対 II

 この東西の団地(東は「富士見町住宅」西は「富士見町団地」)は、東と西での対(つい)を意識しているのか、10号で触れたように、こちらにも東と同型と思しき、例の正体不明な遊具がある。9号鉄塔からは東に50-60mほどの距離だ。

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よく手入れされたシバとキッカイなる遊具

 「ジラフ」の彼方と異なり、柄は無い。左端、トンネル部分の形状も若干異なるか。
 1970年周辺、昭和で言えば大阪万博の開催された45年の周辺だが、その辺りに作られたと思しき遊具には、可也シュールなものがある。何時ぞや紹介した、小平市立上水公園の遊具も同様だ。この団地が建てられたのは昭和43・44年(1968・1969)、上水公園の開園は昭和42年(1967)。当時最盛を迎えていた、サイケデリック文化の影響もあるのであろうか。ピンク・フロイドの「Astronomy Domine(天の支配)」が流れ出しても、違和はなさそう。

 この不可思議なる遊具の横たわる公園の名は、「たぬき公園」。何処が「たぬき」?とも思うが、よく見ればその名の通り、たぬきがお二人並んでいる。

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たぬき

 また、10号下同様カエルさんも居るが、タイプは異なる。公園南側、団地敷地内を流れる昭和用水にかかる古びた橋の袂で、あんぐりと口を開けている(誰か青スプレーでイタズラしたな)。

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あんぐりガエル

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昭和用水と橋の欄干

 このタイプのカエルさんは、さんかく公園含め、西側エリアの彼方此方でお目にかかる。

 さあ、団地内、もう大分たっぷりと彷徨かせて頂いたので、遊具と9号のツー・ショットで締め、これにて退散と致そう。部外者が余り長居すると、ご迷惑である。

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9号とたぬき公園

 昭和40年代築年の団地、私の様なオジサンには、妙にノスタルジアを覚える団地で御座いました。お邪魔致しました。

 団地北へ行けば、前回書いたように、立川崖線上から、9号を遠望することが出来る。

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9号
後は日野台地と景信山

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9号と富士見町団地給水塔
脚元は日野台地、向こうは景信山・陣馬山方面

 団地北東、滝下橋で根川(残堀川)を越え、奥多摩街道方向へ坂を上がって行くと、右手に、少し戻るような向きで細道(青梅道、五日市道)が立川崖線上に続いている。ここから見た姿である。11号を望んだ場所よりは少し西寄りだ。
 WW2の最末期、昭和20年(1945)の8月2日、396名の犠牲者を出したアメリカ軍による八王子空襲の際、立川も空爆対象となり当時水田であった富士見町団地一帯、無数の焼夷弾が落下した。
 この空襲により、ここ富士見町では、7名の犠牲者が出ている。

 崖線上の細道を、猶も道なりに行けば、山中坂地蔵堂の上に出る。更に行けば、横町坂そして下れば植桜記念碑の前となる。

2017年文月26日
(取材は6月下旬)

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・撮影に関しましては、十分配慮しておりますが、もしご近隣の皆様にご心配及びご迷惑をおかけしておりましたら、お詫び致します

・空襲のデータは、総務省HP「国内各都市の戦災状況」より引用しました

・この鉄塔の建つ場所は立川市富士見町、最寄り駅はJR青梅線西立川駅or多摩モノレール柴崎体育館駅です

*Astronomy Domine(天の支配):ピンク・フロイドの1stアルバム「The Piper at the Gates of Dawn(夜明けの口笛吹き)」(1967)のオープニング・ナンバー。シド・バレット時代(サイケ時代)の代表的作品だ
*昭和用水:昭島市・立川市を流れる昭和8年(1933)に作られた農業用水。名は当時の昭和村に由来。多摩川から始まり残堀川に終わる
*青梅道、五日市道(おうめみち、いつかいちみち):青梅、五日市方面へ向かうため江戸期にはこのように呼ばれた
*景信山(かげのぶやま)、陣馬山(じんばさん):前者は標高727m、後者は857mで、高尾山の北西に連なる山々で東京ではハイキングの定番
*八王子空襲:8月2日未明、ボーイングB29爆撃機169機により行われ、周辺市町村にも被害が及んだ。負傷者は約2,000名。2時間にわたる爆撃で約1,600トン、67万個以上の焼夷弾が投下された。犠牲者数は資料に依り幅があり、「八王子の空襲と戦災の記録」(八王子市教育委員会発行 1985)では約450名とされている

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