自転車ときどき世界1周

カテゴリ:日本1周 > 東北地域

 予想通り朝起きたら雨である。このために昨日無理をして屋根があり、温泉が隣接しているというか温泉施設の軒下にテントを設営しているのであり、このまま1日休息日とするゴールデンコースである。

 つい先日に丸1日休んだばかりのような気もするが、私は自分の体が何より大切であり、労をねぎらい無理をさせず、大事にしてゆきたいと思っているので、こうした休むチャンスがある場合は積極的にダラダラゴロゴロしていくことを表明する。


 そんなわけで次の日。元気いっぱい朝5時に起床し、30分後には出発である。ここで1つハッキリさせておきたいのだが、私が朝食を作っている場合は起床から出発までの時間は1時間強を必要としているが、そうでない場合は30分程度で出発し、コンビニなり牛丼屋なりで朝食を取っている。

 何が言いたいかというと、朝起きてからの一連の活動はルーチンワークとしてこれ以上ないくらい流れるように作業を行っているのであり、毎回のように起床時間と出発時間を書いてる意味がないのではないかと思い始めてきた。うん、出発時間書くのやめよう。

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 と、あんまり意味のない決意と今日の野宿場所

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 走り出して間もなく秋田県入り

 ひたすら海岸沿いの国道7号線を北上する私であるが、東北地域に入って感じるのがコンビニを始めとする補給地点が極端に少ないということである。まさに自転車乗り殺しかと思いきや、どっこい道の駅である。20〜25kmの等距離に点在するようになった道の駅であるが、これが山形県辺りから豪華絢爛な施設で素晴らしい。

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 パッと見で商業施設かと思う

 本日も訪れた4カ所の道の駅が全て温泉を併設しているというだけでも驚きなのに、内3カ所には24時間開放されている休憩室まであったりして至れり尽くせりである。

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 キャンプ場がある場所も

 おかげで存外苦労することなく走行を続けることができるのであり、ちゃんとバランスが取れているもんだなぁと感心したりしなかったり、ああ忙しい。

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 ロケット発祥の碑

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 ・・・・は草で埋もれそうになっていた

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 秋田県庁は大通りに面していて写真が撮りにくい

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 休憩施設の度を超えている道の駅

 土地が余っているのか都市計画がよっぽど上手くいったのか、直線的な道が多い秋田県であるが、県庁を越えてから永遠と真っ直ぐに延びる道を走り続けてやっぱり温泉が併設している道の駅に到着。ホテルで表すなら今日の道の駅はどこも4つ星以上の豪華な施設であったぞよ。

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 近くにスーパーがあるのもポイント高い、なにしろ飯が安く作れる

 東北地域に入って温泉の安さに喜びつつ東屋で野宿。

 7月27日(日) 休息日
 7月28日(月) 走行距離112km 秋田県庁到着 37/47
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 大きい道の駅だけあって、夜間になると警察官が巡回しているのであり、腹の中で「面倒くさいことにならなければ良いなぁ」とか思っていた私であるが、結論から言うと世間話した挙げ句に「危ないことないよう注意して下さい」とな。

 これが東京とかだったら即座に職質に移行するのが通例であるのに対して、東北の旅人に対する適当優しさは素晴らしいと思わずにはいられない。

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 東屋も大きくて野宿しやすい

 実はこの道の駅に他にも日本1周チャリダーがいたことに夜遅くに気付いたのだが、まだ就寝中であったしどうせ行き先は同じなので、軽く挨拶だけして出発。行き先は同じであっても、基本的に旅自転車乗りは一緒に走ったりすることは少ない。

 さて、本日は男鹿半島へと足を伸ばそうと思う。大部分の方が「何処だよ?」と思われているかもだが、秋田県をよく見てみると日本海に飛び出たデベソのような突起が見て取れる。これこそが男鹿半島であり、なまはげで有名な地域として名高い。

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 この顔見て下さいよ

 私はこのなまはげという風習にはとても興味があって、何が楽しくてあんな子供のトラウマ必死の行為をするのであろうか。そもそも「なまはげ」という名前だけでも恐ろしい。片手に包丁を持っている日本風猟奇的スタイルといい、よくもまぁこれだけ愛着のないキャラクターを観光の前面に出してアピールするものだ。アホなのか?

