2025年4月3日〜4月20日
走行日数18日間
累計走行距離921km(166725km〜167646km)
◎道路
バクーの都市圏さえ抜けてしまえばほとんどの道に側道が設置してあり割と安心して走ることが可能。隣国ジョージアがこの点かなり酷かったので、アゼルバイジャンの道路状況にはかなり好感持っている。
全体的に国の南部は平野部が多く、北部になると山岳地帯の割合が増えていく。国の東はカスピ海に面しているため海抜0m以下まで標高下がる一方で、北西部の最高地点は標高4000mを超える高い山がそびえるアップダウンの激しい国だ。国土もそれほど広い国では無いため坂の斜度が急になりそうなイメージあるが、幹線道路で斜度10%を超える厳しい坂は1度しか出てこなかったな。斜度12%と書かれた道路標識は3度も見たけど全部嘘だったし。なお車両は右側走行。
信号の割合が少なく交差点はラウンドアバウト方式となってることが多いのだが、田舎はともかく都市部や交通量の多い場所だと交通マナーの悪さから非常に危険。
それ以外だと町の中心部に大きな道路が通っておらず、一方通行となってる道の割合が高かった。これに加えてアゼルバイジャンは駐車場が非常に少なく路上に駐車する方式が一般的のようで、この2つが合わさって通行スペースが非常に狭くなるという状況に陥りやすい。郊外と都市部における走りやすさの差が大きな国だった。
◎治安
非常に良い。少なくともアグレッシブな強盗とかに遭遇する感は全く無いし、バクーを除けば盗難問題とかもそれほど気にする必要ないと思う。ただバクー近郊のレストランとかスーパーで子供から「金くれ」とせがまれたことが2度あり、都会から離れると生活レベルがかなり低下することを見ても貧富の差が大きいことが察せられる。得てしてそういう土地は治安が悪くなりがちなので。
それと全国的に軍隊や軍人の姿をとても多く見かける国で、ちょっと田舎町に入ると戦争で亡くなった軍人の慰霊碑や写真が数多く祀られている。ナゴルノカラバフの土地を巡っての紛争は既に終結し、アルメニアとの外交も回復へ向けて進んでいるとされる状況の割に物々しくないか?とは感じたな。
◎ビザ・出入国
2020年のパンデミックで多くの国が国境閉鎖したことは記憶に新しいが、2025年現在でもアゼルバイジャンは陸路における入国を解放しておらず、この国に(観光で)入国するには航空機を使うしか選択肢がない。もう何年も「◯ヶ月後には入国制限を解除する」と表明しながら期日になると「まだその時期じゃない」と延期してるので、今後陸路国境が解放されるのはかなり大きな変革でもないと難しそう。
よく分からないのがアゼルバイジャンからの「出国」は陸路(海路)の国境でも構わないという点で、私もこれを知っていたのでカスピ海フェリーを利用してアゼルバイジャンを出国することができた。このカスピ海フェリーはユーラシア大陸を横断する際の陸路ルートとして一部の界隈に人気なのだが、現状カザフスタン及びトルクメニスタンからアゼルバイジャンへ航行するフェリーには乗船できず、しかしアゼルバイジャンからこの2カ国へ航行するフェリーは乗船可能ということだ。
注:トルクメニスタンはビザ取得が非常に難しい国なので海上ルートの選択肢としては難しいところなのだが、2025年4月にトルクメニスタン政府がeビザの発給を開始したというニュースがあったので今後新たなルートとして利用する人が増えるかもしれない。
ちなみにアゼルバイジャンは通常入国にあたってビザが必要。これは空港のアライバルビザで簡単に入手できるので手間はほとんど必要ない。嬉しいのが世界で唯一日本人だけビザ代金が無料という点で、アゼルバイジャンが親日国と言われる由縁はこういうポイントにあるのかもと思ったり。なおビザ発給の際に宿泊先の宿を入力する欄があって、私はここで慌てて宿予約し手続きしたのだが適当に入力しても大丈夫だったような気もする。
