自転車ときどき世界1周

カテゴリ: 色々まとめ

 2025年4月3日〜4月20日
 走行日数18日間
 累計走行距離921km(166725km〜167646km)

◎道路
 バクーの都市圏さえ抜けてしまえばほとんどの道に側道が設置してあり割と安心して走ることが可能。隣国ジョージアがこの点かなり酷かったので、アゼルバイジャンの道路状況にはかなり好感持っている。
 全体的に国の南部は平野部が多く、北部になると山岳地帯の割合が増えていく。国の東はカスピ海に面しているため海抜0m以下まで標高下がる一方で、北西部の最高地点は標高4000mを超える高い山がそびえるアップダウンの激しい国だ。国土もそれほど広い国では無いため坂の斜度が急になりそうなイメージあるが、幹線道路で斜度10%を超える厳しい坂は1度しか出てこなかったな。斜度12%と書かれた道路標識は3度も見たけど全部嘘だったし。なお車両は右側走行。
 信号の割合が少なく交差点はラウンドアバウト方式となってることが多いのだが、田舎はともかく都市部や交通量の多い場所だと交通マナーの悪さから非常に危険。
 それ以外だと町の中心部に大きな道路が通っておらず、一方通行となってる道の割合が高かった。これに加えてアゼルバイジャンは駐車場が非常に少なく路上に駐車する方式が一般的のようで、この2つが合わさって通行スペースが非常に狭くなるという状況に陥りやすい。郊外と都市部における走りやすさの差が大きな国だった。

◎治安
 非常に良い。少なくともアグレッシブな強盗とかに遭遇する感は全く無いし、バクーを除けば盗難問題とかもそれほど気にする必要ないと思う。ただバクー近郊のレストランとかスーパーで子供から「金くれ」とせがまれたことが2度あり、都会から離れると生活レベルがかなり低下することを見ても貧富の差が大きいことが察せられる。得てしてそういう土地は治安が悪くなりがちなので。
 それと全国的に軍隊や軍人の姿をとても多く見かける国で、ちょっと田舎町に入ると戦争で亡くなった軍人の慰霊碑や写真が数多く祀られている。ナゴルノカラバフの土地を巡っての紛争は既に終結し、アルメニアとの外交も回復へ向けて進んでいるとされる状況の割に物々しくないか?とは感じたな。

◎ビザ・出入国
 2020年のパンデミックで多くの国が国境閉鎖したことは記憶に新しいが、2025年現在でもアゼルバイジャンは陸路における入国を解放しておらず、この国に(観光で)入国するには航空機を使うしか選択肢がない。もう何年も「◯ヶ月後には入国制限を解除する」と表明しながら期日になると「まだその時期じゃない」と延期してるので、今後陸路国境が解放されるのはかなり大きな変革でもないと難しそう。
 よく分からないのがアゼルバイジャンからの「出国」は陸路(海路)の国境でも構わないという点で、私もこれを知っていたのでカスピ海フェリーを利用してアゼルバイジャンを出国することができた。このカスピ海フェリーはユーラシア大陸を横断する際の陸路ルートとして一部の界隈に人気なのだが、現状カザフスタン及びトルクメニスタンからアゼルバイジャンへ航行するフェリーには乗船できず、しかしアゼルバイジャンからこの2カ国へ航行するフェリーは乗船可能ということだ。
 注:トルクメニスタンはビザ取得が非常に難しい国なので海上ルートの選択肢としては難しいところなのだが、2025年4月にトルクメニスタン政府がeビザの発給を開始したというニュースがあったので今後新たなルートとして利用する人が増えるかもしれない。
 ちなみにアゼルバイジャンは通常入国にあたってビザが必要。これは空港のアライバルビザで簡単に入手できるので手間はほとんど必要ない。嬉しいのが世界で唯一日本人だけビザ代金が無料という点で、アゼルバイジャンが親日国と言われる由縁はこういうポイントにあるのかもと思ったり。なおビザ発給の際に宿泊先の宿を入力する欄があって、私はここで慌てて宿予約し手続きしたのだが適当に入力しても大丈夫だったような気もする。
 なお滞在可能日数は30日間なのだが、この国で15日以上の滞在をする場合は宿泊先の情報を受け取って関連する役所に赴きレジストレーション(滞在証明証)を受領しなくてはならないという罠がある。私は首都のバクーでこの処理を実施したが、他の町でどの規模なら同様の処理をしてくれる役所があるのかは不明。滞在中に1回証明証を発給してもらえばOKなので、よっぽど変なルートを走らなければバクーを経由すると思うし素直に首都で手続きするのが正解だと思う。
 出国に利用したカスピ海フェリーは貨物船に僅かな乗客が乗り込むスタイルということもあってか一般的な出国手続きと若干異なったと思われる。この辺はカスピ海フェリーについての方で詳しく書いたので気になる方はそちらを確認してほしい。 

◎交通事情
 悪い。全体的に運転が酷かった中東から来て即「アゼルバイジャンの運転酷いな!」と思ったので相当レベル低いと思う。クラックションも鳴らしまくるし道を間違えた車両が平気で100m以上の距離をバックしてたり、下手すりゃ普通に逆走してくる車両もいた。
 ただ信号表示は守るし土を越した無茶苦茶な運転をする訳ではなく、あくまで通常の範囲内で危険という感じ。ときどきこちらが優先車両にも関わらず「俺が通るからどけ!」とばかりにクラックション鳴らして横行するバカドライバーがいたりするので気は抜けないが。
 この国は自転車旅行者に対して気の良い人が多いのだけど、ドライバーが挨拶がわりにクラックションを鳴らしてくるパターンが多く、しかもそれが1日に何十回もある。自転車的にはクラックション鳴らすという行為は非常に怖いしマジで危険な運転で鳴らしてくるクラックションと区別つかないので本当辞めてくれないかな・・・と常日頃思っているのだけども。
 なおアゼルバイジャンの田舎を走るバスはほぼ全てバンタイプで大型バスが出てこない。一部ツアーバスとかは見たかなという程度。国民とか旅行者的には困ることあるかもしれないが、自転車乗りとしては大型バスが少ない国って安心感高くて好きなんだよね。

◎特徴
 2023年まで凡そ40年間に渡って隣国アルメニアとナゴルノカラバフという土地をめぐって紛争が続いていた。現在この紛争は完全に終結したとされ、土地はアゼルバイジャン領に。アルメニア側も再度この土地を奪取するため攻撃を仕掛ける考えはなく、両国間の関係も改善に向かっている・・・というのがニュース見た限りでの状況である。
 ということでナゴルノカラバフは現時点で外国人が(アゼルバイジャンの国として)入域することは可能となったが、そのためには許可証が必要とのこと。それ自体はネットで手続きして数日後には発給される物らしく大した手間とはならないが、紛争の名残りでこの地域は未だに地雷が埋まっているらしい。
 そんな土地なのでどこまで自由に移動できるか怪しいところがあるのは確か。とりあえず自転車的に安心して野宿できる環境ではないため訪問するのは辞めといた裏があったりする。

◎気候
 4月のアゼルバイジャンは低地なら非常に快適な気候でのサイクリングが楽しめる。最高気温が20度ちょっとで走っているのが実に気持ちいい。対して山岳地帯だと夜間は氷点下まで気温下がる場合もあるし、この時期だと山脈に雲が引っかかるのか天気の良くない日が多い。全体として低地:快適、高地:寒いという印象。いや高地と言っても精々500〜1000m程度なのだけど。一応北部に標高2000mを超える風光明媚な村があり人気だと教えてもらったのだが、ここへ向かうにはバクーから北上するルートに乗らないと他の道が無いため行ってない。ちなみにアゼルバイジャンではぐるっと国内周遊するようなルートを走っているが、1度も「ずっと向かい風に吹かれ続ける日」というのが無かったのは幸運というしかない。このことから言えることはアゼルバイジャンの風向きはあまり一定方向から続くタイプでは無いということか。
 なおカスピ海沿岸は日によって非常に強い風が吹き、特に秋だとより激しいとのこと。4月という春の時期は比較的風が穏やかな季節だと聞いたが、それでも後半のバクー滞在してた雨の2日間は時速40kmを超える強烈な北風が吹き荒れていた。もちろんカスピ海フェリーも運休してたのであり、カスピ海フェリーを利用したい人はアゼルバイジャンの風が安定する時期を選んで向かえば長々と出航を待たされる可能性が減るかと思われる。

◎言語
 アゼルバイジャン語だが、結構な割合でロシア語を使う人も多かった。この2カ国の言語がどのくらい近いのかは知らないけど、使用してる文字はキリル文字っぽいアルファベットが多々見られたので近しい言語なのだと思ってた。
 バクーか観光地でもないと英語の通用率は非常に低く、特に年配の形で英語が話せる人はまず出てこない。田舎で20人以上に囲まれることとかあったけど、誰1人として多少でも英語話せる人がおらずジャスチャーのみでコミュニケーションしたのは良い思い出だ。
 道路看板とか標識関係でサブ言語として英語表記されてる割合が低い国で、アゼルバイジャン語は英語的な発音ともだいぶ異なるため道路看板の文字を見て行き先の町か否かを判断することが非常に難しい。全体として言語的にはかなり難易度の高い国という印象だ。

◎宿(野宿)・Wi-Fi
 バクーには1000円以下で利用できるホステルが多数ある。値段の割に綺麗だし設備も良くて有難い限り。ただ2度の利用で両方とも長期滞在してるロシア人がおり、我が物顔で勝手な行動(人の食材盗んだり深夜にベッドで音流して動画みたり等)してて大変迷惑だったのが印象悪い。それと中心部の宿はアパートの一室だったりするタイプが多く、場合によっては自転車を外に置かねばならずこうした点を事前確認したいのだけどアゼルバイジャンは入国ビザに宿泊先を記入する必要があったりしてなかなか難しい。
 町を外れてしまえばキャンプできる場所は幾らでもある国で野営は楽だった。ただ水の補給に難があるというか水道水が飲めない系の国らしく、その割に水補給の大変手段が少ない感じで水の確保が難しい。戦没者の慰霊碑には大抵水道があってこうした水を汲んでる人も見かけたことから飲んでたけれど、実際この水が飲料用だったのかは分からない。煮沸してたから大丈夫理論。
 宿のWi-Fiは高速で安定してた一方で、町を外れると案外ネット環境が乏しかったアゼルバイジャン。この国はマックを始めとするアメリカ系チェーン店が首都バクー以外ほとんど進出していないため、田舎だと必然的に地元のカフェみたいな施設を探さなくてはならなかった。結果としてWi-Fiの設置率は五分五分といったところか。カフェの数自体は沢山あるため、何日もネットに接続できなくて困るといった状況に陥ることはそうそうない。地味にヴィエンダムの町で泊まったホステルにはWi-Fiが無かったけど、多分これ珍しいパターンだよなとは思ってる。

◎動物
 家畜では羊の割合が一気に増えた。放牧してる羊の群れを馬に乗ってコントロールしてる光景はアゼルバイジャンでよく見かける光景で微笑ましく思いながら眺めていたかな。牛やヤギの姿もそこそこ見かける一方で豚の姿がないのはイスラム教の国らしい。
 それと久しぶりに犬がアグレッシブに追いかけてくる国で、それほど長く滞在したわけじゃないのに計20回は追い回されたと思う。犬叩き棒も1度火を吹いたし。
 危険な動物が人里近くに生息してる雰囲気ないし、そうした動物注意の看板は山道を走る道路でクマ注意の標識を見かけたことがあるくらい。でもこの国でテント張るという会話した際に「動物に食い殺されるぞ」的なジェスチャーとともに犬っぽい鳴き方をされたのでもしかすると狼でも出るのかな?とか思ってた。なおハエを見ることは少なかったが場所によってはデカい蚊がワンサカ飛んでてキャンプ中に苦労した。そのくせこの国には渦巻き式の蚊取り線香が売っておらず困った思い出。

◎自転車店
 バクー市内には複数のプロショップが存在する。ここから中央アジアを横断する場合キルギスに到着するまでスポーツ用自転車のちゃんとしたショップが存在しないと聞いたので予備のチェーンとか購入したのだがかなり値段は高かった。その割に地方都市で見つけた自転車ショップで購入したチューブは1本2マナト(約170円)とビックリするほど安かったので、何が影響してるのかよく分からんというのが正直なところ。
 ある程度専門的な部品がダメになったらバクーまで移動するしか方法ないが、そもそも現在のアゼルバイジャンは飛行機でしか入国出来ずほぼ間違いなくバクーからのスタートとなるため1番トラブルの発生しそうな飛行機輪行の直後でカバーできる環境となっており、問題起きることは少ないんじゃないかな。

◎物価・食事
 全体的にかなり安い。石油がバンバン出る国でありながら物価の安い国というのは珍しいなとか思ってた。ベネズエラは色んな意味で外れ値の国だし。ガソリンは1ℓ90円くらいでアラビア半島の国ほどではないが日本人としては羨ましくて仕方のないレベル。
 イスラム教徒が大多数で構成している国だが、しっかり教義と政策を分離しているらしく普通にそこら中で酒類が販売されてるし値段も安い。ビールは2.5ℓの大型タイプで7マナト(約590円)ちょっとの商品がありよく飲んでたな。それとアゼルバイジャンはワインも人気の国だけあって、安価ながら美味しいワインが多く安いタイプだと1本4〜5マナト(340〜410円)くらいで販売されている。
 こうした品に比べて肉類の値段はやや高く、そもそも田舎になるとソーセージみたいな加工肉か冷凍肉しか取り扱ってないお店がほとんど。肉専門店もあるっちゃあるが、値段表記一切ない上に部位と必要量をお願いして目の前に吊るされた肉をカットしてもらう方式なのでやや難易度が高い。個人的には1kg15マナト(約1250円)を切ってたら「結構安いな」と思ってた。なお鶏肉はもっとずっと安い。
 外食するのもアリかと思ってたのだけど、田舎で気軽に利用できそうなのがケバブ屋ばかりで結局1度も活用することなく。カフェは2〜3度利用したのだけど、全て「お題は要らないよ」と言われてしまい料金知ることなかった嬉しい思い出。

◎総括
 アゼルバイジャンという国は当初「陸路による入国が出来ない」ということから訪問予定の無かった国だったりする(コーカサスの国を走行中当時の話)。その後アラビア半島走行中に「中央アジア横断するに当たってアゼルバイジャンからスタートすれば、カスピ海横断フェリーを含めて走りたかった土地がほぼ走れる!」ということに気付いて入国した経緯がある。
 そんな紆余曲折あった末に訪れた国ではあったが、私はこの国を訪問出来て本当に良かったなと思っているし、そう思わせてくれたのはアゼルバイジャンの人たちがとてもフランクで親切にしてくれたからだ。
 訪れるまで知らなかったが、唯一日本人にのみビザ代金が無料の親日国とか、イスラム教徒が9割超える構成でありながら政教分離がしっかり行われているとか、興味深いポイント幾つも備えてるポテンシャル高い国だったんだなと今になって思う。やはり実際に行って見ないと分からないことは多い。
 石油や天然ガスといった資源に恵まれる親日国・・・と書くとアラビア半島の国を想起させるが、アゼルバイジャンはそうした国とはまた違った印象を抱かせる国であり、言葉によるアウトプットでは表現しきれない居心地の良さを感じられたことが1番の収穫だと思う。
 ということで本当に好きな国なので、早いとこ陸路の国境を開放して下さい。石油枯渇に備えて観光業に力を入れ始めてるのなら窓口を広げておいて損はないでしょう!と旅行者なので好き勝手に希望言ってお来ましょう。
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 2019年11月 7日〜2019年12月 1日 (第1回)
 2023年12月 6日〜2023年12月12日 (第2回)
 2024年 1月18日〜2024年 4月21日 (第3回)
 2025年 1月24日〜2025年 4月 3日 (第4回)

 訪問国数    8カ国
 走行日数    190日間(第1回25日間・第2回7日間・第3回88日間・第4回70日間)
 累計走行距離  11735km (第1回1251km・第2回178km・第3回5278km・第4回5028km)


 ヨーロッパ各国のまとめはこちらから(総括作成順)

 他地域と同じく私が走行してきた各国において、独断と偏見で点数評価してみた。












道 路交 通物 価食 事宿治 安総 合

イスラエル67454127

ヨルダン44878637

トルコ67697641

イラン62919330

サウジアラビア844341033

カタール953341034

UAE65532930

オマーン 736381037

日本893921038










 ※最低1点、最高10点 物価は安いほど点数高い

 自転車乗りとしての視点から感じる国の特徴であり、国の善し悪しについては意識していない。物価が高い国は宿も高くなる傾向があるし、点数が高ければ良い国という意味では勿論ない。あくまで1旅行者が感じた感想である。
 なお各点数は私が訪問した当時の状況を元にするのが信条だが、流石にイスラエルに関して治安1を付けざるを得なかった。訪問当時の印象的には治安3くらいだった気がするけれど。

<中東の分類>
 そも中東という地域は区分が曖昧であり、エジプト等の北東部アフリカなんかも中東として扱われることがあったりする。トルコなんかもアジアやヨーロッパとしての土地な一方で中東というのも間違いではないのが難しいところ。とりあえず私のブログではアラビア半島の国々及びイスタンブールより東に位置するトルコ、イラン、イスラエル、ヨルダンを指して「中東」として取り扱っている。

 地域的にはアラビア半島とそれ以外として特徴が大きく異なる感じで、イスラエルを除く全ての国がイスラム教を主としているのだがアラビア半島の国におけるイスラム教の戒律厳しさはハッキリ一枚上にあったと感じる。

<食>
 トルコは世界3大美食の国に挙げられるし、実際多様な食事を楽しめる国だったが。それでも中東の国全体で評価すると色に関してはかなり残念な地域であると言わざるを得ない。
 イスラム教の関係で酒が飲めないとか豚肉が食べれないというのは別に構わないのだ。そうじゃなくて色に対してのレパートリーが乏しく、また酒の代わりに甘味を欲するためか異様に砂糖を使った激甘お菓子が幅を効かせている。これも激甘なのが悪いんじゃなくて、甘さ控えめとかの多様性が薄いことが問題でして。

 特にイランを筆頭として食堂でのレパートリーが非常に乏しく、首都クラスの大都市でもないと毎日同じようなメニューを食べる羽目になってしまう。彼らに言わせると僅かばかり使う材料が変わっただけで「な、違うだろう?」ということらしいが、正直大差ないと私は思ってたぞ。BBQはBBQなんだってば。

 個人的にキツかったのが朝食で、パンにクリームチーズかバターを塗って甘味と併せて食べるだけの簡易なメニューが多く、エネルギー使う自転車旅行には明らかに塩分もカロリーも足りていない。でも糖分だけはチャイをはじめとしてやたら摂取してる。というか夕食を除いて全体的に砂糖ばかり摂取するパターンとなりがちで、常に運動してる状況じゃなければ「勘弁してくれ・・・」と思ってしまうほど。

 アラビア半島だと米食がメインとなることも多く、カブサと呼ばれる炊き込みご飯を皆で混んで食べる機会に恵まれこれが大変美味しかった。ただしイスラム教の地域では素手(右手のみ)で食事をするのが基本であり、海外のパラパラに崩れる熱々の米を食べるのには多少の慣れが必要だったり。

 ちなみに豚肉が食べれない反面、ヤギとラクダの肉がテーブルに乗ることが多い。ヤギはともかくラクダは砂漠地域でないとなかなか機会に恵まれない食材だと思う。なお肉質は非常にプリプリでゼラチンを食べてるような錯覚に襲われる。普通に焼くだけでは繊維が噛みきれないままとなる場合が多く、中東でラクダ肉を食する場合は圧力鍋で長時間加熱することで食べやすくするのが基本。レバーを始めとした内臓系も食べたがコリコリと歯応えがあって他の肉とは一味違う。