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 道ですれ違ったら180度ターンして全力疾走である

 しかしこうした風習は端から見ている分には面白くって仕方がないのもまた嫌らしい事実である。なまはげにビビって泣き叫んでいる子供の映像が流れている間、観客から笑い声が絶えなかったあたり、ホラー映画を見るような楽しみ方をしている感覚に近いかもしれない。

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 地域ごとに微妙に異なるなまはげ達

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 子供の落書きみたいな顔のなまはげも多い

 非常に楽しんだ私ではあるが、なまはげが神様の使いであるという説には違を唱えたい。あいつ等どう見たって悪者の顔ですよ。私は絶対に騙されん。

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 男鹿半島の先端、入道崎の灯台

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 ついに北緯40度線を越えたぞー

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 何でも擬人化すれば良いってモンじゃない

 八郎潟はかつては琵琶湖と並んで日本有数の湖であったのだが、干拓した影響でその土地は完全区画された直線道路が走っている道へと変貌しており、要するに日本の道とはとても思えない光景が広がっている。こんな景色である

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 うお〜い

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 地平が、地平線がー

 もの凄い気持ちいいのであるが、この変わらない景色が30分間以上走行しても続くのである。つまり、飽きる。オマケに休みどころが無いまま走り続けてしまったので、平地なのにも関わらず何だか疲れて仕方がない。難しいもんである。

 疲れたので今日は温泉で夕食をとれば良いやと思っていた私であるが、目の前にはスーパーが。気付くとしっかり今日の夕食でカレーを作っているあたり、業の深さを感じたりしないこともない。

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 以前、友人が「カレー作ってないの?」と言われたので

 7月29日(火) 走行距離112km
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 朝起きて昨日のカレーを食べて出発するまでが早い早い。カレーは作る手間は他の料理と対して変わらないのだが、作り置きという点からすると大変優秀な素材であると改めて感じる私であり、今後も作る機会は多いのだろう。

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 雨が降らないとハッキリしてる時は屋根が無くてもフライシートは張らない派

 ここまで走ったり走らなかったりした国道7号線ではあるが、この直接青森市街地へと通じる道路を離れて私は海岸線を回るルートを選択するぞ。何故なら白神山地の裾野を通るし、アップダウンも(多分)少ない。というか津軽半島も走ってみたい私としては、半端に内陸部に入ってゆくわけにはいかないのである。

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 まぁ白神山地は「ひたすら山!」って感じでしたが

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 いよいよ本州の最北端である青森県へ

 しかし秋田も凄かったが、青森も過疎地域の寂れっぷりというのは半端ないのである。何しろコンビニが無い。どころか集落を抜けると民家が無い。挙げ句の果てには交差点に信号も無い。ないない尽くしであり、別にそれは構わないのだが、休憩したり補給するポイントまで見つからなくては私が枯渇してしまうぞ。

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 景色は素晴らしいのですよ

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 ラーメン屋の規模と駐車場の広さがアンバランスすぎる

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 今日は海と山と線路以外の景色を覚えていないレベル

 千畳畳が有名景勝地だからって、60kmも手前からそればっかり看板に表示されて、半日掛けてその数字を減らしてゆく他変化の無い道を走らされると、段々先に進んでいるのか同じ場所に停滞しているのか分からなくなってくるような気がするぞ。

 梅雨が明けたのは嬉しいことなのだが、こうした休憩できる場所もままならない道を走り続けていると、その日差しの強さに頭がクラクラしてくるのであり、いやいやいや、それ熱中症の前触れだから!休まないと危険だから!といっても日陰の無い国道101号線。なんとドSな道であろうか。

