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定年後の仕事探しで失敗しないための段取り まずは「家族に相談」「老後に必要な金額を算出」「スキルを棚卸し」
2023/05/29 15:15
新しい仕事を探す準備・失敗しないための段取り5つのステップ
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)生活費や光熱費の物価高騰が家計を圧迫し、実質的に受け取れる年金は目減りする一方だ。「毎月、年金にプラス数万円の収入があれば……」といった声は少なくない。実は、やり方次第で定年後に月10万円収入を増やすことも不可能ではないという。
まず仕事を探す前にやっておきたい準備が「家族への相談」だ(図参照)。シニアライフコンサルタントの金澤美冬氏が指摘する。
「定年を迎える前に家族、特に妻と今後について話し合うことが望ましい。定年後の仕事は継続雇用や再雇用、転職、個人事業主になるなど様々な選択肢があります。自分がどういう働き方を希望するのか家族と話し合い、合意を得ておくといいでしょう」
特に注意が必要なのは個人事業主を目指すケースだという。
「継続雇用や再就職などで会社勤めを続ける場合とは異なり、個人事業主は収入が不安定になります。夫が“退職金を注ぎ込んでそば屋を開きたい”といった、妻からすると突拍子もないことを言い出して不和につながるケースは少なくありません。個人事業主を志すなら、早いうちから家族に意向を伝えておくことが大切です」(金澤氏)
続いて「老後に必要なお金の計算」をする。年金暮らしでの毎月の収支を現在の支出をもとに試算してみる。
「老後資金2000万円不足問題が話題になりましたが、収入や支出は家庭によって異なるので、みんなが2000万円不足するわけではありません。個別に毎月いくら必要かを試算し、そのためにはどういう働き方をしたらいいのかを逆算して考える。月に3万円不足するならその分を稼ぐ、それ以上に余裕が欲しいなど、目標金額の目安にもなります」(金澤氏)
苦手な仕事は辞めていい
また、不足分だけでなく無駄な出費を見つけて支出をスリム化する。
「例えば、住宅ローンの残債やマンション管理費などが負担になるなら、家賃が安い物件に引っ越すなどの選択肢が見えてきます。引っ越しで住居費を数万円減らせるなら、副業で目指す目標額も変わってきます」(金澤氏)
目指す金額が見えてきたら、「自分のスキルなどの棚卸し」を行なう。定年後の稼ぎ方に詳しい副業評論家の藤木俊明氏が指摘する。
「サラリーマン時代には営業畑一筋だった、自動車業界で技術系の知識を磨いたなど、仕事を通じて培った経験や能力を紙に書き出してみる。そのうえで自分は何ができ、何が得意かをじっくり考えましょう」
これまでに培ったスキルを書き出して再確認することで、どんな仕事が向いているか客観的に見えてくるはずだという。
「自分には誇れるような経験がないと謙遜する人が少なくありませんが、会社で磨いた経験や知識はとても貴重です。自信を持って書き出しましょう。
一方、それと同時に嫌な仕事や苦手な仕事も書き出しましょう。会社員の方によく見られる『どんな仕事でも我慢してやる』という考えは捨てる。やりたくない仕事はモチベーションにつながらず長くは稼げません。今やっているならむしろすぐに辞めましょう」(金澤氏)
さらに、並行して不要品の棚卸しも進めたい。藤木氏の解説。
「売れるものはメルカリなどのフリマサイトで売ります。これも立派な『複業』のひとつです。
また、自宅の空きスペースなども棚卸しの対象になります。現在はどんなものに関しても、不要な人と欲しい人をネット経由でマッチングするサービスが充実しています。例えば、自宅の駐車場が空いているなら、『akippa』というマッチングサイトを利用すれば、駐車場を探している人に月数千〜1万円で貸せます」(藤木氏)
スキルが足りなければ資格取得も
仕事探しについては、準備を終えたら求人サイトなどに登録する。
「地域のシルバー人材センターや人材派遣会社、求人サイトなどに登録します。どのサイトも基本的に無料なのでいろいろなサイトに登録して、『ここはちょっと違うな』と思ったら辞めればいい。そのうちに求人の傾向などを把握できるようになります。棚卸しした自分の能力と照らし合わせ、仕事を徐々に絞り込んでいくのです」(金澤氏)
ただし、登録してもすぐにいい求人が見つかるわけではない。「気長に待ちながら、ダメなら別の方向で探すポジティブさが求められます」と金澤氏。
その際、スキルが足りないことを自覚したら、資格の取得も選択肢のひとつになる。
「資格を取得することで不得意分野の補強、もしくは得意分野のさらなるスキルアップを見込めます。コミュニケーション能力に自信がなければ『コーチング』などの勉強をする、経理経験者ならファイナンシャル・プランナーの資格を取ってスキルアップを目指すなど、個人の状況に応じて検討するのが望ましい」(金澤氏)
そしてもっとも重要なのが、やってみたい仕事が見つかったら、まずは「失敗を恐れずやってみる」という姿勢だ。シニアライフコンサルタントの金澤美冬氏が指摘する。
「管理職の経験がある人はプライドが高い傾向があり、失敗を恐れがちです。それで躊躇するのではなく、とにかく飛び込んでみることが大切です。仮に芽が出なかったとしても、また別の仕事を見つければいい」
失敗は次へのステップと思えばいいのだという。
※週刊ポスト2023年6月2日号