なお滞在可能日数は30日間なのだが、この国で15日以上の滞在をする場合は宿泊先の情報を受け取って関連する役所に赴きレジストレーション(滞在証明証)を受領しなくてはならないという罠がある。私は首都のバクーでこの処理を実施したが、他の町でどの規模なら同様の処理をしてくれる役所があるのかは不明。滞在中に1回証明証を発給してもらえばOKなので、よっぽど変なルートを走らなければバクーを経由すると思うし素直に首都で手続きするのが正解だと思う。
なお滞在可能日数は30日間なのだが、この国で15日以上の滞在をする場合は宿泊先の情報を受け取って関連する役所に赴きレジストレーション(滞在証明証)を受領しなくてはならないという罠がある。私は首都のバクーでこの処理を実施したが、他の町でどの規模なら同様の処理をしてくれる役所があるのかは不明。滞在中に1回証明証を発給してもらえばOKなので、よっぽど変なルートを走らなければバクーを経由すると思うし素直に首都で手続きするのが正解だと思う。
出国に利用したカスピ海フェリーは貨物船に僅かな乗客が乗り込むスタイルということもあってか一般的な出国手続きと若干異なったと思われる。この辺はカスピ海フェリーについての方で詳しく書いたので気になる方はそちらを確認してほしい。
◎交通事情
悪い。全体的に運転が酷かった中東から来て即「アゼルバイジャンの運転酷いな!」と思ったので相当レベル低いと思う。クラックションも鳴らしまくるし道を間違えた車両が平気で100m以上の距離をバックしてたり、下手すりゃ普通に逆走してくる車両もいた。
ただ信号表示は守るし土を越した無茶苦茶な運転をする訳ではなく、あくまで通常の範囲内で危険という感じ。ときどきこちらが優先車両にも関わらず「俺が通るからどけ!」とばかりにクラックション鳴らして横行するバカドライバーがいたりするので気は抜けないが。
この国は自転車旅行者に対して気の良い人が多いのだけど、ドライバーが挨拶がわりにクラックションを鳴らしてくるパターンが多く、しかもそれが1日に何十回もある。自転車的にはクラックション鳴らすという行為は非常に怖いしマジで危険な運転で鳴らしてくるクラックションと区別つかないので本当辞めてくれないかな・・・と常日頃思っているのだけども。
なおアゼルバイジャンの田舎を走るバスはほぼ全てバンタイプで大型バスが出てこない。一部ツアーバスとかは見たかなという程度。国民とか旅行者的には困ることあるかもしれないが、自転車乗りとしては大型バスが少ない国って安心感高くて好きなんだよね。
◎特徴
2023年まで凡そ40年間に渡って隣国アルメニアとナゴルノカラバフという土地をめぐって紛争が続いていた。現在この紛争は完全に終結したとされ、土地はアゼルバイジャン領に。アルメニア側も再度この土地を奪取するため攻撃を仕掛ける考えはなく、両国間の関係も改善に向かっている・・・というのがニュース見た限りでの状況である。
ということでナゴルノカラバフは現時点で外国人が(アゼルバイジャンの国として)入域することは可能となったが、そのためには許可証が必要とのこと。それ自体はネットで手続きして数日後には発給される物らしく大した手間とはならないが、紛争の名残りでこの地域は未だに地雷が埋まっているらしい。
そんな土地なのでどこまで自由に移動できるか怪しいところがあるのは確か。とりあえず自転車的に安心して野宿できる環境ではないため訪問するのは辞めといた裏があったりする。
◎気候
4月のアゼルバイジャンは低地なら非常に快適な気候でのサイクリングが楽しめる。最高気温が20度ちょっとで走っているのが実に気持ちいい。対して山岳地帯だと夜間は氷点下まで気温下がる場合もあるし、この時期だと山脈に雲が引っかかるのか天気の良くない日が多い。全体として低地:快適、高地:寒いという印象。いや高地と言っても精々500〜1000m程度なのだけど。一応北部に標高2000mを超える風光明媚な村があり人気だと教えてもらったのだが、ここへ向かうにはバクーから北上するルートに乗らないと他の道が無いため行ってない。ちなみにアゼルバイジャンではぐるっと国内周遊するようなルートを走っているが、1度も「ずっと向かい風に吹かれ続ける日」というのが無かったのは幸運というしかない。このことから言えることはアゼルバイジャンの風向きはあまり一定方向から続くタイプでは無いということか。