 それでも走り続けていればいつかは温泉へと辿り着くのであり、それこそが私の理想郷とも言える場所である。今日も1日の疲れをじっくりと癒して発泡酒を楽しむのであり、こうした出来事を最大限楽しめるのが自転車旅特有の「何を食べて(飲んで)も最高に美味しく堪能できる状態」というヤツであり、要するにすっごい幸せな夜だ。

 7月30日(水) 走行距離123km
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 昨日から何だか体調が良くないのであり、思うにお昼に食べたイカ刺し定食が原因ではないかと。イカは美味いのだが、とにかく消化が良くない食べ物であり、そんなイカの刺身を山盛り食べて1日自転車で走行し続けたのは、胃腸に相当なダメージを与えたことは想像に難くない。

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 海の家の販売所軒下で野宿

 そんな体調で朝から食べたのが中華丼とコロッケその他。重たいぞ。昨日の私は割引を良いことに何を考えていたのだ全く。とはいえ食べなくては体が動かなくなること必死なので無理して完食。今日は厳しい1日になりそうだ。

 体調が芳しくないのでノロノロと走っては、コンビニや休憩所のトイレに出たり入ったりを繰り返す走行が続く。完全にお腹を下しているのであり、デリケートな自分の体が恨めしい。

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 ひたすら湿原が続く道

 どうにか道の駅で昼食を取る私であるが、重たいものを食べれそうにないのでラーメンとする。ところがこのラーメン1杯ですら食べきるのに難儀する始末。私のことを知っている人なら分かって頂けると思う。私が、ラーメン1杯を、食べることに苦労している。ということが如何に危険な状態であるかを。

 どうしようもないので休憩用の椅子で横になる。・・・・40分後、起きてみると明らかに体調が回復しているのが分かる。たかだか1時間にも満たない休みではあったが、劇的な回復によっしゃよっしゃである。

 思うに旅する自転車乗りに最も必要な能力は、この「回復力」ではないか。日々を走り続ける中で、休めばとりあえず体力を回復できる図太さと適応力が無くては自転車に乗って旅をするのは大変である。私は繊細ではあるが、回復力があったようで心底良かったと思った一時である。

 この後に続く竜飛岬への道が、海抜0mからギャグかと思えるような上り坂を永遠と走らせるのであり、全くもって休憩はできる時にしておくものである。

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 山の合間を走る道路がお分かりいただけるだろうか

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 地獄の道を走り終えた頂上から もうね、アホかと

 さて、こんなにも苦しい道をわざわざ選んだのは、当然その先に期待しているものが存在しているからである。人はご褒美も無しにあんな坂道を登れませんよ。

 時に「酷道」という言葉をご存知だろうか。国道なのにも関わらず、酷かったり駄目駄目な道路のことを揶揄して呼ぶ単語なのだが、一部にこの酷道を好んで走るようなマニアが存在する。

 そうしたマニアに絶大な人気を誇っているのが、津軽半島の最先端、国道339号線の「階段国道」である。

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 本当に階段だった

 一体何があってこんな階段の国道が出来上がってしまったのかは定かではないが、担当者が国道へと申請する時にミスしたものの、「まぁいいか、面白いし直すの面倒くさいもんね」とスルーしてしまった。あたりが真相ではないかと思う。その担当者とは良い酒が飲めそうな気がしないでもない。

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 面白がって名物にしているあたりもグーである

 温泉まで走りたかったところではあるが、前半のスローペースが響いて久しぶりに公園の行水で急場を凌ぐ。蚊の多さに辟易しながらも、まあこういう日もあるさ。

 7月31日(木) 走行距離96km シークレットポイント3 階段国道到着
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 依然体調が悪い状態が続く。今の状態を例えると顔がふやけてしまったアンパンマンみたいな感じだ。力が出ないのである。

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 公園野宿は実に久しぶり

 夜中に大雨が降ったりするわ、私の胃腸も大荒れだわと、いつ気象庁が緊急警報を発令するか分かったものではないが、とりあえずテントを乾かしつつ8時に出発。

 自転車の良さの1つは走ることに対する体への負担が少ないということで、これがランニングであったら走れないなぁと思うような体調でも、自転車は走ってしまえば慣性で先へと進むのでどうにか行けてしまうのである。