 なお牛の生育が厳しい土地であるためか乳製品にはヤギの乳を使っていることが多い。牛乳よりややクセがあり匂いが強いミルクだが、味が濃厚で慣れると牛乳よりイケる感じ。ヤギチーズなんかも然り、中東でヤギは家畜の食材として鶏肉に次いでメインとなってる印象がある。

<宿・キャンプ場>
 アラビア半島の国々は石油で潤う物価高の国である上、サウジアラビアとカタールには「安宿」という安価な宿泊施設が存在せず宿泊しせつを利用すると非常に高く付く。それ以外の国は都会や観光地にはそれに対応した安価な宿泊施設が存在しているので長期的な旅行をしてても手が伸びる価格で宿泊することが可能。加えて物価の高い国は国土の大部分が砂漠で構成されており、テント泊を実施する難易度が非常に低いためテント泊をメインに据えるタイプのサイクリストならなんだかんだ中東全体で宿泊問題に悩まされることは少ない。むしろイスラエルの方が問題となるような気もする。

 宿の設備的にはどの国も一定以上のサービスを確保している印象で、料金に対してサービス度合いが悪いなと感じたのはサウジアラビア。いやサウジの宿は私がお金払ってないんだけどさ。それに関しても必要なものは揃ってるけど内装がボロかったり動きが悪い(ホットシャワーの出が悪いとか)といったレベルなので、基本的に不足を感じるレベルではない。

 それとアラビア半島のいくつかの国ではLINEに代表されるアプリで通話サービスがシャットアウトされる仕様となっている。このため電話によるやり取りはSIMカードを購入して通話することしか出来ず実質母国への電話連絡は不可能で、外国人が自国の家族等に電話連絡するハードルが高い。

 完全車社会であるため道だけでなくサービス関係の施設も車を対象とした場所が多い。キャンプ場もこれに倣って車での訪問のみを想定しておりキャンピングカーのスペースやコテージは存在しても小さなテントを張るスペースはなく車と同じ料金を支払わなければ利用できないキャンプ場も多かったりと自転車には優しくない。キャンプの需要自体はそこそこあり、それに応える形でキャンプ場も点在しているだけに残念である。

<気候>
 イスラム教は砂漠やサヘル地帯の気候と相性が良い宗教とされており、そうしたことを示すかのように強烈な厚さと日差しが降り注ぐ大変厳しい気候の土地である。
 ユーラシア大陸に位置する国々は結構山がちな土地も多く、猛烈な暑さで有名なのはイラン東部の砂漠くらいなのだが、それでも夏季に走行するのは相当厳しい地域が多い。加えてアラビア半島の国に関しては夏季どころか冬の12〜3月以外のシーズンはマトモに自転車で走ることができないレベルで気温が上がり、熱中症どころか生命の危険となるレベル。なお4月のイラン南部、バンダレアッバースの気温は30度ちょっとだったの対し、3月後半のオマーンで36度まで気温が上昇したのであり、やはりアラビア半島の方が気候的な厳しさが大きい感じ。

 また面積の多くを砂漠に覆われている地域で、このため風による影響が他地域よりも甚大となる。季節によってある程度風の吹く方向が一定ならばルート選定を考慮することで避けられる問題もあるのだが、私の経験では風向きが安定してることは少なく、その強さに関しても突如出鱈目な強さで吹き荒れたりと読めないのがもどかしい。一応ペルシャ湾から陸路に向かって吹いてるイメージは持ってたけれど、こうした点すら定かではない。

 トルコを除いてほぼ全ての地域で晴天が続き雨に降られることはごく僅かしか無かった。一応この地域における雨季というべきか雨が降りやすい時期は1〜2月だそうで、この期間にはアラビア半島の雨量極小な国でも降られる可能性があることを考慮に入れておきたい。サウジアラビアでは数回土砂降りの雨にぶち当たった。

<注意点>
 イスラム教の国における戒律を理解し対応する必要がある。難しいのは同じイスラム教の国でも戒律の厳しさには強弱があるという点で、分かりやすい「アルコールの禁止」という点ではトルコみたく普通のお店で販売されている国がある一方で、サウジアラビアみたく一切販売が禁止されてるどころか国内にアルコール類を持ち込んだだけで犯罪となってしまう国まである。

 基本的にイスラム教の生まれたサウジアラビアを頂点として、アラビア半島の国々は戒律が厳しい傾向にある。意外にもイランは戒律がそこまで厳しい印象ではなく、イスラム教徒の国というよりペルシャ人の国という歴史的な関係が尾を引いているというか影響してるのを感じたり。

 イスラム教の国を他宗教の外国人が旅行するにあたって注意すべき点は
1、アルコール関係
2、衣類関係
3、食事関係
 に大別されると思う。アルコールに関しては先に述べた通りだが、飲酒可能な国でも人前や外で飲むことが法律違反である国がほとんどだし、何ならビール等の商品を周囲から見えるよう剥き身で運んでいることが問題となる。このため購入時には黒いビニール袋で覆われて渡されることがほとんどだが、持ち運び並びに愛飲には充分注意されたい。

 2の衣類関係では女性のアバヤに代表される全身を隠す服装が有名だが、男性であっても膝が見えるような短パンのズボンを履くことは推奨されていない。戒律緩い国だと「まぁ外国人だから」とスルーされることもある一方で、厳しい国では関係なく怒られるのでイランやアラビア半島の国なんかでは長ズボンを着用しておく方が無難。モスクの入場や場合によってはスーパーに関してもハーフパンツでの入場お断りと示していることがある。なお履物に関してはサンダルでもなんら問題はないのが不思議。むしろ現地民は多くがサンダル履きだったな。

 3の食事に関してはムスリムは豚肉を食さないというのが有名だが、イスラム教が主体となってる国ではそもそも豚肉が取り扱われてないので気にする必要がない。他にも幾つか制限があるそうで、他国でイスラム教徒が食事をする際に問題のない食事を指して所謂「ハラル」と呼ばれている。まぁこの辺はイスラム教の国内でわざわざ明文化されておらず(当たり前のことなので)旅行者的に特別注意しておく必要はない。
 それよりは食事時のマナーとして大皿を皆で囲み食器を使わず素手で食べるのがイスラム式だが、この際左手を使って食するのはご法度なので気をつけたい。飲み物を左手使って飲むくらいは皆さんやってたけれど、どの程度まで左手を活用して良いのか曖昧な感じなので極力使用しないよう努めていた。なお左手を使わないのはトイレで用足す際に水洗いしたお尻を拭く等で使うのが左手なので「不浄の手」として扱われているからだとか。

<ラマダン>
 中東では2024年、2025年と2度のラマダン(断食月)を期間いっぱい体験することになった。地味に2015年もラマダンをマレーシアで体験しており、そうした経験からラマダンにおける厳しさの比較をしておきたい。

 なおラマダンというのはイスラム教におけるラマダン月で実施される「日中における断食」を指す期間のこと。イスラム教はカレンダーが太陰暦で表されるため1年は354日となり、我々の感覚からすると毎年10日くらい日にちがズレていく。つまりラマダン月も毎年10日ほど手前にズレていくこととなり「毎年この日からラマダンなので注意!」とはならない。参考までに2025年のラマダンは2月28日〜3月30日だった。なので来年は2月17日くらいがラマダン開始の目安。

 イスラム教における戒律の厳しさは発祥国のサウジアラビアを頂点として、それに次ぐ形でアラビア半島の国々、それ以外のイスラム教国とサウジから距離が遠くなるにつれ段階的に緩くなっていく感じ。もちろんそんな簡単ではない全体的な印象として。
 特にラマダンの場合はアラビア半島国の場合、外国資本のファストフード(マクドナルドとか)ですら関係なく日中の営業は一律シャッター閉めて営業していない。これが海を渡るとイスラム教を国教としているイランでも他宗教や外国人の利用者もいるから・・・といった体で営業しているお店が多い。流石に断食してる人に配慮して期間中の飲食店は日中カーテン等で中が見えないようなっているが。

 ラマダンの日中営業してないお店は16〜17時を目安に営業始める店が多く、遅い営業開始の代わりに深夜3時ごろまでシャッタ開けているパターンとなる。親切なお店なら入口に張り紙とかで「ラマダン期間中の営業時間は○時〜◯時」とか表記されているが、こういうのが無い店だと営業時間は全く読めない。Googleマップとかもラマダンの特別時間には対応しきれていないので本当に人に聞くしか正しい営業時間が分からない。

 日中の飲食が禁止されているが、その時間帯に食料を購入したり日没に合わせて事前に料理をすることは問題ないため食料品を扱うお店やスーパーは普通に営業している。というかラマダン期間中はむしろ「ラマダンセール!」と銘打って食材の特売がされてることも多い。ラマダン期間中モスクでは毎日日没と同時に礼拝者へ食事が振る舞われるし、様々な場所で断食を終えた人たちが宴(酒無し)を楽しむ姿が散見され、むしろ食事量自体は増える傾向にあるのだとか。

 いずれにしてもアラビア半島でのラマダン(ドバイ除く)はカフェ等の休憩に使える施設が軒並み閉まってしまう関係でかなり苦労する。自炊を主体とするサイクリストなら食事自体はあまり影響はない。安宿が存在しないサウジアラビアやカタールでは充電や休憩が出来ないといった影響が大きい。これらの国を訪問する際は事前にラマダンの時期を確認しておき、予備の充電器や食材の携行を心がけて対処する必要があるだろう。

<道>
 全体的には都市部を除けば走りやすく快適な道が多い。特にアラビア半島は側道が広くて安心感があり自転車に優しい道路だったりする。山や坂の割合も少なくて平坦路が多くペースも上がり易いし。
 そういった点ではトルコやイランも結構頑張っている印象なのだが、如何せんイスラエル・ヨルダンを含めてこちらの地域は山が多くアップダウンの連続となり体力的に消耗するのが玉に瑕。特にトルコ東部とイラン西部では3000m級の高さまで迫ることがあり、私が走った時期(1〜3月)もあるが夜中はー20度位に冷え込むこともあって難儀した。このレベルまで寒くなると道路上に残雪だけでなく路面が凍結することによるスリップの可能性が出てくるため非常に危険である。

 なおアップダウンの厳しさではヨルダンが筆頭に上がるのだが、いずれも標高の高さで攻めてくるというより2000mとかその程度の高さ以下の山々が連なってひたすら登り降りを繰り返させる系の大変さだといえる。坂道は標高じゃないということか。

 自転車に対しての理解度はアフリカと並んで世界最低水準であり、何処の国を走ってもドライバーの無茶な運転とマナーに辟易すること必死。ただし道路自体の整備具合が違うため随分マシだという評価になるのだが。
 そもそもイスラム教は男性でも正規の服装がズボンではなくスカートというのかワンピースタイプの両足が分かれていない被り物スタイルが多いため自転車との相性が悪く、それだけが原因じゃない気もするけど自転車における需要も人気も低い傾向にある。暑い国が多いので剥き身の自転車じゃやってられないというのも大きいか。

 こうした点から車両優先の社会が構築されており、道に関しても歩行者はともかく自転車のことを全く想定していない町となってて走りにくいことこの上ないパターンが多い。形だけの自転車道が作られてて「ちゃんと配慮してますよ!」と見せかける感じは日本と似ている気もする。

 なので交通マナーの悪さも相まって都市部における自転車の走りにくさは世界でも随一というレベル。その割に側道がしっかり広く取られている国が多いので、郊外における走りやすさに関してはこれまた世界でも有数の高レベルという両極端な構成してるという印象だ。

<総括>
 ワールドサイクリストの中でも中東というのは宗教の違いからか(世界を走る自転車旅行者は多くがヨーロピアンのキリスト教文化圏)訪問する人が少ない土地だと思う。それは比較的自転車旅行における情報がない地域ということでもあり、特にアラビア半島における日本人の自転車走行レポートは他地域に比べ極端に少ない。サウジアラビアとか2019年まで実質訪問不可能な国だったので仕方ない部分もあるが。

 だが訪れるサイクリストが少ないことは決してマイナスではないと感じさせてくる地域でもあり、多くの日本人が中東という地域から想起される「危険な国」というイメージとは対照的に平和で治安も良く人々は親切で大変よくしてもらったのが印象的だ。

 ほぼ全域がイスラム教を国教とする地域で、日本人的に馴染みがないことから敬遠される向きがあると思うが、異国を旅行していてこれほど親切を受けた「地域」は他にないと言えるほど旅行者に対してのホスピタリティに溢れている。これはイスラム教の「旅行者に対して施しを与えよ」という戒律もあるだろうし、旅行者の訪れる総数が少ないことで現地民が「旅行者擦れ」していないという点もあると思う。そうした意味でも地球上に残された数少ない「自転車で訪れやすいが旅行者の少ない地域」として貴重な存在ではないか。

 ・・・とまぁ理由を並べてみたが、中東を走ることはとても楽しい!というのが唯一にして全てでもあるんだよね。イスラム色の強いこの地域における独特な文化や人たちとの出会いを楽しんでほしいと思わずにはいられない。ただし無茶苦茶暑くて厳しい気候の土地が多いので訪問する季節はよく吟味して。

 個人的にはユーラシア大陸を走行する際に冬季の滞在先として「アラビア半島を走る」という選択肢がもっと増えてくれたらこれほど嬉しいことはないと思ってる。
    mixiチェック


 2025年3月21日〜4月3日
 走行日数15日間
 累計走行距離839km(165819km〜166658km)

◎道路
 アラビア半島の国としてはややレベル低いが主要道にはしっかりと広い側道が敷かれており安心して走ることが可能。加えて首都近郊以外は交通量も少なめなので感覚的には走りやすい。そんで国内北部は山岳地帯であるため山を抜けるような道だと結構なアップダウンが待ち構えている。それほど斜度がキツい訳ではなかったが、とにかく暑い中でのヒルクライムとなるのが大変。山自体の標高も1000m程度と夏でも涼を感じるまでは登らないため、上り坂を見ると「水の残量は充分か?」といった点で注意が必要になる。
 嬉しかったのが首都でも比較的自転車での移動が楽なことで、自転車道なんか無くて構わないからこうした「自転車も」走れる道を用意してくれよ・・・という気持ちになる。要するに100%車両のためだけに造られたタイプの町ではなく普通に1国の首都という感じなのだが、都市の規模も小さいし私はマスカットの町なら自転車で色々走ることを厭わないと思えたな。

◎治安
 変わらず非常に良い感じ。夜にテント張ってる側でラマダンの食事会が始まってしまったこととかあったけど「怖いから移動しよう」と感じることなかった程度には安心していた。結構他国からの出稼ぎ移民もいたりするのだけど、オマーンは割合その数も少ない気がしてそういった点でも安心感あったな。
 大きな町はマスカットしか訪れてないけど、別に市内で嫌な雰囲気を感じる場所も無かったし基本的な点に注意してればそんなトラブルに遭遇することないと思われる。

◎ビザ・出入国
 日本人の場合はノービザだと14日間の滞在が可能。山の多い国だし国土面積的にもノービザ入国だと一部しか走行できないためビザを撮る選択肢も多いにあると思う。なお大使館に行かずともeビザが発給されているためネットで取得することが可能。実は当初の予定だと南部にあるサララの町まで移動してフライト・・・という計画を立てていたためeビザを取得するつもりでいた。あまりの暑さと30日間のビザにしては結構値段が高くて変更したのだが。せめて2月だったらなぁ〜

◎交通事情
 やはり悪い。何度か脇スレスレを物凄いスピードで走り抜けてったトラックとか居てすこぶる印象が悪いのだが、オマーンに関しては移民の割合が少ない感じで一般車両も危ない運転してたのを何度も目撃してるため「南アジアの人たちが運転マナー悪い」という感じではなく、オマーン国民も総じて危ない運転するという感想だ。
 別に信号無視するとか逆走といった「法令無視して運転する」といったドライバーはいないのだけど、単純に運転が下手だなとも思ったしマジで自転車の存在が見えておらず運転してんじゃないか?という感じを受けたことが何度かある。冒頭のスレスレを追い抜いていったトラックなんかが正にそれ。
 交通量自体がそこまで多くないためローカルな道を走ってもそれほど危険は少ない反面、側道が無くなることが多い。こうした道が大きな町に隣接しており道路の拡張工事をしていない「道路は狭いけど交通量は多い」というポイントがあると非常に厄介。私の場合はスルの町へアクセスする時がこの条件に合致して非常に怖い思いをした。ちなみに車両は右側走行。
 まぁ危険な車両がいたことは間違いないが、全体としてはそこまで酷くはなかったのも事実。こういうのは実際に怖い思いしたか否かという点が大きく影響してくると思ってるし。

◎特徴
 アラビア半島の国にしては山脈が広がり山がちな地形であり、またその周辺には緑も豊富で砂漠ばかりが続く気候とは異なる国である。このため他と同じように砂漠の平地をひたすら移動するという形にはならず、アップダウンの割合が増えるため暑い時期であるほど負荷の大きさから熱中症等の暑さ対策が求められる。
 内陸部はそこまで山がない(らしい)が、そちらには世界で最も水分が無い地域のエンプティクウォーターにかかっており山岳地以上に過酷な走行となるため、国土全体を通して自転車旅行には割と厳しい土地が多い。いや南部に関してはあまり知らないのだが。

◎気候
 3月後半で相当な暑さだったが、地味に暑さが落ち着いた状態なら日中の気温も30度前後で落ち着いた日もあり日記本文で書いてるほどヤバい気温ではなかった日も多い。まぁオマーンにおいて注意すべきは気温じゃなくて強烈な直射日光の方であり、実際風の無い日向に出てると数字以上に厳しい環境だと感じる。今回滞在中に記録した最高気温は多分36度。
 走行したエリアが山の多い場所ばかりだったので他のアラビア半島における国々ほど風による苦労が少なかったと感じる。野営しててもテント内に砂が入り込んでくるような事態は1度もなく、追い風となる日が多くてオマーン走行では楽できた日が多かったなと思ってる。

◎言語
 変わらずアラビア語が公用語。英語ができる人は都会だと半々といったところかな?UAEよりは英語の通用率落ちるがサウジアラビアよりは若干高いといったところか。看板表記に関しても基本は英語も併せて載せてくれるため文字が読めずに苦労したという記憶はない。
 サウジやUAEほどではないがオマーンも南アジアからの出稼ぎ労働者が多く、なんだかんだ言っても(海外に出てくるような)インド系の人は英語を話せることが多いのでその点でも楽。特にオマーンで働くインド人は英語話せないという人に1人も会ってないんじゃないか?と感じた。

