Yahooニュース記事より
耳鳴りや不眠…妻亡くした医師、身をもって知った喪失の影響 悲しみに寄り添い支えるグリーフ専門士
久留米大保健管理センター教授 安川秀雄さん(60)
縫いぐるみや花が飾られた部屋で、家族を亡くした人たちが心情を吐露していく。「娘がいるような気がして振り返り、いない現実を思い知る」「当時の気持ちがフラッシュバックして…」。悲嘆する遺族に寄り添うグリーフ専門士として感情を受け止めつつ、自身も当事者として、5年前に亡くした妻明代さん(享年54)への思いを口にする。「生活には慣れていくが、悲しみは変わらない」 【写真】職場に飾っている亡き妻の写真 福岡県久留米市旭町の久留米大で毎月開かれる「久留米グリーフケアCafe やすらぎの部屋」。その運営をスタッフとして支える。身近な人やペットの死から喪失感を抱えた参加者たちは、思いを分かち合い、感情に向き合うと「明日も頑張れる」と会場を後にする。
10年ほど前、死別の悲しみに寄り添い支えるグリーフケアを知った。当時、同大病院の循環器内科の医師として、亡くなる患者の心への寄り添い方に悩んでいた。がんを患う知人男性が涙した時も言葉が出ず、自己嫌悪に陥った。死別に関わる医師だからこそ、遺族をどう癒やせるか知る必要がある−。コミュニケーション技法や、日本グリーフ専門士協会で学んだ。 その頃、妻にスキルス胃がんが見つかった。手術ができないほど進行しており、夜の駐車場で、大声で泣いた。亡くなる2日前、妻に「あなたのおかげでここまで来られた」と感謝を伝えた。20歳で出会い35年を共にした。「美しく、自分を育ててくれた人だった」
2021年5月23日に妻が永眠すると、耳鳴りがするようになり、眠れなくなった。喪失がもたらす心身への影響を、身をもって知った。同大保健管理センター長に就任した時期でもあり、コロナ禍の対応に忙殺され、心身ともに疲弊した。グリーフケアCafeも主宰者らと立ち上げたばかりだったが、参加できたのは半年後。「悲しみに向き合う大切な時間」を実感し、話すことで心の安定につながっていった。 昨今の風潮として、死や悲しみを遠ざけ、他者との関係が薄れているように感じる。「かなしみは“愛しみ”とも書く。その人のグリーフを知ることは、愛情の深さを知ること。話せる場をつくることが社会にとって大切だ」
2年前から本格的に同大医学部1年生にグリーフケアを教えるなど、教育や周知に力を入れる。「リタイアはない」と言い切る。
西日本新聞社