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 幸いなことに今日の道は平坦路が続く

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 途中の道の駅に野宿するためのようなスペースが

 さて、自力(人力)で日本1周をするような人が、その手段で最も多く使われているのが自転車であることは間違いないところであるが、それに次いで多いのは実はリアカー引きなのではないかと私は思う。リアカー引いて世界1周した日本人もいるくらい、リアカーという移動方法は旅人の間では主要交通手段の1つとして認識されている感がある。

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 本日もリアカーで日本1周中の人と出会うくらいには需要があるのですよ

 竜飛岬から青森の県庁までは60km強の距離しかなく、私は本日から開放される青森のサマーキャンプ場にてねぶた祭のために1週間の滞在を決め込むのであり、本日の走行はここで終了である。

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 青森県庁前にもねぶたの観客席が並んでました

 県庁へ寄った後、旅自転車乗りが集結するというキャンプ場へ。・・・・おお〜っ!いるわいるわ、壁一面に荷物積載タイプの自転車がずらっと並んでいる光景は滅多に見られるものではなかろうて。

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 注:全体の一部です

 今までの旅の途中で出会った人、そうでない人、たくさんのチャリダーがいるわけだが皆がねぶたに集まるこうした光景は一種独特であり非常に面白い。多分、この旅チャリダーが集まっている区画は日本で最もアクティブな無職が集まっているエリアであろうと思われる。

 明日からのねぶたに向けて前夜祭とか色々あるのだが、とりあえず楽しいこと満載な8月となりそうだ。

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 皆で散歩に行った青森ベイブリッジ

 8月1日(金) 走行距離67km 青森県庁到着 38/47
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 お腹の痛みに続いて左腕まで痛くなってきた茶壺です。オマケに8月炎天下、暑いのと痛いののダブルパンチで嫌でも目が覚める午前5時。這々の体でフェリーターミナルへと逃げ込む私であり、Wi-Fiが使えるのを良いことに友人に永遠と愚痴をこぼした挙げ句、そのまま眠ってしまうとかそんなことがあったらしい。

 3時間後に起きてみれば、激悪だった体調は随分と持ち直した様子で、実はここ最近の体調の不調は夏バテだったんじゃないか疑惑が浮上している。夏バテって都市伝説だと思っていたから気付かなかった。

 夜から始まるねぶた祭りに参加するための衣装「はねと」を他のチャリダー達と買いに行き、3時頃から着付けを始める気の早いチャリダー軍団である。

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 当然のようにねぶたコーナーが作られているの図

 ここでねぶた祭に参加したことがないという方に説明しておこう。青森ねぶた祭は日本3大祭りとして由緒正しい云々なのだが、そういったことはグーグルで調べて頂きたい。重要な点として、一般の我々も「はねと」の衣装を付けることで、この祭りに参加することができるということがある。

 この衣装を付けた人達を「跳ね人」と呼び、ねぶたの山車の周囲で跳ね回りながら「ラッセラー」のかけ声と共に大通りを練り歩くのだ。

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 はねとに着替えるチャリダー達

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 ライダーを合わせると数百人もの大集団

 こうして正装に着替えた我々が各々の自転車にまたがり会場へと進んでゆく姿は一種独特な光景であり、有名になるのも頷けるというものではないか。

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 本日は57台の自転車が列をなしていたそうです

 いよいよねぶた祭の開始である。テンションうなぎ上りであり、体調の悪さとか美味しいのソレ?状態。人生で1度は使ってみたいカッコいい言葉ランキングの相当上位に位置する「精神が肉体を凌駕している」という状態がまさに今である。

 ラッセラッセラッセラー、の叫びが大通りに響き渡る。何というトリップ感。その名の通り、跳ね回りつつねぶたと共に移動する跳ね人は全身運動と叫び続ける行為を2時間に渡ってやり続けるのだ。

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 ねぶた 我々跳ね人はこの前方に位置する

 暑くてキツくて苦しいという三重苦の中、ついに汗が出なくなってくるのであり、つまり体に深刻な症状が見受けられる状態に近い中で私といえばラッセラーが止まらない。

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 凄まじいとしか

 辛くて苦しくて早く終われと思う一方で、体は限界を越えて飛び回り続け叫び声をあげる。もはや平衡感覚が無くなってしまい、あやうく倒れそうになるのだが人が多すぎてそれもままならないってどうなのよ!