◎宿(野宿)・Wi-Fi
 人口少ない国だからか人気の有無で野宿に苦労することはほぼ無かった。ただオマーンではテント張ってた場所が砂地じゃなくて普通の土の上というパターンだったけど、そうした場所に生えてる植物が鋭い棘を持ってるトゲトゲ植物ばかりなのが大変。この棘がそこかしこに散らばっているためテント敷く場所に気を使うし、自転車のタイヤ貫通してパンクしたことも複数回あった。暗くなってからそういったエリアに突入する場合はこの辺を慎重になる必要がある。
 宿使ったのは首都のマスカットのみだが、1泊1000円しない宿もあったりと結構安くて驚いた。そういうのはドバイと同じく市内中心部におけるアパートの一室を利用したタイプの宿だったため利用しなかったが、マスカットが偉いのは中心部から少し外れた戸建て住宅エリアにもちゃんと一軒家タイプのホステルがあったこと。そうした宿の方が少々値段高かったものの、敷地内に自転車おいておける安心感と共有スペースで気楽に寛げる良さを考えたら1泊2000円以下だし充分だと個人的には思ったな。
 なおWi-Fiに関しては今回ラマダン期間にぶつかったことが最大の問題で、カフェはもちろんチェーン展開してるWi-Fi付きの飲食店関係(マックとか)も全て日中営業しておらず利用すること出来なかった。まぁオマーンのマックは電話番号にパスワード送ってもらうOTP方式なので、どちらにしても電話番号持ってないとWi-Fi利用できないのだが。
 その他のWi-Fiも同様にOTP方式が多く、最初の1週間はほぼネットに接続することが出来なかった。流石に困ってしまいSIMカード購入したのだが、7日間の2Gしか使えない最低料金のプランでSIMカード代含めて3リヤル(約1170円)だった。ラマダンでなければまた違うかもしれないが、マスカット以外の町で安宿見かけなかったしオマーンではSIMカード購入するのは悪くない選択だと思う。

◎動物
 安定のヤギラクダ以外だとオマーンではハエや蚊、虻といった生き物が比較的多く、キャンプで調理してる最中にテント内へ入られ困ることが度々あった。やっぱ砂漠の割合が減ったからかな?なお最初から最後まで犬を見た記憶はない。
 これ以外だとロバを何度か見かけて奇蹄目(要するに蹄のある区分)の動物が砂漠に生活してるのか!と驚いた理したのだが、モロッコとかもそうだが完全な砂地じゃない土地ならラクダ以外にも馬とかロバは結構買われてるんだよな・・・とか思い出したり。私が見たのは飼育されてる雰囲気なかったロバだけど。

◎自転車店
 首都のマスカットには幾つか専門のショップがあったしアラビア半島走行する自転車旅行者はここからフライトする人が多い関係で、ショップ側も梱包用ダンボール欲しいと言えば有料だが売ってくれる。幾つかショップ見学したがギア関係は値段こそ高いがソコソコ品揃えがあったし、安価な部品であればマスカットならデカトロンがある。でも自転車での旅行に使えるようなアイテムはほとんど見なかった。
 首都以外の町では小さな修理店を見かけることはあったものの、スポーツ用自転車を取り扱ってる所は全然見なかったので期待しないほうが吉。それでも海岸線の道で何度かロードバイクの姿を見かけたのでオマーンでそうした自転車の需要が全くないという訳ではない模様。

◎物価・食事
 UAEよりまた少しだけ物価下がった印象。滞在中はほぼラマダン期間だった関係で飲食店は閉まっていたためあまり値段を確認することが出来なかったが、スーパー等の小売店に関しては普通に営業していたため。大きなスーパーなら惣菜コーナーとかお弁当っぽい品も扱われており400円程度でチキン&ポテトのパックが食べられる。
 野菜や肉は他のアラビア諸国とあまり変わらないが、オマーンは鮮魚の値段がかなりお求めやすくなってる印象でちょっと買ってみれば良かったなと思ったり。物によっては肉より安いので検討する価値ある。
 相変わらず酒類は全く姿を見ることがなく、一応許可を得たホテル等で一部取り扱いがあるとされてるが地方の田舎にはそうした場所も見当たらず、結局この国でも最後までノーアルコールで過ごした。アラビア半島で飲酒というのが相当難しいというのは間違いない。
 そんな感じで結局オマーンにおける地元の食事というのはろくに食べていない。強いて挙げると日没直後のモスクにてサウジで何度も食べたカブサを摘んだことがある程度。後は謎にフルーツを食べる機会が多かったかな。ほとんど貰い物だけど、オマーンでは果物ほとんど生産出来ないだろうにやたら値段が安かったので走行中エネルギー補給の選択肢として有りだなと思ってた。

◎総括
 あまりこの国を意識したことがないというか、特にイメージの無かったオマーンだけど砂漠の土地にそびえ立つ山々の世界は走ってみるとダイナミックで迫力があり大変面白いと同時に暑くて脱水を引き起こす「大変だけど楽しい」系の国として強く印象に残った。
 かなりイスラム教の戒律が強く、ラマダン期間中だったこともあって旅行するのに苦労が多かったのは間違いないが、アラビア半島の国では最も物価が安く、車社会に傾倒し過ぎていない自転車が走りやすい構造をしてるので経験豊富な自転車旅行者ならばとても楽しめると思う。
 ただ国土の割にノービザ滞在期限が最大14日間とかなり短いのがネックであり、北の一部分しか走り回ることが出来なかったのは残念といえばそう。南西部に隣接するイエメンは現状入国できる治安ではない関係でアラビア半島を自転車旅行する場合オマーンという国はフライトで到着するか発進するかのどちらかになることが多い。そうした際に北部のマスカットではなく30日間のビザを入手して南部第2の都市であるサララを起点にしてみるのも面白いんじゃないかな。走って移動することが大変魅力を感じた国なので。
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 2025年3月6日〜3月21日
 走行日数16日間
 累計走行距離1046km(164773km〜165819km)オマーン飛び地約10kmを含む

◎道路
 郊外は最高、市内への乗り入れは最低最悪という極端な構成してる。要するに自転車の長距離移動を全く考慮に入れておらず「自転車は近距離の移動かスポーツのための道具」として扱われている。本当に自転車の有名プロチームを多数抱えてる国なのか?と疑いたくなってしまうし程度には。
 具体的に郊外は実質道路が高速道しかなく、これに伴い側道が幅広であるため走りやすい。そんで市内もそこそこ自転車専用レーンが設けられており、突如消えて無くなったりとかあるもののアラビア半島の国ではかなり頑張っている方。なお車両は右側走行。
 問題なのは町へ突入する道が極端に偏っている点で、特にドバイの南から町へ向かうと100%交通量の多い高速道を掻い潜って市内へ突入する必要がある。東京に自転車で向かうと首都高からしか入れないようなもの・・・といえば想像しやすいだろうか?
 そういうイカれた構成なのでドバイへの出入り経験があるだけでこの国の道路事情はすこぶる印象が悪い。他にもちょいちょい文句を言いたくなるようなポイントあったけど、ドバイへの道が突出して怖かったのでそれだけで印象最悪な感じ。一応北東部に山岳地帯があってこのエリアはアップダウンが存在するが、車のことしか考えてないため斜度はキツめで直線的な道の構成をしていたりする。

◎治安
 非常に良い・・・のだがこの治安の良さはUAEという国が非常に厳しい法律を強いているが故の治安であり、ドバイ周辺から離れるほど浮浪者だったり素行に不安を覚える感じの人も見かけたりする。要するにシンガポールととても似ている雰囲気で、私も普通に旅行してるだけなのに警察ですらないセキュリティの人間に何度もパスポート確認受けさせられたりと印象は悪い。
 ルールで縛った治安の良さなので、旅行者に対しての寛容さがある感じではなく居心地の悪さを覚えることが結構あって、そういう意味で面倒だなと感じることが多かった。

◎ビザ・出入国
 日本人ならノービザで90日間の滞在が可能。聞いた話では飛行機で入国すると無料でSIMカードが配布されたりするらしいが陸路国境だとそういうサービスは無い。
 出入国の手続き自体は特に面倒なかったが、入国時に「上司に確認するから」と2時間近く待ちぼうけ食らったのでUAEのイミグレ職員は決定的に信頼していないというのはある。それと出国時に「出国税」として35ディルハム(約1400円)料金徴収されたのだが、これが現金は一切受け付けずカード払いのみと言われた辺り融通効かない国だなと思う。レシート(だと思う多分)もアラビア語しか書かれていない用紙しか貰えず後からカードの支払い請求でやっと料金確認できたのであり不親切感が強かった。

◎交通事情
 他の中東諸国同様に車中心の社会で自転車のことを全く考慮してないドライバーが多い。一応大都市の中心部になると西欧化が進んでいるのか自転車・歩行者優先の意識を持ったドライバーが出てきて横断歩道とかで止まってくれることもある。なお車両は右側通行。
 だがこの国の商業ドライバーは多くが南アジア(主にインド)系の人たちなので、国外出稼ぎに出れる上澄みの人たちとはいえ運転マナーは推して知るべしといったレベル。そういう「ちゃんとしたドライバー」とインド人が混ざり合っているので「このタイミングなら車が止まってくれるだろう」みたいな予測すると裏切られることがあるため要注意。自転車に関しても完全なスポーツバイク(ロードとか)乗ってる人はマナー守ってる印象だったが、普通の自転車や電動スクーターとか乗り回してる人の運転はロクでもないことが多い。そのクセ自転車用ヘルメットは着用してるアンバランスさが際立つというか。
 これは国のルールが厳しいことが関係してるっぽくて、赤信号を守らず突っこむ輩とかも少なかったのが印象的。逆走してくる自転車は多いのにそこはちゃんと守るんだね、と嫌味の1つでも言ってやりたい。

◎特徴
 人口の半分以上が異国からの労働者で占められている極端な人口構成をしてる国。かといって移民制度とも違い出稼ぎ労働者はある一定の年齢を超えるとビザが降りなくなるため自国へ帰国せざるを得ず、常に生産年齢が多数となっている若い人が多い国。
 特にドバイなんか場所にもよるのだろうがパッと見で9割以上が南アジアからの出稼ぎ労働者で溢れており、もうUAEじゃなくてここはインドと言っても過言でないレベル。
 こうした多数の移民による影響か法律による規制が非常に厳しくルールに対して面倒な印象を受けた。普通に旅行してる分には問題ない話じゃんと私も思っていたのだが、ドバイで宿泊する際に自転車は何があっても建物内に入れちゃ駄目と言われて余計な手間とお金を使ったように、思わぬポイントで影響してくる可能性がある。

◎気候
 まだ季節的には本格的な暑気を迎えていない3月だと思うけど、暑い日には平気で35度を超えてくる気温となる。それでもアブダビより北部は町の間隔が短くなりどうにかなるが、南部砂漠地帯は下手すりゃサウジアラビアより補給できる場所が少なかったりするので要注意。
 特に砂漠の走行時強い風に吹かれることが多かったが、灼熱の暑さに加えて砂粒が常に当たり続ける環境は本当に厳しいものがある。何気に海が近くて湿度もあるので汗ばんだ全身に砂が付着しザラザラになるのも不快指数高い。風はある程度運が絡んでくる要素だと思うが、道中寄ることが可能な町の少なさと宿泊費の高さから風待ちで数日滞在する・・・というのが少々難しいのが難点か。冬ならもっと内陸部を狙って走ることも出来そうだが、もっと暑くなる夏のシーズンは自転車旅行するような環境の国ではないと思う。3月はギリギリ大丈夫ってイメージ。

◎言語
 アラビア語が公用語らしいが特に都会だと英語の通用率が非常に高いのでそれほど言葉で苦労しない。田舎を走ってると結構英語が話せないという人出てくるのだけど、そういう人も顔見るとインド系なことが多いのでアラビア語じゃなくて母国語を喋っているだけという可能性ある。
 アラビア半島の国ではかなり開放的な国だけあって様々な標識とかにも英語表記が併設されてることがほとんど。スーパー等の商品もよっぽど小さな個人商店とかでも無い限りは値段に算用数字が併記されてるのが有難い。

◎宿(野宿)・Wi-Fi
 アブダビとドバイにはホステル系の安宿がある。なおドバイの安宿に関しては極狭で自転車を置かせてもらうことすら出来ず付近の地下有料駐車場に料金払って置かせてもらっていた始末。私が泊まった所は宿というよりアパートの一室で、看板とかも出てないためネットで事前予約してないと普通に辿り着くのはまず無理だし、仮に辿り着けても管理人が居らず手続きできない。要するにネットで事前予約するのが前提の宿なのだけど、自転車的には置き場所問題がついて回るため非常に面倒くさい。それでもアラビア半島の国は極端に安宿が少なかったこともあり疲れ切ってて長逗留したが。管理人もマネージャーも出稼ぎのインド系だったし利用者も大体出稼ぎの人ばかりだったが、その割には常識的なマナーを持ってる人が多くそこまでストレスは感じなかったかな。ドバイのルールが厳しいからかもしれない。
 なお宿を含めてWi-Fiはアクセス可能なポイントが多く優秀なのだが、電話番号にパスコード送るスタイルが多くSIMカード持ってないと結局Wi-Fi使えないということも多い。結局マクドナルドが安定してて優秀だった印象だが、一部のガソスタでFree Wi-Fiを使えたこともあったりして重宝した記憶が。速度はどこでも高速だったのでよっぽど重たい作業をするでもなければ大丈夫でしょう。というか速度は速くても1日に使える容量制限があったりするのでそっちで引っかかってしまい使えなくなるWi-Fiとかあるので注意。

◎動物
 いつものラクダとヤギだけかと思いきや、割と犬猫の姿を見かけることもあって「愛玩動物を飼育するような環境なんだなぁ・・・」と思ったことがある。なお犬は吠えられたことは何度かあるが、追いかけて来られたことはないので問題なし。
 その他に木々のある場所だと鳥の囀りが聞こえてくることが多く、その心地よさに砂漠という土地を忘れそうになったりも。悪い面では蚊が結構飛び回っておりハエと共にキャンプ中に邪魔して来てウザいし痒い。砂漠だとそうした問題はないのだが、環境面の厳しさが高いのでどっちもどっちといったところか。

◎自転車店
 ちゃんとしたプロショップには寄らなかったが町歩きしてて普通に見かけるショップは子供用とかルック車といった粗悪品とまでは言わないが品質の良くない自転車を取り扱ってる店が多く、これを出稼ぎの労働者たちが購入して利用している印象。
 それとは別にドバイでは何人かロードに乗ったサイクリストを見かけたので、この国における自転車は完全に二分して分かれている状態だと思う。行かなかったけどアブダビとかドバイにはデカトロンの店舗があるので安価な部品はそちらで代用することが可能ではある。

◎物価・食事
 サウジアラビアを基準にすると郊外はやや高め、都市部はやや安いという感じ。何となくUAEって無茶苦茶に物価の高いイメージがあったけど、ドバイを始めとして南アジア等の出稼ぎ労働者たちが多くを占めている関係でか食材を始めとした生活必需物資は安い。散髪とか5ディラハム(約200円)で出来る店がたくさんあったし。
 もちろん高い物は無茶苦茶高いお値段になってるし、世界唯一の7つ星ホテルとかも存在する国なのだけど、長期旅行をする人にとって必要となる物の値段は総じて高くないというのが私の結論。
 ただしレストランは「金持ってる人が行く施設」のポジションなので普通に高いし、そうした人たちが利用するのはチェーン店系のファストフードとか中東らしくケバブ店とか。私もネットと充電の関係で複数回マックを利用しているが、注文してたのは毎回2ディラハム(約40円)のアイスクリームだけだった。UAEで働いてる人は基本的に賃貸アパートのキッチンを使って自炊してる印象だ。まぁラマダンの時期だったので日中は多くの飲食店がシャッター閉めており余計にそう見えただけかもしれんが。結局この国で自炊以外に食べた食事ってラマダンで配布されたサウジアラビアでもよく食べたカブサという炊き込みご飯だけ。
 ちなみにイスラム教の国だが一応リカーショップで酒類の販売が行われていたりする。私もビール飲みたかったのだけど、場所も見つけづらいし調べた限りで値段も高いらしく「ムスリムの国でビール飲むのも良くないよな」みたいな良いこと言ったつもりで飲まずに終わった。

◎総括
 ドバイを始めとする都市部は完全に別の国という印象で、文化も宗教も全て投げ捨て「都市の発展」という点に全改造されたという印象。なのでこの国において「UAEらしさ」というのは町から距離を置かないと見えてこないというのが私の感想だ。ターミネーターが誕生するとしたらこういう町からなのだろうな。
 都会じゃなくても全体的に歴史や文化をスポイルして国の存続のために調整された感が強く、それ故無数の移民が入り込んでそれを縛るための法律が強化されて・・・というスパイラルに国という生物が生きていく強さを感じもする一方で、国とはそこに住む国民あってのもではないのか?とも思った。シンガポールに大きな土地を与えるとこういう国になるのだろう。
 面白い場所や出来事がなかったワケではないが、人や自然を求めるのならば他のアラビア半島にある国々で事足りる。自転車旅行で積極的に行くべきな国ではないかとも思う。
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 2025年1月24日〜2月28日 3月4日〜3月6日
 走行日数39日間
 累計走行距離2835km(1回目2688km・2回目147km)(161630km〜164318km・164626km〜164773km)

◎道路
 郊外にあっては95点付けても良いくらいどんな道にも幅広の側道が付いてて自転車的には安心して走ることが可能。マイナス5点分は交差点とかの手前でやたらバンプが多いのと、古い道路に亀裂が多くてガタガタ道となってることがある点。まぁ寒暖差の激しい砂漠という気候でこれを改善するの難しいのは分かる。
 んで問題となるのは都市部の道だ。サウジアラビアは完全なる車社会となっており、道路の造りも自転車のことは一切考慮されていない構造であるため非常に走りにくい。道の向こう側へ行きたくても信号機や十字路を減らして車両が停車しなくても済む構造になっている変わりに回り道をさせるスタイル。車なら1〜2km大回りしても構わないだろうが自転車としてはそんなのが連発してたまったものではない。なので毎回道路を横断するのに中央分離帯の段差を乗り越えるという無駄が入る。町中でも車が極力速度を落としたり停車することが無い方向に全振りされてる道路構造のため、中規模の交差点でも基本ラウンドアバウトだし大きな道同士だと立体交差点となっている。
 形だけ自転車道があっても全く自転車の使い勝手を考えておらず、しょっちゅう段差へ乗り上げが必要だったりレーンの上に車両が駐車してたりお店の荷物が置かれて通過できないとかあるためかえって走りにくい。
 そんな状態に加えて都市内の道が非常に入り組んでいるため目的地まで移動するのに最も支障ないのが幹線道路を使って付近まで移動することなのだが、市内の道路は側道が無い所も多く尚且つ立体交差点を多数乗り越えて進む必要に駆られ、交通量の多い中で内側の車線へ切り込んでいく必要があったりと何に付けてもストレスが多い。郊外に対して市内の道は精々5点というのが私の感想だな。
 なおサウジアラビアという国は国土が広いためか急峻な山が無いのだろうか、斜度の厳しい坂というのがほとんど出てこない。私が走った場所で1200m、国内には2000mを超える道もあるらしいが、緩やかに上り坂が続いていくためヒルクライム的に大変なことはほぼない。

◎治安
 これは素晴らしく良い。首都クラスの町中でも嫌な雰囲気を感じる場所がほとんど出てこないレベルで、国民の格差が少ないことを実感する。一応外国人の出稼ぎ労働者で南アジア諸国やイエメン・エジプトといった国の人には一部粗暴な雰囲気を醸し出す者のがいたものの、それでも何か犯罪に遭遇する・・・という可能性は極めて低いと思う。
 ただ犯罪絡みはともかく厳格なイスラム教の国であり、それに加えて国民が旅行者慣れしてないことから良くも悪くも「普通じゃないな」と感じることがそこそこあった。上手く言えないのだがこちらが想像だにしてない事でトラブルへと発展するような雰囲気を感じたことが何度かあって、久々に「こちら(日本)の常識が通じない何が起きるか分からない理の世界にいるのだ」という怖さを思い出した国でもある。
 まぁ基本的に何処で野宿しようが全然危険を感じることがない程度には安心感があったし、これほど国民から「この国は安全な国だよ」と言われたのも珍しい。実感としては日本よりずっと治安良いなと思っている。

