自転車ときどき世界1周

カテゴリ: 日本1周

第1部 日本1周は砕けない



 砕けるとしたら私の足かもしれない。

 そんなワケで日本1周に出発である。出発点多摩センター駅から第1の標的こと東京都庁を落とす。私はハイソな都民なのであり、育った東京都の中心へ向かうことはごく当然の行為といえる。

 距離にして30km強。私にとっては短い距離であっても、始めての完全フルパッキング自転車にとっては侮れない距離だともいえる。

  緊張しているため写真を撮ることも忘れてた。といえば可愛らしい気がしないことも無いが、実際は出発の集合写真の際にカメラを落としたため、撮影可能となったのは新宿からだったりする。

 天気が安定せず、出発時には晴天だったのが気がつくと厚い雲となって襲いかかってくるのであり、微妙に雨も降ったりしてくるので、雨宿りをするのだがすると雨がやんでしまう。ええい、はっきりせんかい。

 仕方ないので雨宿りをしようとするフリをして、実は走行するのでしたーというフェイントを織り交ぜながら東京都庁へ到着。 これが有名な「じらし戦法」である。R0044694 
 都庁前

 初日からそれ以上走るなどと無茶をしてはいけない。初日に走った距離がこれからの1日の走行の目安となるのであり、始めは抑え気味の走行を心掛けなくては後で無理がくるのである。

 賢い私はまだまだ走る元気があるからといって、勢いでどんどん進んでいったりしないのであり、今日の所はこれで勘弁してやろうという、大らかな心と鉄の精神を併せ持っているから可能な戦略的休息である。

 今後もあふれるやる気を必死に制御してダラダラ走ったり、5kmでその日の走行を終えたりして「アイツは本当にやる気が感じられない」と評されるようでありたい。能ある鷹は爪を隠すのである。

 そんな私の初日の走行記録 65km 東京都庁到達 1/47

 どう考えても頑張り過ぎであり、反省している。 
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 本八幡からの出発である。私がよく使っていた京王線の最終駅が本八幡なのであり、自転車でここまで来たことに感無量であると同時に地元ネタ過ぎて何言ってんのかサッパリなのが素晴らしい。

 フォローせずに自転車は進んでいく。国道14号、16号と下ってゆき、千葉県庁へと私は行くのである。行く予定だったのだが大型車が多くて怖いではないか。
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 チェックポイント2番 千葉県庁前

 方針を変更して微妙な脇道をずんずん進む。私のリサーチではこういった非幹線道路ほど楽しげな景色が望めるという結果が出ており、果たしてその通りなのである。

 唐突ではあるがショッカーの基地は何所にあるかご存じだろうか?答えは千葉県であり、市原市の近辺だと思われる。
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 こうして仮面ライダーが物置の上から探索をしており、右足には深い傷跡も見られる。これはショッカーの基地近くで激しい戦闘が行われた動かぬ証拠をとらえた一瞬というわけだ。

 千葉県とか関東圏の都会と思っていた私であるが、考えを改めなければならない。
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 このいい味出している劇画調ポスター
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 元気が出るスーパー「ガッツ」

 このように私の心の琴線に触れるオブジェが到る所に配置されており、私が先へ進むことを妨害させるのである。

 極めつけは本日終点となる富津岬だ。私は房総半島をくり抜いて形にしたとき、富津岬の尖がり具合がいい感じにやりすぎだと思っていた。試しに今すぐ地図を開いて見てほしい。

 明らかに富津岬だけが無理して飛び出ているのであり、勢い余って何か飛び出しちゃいました的な小島が2つもある。これは確認せねばなるまい。

 という経緯で最先端に到着してみたところ、素晴らしい展望台があるのであった。
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 何という無駄な造形であろう。半端に迷路状になっているようでそうでもない。海岸側の階段とか誰が使うんだろうなどと考えてしまう。

 作ったのが宝くじ協会であり、みんなの夢と希望を砕いた収益がこのような形で造成されていると思うと何ともいえない気持で顔がニヤニヤしてしまうじゃないか。
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 富津岬の先端はいい尖り具合でした。

 同岬の公園でテント泊。

 4月7日 走行距離95km 千葉県庁到達 2/47

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 テント泊の方がよく眠れるのは、パソコンを使わないからです。

 そう考えると楽だし安いしネットカフェに宿泊する必要ないんじゃね?とか思うのだが、通信機器の契約を結んでいない私がインターネットという文明の利器を扱えるのはここだけなのである。あとコンビニのWifi。

