超高齢社会を迎え、ますます身近になってくる医者と患者。しかし、「長すぎる待ち時間」「冷たい医者の態度」など、医療に対する患者の不満や不信は尽きない。
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悩んでいる患者を前にして、医者は何を考えているのか――。
いま話題の書『患者の前で医者が考えていること』(三笠書房刊)の著者で外科医の松永正訓氏が、知られざる「医者の本音」を明かす。
日本ならではの理由も
私は、「待つ」のも「待たせる」のも大嫌いですので、患者さんのこの不満は大変よく分かります。日本は国民皆保険で、フリーアクセスですから、簡単に医療機関を受診できます。
また、日本は先進主要国の中で、人口比で医師の数が少ないという事実があります。つまり、病院やクリニックで待ち時間が長い理由は、患者が多く医師が少ないからです。でも、こんな言い方をしたら身も蓋もないので、少し丁寧に過去を振り返りながら説明していきましょう。
30分に何人診察する?
患者さんを待たせる医療。こういうスタイルは、今から40年ほど前に私が医師となって千葉大病院で働くようになったときからありました。病院を運営する病院長とか教授連中に「患者を待たせる」ということに関して疑問を持つ人はいなかったようです。
ですが、私が医師になって10年くらいすると、大学病院に予約制が採用されました。9時からとか、9時30分からとか、30分間隔の予約枠を作ってその時間帯に患者さんに来てもらうのです。しかし、問題は30分に何人の患者さんを診るかです。
1人5分なら6人ですよね。でも、5分で十分ですか? おまけに当時の千葉大病院のシステムは、30分間に何人でも患者さんの予約を入れることができるという、わけの分からないシステムだったのです。こうなると予約制の意味がなくなります。
医師になって15年目の頃、私はがんの子どもの母親と診察室で話をしていました。この子には、あらゆる治療を施しましたが病気は再発し、助かる見込みはなくなっていました。ご両親は最期の瞬間を自宅で過ごしたいと考えて、子どもを退院させて家で見守っていました。
その母親が、私の外来を受診したのです。もちろん子どもは連れて来ておらず、私に話を聞いてほしいとのことです。