1 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/05/25(金) 23:37:01.50 ID:5d3O/c9m0
―1―
先輩「つい最近君と花見をしたと思っていたら、もう梅雨前じゃないか」
後輩「時間が過ぎるのは早いものですね」
先輩「こうやって漫然と時を過ごすと、いつの間にやら腰が曲がっていそうだね」
後輩「まぁ漫然と過ごせる時間があるだけでも良いじゃないですか」
先輩「いいこと言うね、君は」
後輩「いえいえ」
先輩「腰が曲がるまで一緒にいよう、というプロポーズにも取れる発言と捉えていいのかな」
後輩「曲解です」
先輩「そうそう! プロポーズと言えば、私には理想のシチュエーションが一つあるんだ」
後輩「…先輩。話題転換が急すぎて、話の腰が折れちゃってますよ」
10 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/05/25(金) 23:56:50.51 ID:5d3O/c9m0
―2―
先輩「最近新しくヘッドフォンを買ったんだ」
後輩「へぇ」
先輩「君から借りた曲を、もっといい音で聞こうと思ってね」
後輩「それはまた貸した側としては冥利に尽きますね」
先輩「でもヘッドフォンにも沢山種類があって、最初は何を買おうかと迷ったよ」
後輩「そういう時は店員のお薦めを選ぶのが無難かと」
先輩「私もそう思って、無難に店員に訊ねてみたんだ。そしたら予想よりも値が張ってね。
多分聞いたら君も驚くと思うよ」
後輩「いくらだったんですか?」
先輩「試しに値段言ってご覧。当たったらこのヘッドフォンのレシートをプレゼントしようじゃないか」
後輩「心から要らないプレゼントですが…そうですね、1万円くらいですか?」
先輩「3500円」
後輩「割と妥当じゃないですか……」
14 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/05/26(土) 00:03:13.05 ID:akG1dfbv0
―3―
先輩「昨今は『萌え』というワードが蔓延しているけれど」
後輩「先輩が発すると、まぁ似合わない言葉ですね」
先輩「ゴホン。その萌えの類義語として、『燃え』があるらしい」
後輩「聞いたことありますね」
先輩「可愛い女の子ばかりが出る前者と違い、熱さ溢れる内容が後者らしい」
後輩「ほほぅ」
先輩「そんな折、某レンタルショップで借りた昔のDVDに
時代を先取りしたような『燃え映画』があったのを発見したんだよ!」
後輩「それこそアクション映画なんて、どれだって燃え映画でしょうに……」
先輩「甘いぞ、メグたん。私が見つけたのは100人見たら100人が『これは熱い!』と感想漏らす代物だ」
後輩「それはまた凄い自信ですね。どんな映画を観たのか興味があります」
15 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/05/26(土) 00:06:30.61 ID:akG1dfbv0
先輩「しかして、ただ教えるだけでは面白くない」
後輩「損得勘定を抜いて是非とも教えてもらいたいんですが…」
先輩「そこで、だ。ちょっとしたゲームをしよう」
後輩「ゲームですか?」
先輩「私が貸すDVDを見て、『これは熱い』と思わなければ君の勝ち。そう思えば私の勝ちだ。」
後輩「先輩に随分と分の悪い賭けになっていますが、余程の自信ということですか」
先輩「そう捉えてくれて構わない。 もし私が負けたら恥ずかしいポエムを次のゼミで発表しよう。
君が負けたらカフェでコーヒーとパフェケーキのセットでも奢ってもらおうか」
後輩「受けて立ちましょう。次のゼミでポエム読んで赤っ恥じをかく姿が目に浮かぶようです」
先輩「ふふん、私も君の奢りで美味しくパフェを食べている姿が脳裏に浮かんでくるよ」
16 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/05/26(土) 00:09:46.31 ID:akG1dfbv0
先輩「じゃあ、これを託そう。例の映画だよ」
後輩「なんでまた大手レンタルショップ店の袋に入れたままなんですか?」
先輩「観終えたら返しておいてくれ」
後輩「はいはい……」
【後輩の自室にて】
後輩「………」
後輩「………」
後輩「………」
後輩「………卑怯だ」
映画タイトル:『バックドラフト』
http://www.youtube.com/watch?v=9o6I6OOPlTc
後輩「しかもこれよく見たら、またDVD延滞してるじゃないか………!」
17 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/05/26(土) 00:15:25.73 ID:akG1dfbv0
―4―
先輩「ふと思ったんだが」
後輩「何ですか?」
先輩「『不毛』っていう言葉を考えた人は、予言者かも知れない」
後輩「……」
先輩「字の成り立ちから察すると、毛生え薬が発明された瞬間に不毛という言葉は総じて意味を無くす。
それでも未だ『不毛』というワードが消えていない」
後輩「……」
先輩「その言葉がいつ出来たのかは言語学者に任せるとして、少なくとも結構昔だろう。
しかして時が進んだ今でさえ、毛を生やす医学は一向に進展していない」
後輩「……」
