さい。石油枯渇に備えて観光業に力を入れ始めてるのなら窓口を広げておいて損はないでしょう!と旅行者なので好き勝手に希望言ってお来ましょう。
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 2024年5月28日〜8月13日 9月11日〜9月25日 12月3日〜2025年1月23日
 走行日数145日間
 累計走行距離7485km(1回目3756km・2回目896km・3回目2833km)(151206km〜154962km・156346km〜157242km・158797km〜161630km)

◎道路
 かなり良い。日本の約9倍という広大な国土にかなり細かく網の目状に道路が通っているが、少なくとも主要道路に関してはしっかり舗装されているし側道もあって自転車的には走りやすい。というか側道の存在が無かったらインドの主要道路なんて怖くて走れたもんじゃない。
 一部の都市にしか信号機はなく、かといってラウンドアバウトタイプの交差点もそれほど多くない。なので交通マナー的に交差点の存在が非常にストレスとなる。
 主要道路はどこも大体中央分離帯がガードレールとかで物理的に遮断されていて、下手に反対車線へ入り込めないようハード面で対策されているのだが、これが原因で普通に道路を逆走するドライバーも多いため油断は禁物。
 基本的に路面状況も良好で、一部ガタガタだったり州によっては速度落とすためのバンプが大量に設置されていたりと特色があるものの、ラダック以外の土地ではアップダウンがほとんどないこともあって高速巡行で走り続けることが可能。小さな村とかに入ると一気にインフラレベルが低下するし未舗装のガタガタ道が大半だけど、単純に町から町へと移動する分には道路で困ることは少ないと思う。
 ただし道路工事の規模が非常に大きく、2〜30kmに渡ってアスファルト掘り返して未舗装路が続いたりすることがある。1度こうした道に入ってしまうとなかなか別のルートに逃げられずドロドロにされながら走行が続くこととなるため悩ましい。
 とにかく車両の数が多い国なので下手にマイナー道路に入っても「車両がいなくて快適」とはならず、むしろ狭い道路でインド人ドライバー盛り沢山というおよそ考えうる限り最悪の状況となる可能性の方が高いため、基本的には幹線道路を選ぶようにしてルート選定した方が良い。
 あと都市部に関してはもう道路状況とか関係なく最低を煮詰めたような状況での走行を余儀なくされるため、極力人口が多い都市には近づかない方が良い。私は5月のデリー脱出で「これ下手したら死ぬかも・・・」とか思いながら走ってた。

◎治安
 あまり良くない気がする。何というかインドは直接的に何があった訳じゃなくても「油断してはならない」と思わせるに足る感覚があったし、恐らくそれは間違っていないと思う。
 とにかくインド人って地元コミュニティ以外の人間が現れると多くの人間が声をかける訳でもなく「じっと見てくる」傾向があり、何処にいても人から監視されてる節がある。それはある意味安全なのでは?と思うのだが、彼らはその一方で私が自転車から離れると、直ぐに自転車を勝手に触り始めブレーキを握りライトを点灯させる。要するに他人の物だからとかそういった遠慮が全くない人たちなのであり、このため人のいる場所では「常に監視されている&自転車から離れると勝手に触られまくる」という事態が多発することから不安感が強い。どう好意的に見てもインドは貧富格差の凄まじい国であり、貧困から起因する窃盗系の犯罪は低くないように感じるため、こうした状況は常に不安を覚えつつ活動していたし宿に自転車置くときは最低でも建物内でないと安心できないと思っていた。日記には書いてないけど、自転車から目を離した隙に手持ちライトを盗まれたし。
 だがまぁ盗難以外のアグレッシブな強盗だったりインドで悪名だかい詐欺とかに関しては所詮デリーとかの大都市や観光地及びその周辺に限定した出来事であり、そんな人の多い場所には絶対行きたくなかった私的には全体を通して危険だなと感じたことがない。夜中も平気で出歩いてたけど何とも思ってなかったな。とにかく沢山の人が声かけてくる国だけど、結局私は1度も詐欺どころか宿の営業すら受けたことはない。悪者が一部の地域に集まり過ぎているため、むしろ地方は落ち着いているという状況だと言えるのかもしれない。