 テントをたたんで7時前に出発。プラプラと内房を南下していたところ、山の向こうに何か見えるのである。

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 微かに覗く怪しい影

 周囲の風景と全くマッチしていない青空に映える図体。私のダメな物に反応するセンサーが最大指針を振り切りそうな勢いである。というわけで行ってきた。

 激しい上り坂もなんのその。その観音様は全長56mとのことで、大仏なんぞひとひねりの実力を持つ。それではそのお姿をお目に掛けよう。
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 念能力「東京湾大観音」


 素晴らしい。青空に映える大仏の「コレじゃない感」を丸っと濃縮して3倍に薄めた出来栄えに私も大層満足である。

 あんまり大仏が面白すぎたので今日はもう走行しなくてもいい気分なのだが、そうはいっても金谷港へ。ここから久里浜港にフェリーを使ってワープするのであり、これは昔私がやっていた「東京湾1周サイクリング」の正式ルートである。本当だってば

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 船ではドラマの撮影やってて船内探検の邪魔である

 久里浜から横須賀を抜けて北上し、神奈川県庁へ。前職の同僚が私を奇跡の発見をしたらしいのだが、私は全く気付かないというニアミスをしつつも無事にチェックポイントを通過する。
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 なんか調子が出てきたので一気に国道1号線で箱根ランナーたちをごぼう抜きしてやるわ!とか思って走るも一人で余りにも空しく死にたい気分になったので、進路変更で鎌倉でも行こうと南下する。

 そんなわけで鎌倉である。女子は、女子自転車部は!



 信心深い私としては、鶴岡八幡宮でお参りするより彼らの形相を眺めていたいのだが。
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 彼等

 子供に応援されるに留まらずか握手を求められる始末。私に憧れるのは分かるが、その道は無職へと到る道だぞ。

 藤沢まで走ってネットカフェ泊。値段が多少高くてもシャワーですよ、大事なのは。

 明日は箱根の山越えになりそうであり、あふれるやる気が微塵も姿を見せない。

 4月8日 走行距離 107km 神奈川県庁到達 3/47
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 朝5時には起床し行動を開始する。私は何事においても素早くサッサと物事を片付けるタイプであり、ネットカフェの退出時間が6時前だったことは瑣末な問題に過ぎない。

 せっかく藤沢にいるので早朝の江ノ島を爆走するも、歩いているのは私と猫だけであった。
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しらす丼はまたの機会として134号線を西へ西へと進むのである。

 このまま天竺にだって辿り着けるかと思い始めたころに見えてきたのが箱根の山々である。山神を!東堂先輩を呼んでください。


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 私も自転車でフラフラと旅する身。坂とトンネルを避けれるものなら避けたいが、このまま引き下がっては男が廃る。やってやろうじゃないかと気合を入れるのである。

 箱根駅伝では5区のトップクラスが1時間20分くらいだったはず。つまり1時間ちょっと上り坂を我慢すれば全ては終了するのであり、なぁに軽い軽い。嫌な予感しかしないのだが、いくぜロシナンテ号。

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 到着っ。私が本気を出せばこんなもんなのであり、たったの2時間で箱根の山は我が手中に落ちたといえる。ちょっと両足が痙攣してハンガーノック気味で頭がボーっとしたりするのだが、この後の芦ノ湖からさらに登るとかホント勘弁して下さい。

 最初こそ登っている最中に「車で引っ張ってほしいなぁ」とか「残りの距離は何kmくらいか」みたいなことを考えているのだが、途中からは脳が思考することを拒否し始め、ひたすら機械的に足を回転させるロボットになったかの如く。

 そのうち辛いのは自分なのか、むしろ私は何をしているのか、これが乳酸の向こう側・・・・・エクスタシーを感じる
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 下りは30分の高速ツーリング

 そんなこんなで静岡県に突入し、沼津まで足を伸ばしてネットカフェに宿泊。早く都会から脱出したい今日この頃。

 次回予告:舞台は静岡県へと移り変わり、新たなる敵が襲い掛かる。走れ、ロシナンテ号!負けるな、ロシナンテ号!静岡県庁を攻め落とすための秘策とは。

 次回「丸天で掻き揚げタワー」お楽しみに
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沼津の食堂で店長と。お世話になりました。

 4月9日 走行距離95km

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 沼津といえば漁港にある食堂「魚河岸丸店」であり、私はここへ来る度に何かにつけてはこの店に足を運んで山盛りの掻き揚げ丼を頼んで後悔するのである。

 昨日の夜に入った食堂も素晴らしかったが、こちらも負けてはいない。何がって?その量がである。
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 毎回このインパクトだけを求めて足を運ぶ私であり、大概の場合は後半には持て余して食欲が失せる。

