Yahooニュース記事より
「水もったいない」でおろそかに 被災後こそ口腔ケアを 肺炎・感染症から命を守る
能登半島地震の発生から2週間あまり。寒い冬の避難所生活は、健康への影響も心配される。過去の災害で関連死の死因上位に挙がる肺炎は、口内環境の不衛生が一因で起こることがある。貴重な水を節約しようと歯の手入れを後回しにしがちだが、被災後こそ、口腔(こうくう)ケアを行ったほうがよい。 【写真】猫の写真使ったアニサキスへの注意呼びかけるツイートが話題 「災害時の口腔ケアが命を守る」と訴えるのは、歯科医師で、ときわ病院(兵庫県三木市)の歯科・歯科口腔外科部長、足立了平さんだ。29年前の阪神大震災で被災者の口腔衛生指導に携わり、以来、新潟県中越地震や東日本大震災、熊本地震などの被災地で、肺炎を防ぐ口腔ケアを伝えてきた。 東日本大震災では災害関連死は3794人(令和5年3月末時点)。過去の研究データでは、災害関連死の死因の上位は肺炎などの呼吸器疾患となっている。 被災者に肺炎を引き起こす原因の一つに、「口内細菌の増加」があるという。背景にあるのは貴重な水や、共同の手洗い場を使うことへの遠慮と不便さだ。 東日本大震災の発生から約1カ月後、足立さんが被災地を訪ねた際、「避難所の手洗い場は『夜暗くて怖いから口の手入れはしない』と話す人がいた」という。水が十分使える環境でも、「災害初期に味わった水不足がすり込まれて、『入れ歯や歯に貴重な水を使うなといわれそうだから磨かなくなった』とか、『周りに人がいるところでは入れ歯を外しにくい』と手入れせずにいた人もいた」。 ■誤嚥に低栄養も重なって 歯を磨かなかったり、入れ歯の手入れを怠ったりすると、プラーク(細菌の塊)が歯間などにたまり、細菌が大幅に繁殖。「洗わないままの口内には糞(ふん)便と同じくらいの細菌がいる」といい、丸2日ほどで肺炎を招くほどの数にまで細菌が増えてしまう。さらに就寝中や食事の際、唾液を誤嚥(ごえん)して細菌の塊が気管から肺に入ると、肺炎になることがある。 そもそも災害後は疲労が蓄積し、タンパク質の摂取不足からくる低栄養や、運動不足も加わって体力や免疫力が低下しやすく、感染症に注意が必要だ。口腔ケアはそうした感染の予防につながる。 ところが足立さんは、過去の被災地で被災後1カ月歯を一度も磨いていない、という高齢者の口腔ケアにあたったこともあった。
そのため、「避難所で、入れ歯の手入れが恥ずかしくないように、手洗い場の一部に、プライバシーを確保するような工夫もあれば」と話す。
■省資源でケアする方法
実際に水が不足したり、周囲への遠慮から十分に使いづらかったりという避難生活では、工夫して口腔ケアを継続することが大事だ。
一つは、コップに大さじ2杯(30ミリリットル)程度の水を入れ、歯ブラシを浸して湿らせてから、歯を磨いてはブラシの汚れをティッシュで拭い、また磨く−を繰り返す方法。最後にコップの水を数度に分けて口をすすぐ。
歯ブラシが使えない場合は、布やティッシュを指に巻き、歯の表面の汚れを拭うという方法もある。
また、口内が乾燥すると細菌の繁殖を招くため、こまめな水分補給やうがいも心がけたほうがよい。災害後は脱水やストレスにより唾液の分泌量が減ってしまうことがある。水分補給をしたうえで、耳や顎の下をもんだり温めたりして唾液の分泌を促す方法もある。
また手に入れば、洗口液や液体ハミガキを使うと、口内に薬効がとどまり、細菌を減らす効果があるという。
■ほかの不調の予防にも
さらに口内環境の不衛生により、「歯周病が悪化すれば、糖尿病の血糖コントロールが悪化したり、インフルエンザにもかかりやすくなったりする」と足立さん。また「口内炎が多発すると痛みが強くなり、しっかりと食事を取れなくなることがあり、さらに低栄養を招いてしまう恐れもある」。口腔ケアはこうした疾患や不調の予防にもなる。(津川綾子)