◎ビザ・出入国
 入国にはビザが必要な国である。2024年現在でそのビザ自体の種類が複数存在しており、主要な国際空港からの入国であればアライバルビザも発給されたりする・・・と書くと案外入国簡単そうなイメージだけど、インドという国のイメージがそうであるようにルールもかなり適当でしょっちゅう規定が変わったりする不確実なアライバルビザは確実性に欠ける手段として人気がないらしい。
 ということで一般的な旅行者なら他に大使館に出向いて取得する領事ビザかネットからの申請ができるeビザを選ぶことができる。そんでここ最近の状況だと圧倒的にeビザが便利で簡単となったため、私はeビザの手続きをとって入国した。ビザのタイプもマルチプルビザ(期間内に何度でも出入国可能)だし、何度も大使館に足を運ぶ上にビザ発給までパスポート預かられてしまう領事ビザと比べて特にマイナスとなる要素がない。今なら基本的にeビザでの発給が1番だと思う。地味に1度発給すると最大5年間有効なビザ(期間は選べるのだがどれを選択しても料金は同じ)らしく、再訪するかどうかは知らないけど当然のように5年間有効ビザを取得した。
 手続きのやり方に関しては日本語でも細かく説明してくれるサイトがたくさんあるので調べれば良いし、申請してから1日後にはビザが発給されたとメールが来たくらいにはスピーディだった。ただし到着する飛行場や初日の宿とかを記載する欄があるため事前に航空チケットを購入しておくことが条件となり、ビザ発給にはある程度前もって準備をする必要がある関係上自転車旅行的にスケジュールを縛られてしまう航空券を早いタイミングで購入するというジレンマが。私はフライト期限に遅れるのが怖くてかなり余裕持ったスケジュールで予約したのだけど、そのためバトゥミに到着してから時間持て余したりした。
 それと面倒臭い点で「eビザでの初回入国はフライトのみ」という謎の制限がある。このため例えばネパールに入国して陸路でインドへ渡ろうとした場合、過去にインドへ入国してないとeビザでは入国することができないという問題が。私がこの地域で最初にデリーからスタートしたのもこの問題を解消するためである。
 なお肝心の入国審査はeビザのデータ印刷した書類さえ準備しておけばほとんど問題にはならないが、入国時に書かされたカードとビザ書類との内容を確認してたので、私みたいに電話番号や宿泊地の住所を適当に記載してると齟齬が出て詰問されるかもしれない。

◎交通事情
 ゲロカス。オブラートな言葉に包むことすら不可能な世界最低レベルの運転マナーとクラックションの嵐。自転車でインドを走ると他にどれほど魅力的な面があろうとも、この運転の酷さから魅力が大きく減退してしまうことに疑いの余地はない。
 とにかく自己中心的な運転が目立つ上にインド人の運転技術そのものもかなり低いと感じさせる。なので車幅を見誤って隙間に突っ込み接触事故起こすとかしょっちゅうやってるし、先を見通した運転なんかできないため限界まで車間距離を詰めて、その結果反対車線からの車とかち合い逃げ場がなくなりお互いに「邪魔だ」とひたすらクラックションを鳴らし続ける不毛な光景が出来上がる。
 というか意味なんか無くてもクラックション鳴らしまくっており、それが凄まじい数であちこちで聞こえてくるため本来の意味である「危険を知らせる」といった方向に活用されてない。この国でクラックションに一々反応してたらマトモに運転なんかできないという話。
 大概の国ならバス・トラックやリキシャと呼ばれる三輪タクシー、バイクと車種によって危険度に差が出るものだが全て満遍なくクソ運転してくるので逆説的に「どれが1番危ない」というのが存在しない。ただ自転車的に1番おっかない思いをする確率高いのがリキシャで、コイツら自転車をオーバーテイクした直後に急ブレーキかけてくるヤバい運転を躊躇なく行うため洒落になってない。救いなのはラダック地方や高地のエリアでは姿を見かけないことか。