 ラッセラッセラッセラー

 なんか色々なものを放出した2時間が終わり、三々五々散ってゆく跳ね人達。私もフラツキながらキャンプ場へと戻ってゆき、さぁ第2部の宴会だ。青森ねぶたの夜は長い。

 8月2日(土) 走行距離13km
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 テントで眠っていると、マットを敷いているとはいえ寝床が固いので、寝返りがしづらいためか夜中に1〜2度目が覚めてしまう。しかし今日は気付いたら朝となっていて、どんだけ疲れていたのだ。恐るべしねぶたのパワーである。

 幸いなことに、ねぶた祭りは夜までの間がフリーであるため、この間に体力回復に努める者や、観光をしたり遊びに行ったりする者など、様々なグループに分かれて散らばってゆく。こうした人達が午後5時のミーティングに合わせて再びキャンプ場へと集結するのである。

 私はといえば、島根県以降実施できなかった大物の洗濯と自転車の整備をひたすら実施である。新潟県辺りからペダルを踏み込む度に嫌な音がしていたロシナンテ号であるが、「青森まで行けば暇があるから!」と目をそらし続けていた私。ついに向き合わなければならない時が来てしまった。

 3時間かかって整備完了。周囲の人達もはねとの衣装を付けにぼつぼつ戻ってきており、よっしゃ私も!と着替えるどころか飯を作り始める茶壺さん。いいんよ、いいんよ。こういう着付けはゆっくり始めた方が無駄がないんですよ。

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 皆が着付け終えた後から動くマイペース男

 本日もライダー・チャリダーが大勢集まりグングン高まるワクワク感。跳人チャリダー部隊はライダー達より一足先に出発して、青森ベイブリッジという橋の上で一端待機をするのであるが、ここで後発のライダー軍団とお互いにエールを送り合うのが恒例らしい。

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 こんな感じで縦にズラッと

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 自転車の待機場所

 さて、いよいよねぶた2日目の開始である。私は戻ってきた!この狂乱の輪の中に!ラッセラッセラッセラー

 私のように跳人をやっていると、見ることが可能な「ねぶた」は一緒に練り歩く1台ないし2台だけなのだが、観客にしてみれば様々なねぶたが目の前を通り過ぎてゆく光景はさぞかし美しいのであると思われる。実際に跳ねている当人達はネジが外れてオカシクなっているだけだったりするが。

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 1度くらい観客の立場で見てみたくもあり

 昨日の反省から途中でコンビニに水分を補給しに行ったりと、余裕を感じさせるかと思いきや、コンビニの人口密度が高すぎてウンザリである。この手の祭りの恒例ではあるものの、特にトイレの行列は酷いものがあった。

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 とはいえキチンと並ぶ日本人は素晴らしい

 何やっても結局全快全力を出し切って抜け殻のようになってしまいつつ2日目終了の花火が。私はこの祭りが終わった後に、まともに自転車に乗れる足になっているのだろうか?

 8月3日(日) 走行距離12km
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 おはよう、筋肉痛だ!自転車で毎日走っていてもこれほど足に痛みが走ることは滅多にないのだが、たかだか2時間跳ね回っただけで尋常じゃない痛みなのであり、ねぶた恐るべし。

 今年のねぶた祭り開催期間の内、4日以降は天気が崩れると予報されていたのだが、とりあえず朝は眠っているのが苦しいほどの良い天気である。

 良い天気で休んでられないのであり、冷房が効いていてWi-Fiが飛んでいるフェリーターミナルへと避難するのは当然の行為だといえる。同様に考える自転車乗りは多いようで、ねぶた祭りの間のフェリーターミナル待合室には本来の目的とは異なったお客が大勢たむろしていて少々バツが悪い。

 さて、青森のねぶた祭りは、県内の様々な箇所で同じような催しが行われており、青森・弘前・五所川原の祭りが特に規模が大きく俗に「3大ねぶた」と呼ばれている。ねぶたに参加して跳ね回るのも楽しいが、せっかくのチャンスなので他の場所の有名ねぶた祭りを見に行きたいではないか!

