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前回のリポートは、カングー
1との出逢い、また不動の理由となっているメカニズムの状況などを中心にお届けしました。今回は、復活までの作業を密着取材したいと思います。

修理する前から長期テスト車として導入することを決めたこのカングー11.6。担当者としては直してもらわなくてはこまるわけです。搭載しているエンジンは、タイミングベルト周辺部品の破損によりコマ飛びをおこし、バルブタイミングがくるって、吸排気バルブとピストンが接触してしまった個体。ご存知のとおり、このような状況になると再始動は不可能です。応急処置なんてものもありません。

で、復活させるための大手術に執刀してくれたのは、フランス車専門ショップ「サンク」のメカニック「伊藤 武」さんです。この道20年以上のベテランが、頼れる「主治医」となってくれたわけです。

同氏との手術前の打ち合わせで、僕が出した条件は「このカングーをできるだけ安く買いたい」、それだけでした。そして彼は、中古エンジンからヘッド部分を移植する方法を選択します。果たして、その大手術はAM10:00開始となりました。


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1.一見、重大トラブルを感じさせないエンジンルームですが、すでにエンジンは息絶えています。


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この小さなプーリー(テンショナー)の不具合がエンジンをダメにした元凶です。経年劣化によるベアリングの不具合に、これまた経年劣化したカバーが耐え切れなくなって部品の一部が割れたわけです。で、その欠片が可動しているタイミングベルトに挟まり、こま飛び、最終的にはすべてのバルブの息の根を止めたというわけです。まさしく負の連鎖。

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イグニッションコイル、インテークマニホールド、ヘッドカバーを外します。


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左側が吸気バルブ、右側が排気バルブ。真ん中は点火プラグです。


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カングー11.6DOHCですから吸気・排気バルブは、1気筒(シリンダー)あたり2本ずつあります。4本×4気筒ですから16バルブです。ススが付いて黒くなっている吸気バルブをご覧ください。8本ともシリンダーとの接触により軸が曲がり、完全に閉じることができなくなった状態です。前述した小さな部品の破損が連鎖して、このようなかたちで瞬時に心臓部の息の根を止めてしまう重大トラブルにつながるわけです。やはりタイミングベルトって怖いですね。

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ドナーとなるエンジン(走行約5万km)のヘッド部分を徹底クリーニングします。バルブなどに付着しているススを取り除き、ガスケットはすべて新品と交換。地道な作業が続きます。


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お約束でウォーターポンプも交換。

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取付部位を徹底クリーニングした本体側と、オーバーホールに近い作業を行ったドナーのヘッド部分を合体します。ヘッドボルト、オイルタペット、カムシャフト、タイミングベルト、ヘッドカバー、ブローバイガスチャンバーをクリーニングして取付けます。

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PM11:00、この日の作業終了。

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翌朝、AM9:30、作業開始。

カムプーリーを取り付け、新品に交換したタイミングベルトをマーキングして基準の張りに調整していきます。さらに、インテークマニホールド、電装系の配線、スロットルボディ、ファンベルトを取り付け、いよいよ仕上げに入ります。

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10.PM13:30見事に一発始動!ついにエンジンに火が入りました。


エンジン・ヘッドの交換作業に要した時間は、細かい調整作業まで含めると約18時間。まさに、大手術といえるでしょう。この作業を、黙々と確実に進めたベテラン・メカニックの伊藤さんに尋ねると、「ウチはなるべく低コストで、より多くの人にちょっと古いフランス車を楽しんでいただきたいので、今回のような大がかりな作業も、自社の工場で行っています。だから、慣れているんですよ。でも、もう普通のショップさんではやらないかもしれませんね。儲からないですから」と笑う。大掛かりな修理は外注が主流の昨今、クルマ選びはショップ選びから、やはり、いつの時代もこれがクルマ好きの「いろはのい」なのだと思います。
次回は、先送りになっていた購入代金の話と、納車整備、さらにプチ・カスタマイズまで一気にお伝えします。お楽しみに!