 基本的に「ルールを守る」という概念が存在しないため遮断機の降りた踏切や赤信号でも関係ないし、むしろコチラが信号表示に合わせて停車してるとその脇を凄まじい速度でぶち抜いて行く輩がいるため下手なタイミングで停車しない方が安全という始末。彼らが停車するのは「自分が危ないから」であり、それ以外の理由はない。
 またブレーキ使って減速・停車することを「負け」と考えてる節でもあるのか、速度を落とすのは最後の手段として運転していると思われる。つまり前方に自転車がおり道路幅が狭い場合「広い場所まで待つ」ではなく「クラックション鳴らして退かせる」というのが第一行動となり、例え状況的にどうやっても道を譲れなかろうが関係なくひたすらビービー鳴らし続けるか無理矢理狭い隙間に突っ込んでくる2択となる。そこまでして急ぐ理由があるインド人は多分0.1%もいない。
 あと地味に気分悪いのが運転しながら平気でゴミを投げ捨てまくるしその辺に唾を吐きまくる点。特にインドは「パン」と呼ばれる一種の噛みタバコのような嗜好品が広く好まれており、これで真っ赤になった痰をそこらじゅうに吐きまくっている。一説ではインドの車両が後方からクラックション鳴らしまくるのは「脇を通るから痰吐くなよ!」という意思表示なのだとか。
 まぁ全体的に「クソ運転する車両の数が多い」ということが最大の問題となってる感じで、つまり非常に小さな交通量の少ない道を選ぶか、若しくは完全主要道路で最低でも片側2車線に側道があり中央分離帯がしっかりしてて反対車線にはみ出して来れない道を走るか・・・という両極端で考えた方が正解だと思ってる。ただし後者は側道を逆走しながらクラックション鳴らしまくり突撃してくるバイクや車両がいるため一言で「安全な道」とは言えないが。ともあれ中途半端な大きさの道が最も危険。
 後ろを全く確認せずにバックを始めたりガードレールとの間に自転車がいるのに外へ寄ってくる車両に相対することも多く、褒められた行為では無いがこういう輩に対して遠慮してても怪我するのはコチラ側なのであり、そうした際には車体を蹴り飛ばして気づかせる・・・くらいの覚悟を持っておいた方が良い。大声上げたくらいじゃインド人は止まらないので。
 まぁ色々あるけど自転車乗り的にインド人のイメージが悪い理由の半分以上は交通マナーの悪さが起因している。むしろこの国の人は緩やかで親切な人が多かったイメージなのだが、それらを全て覆すくらいには酷い運転してるということだ。

◎特徴
 あんまり人に関することは国別まとめに記載しないようしてたのだが、この国ではインド人の独特な文化や考え方こそが他の何より重要で把握しておくべきことだと思うのでまとめておくことにする。
 私も色々体験したし、その手の文章読んだりして最も腑に落ちた説明が「インド社会には現代社会の規範である公平・平等という概念が尊重されていないこと」という説明であった。インドにはもちろん親切で気の良い人も多数いる反面、平気でゴミを捨てル・時間や約束を守らない・都合が悪くなると言い訳で逃げる・周囲の迷惑を顧みない行動等々、自分の権利を守るためには他者の権利を踏みにじっても構わないと思える行動を平気で取る。
 要するに相手にも自分と同じ権利があるという公平性や社会性が乏しい人間が多い。この考え方に極めて大きな影響を与えているというかインド人のアイデンティティーとして機能しているのがヒンドゥー教であり、この宗教で語られる生死感だとか悪名高いカースト制度が土台となっているのは当の(日本語話せる)インド人から色々話を聞いて強く感じた。
 要するにインド人と我々現代日本人(というか近代以降の西欧社会全般)が持っている価値観・倫理観は非常に大きく剥離しているということだ。海外旅行していると「異なる価値観に触れ合うことが魅力の1つ」というのはよく語られる言葉だが、それは「基本的人権を尊重した上で」という枕詞が隠れている。何が言いたいかというと、他人の権利を侵害して平等さに欠ける行動をして「これがインドの考え方なのだ」と好意的に解釈するのは難しいということだ。少なくとも私は列に横入りされれば腹が立つし、隣のインド人と同じ商品を購入して私だけぼったくられれば文句も出る。そんなのは途上国であれば何処でもあり得る話なのだけど、インドという国(特に北部)ではこれが余りにも頻繁に起こりすぎるのであり、ある臨界点を超えるとインドの全てが嫌になる。