◎ビザ・出入国
 2019年に観光ビザが解禁された国であり、それまではイスラム教徒でない一般旅行者がサウジアラビアを観光するのは不可能に近かった・・・というのは日記でも述べたのでこれ以上は割愛。
 とりあえずサウジアラビア入国には事前にeビザでネットにおける手続きが必要で、内容入力等は他国のeビザと比較しても簡単な部類に入るし、データ送信すれば5分もかからずにビザが発給される爆速っぷり。ただしネックとなるのは他の旅行保険に加入していようが関係なく強制的に保険に加入させられる点で、この料金が結構お高くビザ代と併せて2万円近くになる。今まで訪問した国の中でも断トツでビザ代高い国だったぞ。
 ビザさえ取っておけば出入国の審査自体は簡単で、ほとんど質問を受けることもなくアッサリスタンプ押してくれる。というかビザをプリントする必要すらなかったし、何ならスマホに残されたビザのデータすら確認してないレベル。マルチプルで90日間の滞在が可能のため1度取得すれば周辺国との周遊で使っても十分間に合うのが救いか?
 余談だがイスラム教徒以外にはある種の鎖国政策みたいなことしていた関係で、これだけ海外ツーリズムが盛んな現代においても国民の大半が外国人に対してスレていない。特にアジア系で日本人はやたらと人気で会う人会う人喜んでくれるのだけど、もう何年かして外国人旅行者が増えて定着するとこうした反応も薄れていくかと思われるのでサウジ旅行するなら早い方が楽しめるように思う。

◎交通事情
 この国を先進国として見るならば相当悪い。冬の時期でも暑い場所の多いサウジアラビアは夏季ともなると車両以外の移動手段なんてほぼ考えられないのだろうと想像する。そのため道路は完全なる車社会であり、歩行者や自転車といった存在をそもそも想定していないという感触が強い。
 だから危ない運転したりクラックション鳴らしてくる車両というのも、途上国的な自分勝手な運転の結果というより「そもそも軽車両がいる際の運転の仕方を知らない」というのがしっくりくるかな。自転車的にはどちらにしても危険と感じるのは変わりないのだけれど。なので横断歩道で自転車や歩行者が待っていても基本的に車が止まって道を譲ってくれたりはしない。レアケース過ぎてその場合どうするべきかを分かってないから。ドアを開けたり発信する際にもまず後方確認とかしない(エンジン音がしないで車道の後方から車両が来るということを考慮してないと思われる)ので、そうした車を追い抜く際には充分な安全マージンをとっておく方が良い。
 郊外の幹線道路だと最高140km/h制限という道路があったし、片側1車線のローカル道でも制限速度100km/hとかの道はザラにある。そんでそうした道を120〜130kmでぶっ飛ばすのが当たり前であり、いくら側道が広いとはいえ日が沈んで視界が悪くなったらマトモに走れたものではない。基本変化の少ない単調な道ということもあって、ドライバーは普通に電話しながら運転する上よそ見もわき見運転もなんでもありというのが普通なので。ただし飲酒運転してるアホはサウジアラビアでは完全に存在しない。
 総じて道路状況の良さに助けられてる感じがあり、そうした環境が悪くなる町中だと危ない場面に遭遇する機会も増える。町中でも大きな通りにはしっかり側道が作られてることが多いので、下手に狭い道を走るよりもかえって安全だったりすることもある。道の走りにくさも含めてこの辺の道路選択が重要かなと。

◎特徴
 イスラム教発祥の地であり、それ故非常に厳格なイスラムの教義が敷かれている。なので飲酒は当然できないし国内で売ってもいない。異教徒の服装であっても膝を出すような格好はよろしくないとされており、サウジアラビア滞在中はずっと長ズボンを履いていた。
 ラマダンの時期と一部被ってしまったが、やはり飲食店は日中閉鎖している所が多く自炊しない人には相当厳しい環境だし、自炊するにしても日中人前で食事してる所を見られるのは良くないため気を遣う。
 こうした反面、イスラムの教えにあるらしい旅行者に対し親切にせよという教義があるのを非常に強く感じた。特に砂漠で水の貴重さを分かっているためか、多くの人から水を頂く機会があったし宗教系の施設には冷水機やフリーで持ち出し可能なペットボトルまで常備されていることも多々あった。私は異教徒なので最初遠慮してたのだけど「お前みたいな旅行者が利用すべきだ」って彼らが持ち切れないほど渡してくれるんだよマジで。
 ということでイランと並んで人様による親切を最も強く実感した国の1つでもあり、イスラム教という宗教について色々調べたり考える切っ掛けを与えてくれた国でもある。

◎気候
 真冬のサウジアラビアは想像してたよりも寒い場所が多かった。国土が広い上に標高的にも2000mを超えてくる土地とかあって、同じ1月でも30℃を超える暑い場所がある一方で雪が降ったりする場所もあるらしい。
 アラビア半島を横断すると内陸部の標高高い場所では結構な寒さで、明け方には氷点下まで気温が下がることもあったので注意が必要ではある。夏の時期には平気で45℃を超えてくるような気温となる国ため、旅行的には12〜3月がベストシーズンとされているのだとか。
 そんで国土の大部分が砂漠であり町を抜けると砂が広がる世界が続くため、自転車的にはとにかく風に翻弄される国である。ところがサウジの風は一定方向に吹き続けるような土地ではないのか、日によって風力・風向もバラバラであるため運次第で酷い目に遭う。風力が強い時はパタゴニアに負けないほどの爆風となることもあり、しかし砂漠の道中で食料が限られてる状態だと停滞することも難しい・・・という状況に陥るとかなり悲惨なので、この点の見通しよくするためだけでもサウジでSIMカードを購入する価値はあると思う。私は持ってなかったけど。
 雨の心配は全くしないで良いかと思いきや、地味に降られることがあり聞いたところで「以前は1年で1〜2回程度しか雨降らなかったけど、ここ最近は雨降ることが多くなった」とのことで、気候変動の影響とかあるのかもしれない。

◎言語
 アラビア語。だけど看板だったり商品の情報には英語に算用数字も併記してくれることが多く、他のアラビア語を使う地域よりは楽だった印象。田舎に入るとそうも言ってられない場合も多いが。
 イランと同じくとりあえずアラビア語の数字で0〜9までは覚えておいた方が賢明。これが分からないと道路標識で次の町までの距離すら把握できないことも多い。
 英語の通用率は3〜4割といったところか。話しかけられる機会が多い国なので意思疎通に苦労することは多いけど、サウジアラビア人はちゃんと「相手が理解できるよう考えてコミュニケーションを取る」人たちなのでそこまでストレスは無い。インドよりよっぽど英語話者少ない筈だけど、インドよりよっぽどコミュニケーション取りやすくて最初の頃は驚いてた。
 先進的な国なので大型スーパーで買い物するとレシート発給されるのだけど、これが全てアラビア語での表記であるため後になって物の値段を確認しようとしても何が何だか全く分からず、値段と個数で「恐らくこの商品はコレ」・・・みたいな確認してたことがある。アルファベットじゃない言語は推理の取っ掛かりすらないため難しい。

◎宿(野宿)・Wi-Fi
 非常に野宿がしやすい国である。土地のほぼ全てが砂漠なので町を離れてしまえば何処でもテント張り放題!・・・かと思いきや、砂漠は遮蔽物が無い環境故に風が強くなりやすい。そうすると細かい砂粒がどんどんテント内に堆積するためメッシュテントの方が不利になる土地である。私はフルメッシュのテントだったけど。
 ということでテント設営には最低でも砂丘みたいな防風できそうな場所か人工物の風下を利用してテント張っていた。サウジアラビアはそうしたテントの張りやすい人工物や廃墟が非常に多く、そういう意味で野宿のやりやすい国といえる。ちなみにサウジには基本「安宿」という宿泊施設が存在せず、観光地や首都だろうが普通のホテルしかないためテント泊ができないと非常に苦労する。
 ちなみにWi-Fiも見つけるのに苦労した国で、先進的な国だと思って甘く見ていたと後に反省した。チェーン店の施設的にはマックとコスタコーヒー、スタバには100%Wi-Fiが付いてたが、マックだとコンセントが併設されておらずPC作業的なことをやり辛いのが難点。他の2店舗は数が少なくて州都クラスの大都会でないと見つけるのが難しい。サウジアラビアを走行するならsimカード購入してこの辺の問題を潰しておく価値は大いにあると思う。何気に町と町の距離がそこまで離れていないため、電波の通じるエリアもかなり広いとのこと。

◎動物
 危険な生物では砂漠らしく蛇や蠍がいる。私も走行中に蛇を見かけたことがあったので、あまり安易に砂の中を駆け回るのはオススメしない。まぁ現地の人が車停めて駆け回ってたりしてるの何度も見てるので気にし過ぎかもしれないが。
 大型動物ではラクダの他に羊とヤギの姿も目立つ。いずれも家畜として運用されてることが多いが、ラクダに関しては野良としか思えない個体をかなりの頻度で見かけたし、そこら中に「ラクダ注意」の看板がある通り道路を平気で闊歩してたりする。なお自転車が近づくと全力で逃げていくので接近して写真撮るのは難しい。
 乾燥地帯特有の都市部じゃない人が住むエリアにはハエが飛び回っているが、田舎でも衛生的にしっかりしてる国だからか本気でウザいと感じるほどの数に晒されたことはなかった。加えて海沿いの町でもないとほとんど蚊が出てこないのが嬉しい感じで、珍しくその手の生物で困ることの無かった国である。昆虫というならフンコロガシを見かけることは実に多かったな。
 それと犬は結構アグレッシブな奴が多くて何度か追いかけられた。怒りの鉄槌でしばき棒をぶっ叩いてやろうかとも思ったけど、自転車の間際まで走ってきて戦闘モードの個体は見なかったので敷地に入ると反応して吠えまくるタイプばかりだった印象かな。

◎自転車店
 州都クラスの大きな町ならプロショップが幾つかある。私もボロボロのバーテープを新調したくて訪れようとしてたのだけど、見事にサウジアラビアではショップが潰れていたり閉まってたりして入店することは叶わなかった。これには運もあるけどサウジの個人系店舗だと日中13時ごろから16時まで営業してないという形態の影響が大きかったところもある。
 なので外から覗いた印象でしかないが、全体的に専門店というより一般シティサイクル等の販売割合が大きい店が多い。日本でいうとサイクルベースあさひみたいなタイプの店。
 働いてる店員も南アジアやエジプト・イエメンといった周辺諸国からの出稼ぎ労働者がほとんどで、特段自転車の知識や技術を持ってる人でない(そのくせ彼らは自信満々に「知ってる・できる」と答える)のでトラブル対応に関しては慎重に対応した方が良い。
 あとジェッダの町にはデカトロンの店舗があり結構品揃えも良かったので最低限交換部品を揃えるだけならこちらを利用するのも有り。確認してないけどリヤドの町にも同店舗あるだろうし。

◎物価・食事
 かなり高い。一般的に先進国は食材関係に限れば自社ブランドの展開とか国内企業の商品に関してはお手頃だったりと「高い中にもお買い得の商品がある」というパターンが多いのだが、国土が砂漠でるためかそうした自国産の商品というのがデーツくらいしか見当たらず「普通に高い」商品と「輸入品で無茶苦茶高い」商品とで区分されてる感じ。
 ただ西欧ほどガチガチの物価高では無く日本とどっこい程度のイメージだし、肉に関してはサウジの方が確実に安い。なので自炊を続けてる限りはそこまで金額的に厳しく苦労することは案外少なかったりする。なお石油産出国だけあってガソリンは1ℓで80円ちょっとと非常に安い。
 むしろこの国では宿泊施設関係とかレストランが値段高いこともあり、自転車旅行でテント泊を繋げていくと実際に使用する金額は驚くほど少なかったりも。私は初日に1500リヤル(約6万円)を降ろしたのだが、約40日間の滞在で400リヤル残った状態でサウジを終了した。つまり1日あたり1000円ちょっとの金額だったと換算できる。これはこの国で滅茶苦茶たくさんの人から食事を共にしたり助けてもらった故の結果ではあるが、案外安く旅行できる国だったなというのが私の感想だ。むしろビザの代金で2万近く取られたこと石油産出国で裕福なイメージが強かったこと、初日で調味料からコーヒー豆や日本食材の購入に8000円くらい使ったことで想像以上に物価高という感覚が抜けず、後になってみたら「あれ?意外と物価高くない・・・」と感じたというのが正直なところか。
 結構な回数地元の人たちと一緒に食事をする機会があったのも嬉しい点で、伝統的なサウジスタイルの場合は大皿を囲み素手で食するのが基本。米料理のカブサは熱々の状態で運ばれてくるため指を火傷しそうになったりもしつつ食べていた。
 特にラクダやヤギの肉を食する機会が多かったが、どちらも肉が繊維質で噛み切るのに難儀するため圧力鍋使って何時間も煮込みトロトロの状態にして提供していたのが印象的。骨まで食べられるほどである。それとラクダのレバーなんかも頂いたが、コリコリ歯応えが良く臭みもないので大変美味しく内臓系が苦手な私も大変満足できた。総じて煮込み料理が多かったのと肉料理ばかりでレパートリーは少ないものの、サウジアラビアの料理は満足いくものばかりだったな。

◎総括
 元々は2024年にイランからフェリーでホルムズ海峡渡ってUAE経由で訪れようと思っていた国なのだけど、当時色々トラブルあって訪問延期したため「ようやく訪れることができた国」でもある。今にして思うと4月や5月にサウジアラビア走るのは気候的に厳しすぎる環境だったので、むしろベストシーズンである1・2月に訪問できたことは幸運だったと思っているが。
 この自転車旅行を始めた頃にはまだ外国人旅行者が入国できなかった国であり、そのため私自身も興味薄かったのだけど2019年のルール変更と幾つかイスラム教国を訪れたことで「是非とも行ってみたい」という国に変わったワケだが、本当にサウジアラビアを走ることが出来て良かったと思っている。
 酒は飲めないし砂漠が続いて正しく「ドライカントリー」なのだけど、いつだって沢山の人たちが助け力を貸してくれるこの国は全然ドライなんかじゃない。こんなにも人に対して感謝ばかりが思い起こされる国というのは流石に少なくて、どれだけこの国の人たちによくしてもらったかを噛みしめながらこの文章を書いている。本当にお世話になりました。
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 2025年2月28日〜3月4日
 走行日数5日間
 累計走行距離308km(164318km〜164626km)

◎道路
 非常に良い。サウジアラビアと似ているようで都市部における走りやすさが全然違う。ドーハの町中でも自転車道が様々な場所に設置されており自転車に対しての配慮が(サウジと比べて)大分感じられる。とはいえ車両のために造られた計画都市であるためドーハ市内中心部へ向かうにはA〜Gまでのリングロード(環状線)を越えなくてはならずこれが非常に大変だった。ある意味地図では向かえるのに実際走ってみるとマトモに通れない道というのが多くて慣れてないと迷うこと必死。
 そもそも国全体の面積が小さい上にドーハ都市圏以外は規模の小さな町しか存在しておらず、砂漠に関してはほとんど高速道路上を走行することになるため広い側道と滑らかな路面で問題となるようなことはない。この国で苦労するのはもっと別の点だ。

◎治安
 良いのは間違いないが、サウジアラビアと比較すると出稼ぎ労働者の雰囲気や態度が悪いのが気になった。サウジアラビアが非常に保守的な国なのに対して、カタールは猛烈な勢いで経済成長している上にサウジより開放的な面があるのでより多様な人間が集まる故だと思っていた。サウジアラビアでは一切見なかった路上で寝ている浮浪者も見かけたりしたので、ドーハの場所によっては治安の悪いスラムみたいなエリアがあるのかもしれない。

◎ビザ・出入国
 日本人ならノービザで90日までの滞在が可能。国土を鑑みるに時間的な問題となるようなことは全くない。それよりサウジアラビアとの陸路国境は2ヶ所あるように見えるが、実際は西部に位置するサルワ国境しか開いてないため注意が必要だし、ドーハから空路入国でない場合はかなりの距離同じ道を往復する必要がある。
 なおイミグレーションでは自転車の存在が珍しいのか警察車両が入国管理室、荷物検査場、出口と先導してくれる。審査自体はほとんど質問もなく簡単に終わったが、多くの人が車両で出入国する際に車両の情報が書かれた用紙を提出するようでそれを出せと言われて驚いたりした一幕がある。

◎交通事情
 非常に悪い。ときどき「目が見えてないんじゃないか?」と思うような運転するドライバーがいるし、クラックション鳴らすことも数多い。こちらが横断歩道を渡っているにも関わらずクラックション鳴らしまくって「どけ!」と威嚇してくるのはドライバーのレベルが低いと思わざるを得ない。
 特にトラック等の貨物車両は周辺国からの移民労働者がドライバーである場合が多く、カタールにおける移民の多くは南アジア諸国やエジプトやイエメン、イランといったアラブ系の国の人たちであり、自国を出て職を手にすることおが出来るという意味では上澄の人たちなのだが、それでも国民性なのかクソみたいなドライバーが多い。
 ドーハでは極力自転車道から外れないよう走行していたが、それを徹底するといつまで経っても目的地に辿り着けず仕方なく車道に出ることがままあったが、脇スレスレをぶっ飛ばしてくイカれポンチと遭遇して肝を冷やした場面も。
 基本的に自転車や歩行者に対しての配慮という考え方は存在してないので、優先道だろうが何だろうが常に気を張って集中してないと危険。とはいえ都会がドーハしかない国なのでドーハの中心部から半径30km超えてしまえば特別気にするようなことは起きないが。

◎特徴
 アラビア半島に幾つかある首長国の1つ。首長というのはイスラム社会における君主(アミール)のことを指しており、カタール以外にもクウェートやアフガニスタンといった国も首長国。アミール(Amir)を英語表記にするとEmirからEmirateとなり、UAEは7つの首長国が連合しているからUnited Arab Emirates(アラブ首長国連合)となる。
 首長が絶対的な権力を持つタイプの国だけど、バーレーンとかオマーンみたいに首長国から王国へと変更した国もあるように、地域を治める部族の長(とその家族)で首長国、と国を収める家族の長とで王国と考えると国としては大して違いないような気もする。現にサウジアラビアは元首が王と名乗っているので王国だし、オマーンは元首がスルタンと名乗ってるのでオマーンスルタン国が正式名称。というかこれ別にカタールの特徴じゃないな。

◎気候
 3月初旬なら晴れててもまだ気温は20度代前半で過ごしやすい気候だといえる。国土の大半が砂漠の国なのでとにかく風の影響が大きく常に風向きに気を配って走行していた感じ。全体的に冬の時期は北からの風が吹く傾向にあると思うし、私がカタール滞在中は8割そんな感じだったけど最終日は東風が吹いたりと常に安定して吹くわけでもなさそう。
 やはり夏の時期は気温が高すぎてマトモに外で活動できない暑さになるらしく、自転車で走るのなら冬の時期を選んで訪れるのがセオリーの国である。

◎言語
 アラビア語。英語の使用者はかなり多く、地味にカタール人と話した場合はほぼ全員が英語で会話してくれたような気がするレベル。もっと地方の田舎行けば違うのかもしれないが、そもそもカタールにそこまで地方や田舎といった存在があるのか怪しいほど小さな国だし。
 英語を話せない人で多かったのは出稼ぎ労働者の人で、かといって彼らアラビア語で会話してるのかと思ったら母国語使ってるという人も多かったな。

