柳瀬荘 壱―黄林閣

 「埼玉の巨人」こと新座線鉄塔を訪ねた際、古民家「柳瀬荘」(標高33.7m)を訪ねた。

tokorozawa_yanasesou_entrance
柳瀬荘崖上入口

 ここは、東京国立博物館の所属になる施設である。柳瀬川河岸段丘の崖線上にある。入り口は崖線下と上に一か所づつあるが、

tokorozawa_yanasesou_entrance_a
案内図
カタツムリの食痕だらけ

私は、赤く「現在地」とある上から入った。下は浦和所沢バイパス(白←)沿いでそこそこ広い駐車場があるが、上のものは可也狭く数台しか駐められない、でも、私は自転車なので無問題だ。ちなみに案内図に無数に付いた、つぶれたS字の連続の様な模様は、カタツムリが表面に付着した藻類を食べた痕である。

 さて、駐車場の隅に自転車を止め、母屋脇からお庭に入り、まず崖下から上がってくる径を少し下りて、門を拝見。

tokorozawa_yanasesou_mon
崖側の門

 寺院の山門を小さくしたような、かわいらしい門だ。深い木立の下に、破れかけた様なイキフンの佇まいが、何処か愛らしい。

 この門を潜れば、大きく横たわる母屋。

tokorozawa_yanasesou_omoya

tokorozawa_yanasesou_omoya_a
母屋
右端に見えるは避雷針

 正面は木立ちに隠れるので、斜(はす)に。下の画像で左手前に白い障子が見えるが、その右にあるのが玄関だ(建物出入口とは異なる)。

tokorozawa_yanasesou_omoya_b
母屋

 こちらの中央付近に見えるのが出入り口で、表札と解説が設置されている。

 この母屋は、「黄林閣(おうりんかく)」と名付けられている。

tokorozawa_yanasesou_omoya_hyousatu
黄林閣

 此方の主は、この方だ。

tokorozawa_yanasesou_omoya_c
松永安左エ門氏

 ここは、松永安左エ門氏(1875-1971)の別荘であった建物なのである。松永さんと言っても、おそらく殆どの方はご存じないであろう。私も、寡聞にして存じ上げなかった。
 松永氏は、長崎県壱岐出身の実業家。日露戦争後に電力事業に注力し、電力会社を創設するが、WW2中の電力事業の国家管理の流れに反発して実業界から引退し、ここ柳瀬荘でお茶を楽しんだそうである。WW2後は小田原の別荘に移り、ここを所蔵美術品ともども寄贈したという。実業家としては戦後の1949年に電気事業再編審議会会長として復活し、電気事業再編成をリードして全国9ブロックの分割民営化を実現。「電力の鬼」と呼ばれたそうな。
 ここで言う、9ブロックの民営化は、9電力体制とも呼ばれるもので、1951年(昭和26年)の電力再編成に際し、全国を北海道・東北・東京・北陸・中部・関西・四国・九州の9地域に分けて、それぞれ電力会社に独占的に電力供給させる、我々にはお馴染みのシステムである。今はこれに沖縄電力が加わって10電力体制になり、また2016年(平成28年)に電力小売り自由化で一般家庭でも自由に契約電力会社を選べるようになり現在に至っている。
 松永氏は、WW2後に電気事業を公営とするか民営とするか、また発送電を分けるのか分けないのかなど議論された際、政財官の反対を押し切って、9民営会社による配送発電一貫経営、を実現させた、という事である。

 こう拝見すれば、私が追っている鉄塔とも、無縁ではない、と言えないこともないお方ではないか。これも何かのご縁である、有難くお住まいを拝見したい。

 母屋とも呼べるこの黄林閣(381平方m)は、1844年(天保15年)に現東久留米市柳窪の庄屋住居(村野家)として建てられたものを、1930年(昭和5年)に移築し別荘としたものである。入母屋造り茅葺で、武蔵野民家として貴重であり、重要文化財に指定されている。

tokorozawa_yanasesou_leaflet
リーフレット

 ここが1948年(昭和23年)に寄贈されたその先は、東京国立博物館。現在はこうして、博物館の施設として、保存及び公開(無料)がなされている。ただ、ご注意頂きたいが、公開は週一回(木曜日)のみである。ご訪問の際は、是非ご確認を。

 柳瀬荘周辺を、航空写真で見て見よう。

USA-M820-135_yanasesou
柳瀬荘航空写真
1948年(昭和23年)3月4日アメリカ軍撮影

 中央建造物が黄林閣、その左に離れや茶室も見える。南側のカーヴした緑地の線が崖線。

CKT20192-C22-40_yanasesou
柳瀬荘航空写真
2019年(令和1年)7月26日国土地理院撮影

 此方は同範囲の現在風景で、上と同じく中央が黄林閣他。右下斜めの線が浦和所沢バイパス。白↑が、今回発見した火の見櫓
 新旧写真を比較すれば、崖線下は大分様変わりしているが、崖線上は昔の面影が大方濃いのが分かる。

 では、おじゃまなセルフィーの後、

tokorozawa_yanasesou_selfie
ツーショ

出入り口から中にお邪魔する。と、表現力の無さがもどかしいが、土間や部屋には古民家独特の匂いが充ちている。蘆花恒春園一本杉公園の古民家でも感じた、「あの」匂いである。表現する力がない。ご勘弁を。

 では、建造物内部を拝見―。

 続く

2022年霜月18日
(取材は10月下旬)

――――――――――――――――

・取材の際はマナー遵守を心掛け十分配慮しておりますが、もしご近隣の皆様にご心配及びご迷惑をおかけしておりましたら、お詫び致します
・航空写真画像出典:国土地理院ウェブサイト
・参照:所沢市HP、所沢市立図書館HP、東京国立博物館、新電力ネット、他
・当記事にある情報等は上記取材時点におけるものです
・これらの場所は埼玉県所沢市坂之下、最寄り駅はJR武蔵野線新座駅です

*柳瀬荘:毎週木曜日公開だが年末年始はお休み。時間は季節で変わるのでHPにてご確認を。駐車場は崖線下バイパス横がメイン
*壱岐出身:同じ壱岐の玄海酒造では「松永安左エ門翁」という麦焼酎を造っている
*電力体制:9電力体制前は、電気事業は国策会社の日本発送電が発送電を所有して全国9つの配電会社が配電していた

(スマートフォン版は、通信の最適化により画像の画質低下・サイズ縮小となっている場合があります。ご了承下さい)

――――――――――――――――

・単独でのサイクリングと言う野外活動は、フィジカル・ディスタンシングを守る前提のもと、COVID-19(新型コロナウイルス感染症)感染リスク(感染しない・感染させない)の極めて低い行動と考え行いました。マスクを着用し、出先で長居はせず、食事は人気のない場所で一人で行い、家を出てから戻るまで店舗等への立ち寄りは原則行いません
・ご訪問の際は引き続き新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染拡大防止にご配慮をお願い致します

Peace

ウクライナ緊急募金(日本ユニセフ協会)
ウクライナ動物保護募金(国際動物福祉基金)