■中也・山口市 市の管理断念

 「坂本龍馬」「中原中也」といった歴史上の偉人の商標権をめぐり、商売目的の登録を阻止しようとする自治体の間に、異なる動きが出ている。特許庁が昨年、歴史上の偉人をめぐる商標の審査を厳格にする方針を出したものの、受け止め方に差があるためだ。「郷土の偉人を、資本の論理に利用されたくない」という思いは共通なのだが…。(大坪玲央)

 山口市は平成19年、歴史上の人物を多数商標登録している郷土とは無関係の企業が、市出身の詩人「中原中也」についても出願したことを把握。遺族の了承を得て21年2月、酒類など5分野で「中原中也」「中也」を出願し、市で商標管理しようとした。

 しかし特許庁は1月、「市の独占使用は公益的な施策を阻害する恐れがある」などと出願を退けた。

 特許庁が厳しい判断をしたのには、同様のトラブルが絶えないことなどから、同庁が21年10月に、これまではっきりしなかった歴史上の人物の商標登録基準を明文化したことがある。同庁は「出願の経緯・目的・理由」「出願人との関係」など6つの事情を総合的に考慮し「公益を損なわないと判断されれば登録される」とした。

 山口市は「中也が『登録の認められない歴史上の人物』というお墨付きを得た」と矛を収めた。

 山口市と逆の対応をしたのが、今年話題の「坂本龍馬」の出身地、高知県だ。

 「坂本龍馬」は、すでに高知県内の酒造会社など6件に商標登録され、さらに6件が出願中。「龍馬」では85件が登録済み、さらに66件が出願中だ。

 高知県は21年3月に商標登録を出願したが、山口市と同様、昨年10月に退けられた。

 ところが、県は「法改正されたわけではなく、第三者が必ず登録できないわけではない。県が商標登録し使用基準を定めれば県の財産の龍馬を守れる」とあくまで県で商標管理すると意見書を出して反発している。

 特許庁の指針と自治体の受け止め方について、歴史雑誌「歴史通」(ワック出版)の立林昭彦編集長(63)は「歴史的人物名は国民全体の遺産のようなもので商標登録にそぐわない。どこかの自治体管理になるのも独占に変わりはない」と指摘。

 また商標審査に詳しい、弁理士の平野泰弘氏は「『私的な独占』と『公的な使用』をどこで線引きするかは今後の課題だ」と指摘している。

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