 私もリシケシュを出発して少々経った頃、インド人のあらゆる点が嫌になり彼らが声をかけてきても無視して会話しないことでこれ以上ストレスが増えないようしていた時期がある。今思えば色々ギリギリの精神状態だったのかもしれない。
 悩ましいのは改めてこうした特徴を整理し把握したとしても、この価値観の違いによって生じるストレスを軽減する具体的な術がないということだ。ただ私は物事の要因がなるべく言語化できている方が良しと考えるし、相手の行動原理が一部でも知れれば共感は出来ずとも理解に繋がるかもしれない。
 あと1つ断っておきたいのが、こうした特徴を強く持つ人が多い一方で、そうでない人もまた沢山いるという当たり前の事実があること。特にインドは地域によって人の特徴が大きく変わる国とされており、個人の性質をこうだと当て嵌めることなど出来ないのだ。あくまでも全体的な傾向くらいに思って頂きたい。

◎気候
 山に向かわない限りは基本的に何処でも暑い。しかも湿度が高くてベタつく日本的な不快指数の高い暑さであるのが厄介な点。インドという国はちょっと変わっていて北半球の一般的な国と比べて暑さのピークが1〜2ヶ月早い時期に訪れる気候であり、つまり4月後半から5月にかけてが最も暑い。恐ろしいことにその気温は50度近くまで上昇する場所もあり、このレベルだともはや自転車旅行とかそんなこと言ってられるレベルじゃない。そんな環境でもインド人は結構な人が日中でも外で活動しており驚いたものだが。
 6月くらいから徐々に雨が降るようになり雨季となるのだが、これで多少は気温が抑えられたとはいえ猛烈な湿度との兼ね合いで旅行するにはまだまだしんどいレベル。要するにインドの平地を快適な環境で旅行できるのはウキが終わってから始まる乾季こと冬の期間のみである。この時期ですら南インドへ行くと気温が30度超えてくるのが恐ろしいところ。
 夏の時期は南西から、冬になるとヒマラヤから吹き下ろした北からの風が吹く。国土の多くが平野というか農地なので風向き悪いと1日中向かい風を受け続けることになるのだが、あまりこの国では風でしんどい思いをした記憶がない。そもそも風の影響が低いのか、他にもっとストレスとなる要素が大きすぎて風なんぞにどうこういうほど気を回してられなかったのか不明。
 何にしても夏のインドは耐えがたいほどの厳しい環境なのでこの季節は避ける方が賢明・・・なのだけど、ラダックのベストシーズンが6月から始まる関係でバスや飛行機ワープをしない限りは嫌でも地獄のような気温のインドを走らなくてはならない。デリーからだと気候が落ち着くシムラーの町まで約350kmほどの距離があり、この間をいかに凌ぐかで苦労する自転車旅行者はかなり多い気がする。

◎言語
 多種多様な民族がおりそうした人たちが独自の言語を使っている。よく言われたのは「1つ地域を超えると全然別の言葉に変わるのがインドだよ」とのこと。
 こうした中でインド人全体の共通語という認識としてヒンドゥー語が使われているらしく、更に国際的な仕事や外国人との会話に用いる場合は英語が使われるというのが言語的な序列とのこと。他に主要で使われる言語にベンガル語というのもあるそうだが、私にはこの辺の区別がついていない。ともあれ旅行者も多く利用する交通機関関係だとかは英語の通用率は高い。
 なおほぼ全てのインド人が第2言語であるヒンドゥー語までは話せるが、英語に関しては地方部ほど使用率が下がる傾向にあり体感で3割くらいのイメージかな。イギリスの植民地時代が長かった印象強いだけにやや意外。というか正しくは英語話者自体はもっと多い気がするのだけど、ことコミュニケーションという意味でインドは「英語が通じてる筈なのに会話が通じない」という状況に遭遇することが多く、そっちの方が問題。
 これは独特なイントネーションやインド英語で使われる単語が独特なものが多いとか色々原因あると思うのだが、私が思うにインド人は「自分が話したいことしか話さないし興味ないことは聞く耳を持たない」という点が大きいのではないかと感じている。
