Yahoooニュース記事より
静かに増え続ける「老衰」8人に1人 仙台で「がん」に次ぐ第2の死因に浮上
「老衰」で亡くなる人が急増している。最近は死亡者の約8分の1を占め、長らく日本人の三大死因だった「がん」「心臓病」「脳卒中」に割って入る。仙台市では2024年、がんに次ぐ第2の死因に初めて浮上した。何が起きているのか。 ■年20万人超 「心疾患」に肉薄 厚生労働省の人口動態調査によると、24年の全国の死亡者数は160万5378人。死因別の最多は「がん」で38万4111人(24%)。「心疾患(高血圧症を除く)」が22万6388人(14%)で続き、「老衰」は20万6887人(13%)と肉薄する。4位は「脳血管疾患」で10万2821人(6%)だった。 ここ1年では、声優の大山のぶ代さんが90歳、詩人の谷川俊太郎さんは92歳、国際法学者の小田滋さんが100歳で、いずれも老衰で亡くなった。 老衰による死は04年は2万4126人(2%)に過ぎなかったが、14年は約3倍の7万5391人(6%)となり、増え続ける。 https://public.flourish.studio/visualisation/25369255/ ■80歳以上の死因トップ 半数は高齢者施設で 背景にあるのは高齢化だ。24年の80歳以上の人口は約1289万人に上り、20年前から約692万人増えた。80歳以上の死因は老衰がトップとなっている。 老衰の死亡率(人口10万人当たりの死亡者数)は00年代後半に増加に転じた。06年の介護報酬改定で「看取(みと)り介護加算」が新設され、介護老人福祉施設など病院以外で亡くなるケースが増えた時期と重なる。 老人ホームを含む高齢者施設で亡くなった人は全体の16%だが、老衰に限れば50%に達する。医師が日常的に診察しておらず、詳細な検査を望まない入所者も多い。死因の特定が難しくなる事情がある。 https://public.flourish.studio/visualisation/25389236/ ■基準明確化は困難、医師の判断に依存 厚労省の医師向けマニュアルによると、老衰は医学的には「高齢者で他に記載すべき死亡の原因がない、いわゆる自然死の場合のみ用いる」と定義される。 しかし、「高齢者は何歳からか」「どこまで調べれば他の死因がないと判断できるのか」といった基準を明確化するのは難しい。現状では医師の判断に委ねられる。 こうした背景もあり、老衰が多い地域は散在している。全ての死亡者に占める老衰の割合を都道府県別に見ると、静岡が18%で最も高く、山形が17%で続く。低い順では、福岡が10%、北海道も10%。24年は秋田、山形など13県で、がんに次ぐ第2の死因となった。宮城は14%で、全国平均(13%)並み。仙台は13%だった。 https://public.flourish.studio/visualisation/25426274/ ■「本当の死因」見逃される恐れも 東北大大学院医学系研究科の美作宗太郎教授(法医学)は「臨床での死因究明には限界があり、全てを解剖に回せる体制もない。犯罪性や明らかな傷病がなく、家族も納得すれば、落としどころとして老衰と診断される」と語る。 ただ、安易な老衰診断には懸念が残る。「高齢で持病がなかった」という情報に頼った判断では本来究明すべき死因が見逃される恐れがある。「一見では痕跡が分からないように殺害するケースがある。冷暖房の不使用で起きうる慢性的な熱中症や低体温症もある。老衰とは厳格に区別しなければいけない」と美作教授は指摘する。 死因を最も正確に突き止める解剖の実施率は、日本は約10%にとどまる。北欧諸国の70〜80%と比べて著しく低い。常勤の法医は全国で約150人、宮城県内は美作教授ら3人しかいない。老衰の急増は超高齢社会の進展だけでなく、死因究明体制の脆弱(ぜいじゃく)さも映し出している。(佐藤理史)
河北新報