先輩「もし『不毛』を考えた人が予言者なら…未来永劫、毛生え薬は完成しないのかも知れない」
後輩「先輩」
先輩「ん?」
後輩「……この話題、とても不毛です」
19 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/05/26(土) 00:22:41.31 ID:akG1dfbv0
―5―
先輩「人を好きになる順番、知っているかい?」
後輩「いえ、知りません。むしろ好意を抱く順番付けがあるなんて初めて知りました」
先輩「これは全員に当て嵌まる事じゃなくて、統計学の話になるんだけれどね」
後輩「へぇ」
先輩「この話、興味あるかい?」
後輩「少しくらいは」
先輩「よし。それじゃあいずれかの機会で教えてあげよう」
後輩「……今教えてくれるんじゃないんですか」
21 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/05/26(土) 00:29:54.97 ID:akG1dfbv0
―6―
後輩「最近どうにも寝つきが悪くて困っていまして」
先輩「それはあまり宜しくないね」
後輩「ゆっくり眠れる良い方法を知りませんか?」
先輩「そうだね。私からアドバイスとしては……」
後輩「しては?」
先輩「目を瞑ってみるとかどうだい?」
後輩「さすが先輩、いいアイデアですね」
先輩「その上部屋を真っ暗にして、深呼吸。これで完璧と思うんだ」
後輩「ありがとうございます。聞いた相手を間違えました」
22 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/05/26(土) 00:35:57.41 ID:akG1dfbv0
後輩「…これでも僕けっこう困っているんですが」
先輩「仕方ないなぁ。可愛い後輩の為に一つ頑張ってみるか」
後輩「何か他にも案はあるんですか?」
先輩「こういうときはね、人肌から聞こえる心音が一番なんだよ」
後輩「……へ?」
先輩「もし君が寝付けなかったら、私の胸を枕にでもして眠ればいいさ」
後輩「またとんでもない事を言い出しましたね」
先輩「はっはっは! もし眠れなければ、今晩私にメールでもしてみるといいじゃないか」
後輩「……勝手に言っててくださいよ、もう」
23 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/05/26(土) 00:39:09.93 ID:akG1dfbv0
~その日の晩~
後輩「……」
後輩「……」
後輩「……あの人が変な事を言うから、なんか余計に眠れない」
後輩「……」
後輩「……」
後輩「……」カチカチカチ カチカチカチ
【件名】
夜分遅くに失礼します
【本文】
眠れないです
>送信
後輩「……」
24 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/05/26(土) 00:41:22.98 ID:akG1dfbv0
<ppp~♪ ppp~♪
後輩「!?」
後輩「もう返事が来るなんて…予想よりも早すぎる」
後輩「な、内容は一体……」
<先輩>
【件名】
夜分遅くに失礼だね、君は
【本文】
まさか昼間の件を本気にしているのかい? えっち。
後輩「……」
後輩「……」
後輩「……どっと疲れた。もう寝よう」
27 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/05/26(土) 00:51:08.33 ID:akG1dfbv0
―7―
先輩「ついさっきの事なんだけれど、やたら可愛いうっかりさんがいてね」
後輩「ほぅ」
先輩「凄く胸キュンするうっかりさんの話なんだが」
後輩「可愛いくて胸キュンですか」
先輩「そうなんだ。その上にとってもセクシーな人なんだよ。どうだい、聞いてみたくないかい?」
後輩「はぁ、まぁ長くならない程度になら」
先輩「君も素直じゃないねぇ。話を聞いてみたいなら、私に一言そう言ってくれるといいじゃないか」
後輩「話を誰かに伝えたいなら、そう言えばいいじゃないですか……」
28 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/05/26(土) 00:53:22.74 ID:akG1dfbv0
先輩「それで本題なんだが」
後輩「はい」
先輩「その人は先日の休みに服を買ったんだろうね。
意気揚々と新しい服を着て学校へ来たのはいいんだけれど」
後輩「ふむふむ」
先輩「上下の服全てにタグが付いたままだったんだ」
後輩「へぇ」
先輩「どうだい、可愛らしいエピソードだろう?」
後輩「確かにそれはうっかりさんですね。……ところで先輩」
先輩「うん?」
後輩「タグがまだ一箇所だけ切れてないですよ」
先輩「あれ? さっき全部切った筈なんだけれど?」
後輩「……」
先輩「か、可愛いらしい話だろう?」
後輩「……はいはい」
29 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/05/26(土) 00:56:48.62 ID:uXRG7nK20
僕っ娘の後輩素敵だわ
31 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/05/26(土) 00:59:35.18 ID:7Im2hbGYO
俺は好きだ