 なにしろ揚げ物である。時間をかければかけるほど腹の中のかき揚げが膨れてしまい、何だかもうどうでも良くなる心地よさを味わえる絶品だ。
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 どっこい完食。ちなみに朝起きてから30分以内の朝食である。


 余談だが北海道をツーリング中に出会ったサイクリストで忘れられない台詞がある。

 曰く「食べ物は味とかより先ずカロリーで決める。もちろん高い方で。」確かに自転車は体に負担が少ないのにエネルギー消費が激しい乗り物ではあるけれどー

 今ではその気持ちが良くわかります。どれだけ食べても2時間後には食べ物のこと考えてるよ私は。


 国道1号線は大型車両が多いので、旧1号線を走行。いわゆる東海道線というやつであり、昔からの利用があったとされる歴史ある道だ。

 そういう道には何故立っているのか意味不明なものがあっても不思議ではないワケで、私がそういった場所に吸い寄せられてしまうのも不思議でも何でもない。磁力で鉄が引っ付くようなものだ。
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 制作者も納得の表情でしょう
 
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 庭先にぶら下げているカラフルな瓢箪
 
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 方向を間違えている静岡県の販売戦略
 
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 いつの間にか到着してた静岡県庁

 イカンイカン。寄り道し過ぎで目標である御前崎まで辿り着けんぞ、急がねば!と力強くペダルを踏み出した所でトラックの運ちゃんが横から一言「この道、先で崖崩れして通れないよ」

 本当にありがとうございます。気合いのやる気が空回り、人生ってえげつねぇ。

 この後もトンネルが自転車通行禁止だったりして更に回り道を繰り返した挙げ句、やる気を失って公園で野宿する図。
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 4月10日 走行距離105km 静岡県庁到着 4/47
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 爽やかな朝の目覚め、美しい音楽。まさか隣でラジオ体操やっているとは思いもよらなんだ。

 じいちゃんばあちゃんに質問攻めにされつつ、どうにか出発。昨日行けなかった御前崎については、行く必要性は全く感じないのだが「行きたいと思った所に行けなかった」事実を残すと後でジワジワ来そうなので、私のスッキリ感のために寄ることにする。大抵の目的地はこんな感じで決められるのであしからず。
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 隣の階段は津波の時に登る避難所(風がなければ頂上でテント泊したかった私)

 果たしてそんな動機で訪れた御前崎は風光明媚でなかなかに侮れない場所だったりして、いやいやこういった場所を選ぶあたり、私の眼力に狂いはなかったのである。
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 特にこの静岡最南端の碑とか、絶妙に微妙な立ち位置であり「それ、必要あるの?」的ツッコミを待ち構えるナイスな建築物だといえる。こういう何かが足りないと感じさせるオブジェの数々は、個人的には好きになれそうな気がする。

 そういえば静岡県に入ってから明らかにサークルKのコンビニが増えてきているのであり、東京ではサークルKといったら見かけようものなら即刻で絶滅危惧種認定を受け、すぐに国の保護員が飛んでくるレベルであるのだが、静岡県ではサークルK祭りである。いつか乱獲されないことを祈るばかりだ。

 海岸線をひたすら西へと進む。見えるのは風車じゃないですか。これが回って電気を発生させるんでしょ?私知ってる。とか思ってたら数ある風車はどれも停止している始末。え、なに、今日は休業日だったのか。
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 この10mの砂地を抜けるのにたっぷり5分はかかった

 浜名湖のキャンプ場に宿泊。私を含めてテントは3張のみ。つまりこのキャンプ場は実質私の独占みたいなものであり、大変気分がいい。ただしこのキャンプ場にはアルコールが売っておらず、私は今日を何のために走り続けたのか疑問を呈している。
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 いやっほ〜ぅ 最高だぜぇー(CV 秋山優花里)


 ゴール間際でドイツ人(と思われる)に呼び止められ頻りに自転車旅について絶賛される。オルトリーブバッグ、グレイト!シュワルベタイヤ、ベリーグッド!(どちらもドイツ製)なのだそうだ。

「いやいや、ドイツ製品ベリーグッド。ジャーマニー良く分かってる」
「HAHAHAソウダロウ。Oh、カメラはRICOHデスね。アナタオタクデスね。」
 アレ?何で分かるんだろ。

 固い握手をして別れた浜松の夜なのであった。

 4月11日 走行距離105km
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 朝食を作りつつの出発準備は時間がかかる。テントを畳みながらバーナーでお湯を沸かしている姿は端から見たら非常に滑稽なモノだよなぁとか考えつつも7時20分に出発。