◎宿(野宿)・Wi-Fi
 ドーハに安宿ないのかネットで調べてみたけど表示された最低価格が1泊7〜8000円とかだったので、カタール国内に安宿は存在しないということで結論付けても良いと思う。ということで全泊野宿のつもりでいたが、地味にこの国野宿が難しくこの点が自転車旅行者にとって難易度高かったように感じる。
 これは主に道路周辺に柵が張られており道から離れることが難しい点と、サウジアラビアと比べて風除けに利用できそうな廃墟だったり人工物が乏しく、あってもちゃんと人が近づけないようフェンスで囲われていたりするから。ということでカタールでテント泊するなら事前に目星となるポイントを見繕っておいた方が良い。私もi-overranderみたいなサイトで記されたテント泊エリアを事前に調べておいたクチだが、何が原因か1度も記された場所でテント張ることは無かったのだけど。基本的には国土狭いので2〜3箇所も調べておけば全て利用する頃には出国してると考える。
 なおWi-Fiに関してはかなり優秀でネット利用で困ることは少ない。ただ今回ラマダンの最中に訪問したこともあり、チェーン店系のファストフード店でも「今は持ち帰りしか利用できないよ」と店内で充電&ネット作業をしたくても断られることがあったりしたため注意が必要か。運も悪かったといえる。

◎動物
 ラクダとヤギしか見てねー。砂漠なのにハエが出なかったのは驚きだなそういえば。短い滞在だとこんなもんになりやすい。なお犬は1度も姿を見せず。

◎自転車店
 ドーハ市内には複数スポーツ系のショップがある。品揃えもなかなか良く、私が訪れたショップはとてもフレンドリーに接してくれたのもあって非常に印象が良い。物価の高いカタールだけど、自転車部品に関しては大体許容範囲の価格帯だったし。
 ただ全体の半分近くはスポーツバイクというよりはシティサイクル系の用途に使われるお店であり、品揃えも大したことなかったな。計3店しか覗いてないからあまりはっきりとしたことは言えないけれど。
 確認したわけじゃないけど恐らくドーハ以外に自転車を扱うような専門のお店はない。そもそもドーハから最も遠い場所で100km程度しか距離がない国なので、カタール国民は何か必要に迫られた買い物があればドーハに行くのだろう。

◎物価・食事
 非常に物価高と聞いていたが正直サウジアラビアとほぼ変わらん。むしろ物によってはカタールの方が安いくらいだし、カタールのお店では必ず値段表記が成されているので「買ってみたら異様に値段高い商品だった」という罠にかからない分サウジアラビアより買い物しやすい。
 少なくとも私が訪れた全てのお店でカードによる支払いが可能だったこともあり、カタールではこの国の現金を1度も拝むことのないまま出国した。短期滞在ならこれで十分やっていける。
 ただ旅行者が買うような食料品なんかは安かった反面、嗜好品に当たるコーヒー豆は250gで65リヤル(約2700円)という恐ろしい価格を出されたのであり、1番安い豆でこれかよ!と仰天した。100gで約1100円ってなかなかお目にかかれない高級豆だぞ。
 ということで単純にスーパーで食材のみを買って過ごすのであれば案外安くイケるが、一般的なツアーだとか買い物といった旅行をするのであればバカ高くつくのは避けられないんだろうなと思ってる。自転車旅行はお得な旅行スタイルだ。

◎総括
 滞在期間は短かったが面白い国だったなと感じる。アラビア半島の大部分を占めるサウジアラビアとはまた違った雰囲気があり、しかしUAEほど開放的ではなくとはいえ石油に大きく依存している産業的にはサウジ寄りの国。やっぱり大部分が砂漠なので風次第で大きく左右される国だけど、国土が小さい関係でサウジほど走行難易度が高くなく、アラビア半島において自転車旅行をするなら最初に訪れやすい国の1つだったと思う。
 その上でアラブの雰囲気とイスラム教の人たちによる文化や親切心を多々感じることも出来たので、小さな国土に魅力がギュッと詰まったという意味で旅行しやすい国だった。物価も一般食材に限ればそこまで高額ではないため値段表記が徹底されてる分サウジよりも安定して活動できる。
 日本人ならみんなが知ってるドーハの悲劇の舞台でもあり現地に赴き思いを馳せるのも一興だが、それだけではない国でした。
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 2024年5月28日〜8月13日 9月11日〜9月25日 12月3日〜2025年1月23日
 走行日数145日間
 累計走行距離7485km(1回目3756km・2回目896km・3回目2833km)(151206km〜154962km・156346km〜157242km・158797km〜161630km)

◎道路
 かなり良い。日本の約9倍という広大な国土にかなり細かく網の目状に道路が通っているが、少なくとも主要道路に関してはしっかり舗装されているし側道もあって自転車的には走りやすい。というか側道の存在が無かったらインドの主要道路なんて怖くて走れたもんじゃない。
 一部の都市にしか信号機はなく、かといってラウンドアバウトタイプの交差点もそれほど多くない。なので交通マナー的に交差点の存在が非常にストレスとなる。
 主要道路はどこも大体中央分離帯がガードレールとかで物理的に遮断されていて、下手に反対車線へ入り込めないようハード面で対策されているのだが、これが原因で普通に道路を逆走するドライバーも多いため油断は禁物。
 基本的に路面状況も良好で、一部ガタガタだったり州によっては速度落とすためのバンプが大量に設置されていたりと特色があるものの、ラダック以外の土地ではアップダウンがほとんどないこともあって高速巡行で走り続けることが可能。小さな村とかに入ると一気にインフラレベルが低下するし未舗装のガタガタ道が大半だけど、単純に町から町へと移動する分には道路で困ることは少ないと思う。
 ただし道路工事の規模が非常に大きく、2〜30kmに渡ってアスファルト掘り返して未舗装路が続いたりすることがある。1度こうした道に入ってしまうとなかなか別のルートに逃げられずドロドロにされながら走行が続くこととなるため悩ましい。
 とにかく車両の数が多い国なので下手にマイナー道路に入っても「車両がいなくて快適」とはならず、むしろ狭い道路でインド人ドライバー盛り沢山というおよそ考えうる限り最悪の状況となる可能性の方が高いため、基本的には幹線道路を選ぶようにしてルート選定した方が良い。
 あと都市部に関してはもう道路状況とか関係なく最低を煮詰めたような状況での走行を余儀なくされるため、極力人口が多い都市には近づかない方が良い。私は5月のデリー脱出で「これ下手したら死ぬかも・・・」とか思いながら走ってた。

◎治安
 あまり良くない気がする。何というかインドは直接的に何があった訳じゃなくても「油断してはならない」と思わせるに足る感覚があったし、恐らくそれは間違っていないと思う。
 とにかくインド人って地元コミュニティ以外の人間が現れると多くの人間が声をかける訳でもなく「じっと見てくる」傾向があり、何処にいても人から監視されてる節がある。それはある意味安全なのでは?と思うのだが、彼らはその一方で私が自転車から離れると、直ぐに自転車を勝手に触り始めブレーキを握りライトを点灯させる。要するに他人の物だからとかそういった遠慮が全くない人たちなのであり、このため人のいる場所では「常に監視されている&自転車から離れると勝手に触られまくる」という事態が多発することから不安感が強い。どう好意的に見てもインドは貧富格差の凄まじい国であり、貧困から起因する窃盗系の犯罪は低くないように感じるため、こうした状況は常に不安を覚えつつ活動していたし宿に自転車置くときは最低でも建物内でないと安心できないと思っていた。日記には書いてないけど、自転車から目を離した隙に手持ちライトを盗まれたし。
 だがまぁ盗難以外のアグレッシブな強盗だったりインドで悪名だかい詐欺とかに関しては所詮デリーとかの大都市や観光地及びその周辺に限定した出来事であり、そんな人の多い場所には絶対行きたくなかった私的には全体を通して危険だなと感じたことがない。夜中も平気で出歩いてたけど何とも思ってなかったな。とにかく沢山の人が声かけてくる国だけど、結局私は1度も詐欺どころか宿の営業すら受けたことはない。悪者が一部の地域に集まり過ぎているため、むしろ地方は落ち着いているという状況だと言えるのかもしれない。

◎ビザ・出入国
 入国にはビザが必要な国である。2024年現在でそのビザ自体の種類が複数存在しており、主要な国際空港からの入国であればアライバルビザも発給されたりする・・・と書くと案外入国簡単そうなイメージだけど、インドという国のイメージがそうであるようにルールもかなり適当でしょっちゅう規定が変わったりする不確実なアライバルビザは確実性に欠ける手段として人気がないらしい。
 ということで一般的な旅行者なら他に大使館に出向いて取得する領事ビザかネットからの申請ができるeビザを選ぶことができる。そんでここ最近の状況だと圧倒的にeビザが便利で簡単となったため、私はeビザの手続きをとって入国した。ビザのタイプもマルチプルビザ(期間内に何度でも出入国可能)だし、何度も大使館に足を運ぶ上にビザ発給までパスポート預かられてしまう領事ビザと比べて特にマイナスとなる要素がない。今なら基本的にeビザでの発給が1番だと思う。地味に1度発給すると最大5年間有効なビザ(期間は選べるのだがどれを選択しても料金は同じ)らしく、再訪するかどうかは知らないけど当然のように5年間有効ビザを取得した。
 手続きのやり方に関しては日本語でも細かく説明してくれるサイトがたくさんあるので調べれば良いし、申請してから1日後にはビザが発給されたとメールが来たくらいにはスピーディだった。ただし到着する飛行場や初日の宿とかを記載する欄があるため事前に航空チケットを購入しておくことが条件となり、ビザ発給にはある程度前もって準備をする必要がある関係上自転車旅行的にスケジュールを縛られてしまう航空券を早いタイミングで購入するというジレンマが。私はフライト期限に遅れるのが怖くてかなり余裕持ったスケジュールで予約したのだけど、そのためバトゥミに到着してから時間持て余したりした。
 それと面倒臭い点で「eビザでの初回入国はフライトのみ」という謎の制限がある。このため例えばネパールに入国して陸路でインドへ渡ろうとした場合、過去にインドへ入国してないとeビザでは入国することができないという問題が。私がこの地域で最初にデリーからスタートしたのもこの問題を解消するためである。
 なお肝心の入国審査はeビザのデータ印刷した書類さえ準備しておけばほとんど問題にはならないが、入国時に書かされたカードとビザ書類との内容を確認してたので、私みたいに電話番号や宿泊地の住所を適当に記載してると齟齬が出て詰問されるかもしれない。

◎交通事情
 ゲロカス。オブラートな言葉に包むことすら不可能な世界最低レベルの運転マナーとクラックションの嵐。自転車でインドを走ると他にどれほど魅力的な面があろうとも、この運転の酷さから魅力が大きく減退してしまうことに疑いの余地はない。
 とにかく自己中心的な運転が目立つ上にインド人の運転技術そのものもかなり低いと感じさせる。なので車幅を見誤って隙間に突っ込み接触事故起こすとかしょっちゅうやってるし、先を見通した運転なんかできないため限界まで車間距離を詰めて、その結果反対車線からの車とかち合い逃げ場がなくなりお互いに「邪魔だ」とひたすらクラックションを鳴らし続ける不毛な光景が出来上がる。
 というか意味なんか無くてもクラックション鳴らしまくっており、それが凄まじい数であちこちで聞こえてくるため本来の意味である「危険を知らせる」といった方向に活用されてない。この国でクラックションに一々反応してたらマトモに運転なんかできないという話。
 大概の国ならバス・トラックやリキシャと呼ばれる三輪タクシー、バイクと車種によって危険度に差が出るものだが全て満遍なくクソ運転してくるので逆説的に「どれが1番危ない」というのが存在しない。ただ自転車的に1番おっかない思いをする確率高いのがリキシャで、コイツら自転車をオーバーテイクした直後に急ブレーキかけてくるヤバい運転を躊躇なく行うため洒落になってない。救いなのはラダック地方や高地のエリアでは姿を見かけないことか。
 基本的に「ルールを守る」という概念が存在しないため遮断機の降りた踏切や赤信号でも関係ないし、むしろコチラが信号表示に合わせて停車してるとその脇を凄まじい速度でぶち抜いて行く輩がいるため下手なタイミングで停車しない方が安全という始末。彼らが停車するのは「自分が危ないから」であり、それ以外の理由はない。
 またブレーキ使って減速・停車することを「負け」と考えてる節でもあるのか、速度を落とすのは最後の手段として運転していると思われる。つまり前方に自転車がおり道路幅が狭い場合「広い場所まで待つ」ではなく「クラックション鳴らして退かせる」というのが第一行動となり、例え状況的にどうやっても道を譲れなかろうが関係なくひたすらビービー鳴らし続けるか無理矢理狭い隙間に突っ込んでくる2択となる。そこまでして急ぐ理由があるインド人は多分0.1%もいない。
 あと地味に気分悪いのが運転しながら平気でゴミを投げ捨てまくるしその辺に唾を吐きまくる点。特にインドは「パン」と呼ばれる一種の噛みタバコのような嗜好品が広く好まれており、これで真っ赤になった痰をそこらじゅうに吐きまくっている。一説ではインドの車両が後方からクラックション鳴らしまくるのは「脇を通るから痰吐くなよ!」という意思表示なのだとか。
 まぁ全体的に「クソ運転する車両の数が多い」ということが最大の問題となってる感じで、つまり非常に小さな交通量の少ない道を選ぶか、若しくは完全主要道路で最低でも片側2車線に側道があり中央分離帯がしっかりしてて反対車線にはみ出して来れない道を走るか・・・という両極端で考えた方が正解だと思ってる。ただし後者は側道を逆走しながらクラックション鳴らしまくり突撃してくるバイクや車両がいるため一言で「安全な道」とは言えないが。ともあれ中途半端な大きさの道が最も危険。
 後ろを全く確認せずにバックを始めたりガードレールとの間に自転車がいるのに外へ寄ってくる車両に相対することも多く、褒められた行為では無いがこういう輩に対して遠慮してても怪我するのはコチラ側なのであり、そうした際には車体を蹴り飛ばして気づかせる・・・くらいの覚悟を持っておいた方が良い。大声上げたくらいじゃインド人は止まらないので。
 まぁ色々あるけど自転車乗り的にインド人のイメージが悪い理由の半分以上は交通マナーの悪さが起因している。むしろこの国の人は緩やかで親切な人が多かったイメージなのだが、それらを全て覆すくらいには酷い運転してるということだ。

◎特徴
 あんまり人に関することは国別まとめに記載しないようしてたのだが、この国ではインド人の独特な文化や考え方こそが他の何より重要で把握しておくべきことだと思うのでまとめておくことにする。
 私も色々体験したし、その手の文章読んだりして最も腑に落ちた説明が「インド社会には現代社会の規範である公平・平等という概念が尊重されていないこと」という説明であった。インドにはもちろん親切で気の良い人も多数いる反面、平気でゴミを捨てル・時間や約束を守らない・都合が悪くなると言い訳で逃げる・周囲の迷惑を顧みない行動等々、自分の権利を守るためには他者の権利を踏みにじっても構わないと思える行動を平気で取る。
 要するに相手にも自分と同じ権利があるという公平性や社会性が乏しい人間が多い。この考え方に極めて大きな影響を与えているというかインド人のアイデンティティーとして機能しているのがヒンドゥー教であり、この宗教で語られる生死感だとか悪名高いカースト制度が土台となっているのは当の(日本語話せる)インド人から色々話を聞いて強く感じた。
 要するにインド人と我々現代日本人(というか近代以降の西欧社会全般)が持っている価値観・倫理観は非常に大きく剥離しているということだ。海外旅行していると「異なる価値観に触れ合うことが魅力の1つ」というのはよく語られる言葉だが、それは「基本的人権を尊重した上で」という枕詞が隠れている。何が言いたいかというと、他人の権利を侵害して平等さに欠ける行動をして「これがインドの考え方なのだ」と好意的に解釈するのは難しいということだ。少なくとも私は列に横入りされれば腹が立つし、隣のインド人と同じ商品を購入して私だけぼったくられれば文句も出る。そんなのは途上国であれば何処でもあり得る話なのだけど、インドという国(特に北部)ではこれが余りにも頻繁に起こりすぎるのであり、ある臨界点を超えるとインドの全てが嫌になる。
 私もリシケシュを出発して少々経った頃、インド人のあらゆる点が嫌になり彼らが声をかけてきても無視して会話しないことでこれ以上ストレスが増えないようしていた時期がある。今思えば色々ギリギリの精神状態だったのかもしれない。
 悩ましいのは改めてこうした特徴を整理し把握したとしても、この価値観の違いによって生じるストレスを軽減する具体的な術がないということだ。ただ私は物事の要因がなるべく言語化できている方が良しと考えるし、相手の行動原理が一部でも知れれば共感は出来ずとも理解に繋がるかもしれない。
 あと1つ断っておきたいのが、こうした特徴を強く持つ人が多い一方で、そうでない人もまた沢山いるという当たり前の事実があること。特にインドは地域によって人の特徴が大きく変わる国とされており、個人の性質をこうだと当て嵌めることなど出来ないのだ。あくまでも全体的な傾向くらいに思って頂きたい。

◎気候
 山に向かわない限りは基本的に何処でも暑い。しかも湿度が高くてベタつく日本的な不快指数の高い暑さであるのが厄介な点。インドという国はちょっと変わっていて北半球の一般的な国と比べて暑さのピークが1〜2ヶ月早い時期に訪れる気候であり、つまり4月後半から5月にかけてが最も暑い。恐ろしいことにその気温は50度近くまで上昇する場所もあり、このレベルだともはや自転車旅行とかそんなこと言ってられるレベルじゃない。そんな環境でもインド人は結構な人が日中でも外で活動しており驚いたものだが。
 6月くらいから徐々に雨が降るようになり雨季となるのだが、これで多少は気温が抑えられたとはいえ猛烈な湿度との兼ね合いで旅行するにはまだまだしんどいレベル。要するにインドの平地を快適な環境で旅行できるのはウキが終わってから始まる乾季こと冬の期間のみである。この時期ですら南インドへ行くと気温が30度超えてくるのが恐ろしいところ。
 夏の時期は南西から、冬になるとヒマラヤから吹き下ろした北からの風が吹く。国土の多くが平野というか農地なので風向き悪いと1日中向かい風を受け続けることになるのだが、あまりこの国では風でしんどい思いをした記憶がない。そもそも風の影響が低いのか、他にもっとストレスとなる要素が大きすぎて風なんぞにどうこういうほど気を回してられなかったのか不明。
 何にしても夏のインドは耐えがたいほどの厳しい環境なのでこの季節は避ける方が賢明・・・なのだけど、ラダックのベストシーズンが6月から始まる関係でバスや飛行機ワープをしない限りは嫌でも地獄のような気温のインドを走らなくてはならない。デリーからだと気候が落ち着くシムラーの町まで約350kmほどの距離があり、この間をいかに凌ぐかで苦労する自転車旅行者はかなり多い気がする。