32 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/05/26(土) 01:00:15.84 ID:akG1dfbv0
―8―
先輩「クシャミが可愛い子っているじゃないか」
後輩「確かにやたら可愛くクシャミする人いますよね」
先輩「へぷちっ、とか」
後輩「ちゅんっ、とか」
先輩「ああいうのって素の可愛さが出ていいよね」
後輩「先輩はどういう風にくしゃみするんですか?」
先輩「試してみようか」
コショコショ……コショコショ……
先輩「へ、へくちんっ!」
後輩(あ、なにそれ可愛い)
先輩「………まもの」
後輩「まもの!?」
35 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/05/26(土) 01:06:43.13 ID:akG1dfbv0
―9―
~喫茶店にて~
BGM:
ttp://www.youtube.com/watch?v=G4P18ROfI_E&feature=related
先輩「またお洒落な喫茶店だね」
後輩「そうですね。内装の雰囲気だけじゃなく、流れてくる音楽も良い感じです」
先輩「なんだかデートしている気分だよ」
後輩「そうですかね」
先輩「好きな人と一緒に来るには最適かな」
後輩「さいですか」
先輩「こうして君と一緒に来れたのも、何か意味のあることだって思わないかい?」
後輩「……なんでちょっと意識させようとしているんですか」
先輩「狼狽する君を見るのは嫌いじゃないからね」
後輩「勝手にしてくださいよ、もう」
36 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/05/26(土) 01:11:24.70 ID:akG1dfbv0
先輩「ここのコーヒーは美味しいらしいね」
後輩「そりゃオレンジジュース飲んでいる先輩には分からないでしょう」
先輩「そんな事を言っちゃう君は、ちゃんとコーヒー頼んだのかい?」
後輩「はい。ここのお店はコーヒーが美味しいらしいので、まず飲んでみようかと」
先輩「これは憶測だけれど、注文したのは君の大好きなウインナーコーヒーだろう?」
後輩「今まで僕一度もウインナーコーヒー大好きなんて言った事ないですよね」
先輩「うん、聞いた事ないね」
後輩「それにさっき僕が『モカ』頼んだところ聞いているじゃないですか」
先輩「そうだっけ?」
後輩「ウエイターが去った後に、貴女ボソッと『ほほぅ……ナカトミノモカマタリ……』とか
しょうもなさ全開のギャグまで呟いていたでしょう」
先輩「もう梅雨が目の前に差し掛かるというのに、君は自然に寒いことを言うね。ビックリだ」
後輩「スベったギャグを自然に人に擦り付けるとか、僕の方こそビックリですよ」
38 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/05/26(土) 01:18:17.52 ID:akG1dfbv0
―10―
後輩「ついさっきの話、というか通学中の話なんですが」
先輩「ん?」
後輩「道に迷っている人を助けている知人を見かけまして」
先輩「へぇ」
後輩「ああいう優しさって大事ですよね」
先輩「確かにそうだね。でも、それは優しさではなく本来は当たり前の事なんだよ。
困った人を助けるという当たり前は、忘れちゃいけないね」
後輩「それには同意です」
先輩「うむ」
後輩「それに、人助けを行なったという事柄を誰にも言わない。そういう美徳を持つ人は素敵です」
先輩「……」
後輩「ね、先輩」
先輩「むぅ……見ていたのなら、声くらいかけてくれても良いじゃないか」
39 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/05/26(土) 01:24:02.34 ID:akG1dfbv0
―11―
先輩「最近は勉強中の気晴らしがてらにラジオをよく聴いているんだが」
後輩「へぇ」
先輩「これがまた意外と面白いんだ」
後輩「僕も耳寂しいときや新しい音楽発掘するときに聴くんで、気持ちは分かります」
先輩「君はどんな感じの番組を聴くんだい?」
後輩「音楽番組ばかりですよ。先輩は?」
先輩「その時間帯に流れている番組全部かな」
後輩「……聖徳太子でも目指しているんですか、貴女」
41 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/05/26(土) 01:43:35.58 ID:akG1dfbv0
眠さも来たのでこの辺りでお開き
序破急の皆無な変哲もない内容、これを台本形式でダラダラ書き連ねる事が可能か試していたのですが
今回の件で日常ネタを描く人達の凄さを思い知りました
上記で滔々と述べていますが、このスレに関しては特に需要も無さそうと判断したので今回で〆
時間を割いて目を通して頂きありがとうございました
42 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/05/26(土) 01:47:08.74 ID:tV3fnigc0
面白かったのに
気にすんなってのは難しいのか
43 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/05/26(土) 01:48:30.59 ID:wkOqdJ4J0
俺は好きだからまた書いてくれ
とりあえず乙