 浜名湖の東側を湖に沿って回るのである。土曜日だけあってサイクリストの多いこと多いこと。その全ての人にアッサリと抜かれてしまう体たらくである。可能なら彼らに60kgの重石を載せて再勝負申し込んでやりたい。
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 浜名湖のヌシ

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 退屈な景色に刺激を与える静岡ピラミッド

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 サンタクロス号も捨てがたいが個人的にはエアロスパイダーがいい味してると思います

 長かった静岡県も最後の峠を越えて愛知県に突入である。
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 この県境が結構な上り坂だったりしたのだが、箱根を経験して体が慣れてきたのか左程苦労せずに登頂。流石私である。一般社会人としてのレベルを下げ続ける一方で自転車乗りとしてどんどん研ぎすまされているようで、引き返すつもりは毛頭ない。

 そんな前向きな気持ちで後ろ向きな現実から目をそらしつつ、宿泊をお願いしている親戚に電話。

「もうすぐ最寄り駅に着きますよ〜」
「違う、最寄り駅は10kmほど手前の駅よ。」
「ふぁっ!?」

 ということで今日もキッチリ100km超を走ってしまう私ってマジ几帳面。

 さて、どうにか駅に到着して待ち合わせの最中である。駅前の公園でバカでかい荷物背負った自転車なうえに「日本1周中」と看板背負ってるだけあって注目の的となったりする私であり、大変気持ちいいぞ。

 これまでも多くの人達から話しかけてもらったり激励として物を頂いたりしており、一重に私の人徳と人当たりの良さが関係していると思う。いやいや皆様、私なんぞに本当にありがとうございます。

 ところが今しがた声をかけてきた女性は制服を着ているのである。Yes、女子高生が無職の遊び人に声をかけている事実。

 「頑張って下さい。あの、コレどうぞ。」激励品渡されてしまいましたよ。

 『一回りも下の女子高生から食べ物を貰った私』この事実だけで、あと10年は戦っていけると確信した1日である。

 4月12日 走行距離105km
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 1日の休養日を挟んで体の痛みも収まった模様である。なお、私の場合は自転車における痛みは肩と尻に集約される傾向があり、次いで腰や首、最後に足にくる。これは一説によると男が女性を見た時に注目する体の部位と重なるといわれており、これによると私の視線は上下にせわしなく活動していることになる。

 そんなワケで100万都市の名古屋中心部へと自転車を走らせる。走らせるのだが、道路が複雑すぎてさっぱり進んでいる気がしない。

 私はフロントバッグにコンパスを収納しているのだが、北に向かいたいハズなのに、気付くと東へ進んでいるどころかだんだん南に向かい始める始末である。これはイカんと慌てて方向転換しようものなら、その道路はバイパス道路だったりしてトラックやらバスやらが猛烈な速度で脇を抜けていって心臓に悪い。

 知らない都会の道ほど恐ろしい物はないとつくづく実感する私であり、こんなに無駄で分かりにくい道路を作った責任者に対しては背中から氷を入れて驚かせる罰を所望するぞ。
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 どうにか愛知県庁に到着。

 すぐそばに名古屋城があるので見学してみるも、城の中はちっとも面白くないぞ。私はもっとマヌケな展示物や作った人の姿を想像してゲラゲラ笑ってしまうものが見たいのだ。今回良い味を出していたのは
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 この目つきが素敵な猫とか
 
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 シャチホコに取り込まれてると勘違いしそうになるオッサンや

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 名古屋城と何にも関係のない萌えポスターあたりだろうか

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 個人的には走行途中で見かけたこのトーテムポールのように、街中の雰囲気や調和を一瞬にしてぶち壊すような違和感しか存在しないオブジェを希望したいのだが。

 そんなことをしている場合ではなかった。今日は一気に2つの県庁を落としてやるぜと意気込んでいる私なのであり、間抜けな物発見して喜んでいる場合ではないのである。
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 とか思っているとこんな昭和の時代に滅んだような映画館が

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 ラインナップが香ばしすぎて、内容には全く興味ないが文化的知見から是非見ておきたいと思う学者肌の私なのだが、時間が合わないので泣く泣く諦めた。あくまで学問的な興味である。

 いかん、そんなことしてたら日が暮れる。岐阜県町までラストスパートである。私の本気、見せてやるぜ。

 そう思ってペダルを踏み込んだ瞬間、「パン!プシュー」と小気味のいい音と共に後輪がベコベコに変貌していくではないですか。これが世に言うパンクというヤツであり、大抵の場合は急いだり時間がない時に限って現れる疫病神みたいな存在である。

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 県庁残り1km手前でパンク修理をする図 20分ほどのタイムロスでした

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 心無しかロシナンテ号もガックリしている様子の岐阜県庁前