◎言語
 多種多様な民族がおりそうした人たちが独自の言語を使っている。よく言われたのは「1つ地域を超えると全然別の言葉に変わるのがインドだよ」とのこと。
 こうした中でインド人全体の共通語という認識としてヒンドゥー語が使われているらしく、更に国際的な仕事や外国人との会話に用いる場合は英語が使われるというのが言語的な序列とのこと。他に主要で使われる言語にベンガル語というのもあるそうだが、私にはこの辺の区別がついていない。ともあれ旅行者も多く利用する交通機関関係だとかは英語の通用率は高い。
 なおほぼ全てのインド人が第2言語であるヒンドゥー語までは話せるが、英語に関しては地方部ほど使用率が下がる傾向にあり体感で3割くらいのイメージかな。イギリスの植民地時代が長かった印象強いだけにやや意外。というか正しくは英語話者自体はもっと多い気がするのだけど、ことコミュニケーションという意味でインドは「英語が通じてる筈なのに会話が通じない」という状況に遭遇することが多く、そっちの方が問題。
 これは独特なイントネーションやインド英語で使われる単語が独特なものが多いとか色々原因あると思うのだが、私が思うにインド人は「自分が話したいことしか話さないし興味ないことは聞く耳を持たない」という点が大きいのではないかと感じている。
 要するに相手のことを鑑みて会話するということを出来ない人が多く、一方的にヒンディー語混じりの英語で捲し立ててくるし、こちらが理解できなくても表現や言い方を変えて伝わりやすいよう工夫するといった配慮は一切してくれない。だからインド人と会話してると基本的な点でつまづいたりすることが多く、どんどんストレスばかり溜まっていく罠。
 ちなみに地方に行くと平気で英語が併記されてない看板とかも出てくるため割と難易度が高い。まぁこの国で苦労するのはそういう点じゃないと思うので小事ではある。

◎宿(野宿)・Wi-Fi
 インドの物価に照らし合わせると安宿はやたら値段が高いというのが本音。コロナ以後の世界的なインフレ傾向がある中で、インドにおいては宿泊施設の料金がその影響を強く受けたのだろうと感じさせる。
 デリーやチェンナイといった特に大きな主要都市だとドミトリー形式の安宿でも1500円近い料金となる一方で、観光客が盛んな地方都市だと1泊500円そこそこで宿泊できる施設もあったりする。それ以外の地方や田舎に関しては500〜1000ルピー(約900〜1800円)位が相場かな。値段が上がったとはいえ、それでも一般的な国の相場よりは安いレベルではあると思う。
 ただ都市部や観光地を除いたインドの宿泊施設は問題となる点が複数あり、まず「ネットの予約が信用できない」ことが挙げられる。今の時代で予約サイトを利用するのはむしろ主流の方法だと思うのだが、インドの場合はこうしたサイトを通じて予約をしても実際に訪問すると「満室だから泊まれない」だとか理由は後述するが「外国人は無理」と言われて宿泊できないパターンがある。特にインド発祥の「OYO」グループとか「Fab」「Spot On」といったチェーン展開している宿はこうした傾向が強い。
 これはネットからの予約金額を安く設定している関係だそうで、宿側からすれば直接訪問する宿泊者を泊める方が利益に繋がることから「とりあえずネットで予約を受付する一方で、予約してない訪問客が来たらオーバーブッキングでも利益に繋がるそちらを優先して泊めさせる。結果として満室になるためネットの予約客が弾かれる。」というパターンが多いそう。私は序盤にこの罠を受けて以後、観光地等で外国人の口コミがあるホステル以外ではネットで予約をしないよう務めていた。性質の悪い宿だと事前にカード払いでお金を支払わせても泊めてくれない宿もあると聞いたし。
 んでこれとは別にインドには外国人が宿泊施設に泊まると「FormーC」と呼ばれる、外国人宿泊登録制度みたいなものを記入して宿側が警察に提出する義務があるとのこと。田舎の安い宿ほどこうした手続きを嫌がったりそもそも記入の仕方を知らなかったりする関係で、外国人である場合は問答無用で宿泊拒否対応をされることがある。これは州によって厳しさが異なる印象で、特に旅行人気の高いラダック地域などでは1度も拒否を受けなかった反面、ビハール州なんかは合計で50回近く宿泊拒否を受けたりして馬鹿らしくなるほどだ。基本的にある程度ランクが高い(料金も高い)宿ではこうした拒否事案が発生することはまず無いのだが、長期旅行&田舎を繋ぐ自転車旅行とは非常に相性が悪い。
 ということで施設内の設備だとかコスパというのは二の次で、自転車的にはまず宿が取れるか?という心配をしながら走っていたというのが本音。5〜600ルピーくらいの宿だとWi-Fiがないタイプもあったりするが、インドではSIMカードが安いので予めそちらの対策していればネット環境はそれほど問題にならないし。
 それよりもホステル系の宿でもキッチンが使用できるタイプがほとんど出てこないことの方が嫌で、ネットの情報でサービス内容に「キッチン有り」とか書かれていてもゲストが利用不可だったりすることが多く、インドの食事に疲れて自炊がしたくとも不可能だった・・・というパターンに陥ることがあるので要注意。
 他にやたら「Hostel」と書かれた建物が多い国だが、これは出稼ぎとか学生が長期的に滞在する人を対象とした施設のようで基本宿泊は断られると思った方が良い。地図で検索するとこうしたノイズがたくさん出てくるので益々宿選びが大変になるんだよまったく。

◎動物
 イメージ通りの牛天国。至る所を牛が闊歩しているのだが、酪農用に飼育された個体ばかりではないため痩せ細ったヤツとか病気なのでは?と疑いたくなるヤツも多々見かける。道路のど真ん中でも平気で歩き回っているということはそうした場所に糞が散乱してることを意味しており、地獄の交通状況に加えてウンコ爆弾まで設置されてるとか性質が悪い。ちなみに牛を食さないヒンドゥー教徒だが水牛は牛のカテゴリーから外れるらしく、そうした肉の用途なのか川の辺りに水牛がいることはままある。
 その他だと家畜としてヤギやロバを見かけることが多いが馬は少ない。ラダックだと野生馬を見る機会も多かったけど。ヒンドゥー教の国ではあるがムスリム人口も多い関係で豚を見かけることもほぼなく食せる機会もまずないと考えて良い。その代わり羊肉が割と流通しており、羊の姿はちょいちょい見かけることがあったり。基本的に国内全体で出現するような危険な動物というのを心配する必要はない。
 なお私もビックリしたがインドでは犬が大人しく自転車を見てもほとんど反応しない。何なら暑さでへばっているのかそもそもジッとして動かない。狂犬病で死亡する人の数が多い国の1つなのだが、少なくとも自転車走行中に犬を気にすることは最後までなかった。
 それと冬の時期だと蚊の量が凄まじく、安宿の場合はどこに行っても室内に蚊がウヨウヨしてるのが常。暗くなってからそこらを歩き回ると肌の露出部分は刺されまくってボコボコにされるし、部屋内の蚊を全滅させたと思って横になると、どこから湧き出してきたのか耳元で嫌らしい羽音がして起こされるということが何度もあった。
 ちなみに野生のインド象とかベンガル虎とかが居るらしいし、そうした動物の注意看板も見かけたのだけど最後まで姿を見ることはなかったな。

◎自転車店
 インドは全体的な特徴として「スポーツが全く盛んじゃない」という点があり、クリケットを除いて一般人はほとんどスポーツという行為をしていない。自転車においても普及率は高いものの、その存在は完全に実用品として物を運ぶだとか移動手段として扱われており、要するにスポーツ用の自転車需要は極端に少ない。
 なので何処の町でも自転車ショップはある反面、スポーツバイクを販売・修理しているお店となるとその数は極端に少なくなる。ラダックへ向かう場合はマナリの町に1軒だけプロショップがあるのでとりあえず尋ねてみるのが良い。というかここを逃すと山岳地帯では専門的な部品の入手は非常に難しい。
 それ以外の平野部だと私が訪れた都市でデリーやチェンナイといったインドでも有数の大都市なら先進的なショップが存在する。それ以外だと人口100万都市のアムリトサルですらしっかりしたショップを見つけることは難しい感じで、むしろ隣国パキスタンやネパールに入る方がよっぽど対処出来たりするイメージだ。
 一応ディスクブレーキを擁したスポーツバイクが走っていたり販売されてるのを見たりもしたのだが、そういった自転車もほとんど完成品として販売されてるケースでお店にメカニックがいるのかも怪しい。若しくは修理専門店みたいなお店で(恐らくインド製の)謎メーカーの部品を組んでる職人みたいなオッちゃんがおり、そういう店なら案外トラブル対処はしてくれるのかもしれない。ただしスポーツバイクの部品を取り扱ってはいないので、やはり消耗品に関しては極力自分で持ち運んでおくべきだと思ったな。

◎物価・食事
 イメージの通りカレーが幅を効かせている国なのだが、インドのカレーというのは日本人が一般的にイメージするそれとは異なり、方向性としてはスパイスカレーのが近いかと思う。基本的に味付けをマサラを始めとした香辛料を何種類も混ぜ合わせて油と共に煮込むスタイルで、実はインド料理は油が非常に多く使われておりこれが合わずにお腹を壊す人も多い。
 暑い国らしく唐辛子をバンバンに投入して凄まじい辛さとなってる料理が多く難儀する。食事の際に「ノンスパイシーでお願い!」と注文しても無視してるのか忘れたのか、そもそもからさの変更が出来ないのか知らないが普通に激辛をお出しされたことが何度もあるので要注意。
 ヒンドゥー教の国なので神聖な動物である牛の肉を食べることはご法度だし、イスラム教徒も2割ほどいる関係でか豚肉もほとんど流通していない。要するにインドで食べられる肉というのは鶏肉と羊肉の2種類くらいと思っておいた方が良い。どちらも全く食べれないという訳ではないけれど、一般的でないため旅行者が食するのは相当難易度が高い・・・くらいに思っておけば良いと思う。
 そもそもベジタリアンが非常に多い国であり、インドのベジタリアン人口は全世界のベジタリアン人口過半数を超えている程。このためどんなお店に行っても必ずベジ用メニューとノンベジ用メニューが分かれて表記されている。そうでない場合は大体ベジメニューしか存在しないという徹底ぶり。
 これに加えて飲酒に対してもかなり厳しい制限が課せられており、アルコール類を販売できるのは許可を得たリカーショップのみであるし、奏したお店の多くは鉄格子で囲われたカウンター越しに注文を口頭で頼むシステムを採用している。オマケに値段も非常に高く、州によって税率が異なるもののビールロング缶で大体300円以上することが多い。あと何故かインド産のビールはアルコール度数が7〜8%と強い品名が多い。更に州によってはアルコールの販売や持ち込み自体を禁止していたりもあり、私の走った所ではビハール州が該当していた。
 以上の点から自転車で田舎を走行していると、辛くて野菜しか選べないカレーばかり食べ続ける上にロクにビールも飲めないという相当キツい食事情が展開される恐れがある。
 インドの食事は都会でないとレパートリーが少ないのが難点で、カレーを避けた食事をするとなると選択肢が屋台の揚げ物かスイーツ店、ファストフード店及びピザくらいしか選べない。ビリヤニというインド風炊き込みご飯もあるのだけど、これもスパイシーな味付けでカレーの風味を効かせているため個人的にはカレーの亜種くらいに思っていたかな。
 ちなみに北部は小麦文化で南部は米が主流。このため北部地域ではチャパティを主食とする人が増えると聞いたが、その辺は割と自由に選択できる感じで気にしなくても平気だった。ちなみにインドカレーでイメージする「ナン」はそれほど一般的な食材ではなく高級レストランとか行かないと出てこない。基本的に庶民が食べるパン系のものはほぼチャパティ。
 かなり食に対してキツかった国だけど、その値段に関しては非常に安価でターリーと呼ばれるセットメニューが田舎なら100円切る程度、高い場所でも300円しないで食べられることが多く経済的には優しい。でもカレー以外を頼もうとすると高く付くのであり、如何に舌を「インド化」するかがこの国で食事を楽しめるかの肝であると考える。ちなみに私は4ヶ月超滞在して水を購入した記憶はほぼない。現地人が飲んでる水を飲む気概があれば食堂でもガソスタでも飲める水を補給すること自体は問題なくできる国である。それでお腹壊すかは人次第だと思うけど。

◎総括
 いや〜ストレス溜まるし色々大変な国だった。1つ1つの出来事を個別に挙げていくと結構面白かったり興味深くあったりするし親切な人も多く悪くない国なんだけど、こうして全体的な感想を述べるとなると「自転車で走るには向かない国である」と言わざるを得ない評価になるというのはある。
 少なくとも人口の集中しているアムリトサルからコルカタの「インド北部ライン」は走ってて楽しい土地ではないので私はオススメしない。というか正直インドはラダック地方を主眼にして、他の土地は極力走らないよう努めたほうが楽しめると言ってしまって差し支えない。それでも尚インド(平野部)を走りたいという人は南部の田舎をオススメする。自転車的にアクセスし辛いのが難点だが、私はインド南部を走れたことでこの国における印象が大分良くなったと思っている。
 自転車でその土地を走るという意味ではもっと大変な土地が多々あったけど、自転車で楽しく走るという意味ではエチオピアと並んで最高レベルに難しいというか、道路状況だけに留まらず様々な点で問題がある国なため、ラダック以外の地域を走りたいという自転車旅行者は心して臨んで欲しい。
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 2024年のデータをまとめたものである。旅行出発した翌年末から同まとめ作成しており、2015年2016年2017年2018年2019年2020&2022年2023年でそれぞれ作成しており今年が8回目。
 

◎月別走行距離

 1月・・・・・・・・・・・ 756km  1日平均54.0km(14日間)
 2月・・・・・・・・・・・1679km  1日平均57.9km
 3月・・・・・・・・・・・1675km  1日平均54.0km
 4月・・・・・・・・・・・1632km  1日平均54.4km
 5月・・・・・・・・・・・1029km  1日平均33.2km
 6月・・・・・・・・・・・1357km  1日平均45.2km
 7月・・・・・・・・・・・1693km  1日平均54.6km
 8月・・・・・・・・・・・1492km  1日平均48.1km
 9月・・・・・・・・・・・1563km  1日平均52.1km
10月・・・・・・・・・・・1113km  1日平均35.9km
11月・・・・・・・・・・・ 248km  1日平均 8.3km
12月・・・・・・・・・・・1360km  1日平均43.9km

           合計15597km  1月平均1300km

・毎年データを集計していると「よく走った年」と「そうでもない年」が出てくるが、2024年は明らかに後者に属することが分かる。私の中では1月の走行で「悪くても1500kmくらいは走りたい」という思いがあるのだが、このノルマを達成したのが5ヶ月間と半分にも満たない。まぁ1月は実質走行日が半分だし、5月はフライトがあったことに加えて連日45度を超える環境のインドだった。10・11月はネパールでトレッキングをしていたりと走行距離が短い月は短いなりの理由があったとは言える。
 それでも走行距離が2000km超えてる月が1度もなかったというのは我ながら情けなく思う。加齢による体力の低下を如実に感じるのはこうした数字として表す時なのかもしれん。
 その割に最も走行したのが平均4000mという厳しい環境のラダックを走っていた7月だったので、その辺を考慮すると2024年は全体的に自転車で走行するのが大変な場所だったり、走ること以外のファクターに時間を割かれることが多かったとも言える。イランとか走りやすい国だったけど、後半はそれどころじゃなくてワープ連発したし。
 走った地域も中東と南アジア(含むヒマラヤ)という自転車が多くて走りやすいという土地ではない場所だったというのもある。私が走ってない地域ってもうそんな国ばかりなんだけどさ。


◎国別走行距離
 
 トルコ・・・・・・・・・・・・2745km (47日間) 1日平均58.4km
 イラン・・・・・・・・・・・・2533km (48日間) 1日平均52.8km
 アルメニア・・・・・・・・・・ 742km (21日間) 1日平均35.3km
 ジョージア・・・・・・・・・・ 634km (17日間) 1日平均37.3km
 インド・・・・・・・・・・・・6004km(122日間) 1日平均49.2km
 パキスタン・・・・・・・・・・1384km (30日間) 1日平均46.1km
 ネパール・・・・・・・・・・・1555km (70日間) 1日平均22.2km

 ※2カ国跨いだ場合はどちらの国も+1日としている

・ヨーロッパを抜けたことで訪問国数が落ち着いた(2023年は28ケ国)一方で1つの国に滞在する期間は延びている。1年間の日数は変わらないのだから当たり前のことではあるけれど。
 面白いのがあれほど連日罵詈雑言の嵐であるインドが100日を超える長期的な滞在となってるところで、地味に今まで訪れた国でも滞在日数が100日を超えたのはオーストラリア・アメリカ(アラスカ含む)・アルゼンチン・モロッコの4カ国のみだった。そして長期滞在した国はいずれも好印象を抱いているのを鑑みるに、実はインド好きなのかもしれない疑惑が浮上している。茶壺さんツンデレだったのか。
 ネパールも滞在日数の割に走行距離が微々たるものだが、それでもアンナプルナサーキットを自転車で回っているため数字的には400km超が上乗せされてるイメージ。それが無かったら複数日滞在してる国で唯一の1日平均走行距離が10km代に突入する国となるところだった。山岳国の名に偽りなし!と太鼓判を押してやりたいところだが、走らなかった日々の大部分がトレッキングと病気で寝込んだことが原因であるため自転車云々とあまり関係なかったりするのだけれど。
 滞在時間が足りなくてガンガン走ってた印象のパキスタンとかの方が1ヶ月で1500kmに満たない距離であり「地形が厳しくて走るの大変だった国」という意味ではこちらの方が感覚として強い。数字は嘘をつかないけれど、実際の感覚とは違うということか。


◎自転車以外の乗り物

 船・・・・・・・・1回   トルコ    ダルヤン川  渡し船50m
 自動車、バス・・10回   イラン    ファサーからバンダレアッバースまで約500km
               イラン    テヘランからはディッシャーまで約750km
               インド    山中からハットまで
               インド    ラダック南トンネル内ピックアップ移動1
               インド    カシミールトンネル内ピックアップ移動2
               インド    カシミールトンネル内ピックアップ移動3
               パキスタン  バブサール峠先からチラスまで約40km
               パキスタン  ギルギットからラホールまで約900km(2台)
               ネパール   野生動物危険区域通過に約15km
 列車・・・・・・・1回   イラン    バンダレアッバースからテヘランまで約1100km
 飛行機・・・・・・1回   ジョージア  バトゥミからデリー(インド)
                 
 ※自転車を積載してない場合の車両移動は省略

・やたらとバスに乗ってるよう思えるが、このうち3回はラダック周辺の10km近い長距離トンネルを自転車が通行することができずに載せてもらった案件なので、回数的にはそこまで多くない。というか2024年は自転車以外の乗り物を利用した回数が驚くほど少ない印象だ。
 なんだかんだフェリーとか年間で複数回に渡って乗船していたのだが、今年は小さな川を渡った際の1回きりで実質ノーフェリーでフィニッシュ。重量による料金加算や輪行するため荷物をパッキングする必要のないフェリー移動は自転車旅行と相性が良い乗り物なのだが、移動ルート的に利用機会がなかったのが影響したか。バンダレアッバースからドバイ行きのフェリーが使えなかったことが大きいか。
 その影響で海外での寝台列車という1度体験してみたかった事ができたので旅行は何が影響するか分からないと思うけど。そうしてみるとイランで緊張感が高まったことに起因した乗り物による移動が計3回あったワケで、本来通りの予定だったら本当に2024年は自転車以外の乗り物移動が少なかった。まぁここに記載してるのは「自転車も含めた乗り物の移動」であるため、1月のトルコへのフライトやエベレスト街道までの車両移動がないので実際に自転車以外に乗った乗り物の数はもっと多いけど。それを加算し始めると「乗せてもらった車でちょっと買い物」とかのライドが増えすぎて把握できなくなるためご容赦をば。
なお2023年に書いてた「これ以後1度も飛行機を利用することなく日本に着ければ最高」という弁は既に1度フライトぶちかましております。来年はどうなることやら。

◎宿泊関係

 宿・・・・・・・・・・・・・・205泊  58.7%
 野宿・・・・・・・・・・・・・ 62泊  17.8%
 キャンプ場・・・・・・・・・・ 12泊   3.4%
 人様の家・・・・・・・・・・・ 26泊   7.5%
 公共施設(モスク・寺院等)・・ 19泊   5.4%
 その他(空港・乗り物の中)・・  2泊   0.1%
 山小屋・・・・・・・・・・・・ 23泊   6.6%   計349日