 ということで、キャンプ場にテントとバッグを置いて、単身五所川原ねぶた祭りを見に出発することにした。まだ見ぬものを目指して〜

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 久しぶりに街中を離れて山中を移動

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 青森は良いね 走り始めて数十分でこの景色と出会える

 距離にして30km強。2時間かからない程度で到着した五所川原は思った以上に小さな街であり、慌てて宿泊先を探す私である。野宿セットを置いて来た身には、宿泊先の確保こそが最重要課題の1つなのだ。

 ねぶた期間中開いているライダーハウスへと転がり込み、いよいよ五所川原の名物立ちねぶた祭りをみに行くぞ。

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 のっそりとそびえ立つねぶた

 うおおおっ!素晴らしい。ビルの合間から謎の巨大建築物がぬっと姿を現しているのであり、このギョッとする気持ちはなかなか良い驚きである。

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 なんとかスペクタクル

 巨大ということはそれだけで人の心をワクワクさせるものであるが、それが発光して太鼓を鳴らしながら目の前を通過してゆくのである。これが興奮せずにいられようか!癖になりそうな「ヤッテマーレ、ヤッテマーレ」のかけ声のもとに20mを超える幻想的なねぶたが道路を堂々と闊歩する非日常的空間のなんと心地よいことか。

 五所川原のねぶたもまた、来てみる価値のある大変不思議な楽しみに満ちた祭りなのであった。

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 帰り道で見つけた古いオモチャ屋 こういうのもワクワクする

 ライダーハウスに戻って同宿の人達と宴会。年齢層高めのメンバーの中で私が先に眠ってしまうのは失礼である、と礼を逸しない私は他人の酒をガバガバ飲み、気付けば最後の1人と深夜2時まで楽しんでいるのであり、礼儀正しいのもここまで来ると考えものであるとか思いつつ就寝。

 8月4日(月) 走行距離50km
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 誠に遺憾ではあるが、体が上手く動かないのである。どう考えても昨日夜遅くまで飲み続けた行為のツケが来ているのであり、いくら私が飲み会の席で先に休むことができるはずもない稀に見る好青年であるとはいえ限度がある。まったく。

 他のライダー達が次々に出発してゆく中、チェックアウト時間の12時ギリギリまでゴロゴロと過ごしている私であり、まぁなんだ。外では雨が降っているのに無理して走ってゆくなんてのは時間に追われている者の悲しい選択なのであり、私のように余裕がある人間はどっしりと構えて常に最高の状態での出立を見極めるのだ。

 フラフラしながら自転車を漕ぐこと40km。道中は曇りだし景色は単調だしで写真を撮るといったこともなく、あっという間に弘前へと到着する。

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 りんご園の間を走る

 弘前はそれなりに大きな都市であるため、宿泊先に健康ランドでもネットカフェでも何でもごじゃれであるのだが、ここで私はユースホステルを選択する辺り、自転車の盗難と雨の対策をキチンと意識している由緒正しい正統派チャリダーであることが改めて証明されるというものであることは想像に難くない。

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 パッと見普通の民家風のユースホステル

 ということで弘前ねぷた祭りを見学する。ねぶたではない、ねぷた祭りである。理由とかそういうのを語ると長くなるので省略するが、そういうのはグーグル先生にでも聞きなさい。