なおカスピ海沿岸は日によって非常に強い風が吹き、特に秋だとより激しいとのこと。4月という春の時期は比較的風が穏やかな季節だと聞いたが、それでも後半のバクー滞在してた雨の2日間は時速40kmを超える強烈な北風が吹き荒れていた。もちろんカスピ海フェリーも運休してたのであり、カスピ海フェリーを利用したい人はアゼルバイジャンの風が安定する時期を選んで向かえば長々と出航を待たされる可能性が減るかと思われる。
◎言語
アゼルバイジャン語だが、結構な割合でロシア語を使う人も多かった。この2カ国の言語がどのくらい近いのかは知らないけど、使用してる文字はキリル文字っぽいアルファベットが多々見られたので近しい言語なのだと思ってた。
バクーか観光地でもないと英語の通用率は非常に低く、特に年配の形で英語が話せる人はまず出てこない。田舎で20人以上に囲まれることとかあったけど、誰1人として多少でも英語話せる人がおらずジャスチャーのみでコミュニケーションしたのは良い思い出だ。
道路看板とか標識関係でサブ言語として英語表記されてる割合が低い国で、アゼルバイジャン語は英語的な発音ともだいぶ異なるため道路看板の文字を見て行き先の町か否かを判断することが非常に難しい。全体として言語的にはかなり難易度の高い国という印象だ。
◎宿(野宿)・Wi-Fi
バクーには1000円以下で利用できるホステルが多数ある。値段の割に綺麗だし設備も良くて有難い限り。ただ2度の利用で両方とも長期滞在してるロシア人がおり、我が物顔で勝手な行動(人の食材盗んだり深夜にベッドで音流して動画みたり等)してて大変迷惑だったのが印象悪い。それと中心部の宿はアパートの一室だったりするタイプが多く、場合によっては自転車を外に置かねばならずこうした点を事前確認したいのだけどアゼルバイジャンは入国ビザに宿泊先を記入する必要があったりしてなかなか難しい。
町を外れてしまえばキャンプできる場所は幾らでもある国で野営は楽だった。ただ水の補給に難があるというか水道水が飲めない系の国らしく、その割に水補給の大変手段が少ない感じで水の確保が難しい。戦没者の慰霊碑には大抵水道があってこうした水を汲んでる人も見かけたことから飲んでたけれど、実際この水が飲料用だったのかは分からない。煮沸してたから大丈夫理論。
宿のWi-Fiは高速で安定してた一方で、町を外れると案外ネット環境が乏しかったアゼルバイジャン。この国はマックを始めとするアメリカ系チェーン店が首都バクー以外ほとんど進出していないため、田舎だと必然的に地元のカフェみたいな施設を探さなくてはならなかった。結果としてWi-Fiの設置率は五分五分といったところか。カフェの数自体は沢山あるため、何日もネットに接続できなくて困るといった状況に陥ることはそうそうない。地味にヴィエンダムの町で泊まったホステルにはWi-Fiが無かったけど、多分これ珍しいパターンだよなとは思ってる。
◎動物
家畜では羊の割合が一気に増えた。放牧してる羊の群れを馬に乗ってコントロールしてる光景はアゼルバイジャンでよく見かける光景で微笑ましく思いながら眺めていたかな。牛やヤギの姿もそこそこ見かける一方で豚の姿がないのはイスラム教の国らしい。
それと久しぶりに犬がアグレッシブに追いかけてくる国で、それほど長く滞在したわけじゃないのに計20回は追い回されたと思う。犬叩き棒も1度火を吹いたし。
危険な動物が人里近くに生息してる雰囲気ないし、そうした動物注意の看板は山道を走る道路でクマ注意の標識を見かけたことがあるくらい。でもこの国でテント張るという会話した際に「動物に食い殺されるぞ」的なジェスチャーとともに犬っぽい鳴き方をされたのでもしかすると狼でも出るのかな?とか思ってた。なおハエを見ることは少なかったが場所によってはデカい蚊がワンサカ飛んでてキャンプ中に苦労した。そのくせこの国には渦巻き式の蚊取り線香が売っておらず困った思い出。