・走行地域に物価安い国が多かった関係でかなり宿を利用する割合が高かったと思う。山小屋というのは実質的にネパールで実施した2つのトレッキングにおいて利用した宿を別のカテゴリとして分けただけです。一応「併設してる食堂で食事をしたら宿泊代が安くなる」という独特のルールに合致している宿のみをカウントしている。
 今回特徴的なのは公共施設での宿泊数が多い点で、メキシコや中米で消防署に泊めてもらいまくった2017年を除き例年このカテゴリは僅かな数だったのだけど、2024年はやたら多いのモスクに泊めて頂く機会が非常に多かったから。ちなみにモスク泊でも敷地にテントを張らせてもらい宿泊した場合は「野宿」としてカウントしてるので、これは全て暖かな室内で夜を越させて貰った数である。本当にありがとうございました。
 インドは食料等の物価に比べて宿泊費が高い傾向にある国なので、気持ちとしてはもうちょいテント泊の割合を増やしていきたかったのだけど、あまりに高い気温(と人が多くて治安もイマイチ)で我慢が効かず宿を利用することが多かった。これを示すように気候が良くなり人の数が減ったラダック地方では滞在中の半分以上をテントで過ごしていたりする。そういう意味で国や地域別にどういった宿泊形態を取っているのか集計してみると、また違った面白さがあるような気がするのだが、これ以上集計の手間を増やしたくないので新項目として出現する可能性はほぼ無い。
 ちなみにその他の内訳は飛行機内の1泊とパキスタンでフンザ地域から長距離移動した際のバス車内での1泊である。


 1年を通して気候が良く道も走りやすい「ゆるふわサイクリング」を楽しめた期間が僅かしかなかった(ジョージアくらい)という意味で結構ハードだった2024年。極寒から灼熱、世界で最も高い道とバラエティに富んだタフな道が多かった。
 ただし、そうした環境で訪れた土地は何処も白眉と言える素晴らしい土地ばかりであったことも事実。楽しい土地ほど自転車で走るのは難しい・・・という理論があるとしたら私はその説を支持するぞ。
 前半の中東を終えた後もこの地域の総括を作っていないのは、私がまだ納得してないからで「必ず中東には再訪するぞ」と思っているのだが、それはそれとして既に4月となってた暑い時期にアラビア半島へ渡らなかった(渡れなかった)のは、今にして思うと正解だったように思う。
 結果としてラダック・カラコルムハイウェイ・ヒマラヤトレッキングという土地をベストシーズンに訪れることが出来たのであり、旅行というのはかくも偶然の巡り合わせか・・・と思わずにはいられない。私は超常現象とかその手の類について科学で解明されてることは科学を信じるタイプだが、未だ科学で解明されてない事象に関しては「ロマンのある方」を信じたいと思っている。もし私の自転車旅行が何らかの縁や力でより良い感じに進んでいったのだとしたら、それはとてもロマンのある話だなって。何言ってんだコイツ?
 元旦の抱負にも書いたが2025年は日本に帰国する年と位置づけてるので、残りの走ってないエリアを走行しつつ日本へ戻るつもりで移動します。なのでこの年間総括ももう1回帰国までのデータを取りまとめすることになるんじゃないかと思っている。
 そういうことを思うとこのクソ面倒くさいまとめを作るのも寂しいというか「もうこの作業が出来なくなるなんて!」という気持ちになったりするのかな?んなワケあるか。
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 2024年9月25日〜12月3日
 走行日数70日間
 累計走行距離1555km(157242km〜158797km)

◎道路
 これは文句なく最低レベル。別に登山道を無理矢理走ったからとかそういうワケじゃなくて、普通に一般道路の質が悪すぎる。私の訪問ちょっと前に大規模な洪水がカトマンズ周辺を軸に多数発生してかなり道路が崩壊したとニュースが流れたけれど、驚いたのは一見しただけじゃ「どれがその崩壊した道路なのか分からない」という程に道路が何処もボコボコガタガタで未舗装だらけ土砂崩れだらけなこと。
 山道がそうなら平地は大丈夫なのかといえば全然そんなことはなく、こちらも国道1号線という国内における最大手道路であろう道が中央分離帯すらない道幅に平気で未舗装路が混じったりとお世辞にも「良い道」とは呼べないレベル。インフラ補修をするだけの予算が全然足りてないことが火を見るよりも明らかで、アスファルトであっても突如謎の穴が出てきたり変なギャップがあったりと「安心して走り続けられる道」というのが僅かしか存在しない。故に山の多い国であっても下り坂でスピード上げるなんて私は怖くて絶対できないわ!と思っていた。かといって路面を気にして下ばかりに注視してると、逆走してくるバイクなんかも多くて気が抜けない。全く恐ろしい国である。
 なおアンナプルナサーキットは自転車を活用して1周できることで有名な道だが、MTBならともかく旅行用自転車での走破はかなり上級者向けの道で、川の渡河だけで大小100本はあるし泥道やマトモに乗って進めない未舗装路、自転車を持ち上げないと登れない段差や乗車したままでは登れない坂も多数出てくる。でも不思議なことにここ走ってる時がネパールで1番楽しかったので道というのは本当に分からない。

◎治安
 かなり良いとは思うのだが、ネパール人は喧嘩っ早い印象で道端とかで何が原因なのか争ってる姿を複数回見かけた。私も1度前方の車両を抜きたいがために周囲確認せずこちら側に寄って来たヘタクソバイクに「接触するわクソボケ!(日本語)」と罵倒したら、現地語で文句言いまくった挙げ句にサイドバックに蹴り入れて逃げていったゴミカスと遭遇してる。そういうことから無用なトラブルが起きそうな確率は高いかもしれん。
 昔はカトマンズ〜ポカラの道とか週末になるとゲリラが出て来てバスを襲うとかそう言った事件がよくあったそうだが、現代ではそう言った過激な犯罪は数を減らしたと聞いたし同じ山中でもエベレストベースキャンプやアンナプルナサーキットみたいな人気のトレッキング道では危険はほぼ無い。ただ今でも山中では野宿をしないほうが良いと言われたのだが、それは動物的な危険ではなく山賊に襲われるからという理由だったのでいるところにはまだ残っているのだろう。ちなみにゲリラ・山賊は平日は普通に農作業してる農民がほとんどだそうで、そのため休みとなる週末や祝日に事件が起きるというのがちょっと面白い、いや面白くはないのだけど。

◎ビザ・出入国
 入国時にアライバルビザが取得できるので、特に事前準備をしなくても国境で15分もあれば申請手続き自体は簡単にできる。その際に滞在日数が15日・30日・90日と3種類から選べるのが特徴的で、それに伴い必要料金も30ドル・50ドル・125ドルと変化する。
 曲者なのがアフリカ諸国と同様に折り目やシミ1つ無いお札でないと受領できないシステムとなっていることで、私はここでほとんど難癖に近いダメ出しを受けて100ドル札を使うことが出来ず止む無く15日でのビザを取得している。
 ポカラ・カトマンズにあるイミグレーションのオフィスで滞在日数は最大(年間で)150日まで好きな日数だけ延長することが可能だが、その費用は15日追加までは一律で45ドル、それ以上の場合は1日につき3ドルずつ加算されていく。要するに滞在延長する方が割高となる計算だ。
なお手続き自体はポカラだと人数も少なくあっという間に完了するが、カトマンズの場合は何十人もの人たちと一緒に並んで2〜3時間は待たされたので選べるならばポカラが楽。そもそも最初に90日ビザを取得してればそんなこと気にする必要もなかったのだが、1つだけ利点を述べるならば滞在延長の場合は米ドルでなくて現地ネパールルピーでの支払いが可能だということはある。
 さて、もう1つ問題となるのがネパール→インドへと陸路移動する際に通過できない国境が存在する点。調べた所でネパールとインドには現在6カ所の外国人が利用可能な国境が存在するが、これらの国境全てでインド→ネパールの移動は可能な反面、ネパール→インドの移動が確実に可能な国境は私が確認したところで「スノウリ」と「ビルガンジ」の2カ所しかなく、それ以外は実際に国境まで行ってみないと分からないというのが実情らしい。この辺のルールはしょっちゅう変更されるらしく旅行者泣かせの罠状態になっていると思う。

◎交通事情
 道路も悪けりゃドライバーも悪い。インドから入ったので最初は「なんてクラックションの少ない紳士的な国だ!」とか勘違いしてたけど、普通にネパール人の運転は危険だしクラックションも鳴らしまくる。更にバイクと大型バスやトラックが性質悪い。ただトゥクトゥクやリキシャーと呼ばれる3輪タクシーが少ないのでその辺は多少気が楽。
 路面の悪さ故に動きの遅くなった大型車両を我慢できず無理矢理抜いていこうとするバイクが多いのだが、そうした際に反対車線を確認せず飛び出して無意味な渋滞を引き起こすとかよくやってるし、都会で数が多くなると周囲を確認しないで車線変更して接触起こしてるヘタクソライダーが多数いるので非常に危険。タメル地区みたいな歩行者の数が多く道が狭い場所をスピード出しながら走り回るわ、下手すりゃ一方通行を逆走してる輩もいる。こうしたバイクが厄介というのは特にアジアで感じることが多く、嫌な意味でアジア圏の国に戻って来たんだなぁと感じる。
 信号なんかは大都会にしか存在しない上に大半は壊れてるのか通電してないだけなのか動かず無用の長物と化していて交差点なんかは行けると信じて飛び出さないと永遠に渡れないベトナム方式。本当道路周りで褒めるところが見当たらないなこの国は。
 道路の狭さも関係してくるのだろうが、オーバーテイクしてる途中のトラックがそのまま自転車側へと迫って来て、そのまま道の外(崖下)へと押し出されそうになることが複数回あった。恐らく対向車が来てたから慌てて道幅開けたのだろうけど、そんな状況でも平気で追い越しをかけようとしてくるのがネパールドライバーということだ。

◎特徴
 世界最高標高の山を含むヒマラヤ山脈が国内全域に渡って広がっている。このために国全体がとても標高の高い場所に位置してるという誤ったイメージを持たれてる節がある。実際のところ標高の高い場所に位置するある程度大きな町は僅かであり、首都のカトマンズは約1350m、第2の都市ポカラで約800m程度。
 多くの都市も山脈から離れた標高200m前後の国内南部に集中しており、ネパールにおける自転車旅行は普通の都市間移動する場合むしろ暑さに注意しなくてはならない。
 幾つかの山には非常にエキサイティングな自転車で回れるコースが用意されており、そうした道で私は5416mまで登ったりもしたが、流石にこうしたルートを世界1周仕様のフルパッキンで走るのは無理があるので長期旅行者がネパールの人気山岳コースを走りたいなら、どこか拠点を決めて荷物をデポした方が賢明。別にアンナプルナサーキットじゃなくても魅力的な自転車コースはカトマンズやポカラの書店で売られてるガイド本で沢山紹介されているので色々参考にしてみては。

◎気候
 カトマンズでは「日本と大体同じくらいの気温」と言われたが、確かにそんな気がする。緯度が低く標高が高い関係でちょうど日本の東京かそれよりやや南(九州くらいか?)の気温となるのだろう。
 なお標高の高いカトマンズでそんな感じなので他の南部の都市ではもっと気温は高い。10月上旬では連日30度を超える暑さが続いてた。11月の終わりの時は流石に気温も落ち着き日中でも20度ちょっとの過ごしやすい環境になっており心地よかったな。
 特にカトマンズ周辺だが大気汚染で空気が非常に悪い。晴れてる日中に町中を歩くと日射しの中にキラキラと小さな塵だか埃が舞っているのを視認できるレベル。そんな環境なので天気が良くても抜けるような青空を拝むということは難しいし、エベレスト街道から帰ってくる際に痛めた喉がカトマンズ滞在中ずっと治らなかった(薬も飲んでいたけど)一因になっていると思われる。
 他にネパールは雨季が5〜9月頃とされていて、特にトレッキングが人気のこの国では冬を避けた時期で尚且つ雨の降らない10〜11月及び3〜4月が人気のシーズンとされている。トレッキングという意味では残雪が無い10月が1年の中で最大のピーク。
 山の上はちょっと特殊な世界なのでそっちの気候は別記事のアンナプルナサーキットとエベレスト街道についてで記載してるのでそちらを参照。

◎言語
 ネパール語。文字もネパール文字なのは良いとして、数字も独自の文字なのが大変。そもそも売ってる品物の値段が表記されてるの都会くらいしかないので影響は少ない方だけど、例えば道路ポストとかあっても次の町まで名前も距離も分からず情報が全く読み取れないと言った問題はちょいちょい発生する。
 ただ英語の通用率は非常に高く、インドなんかより遥かに英語でのコミュニケーションが円滑にできることが多かった。特に都市部と登山道に関しては言語関係でほぼ苦労をした記憶がない。そんな登山道でも結構な割合でネパール語表記のみの看板があったりして、何というか「母国語にプライドがあるのかな?」とかよく分からないこと考えてた。旅行者には意味のない内容だから英語で併記してないだけだと思うが。

◎宿・Wi-Fi
 全体的に安価な値段にも関わらずレベルが高くてコスパに優れるネパールの宿。特にネット関係は優秀で、ヒマラヤの山奥を含めて70日滞在してWi-Fiが無かった宿は1軒だけしか存在しなかった程。1泊の料金も500〜1000ルピー(約550〜1100円)といった程度で、都市部だとホステル系を探せばもうちょい安い場所もあるという感じ。ただし低地の宿にホットシャワーの設備はまず付属していない。 
 割と多くの宿で敷布団(マットレス)に全くクッション性がなくカチカチだったり、縦尺が足りず背が高いと足を伸ばして眠れない大きさのベッドが出てくるので、チェックイン前の部屋確認は重要。なお低地だとブランケットが無いというパターンもままある。
 トレッキングをする場合は道中の山小屋(ロッジ)に宿泊することもあると思うが、この場合「その宿に併設している食堂で夕・朝食を注文する」という条件で、宿泊料金を極端に値下げする独特のルールが存在する。アンナプルナサーキットとエベレスト街道どちらも僻地にある宿で場合によっては宿泊費無料にまで値下げしてくれるため大変有難いサービスであった。
 ネットの速度も全体的に速くストレスを感じるようなことはまず無い。カトマンズではあんまりサクサク動くものだから動画のデータを全てクラウド上にアップロードしたりもしたが、地味にこれを簡単にできる途上国というのは珍しい。
 山奥の場合はそりゃ通信環境も悪化するのだろうけど、そうした場所のWi-Fiは1日の利用料で宿代以上の値段が必要になったりするのでそもそも私は利用してなく言えることがない。私は事前にそれを見込んでSIMカード購入して行ったのだが、個人SIMでは使えるエリアがかなり狭く有用であったかどうかは怪しい。
 とはいえ28日間で10Gくらい使っても500円程度の料金プラン、インドと違って系列店に行けば簡単に手続きしてくれるのでネパール旅行の際には「とりあえず契約しとくか」程度に確保しといても良いと思う。停電の多い国なので、それが原因でWi-Fiが使えなくなってもネット接続できるのも強みだし。

◎動物
 象や虎が出る道を走ったりもしたが姿を見るようなことはなく。南部の方だとインドの(ヒンドゥー教の)影響が強くて路上で牛の姿を見かけることも多い。山岳地帯に入ると険しい土地に強いヤギの姿が増えたのが印象的かな。犬は一部の山岳地帯にいる奴が攻撃的だった。
 山に入ると低地ではロバかと思いきや馬とロバとの交配種であるラバが荷運び動物として活躍していた。顔も体格も本当に馬とロバとの中間という感じで見た目が面白い。なおアンナプルナサーキット方面では全体的に馬が多かったが、エベレスト街道ではナムチェの町を境にそれより標高の高い場所ではヤクの姿を見ることが多かった。一口にヤクといっても毛の長いタイプもいれば牛に近いタイプもいたりと様々なヤクが見れて面白い。このヤクを見たことで世界で活躍している一般的な「家畜」として扱われている動物(体重45kg以上で全14種)は全て見たんじゃないかなと思う。働く動物は偉くて賢い。

◎自転車店
 ポカラとカトマンズにはキチンとしたプロショップがある。なんならカトマンズにはトレックの正規販売店まである。ただし扱ってるのはほぼ100%MTBタイプなので必然的に取り扱ってる部品や用具も全てMTB系で占められている。私の場合はバーテープがボロボロで交換したいと思っていたが、結局ネパールでは見つけることが(正確には1店舗だけ売ってたが合う色がなかった)できなかったりしている。
 それでも人件費が滅茶苦茶安い系の国でしっかりしたショップがあるという条件もあって、まだガタのきてないBBや消耗していた部品の交換を実施している。隣国インドが思ってたよりずっとスポーツ自転車に縁のない世界だったので、バングラディシュは知らないからなんとも言えないが、南アジアで自転車のトラブル解決するならネパールが第1候補になると思う。
 なおこれらの町以外でも自転車ショップの姿を目にすることはあれど、ほとんどの場合は完成してる車両をそのまま陳列してるだけの販売店で修理やパーツの販売には一切関わっていない系とか玩具用品の一角に自転車コーナーが展示されてる程度の扱いであるため利用価値が低い。まぁそんな大きな国じゃないので、何かあればカトマンズかポカラに行けば良いと私は考える。

◎物価・食事
 非常に安い。山は別としてカトマンズやポカラでは若干全体的な物価が上がるものの、元の値段が食事だったら1食150円が200円になるとかそんなレベル。その食事も南部ではほぼインドと同様のメニュー構成だが、北部に入ってチベット文化が混ざると味やメニューに幅と彩りが出て俄然美味しくなる。有名な餃子とよく似た料理「モモ」には付けダレに黄土色した独特な調味料を付けて食べるのだが、ネパールではモモ意外にもこのタレを使って味付けする料理が非常に多い。
 国民食として親しまれているダルバートはご飯に豆のペーストを流してジャガイモのカレー等と一緒に食べる料理だが、これを食べてると途中で必ずご飯とダル(豆)のお代わりが大量にお出しされるのでお腹いっぱい食べたい時のマストメニュー。山ではとりあえずコレを頼んでおけばOKという便利な品。なお似たような料理でカジャセットとか色々あるが基本スタイルは同じみたいで食べてると追加で米とおかずが提供される。ただし無料で追加してくれるのは米・芋や野菜系のみで、例えばチキンダルバートを頼んでも鶏肉が追加でお出しされることはない。
 なおアルコール関係は一気に規制が緩みそこらの商店でも気軽に購入できるようになったものの、その料金はかなり高め。ビールに関しても500mlのロング缶だと場所にも寄るが270ルピー(約300円)とか相当なお値段する。
 安く飲みたいならラクシー(ロキシー)という地酒が多くの食堂で自作されており、大体1カップ50ルピー (約60円)で注いでくれる。ただしこの酒、度数が5〜60%と無茶苦茶に強いのでお店側で予め薄めてない場合は自分で割って飲まねばぶっ倒れること必死。
 他にカトマンズでしか見なかったが木製ジョッキにキビを敷き詰め発酵させたトゥンバという酒もある。こちらは1杯150〜200ルピー(約170〜220円)とやや高価だが、一緒に提供されるポットでお湯を注ぎ足すことで3〜4回飲み直すことができるシステムなのが面白い。もちろん徐々に味は薄くなるんだけどさ。
 全体として南部だとインド料理色が強く、山を登るとチベット文化の色が濃くなる感じ。なお私個人の好みとしては、圧倒的に北部のチベット料理を食べてる時が幸せだった。

