Yahooニュース記事より
なぜ俺がこんな目に遭わなきゃいけないんだ…〈退職金5000万円〉早期退職した55歳サラリーマン、自由を手に入れるはずが、待っていたのは「想定外の地獄」
親の介護に支配されるセカンドライフ
正直、大野さんはどこか他人事のように感じていた部分がありました。「これからの人生を自由に過ごす」というセカンドライフが当たり前だと思っていたのに、まさか自身に親の介護という現実が立ちはだかるとは思ってもみなかったのです。 次第に、自由な時間はどんどん削られていきました。親の介護は想像以上に大変で、身体的な負担だけでなく、精神的にも厳しいものでした。自宅と実家を行き来する時間で自由な時間は徐々に失われ、実家に寝泊まりすることも多くなりました。他の兄弟にも「介護を手伝ってくれ」とお願いしたいのはやまやまですが、実家までの距離は遠く、また大野さんと異なり仕事をしています。大野さんが主たる介護者になるのが当然の状況だったのです。 心のなかで「こんなはずじゃなかった」という思いが何度も湧き上がりました。「会社のしがらみから解放されたはずなのに、今度はこれか。なぜ俺がこんな目に遭わなければいけないんだ」と憤りさえ感じます。こうして早期退職後に想像していた「自由な生活」とは、かけ離れた日々が続きます。「どこで間違えたのだろう」と、大野さんは悔しさや戸惑いを抱えながらも、介護に全力を尽くさなければならない現実に向き合っていました。 Q.親の介護経験はありますか? 「ある」…21.6% (年齢別) ・20〜30代…3.9% ・40代…6.5% ・50代以上…30.6% Q.「親の介護」で大変だった点は(男性)? 1位「精神的な疲労」…50.9% 2位「仕事との両立」38.6% 3位「体力的な疲労」…35.1% 4位「経済的な不安」…29.8% 5位「先の見通しが立たない」…26.3% 出所:MS-Japan調べ あれから2年。父親の認知症はさらに進み、自宅での介護は困難になりました。ソーシャルワーカーの勧めもあり、介護施設に預けることに。母親も長期入院を機に足腰が弱くなり、サポートなしでは日常生活が難しくなり、引き続き、大野さんの介護生活は続いています。 「お金があれば、自由な生活ができると思っていた。そう、簡単なことではないですね」と大野さん。思い描いていた自由な生活は遠くに感じられ、介護がすべてを支配する日々が続いています。それでも介護負担が半分になったので、最近は余裕すら感じます。何よりも両親がしっかりと貯蓄をしていたため、すべてをお金で解決しようと思えばできた状況であることは大きかったといいます。「こんなに母親と一緒にいられることは子どもの頃以来。貴重な時間を過ごせています。そう思えるのも、金銭的な負担がなかったことが大きい」と、どこか前向きな気持ちも芽生えつつあります。 大野さんのように、退職金や自由な時間を手に入れたとしても、予測しづらい問題に直面する可能性は大いにあります。このような問題で生活設計が大きく崩れることも珍しくなく、経済的に困窮することも。退職後にさまざまな問題が待ち構えていることを忘れず、準備を怠らないようにしたいものです。 [参考資料] 厚生労働省『令和5年就労条件総合調査』 株式会社MS-Japan『「親の介護」に関する実態調査』