◎自転車店
バクー市内には複数のプロショップが存在する。ここから中央アジアを横断する場合キルギスに到着するまでスポーツ用自転車のちゃんとしたショップが存在しないと聞いたので予備のチェーンとか購入したのだがかなり値段は高かった。その割に地方都市で見つけた自転車ショップで購入したチューブは1本2マナト(約170円)とビックリするほど安かったので、何が影響してるのかよく分からんというのが正直なところ。
ある程度専門的な部品がダメになったらバクーまで移動するしか方法ないが、そもそも現在のアゼルバイジャンは飛行機でしか入国出来ずほぼ間違いなくバクーからのスタートとなるため1番トラブルの発生しそうな飛行機輪行の直後でカバーできる環境となっており、問題起きることは少ないんじゃないかな。
◎物価・食事
全体的にかなり安い。石油がバンバン出る国でありながら物価の安い国というのは珍しいなとか思ってた。ベネズエラは色んな意味で外れ値の国だし。ガソリンは1ℓ90円くらいでアラビア半島の国ほどではないが日本人としては羨ましくて仕方のないレベル。
イスラム教徒が大多数で構成している国だが、しっかり教義と政策を分離しているらしく普通にそこら中で酒類が販売されてるし値段も安い。ビールは2.5ℓの大型タイプで7マナト(約590円)ちょっとの商品がありよく飲んでたな。それとアゼルバイジャンはワインも人気の国だけあって、安価ながら美味しいワインが多く安いタイプだと1本4〜5マナト(340〜410円)くらいで販売されている。
こうした品に比べて肉類の値段はやや高く、そもそも田舎になるとソーセージみたいな加工肉か冷凍肉しか取り扱ってないお店がほとんど。肉専門店もあるっちゃあるが、値段表記一切ない上に部位と必要量をお願いして目の前に吊るされた肉をカットしてもらう方式なのでやや難易度が高い。個人的には1kg15マナト(約1250円)を切ってたら「結構安いな」と思ってた。なお鶏肉はもっとずっと安い。
外食するのもアリかと思ってたのだけど、田舎で気軽に利用できそうなのがケバブ屋ばかりで結局1度も活用することなく。カフェは2〜3度利用したのだけど、全て「お題は要らないよ」と言われてしまい料金知ることなかった嬉しい思い出。
◎総括
アゼルバイジャンという国は当初「陸路による入国が出来ない」ということから訪問予定の無かった国だったりする(コーカサスの国を走行中当時の話)。その後アラビア半島走行中に「中央アジア横断するに当たってアゼルバイジャンからスタートすれば、カスピ海横断フェリーを含めて走りたかった土地がほぼ走れる!」ということに気付いて入国した経緯がある。
そんな紆余曲折あった末に訪れた国ではあったが、私はこの国を訪問出来て本当に良かったなと思っているし、そう思わせてくれたのはアゼルバイジャンの人たちがとてもフランクで親切にしてくれたからだ。
訪れるまで知らなかったが、唯一日本人にのみビザ代金が無料の親日国とか、イスラム教徒が9割超える構成でありながら政教分離がしっかり行われているとか、興味深いポイント幾つも備えてるポテンシャル高い国だったんだなと今になって思う。やはり実際に行って見ないと分からないことは多い。
石油や天然ガスといった資源に恵まれる親日国・・・と書くとアラビア半島の国を想起させるが、アゼルバイジャンはそうした国とはまた違った印象を抱かせる国であり、言葉によるアウトプットでは表現しきれない居心地の良さを感じられたことが1番の収穫だと思う。
ということで本当に好きな国なので、早いとこ陸路の国境を開放して下さい。石油枯渇に備えて観光業に力を入れ始めてるのなら窓口を広げておいて損はないでしょう!と旅行者なので好き勝手に希望言ってお来ましょう。