◎総括
 国民や文化の魅力も多々あるのだが、やはりこの国に来たのであれば世界最高の土地であるヒマラヤの山々へ訪れてみるべきだと思わずにはいられない。正直いって低地のネパールは暑くて道が悪くて食文化もインドとほぼ変わらず面白味に欠けるところもあったと思っているが、山へと登っていくことで眼前に広がる素晴らしい世界に加え、その美しくも厳しい環境で生活する人たちの文化や生活といった別の姿が見えてくる。
 そうした地域を自転車で走るのは相当大変だし、トレッキング道とかを進もうとすると生半可な覚悟では走れない道となるが、そうした苦労を掛けるだけの価値があったと断言できる素晴らしい体験ができる。いやまぁ普通にトレッキングで歩いても最高だったが。
 ともあれここまで雄大な高山地帯を楽しめる土地は世界でもそう多くない。入国時に迷った場合、とりあえずビザ代は90日で支払って、入国してからじっくり何処のトレッキングへ行ってみようか調べれば良い。お金をケチって短期滞在にしてはネパールの魅力を充分に味わうことなく終わってしまう。ただし雨季の時期を避けることが大前提としてあるのだが。
 そこまで大きくない国土にひたすら続くヒマラヤの姿。眺めるもよし、近づいてみるのもよし。手頃な山へと登ってみるのもよし。山が好きな人にとって、本当にこの国は最高の聖地であったと思う。
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 2024年8月13日〜9月11日
 走行日数30日間
 累計走行距離1384km(154962km〜156346km)

◎道路
 かなり悪い。主要幹線道路でも所々に未舗装路が混じって出てくるし、そうでなくとも路面の質が悪く亀裂や凸凹が無数に存在する。カラコルムハイウェイ(以下KKH)じゃない道路でそのレベルなのでもっと田舎走っていたら更に評価は低くなった気がする。
 一応主要道は車線の数も多いし側道もしっかり作られてることが多い反面、その側道は路面の整備をしてないためかガッタガタで走るのがストレスになるレベルの路面状態になっていることも多い。なので結局側道があっても白線の上を走ることが多かった。なお車両は日本と同じく左側走行。
 南部は平地が広がっており北部は山岳地帯と分かりやすい土地であり、自転車的には多くの人が1度は走ってみたい道と評されるKKHを目指すかと思われる。イスラマバードから中国との国境まで幾つかルートがあるため、ガチガチの山岳路から比較的平坦で楽できるルートに難易度選べるのが魅力だと思う。詳しくはカラコルムハイウェイについてを参照。
 斜度が急な坂を出してくる国であり、上り坂の途中でちょいちょい10%を超える角度の坂がお出ましする。これに加えて峠は上り坂一辺倒ではなく結構な頻度で下り返しが挟まれる傾向にあり、路面の悪さも相まって数字以上に疲労する道という印象だ。

◎治安
 普通に走っている分には問題ないよう感じるが、細々とした点からみるに結構治安悪いことが窺える感じ。基本的にギルギットより北の土地なら治安の心配をする必要はないものの、フンザでも2013年に外国人が多数犠牲になるテロ事件が発生したこともある。
 というかパキスタンの治安イメージが悪いことの1つにこの爆発テロ事件が多発していた時期があるためで、確かに10年程前までは年間のテロ件数が凄まじい数に上っており危険視されていた。現在はかなり数も減って落ち着いてきたとされているが、私がパキスタン滞在中にも南部各地でバスが襲われて29名もの人死にが出たりと完全に終息したわけではない。
 もっと単純な意味での危険度においてもド田舎にも関わらず「自転車に付けてるバッグは全て外して閉まっとけ」だとか「ここの敷地内は安全だけど他でキャンプはするなよ」といった忠告を受けることがあり、聞いたら貧困から来る盗難や強盗といった事件は結構多いのだそう。実際私がパキスタン入国する数日前にラホール近郊で野宿していた自転車旅行者が深夜に襲われ身ぐるみ剥がされたというニュースが界隈に流れてたりしている。ラホールなんて超大都市の側で野宿するなよ・・・という気持ちもあるが、まぁそうした事件が発生するような場所だと思って気を引き締めた方が良いのは間違いない。

◎ビザ・出入国
 実は数年前まで海外長期旅行をするにおいて入国するのが最高難易度レベルで難しかった国である。というのも当時パキスタンビザは自国の大使館(日本人の場合は日本のパキスタン大使館)でしかビザ手続きが出来ず、様々な国を訪問途中に「じゃあ次はパキスタンへ行こう!」という計画を立てることが実質不可能だったのである。
 このルールが変わったのが2018年で、パキスタンがeビザでの取り扱いを開始したことで第3国に滞在しながらPCやスマホで気軽にビザ手続きができるようになり状況が一変した。私もこの恩恵を受けてパキスタンに入国した1人である。
 ・・・あるのだが実はこのビザには大きな落とし穴が存在しており、隣国インド国内でビザの申請をしようとするとビザのサイトページにアクセスできない。両国の関係を考えれば分からなくもない措置かもしれないが、そんなこと知らなかった旅行者はとんでもない迷惑を被るのでやめて欲しいです。
 なおVPNを活用して無理矢理ページにアクセスすることは可能だが、各種手続きを済ませても最後のクレジットカードによる入金処理でトラブルが起きると聞き、私の場合は日本の家族に連絡を取って手続き代行してもらう形で対処した。快く手伝ってくれた妹には頭が上がらない。
 なおツーリストビザは滞在日数30日及び90日が選択できるのだが、90日の長期滞在を選ぶと高確率でパキスタン大使館にて面接を受けなくてはならないらしく、私は安全を取って30日シングルビザを選択した。結果的に滞在時間は全然足りなかったのだがそこは仕方ない。
 まぁ色々書いたけど2024年8月にパキスタンビザルールが変更されてビザの手続きが簡略化。手続き料金は無料、滞在日数も90日まで延長されたらしいので今後パキスタンへ訪問する人は少なくとも滞在日数で悩まされる必要がなくなり羨ましい限り。
 私の場合は30日間の滞在日数ではKKHからの帰り道でオーバーステイしてまうことが確実だったため、ビザの申請ページから延長手続きを実施したのだが、謎の「スポンサーの証拠書類をあげないと申請が通りません」という要項がクリアできなくて結局諦めた。延長費用の20ドルはしっかり持ってかれて悔しいな。
 なおパキスタンの陸路隣国は全て事前にビザの取得が必要な国ばかりであり、パキスタンでの滞在期間の短さを考慮すると次の国への移動プランをしっかり練ってから入国する方が焦らなくて良いと思う。
 私が出入国したワガ国境はインドとの間にある唯一の国境であり、敵対関係にある両国だけあってチェックは厳しいし、この国境を活用している地元民というのをほとんど見かけない。
 なお毎日国境閉鎖された後にフラッグセレモニーという国旗降納のイベントが実施されている。

◎交通事情
 運転マナー悪いしクラックションもよく鳴らす国だけど、インドから来た当初は「なんて常識のある運転するんだ!」くらいに思ってしまったのも事実。数日で錯覚は解けたけど。
 都市部と田舎の交通量差が激しい印象で、初日ラホールの町中を走ってた際にはあまりに車両(バイク)が多く1つの巨大な動物に飲まれているような感覚を覚えた。それに対して北部の山岳地帯まで行けば場所にもよるが10分に1台とかの交通量となる場所もある。ただし交通量少ない場所を走る車両は総じて異常な速度で走っているため結構怖い。カラコルムハイウェイの路面の悪さから反対車線へエスケープすること多いのだが、そういう状況でも平気で突っ込んでくる車がいるということは頭に入れておいた方が吉。
 とはいえ基本的に町中の方が遥かに危険だったし、バイクの他にオート三輪やトゥクトゥクといった小型の車両が無茶な運転をする傾向にあって嫌だ。そもそも町中にも関わらずスピード出し過ぎな車両が多く、大通りを横切ることが出来ずにいつまでも状況伺っている・・・といったことが頻繁に起きる。それでもインドより10倍マシというのが情けないというか何というべきか。

◎特徴
 あまり自由に旅行をさせてくれない系の国である。宿泊施設においては安宿だと外国人は宿泊拒否されることがままあるし、アフガニスタン近郊やKKHでも一部の道路は人力による通行が認められていない。この場合警察車両(バイク)に張り付かれながら走行するか、そもそも走行自体できず警察トラックに自転車ごとピックアップされて移動を余儀なくされるかの2パターンがある。私の場合はバブザール峠がこれに該当した区間だったが、他にもアボッターバード〜べシャム〜チラスのルートは自由に走れないとされており、つまりKKHの前半戦はどうルートを取ろうとも自走できない区間があるということを示している。
 宿に関しては田舎よりも都市部の方が自由度低い傾向にあり、私のルートだとラホールの町やイスラマバードに隣接しているラワールピンディーでは特に外国人が利用できる宿泊施設が限られていると話を聞いてイスラマバードに宿を取ったという裏がある。他だと観光で有名なペシャワールの町等も宿が選べず苦労が多いと聞いた。
 面倒なのがこれ北部地域は比較的マシな状況という点で、南部の都市になるほど治安的な不安からか束縛の度合いも厳しくなるということ。私が走った地域はパキスタン国内では全体的に外国人旅行者も多い地域だったワケだが、そうした理由の1つに「比較的自由な旅行ができるから」という点があったことは強調しておくポイントだろう。

◎気候
 暑さの最盛期は5・6月だが、残暑が続く7・8月はモンスーンの時期であるため暑さも残りつつ湿度も高くなるという大変不快指数が高くなる時期。これが9月になると晴れの日が増えて気温も下がりかなり凌ぎやすくなる。なお北部の山岳地帯は1年を通して雨量が少なく標高の高さから南部とは全く異なる気候・・・というのが通説だけど結構フンザで雨降られたな。
 旅行者的に人気なのはフンザを始めとする北部の山岳地帯だが、ラダックと異なり冬季における道路通行止め箇所が比較的少ないことから冬季においても観光人気が高いし閉鎖されてる施設も(ラダック比較で)少ないとされている。ただし中国との国境であるクンジュラブ峠の国境は例年5月1日から12月の第1週(前後まで)しか開放されてない国境である。
 8月後半でもラホールを始めとする南部低地は耐えがたい暑さが続いており、気温は普通に35度を超えてくる。深夜になっても温度が下がらず高湿度の状態が続くためなかなか身体も休まらないほど。
 それに比べて北部の夏は天国のような環境だが、雨量が少ないとはいえモンスーンの時期には稀に豪雨が降りそれが引き金となって土砂崩れを引き起こす等の災害が定期的に発生してるらしい。実際私が走行する2週間ほど前に土砂崩れが発生しギルギットまでの道が1週間ほど通行止めになっていたと情報教えてもらったし滞在中にも小規模な土砂崩れで半日くらい通行止めが発生したことが2〜3度あった模様。パキスタンは滞在期日数が30日間と短かかったので自転車旅行的にはKKHを走るとなると「時間に余裕を持たせたルート選択」が非常に難しい。(現在は90日滞在ができるようになったのでこの問題は解消した)この季節における走行はそれなりにリスクがあるということだ。

◎言語
 ウルドゥー語というのが主要言語。なおインドの公用語の1つでもある言語。厄介な点が使用文字にアラビア文字が基本として用いられている言語であること。そして外国人の旅行者がまだまだ少ないパキスタンでは大都市や観光地ならともかく、田舎だと看板も食堂のメニューもウルドゥー文字だったりする。こうなるともう手も足も出ないというのが本音。右から読むのが正解だっけ?
 パキスタン人自体は英語話者の割合が高くかなりの人が英語での意思疎通ができる一方で、これも田舎に行くほどその確率が下がっていくので全体的に地方の田舎だと難易度が上がる。ただしフンザ地方に入ると一気に英語使用率が上がるため、その点に関してはあまり問題とはならないのが救い。

◎宿(野宿)・Wi-Fi
 基本的に大都市から離れるほど値段は低くその割に設備は綺麗でコスパが上がっていったと思う。私の場合はラホールとイスラマバードが最も汚い宿だったのだが、ドミトリーだったし黙ってても客が来る環境というのもあるかもしれない。あと設備は綺麗でも従業員が適当というのはパキスタンあるあるの様子で、チェックインの際に部屋を見せてもらったら前の人が使ったまま部屋がグチャグチャという状況で「10分待ってくれ、片付けするから」と待たされることが多かった。何が言いたいかというと、使ったシーツだとか枕カバーを毎回洗濯・消毒するようなことは行われてないし、何ならカバーが黒ずんでいるとかシーツに穴が散見されるというのは当たり前だということ。途上国の安宿なんてそんなものだと思っているが、南京虫の可能性があるためシーツの穴には注意しておきたい。
 基本的に宿泊費は安く1000〜2000ルピー(500〜1000円)の予算で安宿なら最後のラホール除いて泊まることができた。放っといても向こうから割引してきたりとか色々あったので、全部の地域で同様の価格とは思っていないが参考までに。
 Wi-Fiの設置率はド田舎の宿を除けば大体設置されてる印象だが、速度と安定さが揃っている場所はほとんどない。フンザ地域まで入るとそもそも電気が安定して通電していることも少なく、状況次第で1日の半分近く停電してることもある。ちょっと良い宿だと自家発電機を持ってたりして停電するとそちらに切り替えてくれたりするが、燃料の関係だろう夜遅い時間になっても発電機を回し続けてた宿には1度も当たっていない。そういえばパキスタンではX(旧Twitter)が規制されてて国内からアクセス出来ない仕様となっている。私はイランで教えてもらったVPNを活用することで回避していたが、この事実全く知らなかったので危なかったと感じてる。
 宿の値段が安いこと、イスラマバード以南の地域は暑すぎたのと治安的な不安もあって野宿はほとんど実施していない。イスラマバード以北はそれほど問題なくキャンプできそうな雰囲気だったが、走っている道がほとんど崖下にある狭い道なので人気のない場所でテントを張る・・・という行為自体がそもそも難しい。結局人様にお願いして敷地等の場所に1晩テントを張らせてもらえないか?とお願いするスタイルで泊まったことが何度かあった程度。

◎動物
 それほど印象に残った動物は見なかったように思う。犬も大人しくあまり追いかけられることはなかったし、牛や羊・ヤギといった家畜をよく目にする一方でイスラム教国家らしく豚の姿を見たことは1度もなかった。割と馬に乗っている人を見かけた一方でロバの存在感はあまりない。
 フンザ地域ではツノの長いヤギで雪豹と共にアイベックスという動物がシンボルになっている様子だが、どちらも実際に見かけたことはなかった。プラタで見た大型動物はせいぜいヤクくらいじゃないかと思う。

◎自転車店
 大都市なら多少は部品を取り扱ってるスポーツ系の自転車ショップがあるといった程度。田舎でも自転車取り扱ってる店自体は見かけたが、どこもオモチャ屋がついでに取り扱ってるとかそのレベルで期待してはいけない。
 とりあえずイスラマバードで訪問したショップは店長も親切で色々相談にも乗ってくれた良いショップだったので、パキスタンでトラブルあったらProbike Islamabadに向かうのは1つの正解だと思う。在庫がない部品も数日で取り寄せてやるよ!と言われたし。

◎物価・食事
 これは文句なく安い。2024年現在でここまで物価安な国も珍しいと思う程には。パキスタンルピーの通過価値はとんでもなく下落しているようで、何年か前まで1パキスタンルピー=1円くらいだったのが現在はその半分くらいで落ち着いている。つまり1ルピー=2円ということで、邦人旅行者から見れば全ての物価が半額に値下がりしている計算になる。もちろん通過下落に合わせて値段のインフレが発生しておりそんな単純な話にならないのが常だけど、こうした影響もあってか世界的なインフレにも関わらず物価安が比較的続いている国といっていいと思う。
 ただし食材の種類や料理のレパートリーが多いという訳ではないため、食の好みが合わないと他のメニューに逃げられず結構悲惨なことになる。私も後半は飽きが来ていたパキスタン料理だが、それ以上に困ったのはこの国ではまともなコーヒー豆が一切売られていなかった点だ。ほぼデカい外資系のスーパーですら堂々と陳列されてるのはインスタントばかり、僅かに粉タイプがあった程度で最後までコーヒー豆を見つけることは叶わずパキスタンでは全くコーヒー飲んでいない。オシャレ系カフェに行けばコーヒー自体は飲めるけど、チャイの10倍近い値段でロクな豆使ってないことが見て取れたので利用はしていない。結局パキスタンではココアパウダーとミルクパウダーでココアばかり作ってたぞ。
 適当な屋台飯なら100円以下で楽しめるし、比較的ちゃんとした食堂でカレーとチャパティセット注文しても200円とかその程度。チャイだけはインドより若干高くて20〜30円くらいが多いかな?なおパキスタンの一般食堂では具材を注文すると勝手にチャパティが付いてくるスタイルなのだが、このチャパティ代金は別計算となっておりその値段も向こうから教えてくれないので事前に確認しておかないと会計の際に揉めることになりがち。
 米食も無いワケではないのだが、ビリヤニと炒飯もどきみたいな米、他はチキンライスのほぼ3種類に限られており、せっかく豊富で味わい深い様々なカレーがあるのにカレー&ライスという選択肢が実質存在しないのが日本人的に悔しいところ。ちなみにローカル食堂ではカレー系にスプーンが出てくることはまず無く、チャパティをちぎってカレーや具材を挟んで食べるローカルスタイルとなる。
 なおイスラム教の国であるためアルコール類を楽しむことは実質不可能と思って良い。大都市の一部には外国人相手にしたリカーショップやバーも存在すると話に聞いたが、旅行者相手というより駐在員とかを対象にした施設でしょう。フンザの自家製ワインも普通に観光する分では見つけることは難しいし。
 その代わりというかイスラム教国らしく甘味の種類が充実している。独自の練り物を陳列してるタイプのお店も好きだったが結果的にケーキばかり食べていた記憶が。1ピースで80円、小型のホールなら400円しない程度のお値段ながら途上国にありがちな「砂糖入れすぎ激甘テイスト」ではなくレベルが高い。坂登ることが多く疲れていたためか比較的大きな町ではケーキを楽しむことが1つの楽しみになっていたほど。

◎総括
 所謂「政府や警察といった組織側は課題や問題が多いけど、国民はとてもフレンドリー」というイランとかに似たタイプの国だと思っている。ちなみに隣国インドは「ルールやインフラは案外しっかりしていたが、国民が酷い」というエチオピアに近い印象で、元々同じ国だったのにここまで正反対の印象を受けるとは面白い。
 治安や自走不可能な地域が多かったりと不満がない訳ではないのだが、それを補って有り余るほどに雄大な自然に囲まれた北部の土地は、時間が許されるならもっと色々な道を走ってみたかった。それに加えて配慮は足りないが底抜けに親切でフランクなパキスタンの人々は、時に面倒臭く時に心底助けられてこの国の魅力を一層強く感じさせてくれた。
 そういう意味でこの国に滞在中にビザルールの変更で90日まで滞在可能になった・・・というのは非常に喜ばしいことであると思う反面、私もその恩恵を受けて思う存分パキスタンを走り回りたかったぞ!と思わずにはいられない。
 まぁ以前は居住国でしか取れなかったビザがeビザでネット取得が可能となり、今回はその簡略化と滞在期限の延長。確実にパキスタンという国は旅行しやすい国へと変わってきていると思うので、次は是非とも警察による監視と外国人の宿泊施設制限を解除してやくれませんかね?そこんとこどうでしょうかと期待したい。
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