 要するに相手のことを鑑みて会話するということを出来ない人が多く、一方的にヒンディー語混じりの英語で捲し立ててくるし、こちらが理解できなくても表現や言い方を変えて伝わりやすいよう工夫するといった配慮は一切してくれない。だからインド人と会話してると基本的な点でつまづいたりすることが多く、どんどんストレスばかり溜まっていく罠。
 ちなみに地方に行くと平気で英語が併記されてない看板とかも出てくるため割と難易度が高い。まぁこの国で苦労するのはそういう点じゃないと思うので小事ではある。

◎宿(野宿)・Wi-Fi
 インドの物価に照らし合わせると安宿はやたら値段が高いというのが本音。コロナ以後の世界的なインフレ傾向がある中で、インドにおいては宿泊施設の料金がその影響を強く受けたのだろうと感じさせる。
 デリーやチェンナイといった特に大きな主要都市だとドミトリー形式の安宿でも1500円近い料金となる一方で、観光客が盛んな地方都市だと1泊500円そこそこで宿泊できる施設もあったりする。それ以外の地方や田舎に関しては500〜1000ルピー(約900〜1800円)位が相場かな。値段が上がったとはいえ、それでも一般的な国の相場よりは安いレベルではあると思う。
 ただ都市部や観光地を除いたインドの宿泊施設は問題となる点が複数あり、まず「ネットの予約が信用できない」ことが挙げられる。今の時代で予約サイトを利用するのはむしろ主流の方法だと思うのだが、インドの場合はこうしたサイトを通じて予約をしても実際に訪問すると「満室だから泊まれない」だとか理由は後述するが「外国人は無理」と言われて宿泊できないパターンがある。特にインド発祥の「OYO」グループとか「Fab」「Spot On」といったチェーン展開している宿はこうした傾向が強い。
 これはネットからの予約金額を安く設定している関係だそうで、宿側からすれば直接訪問する宿泊者を泊める方が利益に繋がることから「とりあえずネットで予約を受付する一方で、予約してない訪問客が来たらオーバーブッキングでも利益に繋がるそちらを優先して泊めさせる。結果として満室になるためネットの予約客が弾かれる。」というパターンが多いそう。私は序盤にこの罠を受けて以後、観光地等で外国人の口コミがあるホステル以外ではネットで予約をしないよう務めていた。性質の悪い宿だと事前にカード払いでお金を支払わせても泊めてくれない宿もあると聞いたし。
 んでこれとは別にインドには外国人が宿泊施設に泊まると「FormーC」と呼ばれる、外国人宿泊登録制度みたいなものを記入して宿側が警察に提出する義務があるとのこと。田舎の安い宿ほどこうした手続きを嫌がったりそもそも記入の仕方を知らなかったりする関係で、外国人である場合は問答無用で宿泊拒否対応をされることがある。これは州によって厳しさが異なる印象で、特に旅行人気の高いラダック地域などでは1度も拒否を受けなかった反面、ビハール州なんかは合計で50回近く宿泊拒否を受けたりして馬鹿らしくなるほどだ。基本的にある程度ランクが高い(料金も高い)宿ではこうした拒否事案が発生することはまず無いのだが、長期旅行&田舎を繋ぐ自転車旅行とは非常に相性が悪い。
 ということで施設内の設備だとかコスパというのは二の次で、自転車的にはまず宿が取れるか?という心配をしながら走っていたというのが本音。5〜600ルピーくらいの宿だとWi-Fiがないタイプもあったりするが、インドではSIMカードが安いので予めそちらの対策していればネット環境はそれほど問題にならないし。
 それよりもホステル系の宿でもキッチンが使用できるタイプがほとんど出てこないことの方が嫌で、ネットの情報でサービス内容に「キッチン有り」とか書かれていてもゲストが利用不可だったりすることが多く、インドの食事に疲れて自炊がしたくとも不可能だった・・・というパターンに陥ることがあるので要注意。
 他にやたら「Hostel」と書かれた建物が多い国だが、これは出稼ぎとか学生が長期的に滞在する人を対象とした施設のようで基本宿泊は断られると思った方が良い。地図で検索するとこうしたノイズがたくさん出てくるので益々宿選びが大変になるんだよまったく。