 弘前のねぷたは他の地域と異なり人形ではなく、扇形のねぷたが運行しているスタイルで、多くの数の山車が次々と表れるのは違った趣があってなかなかよろしい。

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 数が多いのは制作が比較的簡単だからと見た

 地元の人が「ねぷたは他と(の地域と)違って静かな感じの祭りなんだよ」と教えてくれたのだが、さもありなん。「ヤーヤードー」というかけ声のもとに太鼓の音が鳴り響いていれば、狂乱の青森ねぶたは別にして、そんなに静かなワケでもなかったですよ。

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 私もねぷたの上に乗って愛想を振りまきたい

 終了と同時に雨が降ってきたので、早々にユースへと引き上げて同宿の人達と深夜2時まで歓談。どう考えても昨日の二の舞ではないか!と思う一方で、たった一度の出会いを大切にしたいと感じる私はさっさと就寝するなんてできるハズもなく。決して食べ放題のお菓子やスイカに目がくらんだとか、そういう邪推をする人がいるかもしれないが、断じて違う。そんなのはちょっとしか理由にならないのだ。

 8月5日(火) 走行距離40km
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 久しぶりに布団で寝たのが良かったのか、短い睡眠時間の割に目覚ましも使うことなく8時にスッキリと起きる。これは布団というファクターが人の体に好影響を与えるという事例としてレポートにまとめるべきなのだが、旅が終わってからの課題として残念ながら今は無視する。

 私は所謂「たくさんご飯を食べる人」なのだが、このひろさきユースホステルの朝食はそんな私でも驚くレベルで豪勢な食事が出てくる。やっほい!地元の食材を使った豪華絢爛なご飯は美味しくて最高なのであるが、昨日一緒に話してた女性なんかは食べきれなくて残していたぞ。どうなんだ

 2日間青森以外の有名ねぶたを堪能した私であるが、そろそろキャンプ場へと戻ってラッセララッセラするのも悪くない。10時のチェックアウトに合わせて国道7号線を走って2時間で青森まで戻ってきたぞ。私がいなくて寂しかったかい?

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 キャンプ場

 なんじゃこりゃー!キャンプ場が水浸しになってる。隙間もないほど敷き詰められたテントの半数ほどが撤収されており、聞くところによると昨日の大雨で床上浸水してしまったテントもあったなど、燦々たる状況であったらしい。

 私のドマドームさんは大丈夫なのん?と慌てて確認したところ、どうにか浸水地区から数メートル外れた場所に位置していたらしく、被害を免れていた。こういう時の悪運が本当に強いな私は。

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 隣のテントは避難していて本当にギリギリ

 よかったよかったと胸を撫で下ろし、さてそれでは今日も跳ねるかと着替えようとしたところで我々の参加しているねぶた運営から「ねぶたの運行の手伝いを何人かしてほしい」との要請が。

 ねぶたを引くとか願ってもないチャンスだと飛びつく私。そういうことで今日は跳ね人の衣装ではなく半被をお借りしてねぶたの山車へと移動することとした。

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 何着ても似合うな

 いつもは飛び跳ねているだけなので気付かなったが、ねぶたの山車は台車の上にねぶたが乗っかっている形なのであり、移動させる苦労は実は少ないのである。

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 よく見たら下はこうなってるのね

 しかしヤジロベエ状態のバランスのため、この山車を水平に保つために20人以上の男達が力を合わせて前へ後ろへバランスを取っているのである。簡単にいえば、無茶苦茶重たいシーソーしているようなものだ。

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 引き手はねぶた山車の下に頭が隠れてしまう

 一言でいえばキツい。キツいのであるが、私は結構こうした縁の下の力持ち的ポジションの人達が好きであり、組体操とかではピラミッドで上に立つ人達よりも下の土台の人を見ては、ゲラゲラと笑ったり感動したりしたものだ。そういう意味でもこうしたポジションを経験してみて良かったといえる。

 全身びしょぬれの水も滴る良い男となった手伝い5人組が良い表情をしてキャンプ場へ帰ったら、そこでは雨が降っているのであり全くもってやってられん!宴会が開かれることもなく就寝。

 8月6日(水) 走行距離53km
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