 このタイムロスが響いたことが原因なのか、橋の下で野宿しての就寝。

 4月14日  走行距離103km  愛知県庁・岐阜県町到達 6/47
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 数日前から喉の調子が悪い私である。おそらく扁桃腺が腫れているのであり、風邪の初期症状かもしれないと思うと体の弱い私としては畏れおののく毎日である。

 そんなことを気にしつつも出発をしようとした折、後輪の空気が抜けているのである。どうやら、これは昨日のパンク修理が完璧ではなく他の部分にまで影響を及ぼしている可能性が高い。

 即刻修理するべきなのだが、目に見える穴は全て塞いでいるのでチューブに空いてる穴は視覚で確認できないようなミクロのモノであり、自転車屋よろしく水を張ったバケツか洗面器が必要になるのである。

 こうした不安を抱えながら走行するときどうするべきであるか。答えは「見なかったことにする」ことである。事実を隠蔽することで沸き上がる不安を消失させる、という熟練の技を持って1つの到達点とす。これこそが太古から伝承される〜以下略

 するとどうだろう!出発して10分でまたもパンク修理をするという素敵な結果となって神様なんかいねぇ。

 そんな1人コントをしつつ関ヶ原へ。男たるもの1度くらいは天下分け目の合戦の地を眼に焼き付け、熱い思いを刻んでおきたいと赴いた関ヶ原。
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 うん、普通の田舎町でした。
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 あるのは合戦陣地跡だけ 興味ある人だけ行ってみて下さい

 さっさと365号線を南下して三重県に突入である。
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 ところでこの写真を撮っている時に「歩いて日本1周達成者」に声をかけられる偶然。おいおい歩いて1周って、想像を絶する暇人だなぁとH氏が申しておりましたよ。

 これだけ大きな日本で同じようなことをやっている者同士が偶然出会う確率なんてとんでもなく低いはずなのに。アレか、スタンド使い同士は引かれ合う的な何かか?
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 一面の茶畑 今日一番の景色

 鈴鹿のサーキット場をぶらりと見学して近くのスポーツセンターの敷地内で野宿。野宿が増えてきたのは単純にネットカフェより住み心地が良いためである。ビバ!ホテル・ドマドーム。

 4月15日 走行距離103km
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 私は朝起きることが苦にならないタイプである。というかテントで眠っていると強制的に朝日が眩しくて起こされてしまうので、強制早起きを強いられていると言っても良い。今の次期なんぞ5時には清々しい太陽によって嫌でも起こされてしまうのである。

 そんな私であるが、この日の出発は7時20分。サイクルグローブが見つからずに荷物を全て確認し直すとかなんなのん。結局、キャンプ用品の奥底から出てくる始末であり、これには機関による深い陰謀説が囁かれている。
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 走り始めればすぐに三重県庁に到着。

 ちなみに三重の県庁所在地は「津」という地名であり、あんまり聞いたことのない1文字の都市として印象深かったりする。道を聞いた時に「真っすぐ行ったらつだからよー」と言われて「え、なに?」と聞き返したくなる一瞬である。

 26号線を南下して伊勢神宮へ。途中で寄った定食屋が素晴らしい雰囲気。話に花が咲いて伊勢神宮までのルートを丁寧に説明するどころか個人的お勧めルートを作り出す始末。

 むしろここは行った方が絶対良い個人的スポットを語り始めて行程表を渡されてしまった私である。そんなオマエらが私は大好きだ。
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 でもこの地図の解読にはかなりの難易度を要した

 肝心の伊勢神宮だが本殿はおろか、外周部分ですら撮影禁止が貫かれており、実際内部なんぞ全く見えやしない状態で全然面白くないぞ。

 思うにこれは、日本人の「隠したい意識」が強く出ている結果であり、見せないことによってむしろ人気が出てしまった不幸な結果なのではないだろうか。

 雑誌の袋とじと同じで、普通では見せないところに機微を感じてしまった猛者達が想像力をかき立て神格化してしまう最終形態が伊勢神宮なのだと思ったり思わなかったり。

 とりあえず平日にも関わらず凄まじい人出であり、やってらんないのである。
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 ちょうどケネディ氏の訪問と重なった模様

 この後、海岸線の地獄のアップダウンを永遠と繰り返した挙げ句、ようやく辿り着いたホテルの温泉が2630円とか言われて、「それは拙者の1日の予算の7割を占める」と丁重にお断り差し上げる。

 半分泣きそうになりながら15km以上走り続けて18時前、どうにか温泉に到着。海辺で野宿。

 4月16日 走行距離116km 三重県庁到着 7/47
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