◎動物
 イメージ通りの牛天国。至る所を牛が闊歩しているのだが、酪農用に飼育された個体ばかりではないため痩せ細ったヤツとか病気なのでは?と疑いたくなるヤツも多々見かける。道路のど真ん中でも平気で歩き回っているということはそうした場所に糞が散乱してることを意味しており、地獄の交通状況に加えてウンコ爆弾まで設置されてるとか性質が悪い。ちなみに牛を食さないヒンドゥー教徒だが水牛は牛のカテゴリーから外れるらしく、そうした肉の用途なのか川の辺りに水牛がいることはままある。
 その他だと家畜としてヤギやロバを見かけることが多いが馬は少ない。ラダックだと野生馬を見る機会も多かったけど。ヒンドゥー教の国ではあるがムスリム人口も多い関係で豚を見かけることもほぼなく食せる機会もまずないと考えて良い。その代わり羊肉が割と流通しており、羊の姿はちょいちょい見かけることがあったり。基本的に国内全体で出現するような危険な動物というのを心配する必要はない。
 なお私もビックリしたがインドでは犬が大人しく自転車を見てもほとんど反応しない。何なら暑さでへばっているのかそもそもジッとして動かない。狂犬病で死亡する人の数が多い国の1つなのだが、少なくとも自転車走行中に犬を気にすることは最後までなかった。
 それと冬の時期だと蚊の量が凄まじく、安宿の場合はどこに行っても室内に蚊がウヨウヨしてるのが常。暗くなってからそこらを歩き回ると肌の露出部分は刺されまくってボコボコにされるし、部屋内の蚊を全滅させたと思って横になると、どこから湧き出してきたのか耳元で嫌らしい羽音がして起こされるということが何度もあった。
 ちなみに野生のインド象とかベンガル虎とかが居るらしいし、そうした動物の注意看板も見かけたのだけど最後まで姿を見ることはなかったな。

◎自転車店
 インドは全体的な特徴として「スポーツが全く盛んじゃない」という点があり、クリケットを除いて一般人はほとんどスポーツという行為をしていない。自転車においても普及率は高いものの、その存在は完全に実用品として物を運ぶだとか移動手段として扱われており、要するにスポーツ用の自転車需要は極端に少ない。
 なので何処の町でも自転車ショップはある反面、スポーツバイクを販売・修理しているお店となるとその数は極端に少なくなる。ラダックへ向かう場合はマナリの町に1軒だけプロショップがあるのでとりあえず尋ねてみるのが良い。というかここを逃すと山岳地帯では専門的な部品の入手は非常に難しい。
 それ以外の平野部だと私が訪れた都市でデリーやチェンナイといったインドでも有数の大都市なら先進的なショップが存在する。それ以外だと人口100万都市のアムリトサルですらしっかりしたショップを見つけることは難しい感じで、むしろ隣国パキスタンやネパールに入る方がよっぽど対処出来たりするイメージだ。
 一応ディスクブレーキを擁したスポーツバイクが走っていたり販売されてるのを見たりもしたのだが、そういった自転車もほとんど完成品として販売されてるケースでお店にメカニックがいるのかも怪しい。若しくは修理専門店みたいなお店で(恐らくインド製の)謎メーカーの部品を組んでる職人みたいなオッちゃんがおり、そういう店なら案外トラブル対処はしてくれるのかもしれない。ただしスポーツバイクの部品を取り扱ってはいないので、やはり消耗品に関しては極力自分で持ち運んでおくべきだと思ったな。

◎物価・食事
 イメージの通りカレーが幅を効かせている国なのだが、インドのカレーというのは日本人が一般的にイメージするそれとは異なり、方向性としてはスパイスカレーのが近いかと思う。基本的に味付けをマサラを始めとした香辛料を何種類も混ぜ合わせて油と共に煮込むスタイルで、実はインド料理は油が非常に多く使われておりこれが合わずにお腹を壊す人も多い。
 暑い国らしく唐辛子をバンバンに投入して凄まじい辛さとなってる料理が多く難儀する。食事の際に「ノンスパイシーでお願い!」と注文しても無視してるのか忘れたのか、そもそもからさの変更が出来ないのか知らないが普通に激辛をお出しされたことが何度もあるので要注意。
 ヒンドゥー教の国なので神聖な動物である牛の肉を食べることはご法度だし、イスラム教徒も2割ほどいる関係でか豚肉もほとんど流通していない。要するにインドで食べられる肉というのは鶏肉と羊肉の2種類くらいと思っておいた方が良い。どちらも全く食べれないという訳ではないけれど、一般的でないため旅行者が食するのは相当難易度が高い・・・くらいに思っておけば良いと思う。
 そもそもベジタリアンが非常に多い国であり、インドのベジタリアン人口は全世界のベジタリアン人口過半数を超えている程。このためどんなお店に行っても必ずベジ用メニューとノンベジ用メニューが分かれて表記されている。そうでない場合は大体ベジメニューしか存在しないという徹底ぶり。
 これに加えて飲酒に対してもかなり厳しい制限が課せられており、アルコール類を販売できるのは許可を得たリカーショップのみであるし、奏したお店の多くは鉄格子で囲われたカウンター越しに注文を口頭で頼むシステムを採用している。オマケに値段も非常に高く、州によって税率が異なるもののビールロング缶で大体300円以上することが多い。あと何故かインド産のビールはアルコール度数が7〜8%と強い品名が多い。更に州によってはアルコールの販売や持ち込み自体を禁止していたりもあり、私の走った所ではビハール州が該当していた。
 以上の点から自転車で田舎を走行していると、辛くて野菜しか選べないカレーばかり食べ続ける上にロクにビールも飲めないという相当キツい食事情が展開される恐れがある。
 インドの食事は都会でないとレパートリーが少ないのが難点で、カレーを避けた食事をするとなると選択肢が屋台の揚げ物かスイーツ店、ファストフード店及びピザくらいしか選べない。ビリヤニというインド風炊き込みご飯もあるのだけど、これもスパイシーな味付けでカレーの風味を効かせているため個人的にはカレーの亜種くらいに思っていたかな。
 ちなみに北部は小麦文化で南部は米が主流。このため北部地域ではチャパティを主食とする人が増えると聞いたが、その辺は割と自由に選択できる感じで気にしなくても平気だった。ちなみにインドカレーでイメージする「ナン」はそれほど一般的な食材ではなく高級レストランとか行かないと出てこない。基本的に庶民が食べるパン系のものはほぼチャパティ。
 かなり食に対してキツかった国だけど、その値段に関しては非常に安価でターリーと呼ばれるセットメニューが田舎なら100円切る程度、高い場所でも300円しないで食べられることが多く経済的には優しい。でもカレー以外を頼もうとすると高く付くのであり、如何に舌を「インド化」するかがこの国で食事を楽しめるかの肝であると考える。ちなみに私は4ヶ月超滞在して水を購入した記憶はほぼない。現地人が飲んでる水を飲む気概があれば食堂でもガソスタでも飲める水を補給すること自体は問題なくできる国である。それでお腹壊すかは人次第だと思うけど。

◎総括
 いや〜ストレス溜まるし色々大変な国だった。1つ1つの出来事を個別に挙げていくと結構面白かったり興味深くあったりするし親切な人も多く悪くない国なんだけど、こうして全体的な感想を述べるとなると「自転車で走るには向かない国である」と言わざるを得ない評価になるというのはある。
 少なくとも人口の集中しているアムリトサルからコルカタの「インド北部ライン」は走ってて楽しい土地ではないので私はオススメしない。というか正直インドはラダック地方を主眼にして、他の土地は極力走らないよう努めたほうが楽しめると言ってしまって差し支えない。それでも尚インド(平野部)を走りたいという人は南部の田舎をオススメする。自転車的にアクセスし辛いのが難点だが、私はインド南部を走れたことでこの国における印象が大分良くなったと思っている。
 自転車でその土地を走るという意味ではもっと大変な土地が多々あったけど、自転車で楽しく走るという意味ではエチオピアと並んで最高レベルに難しいというか、道路状況だけに留まらず様々な点で問題がある国なため、ラダック以外の地域を走りたいという自転車旅行者は心して臨んで欲しい。
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