前回は結局前振りだけで終わってしまった。ついに僕は隣の内部を覗く事になる。
僕がここに書いている事は段々と作り話の様になって来たなと思われていると思う。
でもしかたがない。僕だって今だあれが何だったのか分からないのだから。
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戸口が空いている、、、。戸口が空いているのだ。
僕がここに越して来て以来もう何ヶ月も経つが、戸口はおろか、窓一つ開いた事がない化け物屋敷だ。壁という壁はゴミに覆われ、その隙間から覗いている窓はいつもぴたりと閉まったままであった。にもかかわらず、何故か今日は玄関(らしき)戸が開け放たれていた。そう、魔宮の戸口が半開きになっていたのだ。出入り口のため、さすがにそこにはごみは積まれていない。
時間は4:30am、さすがに人通りもない時間だ。
僕はコンビニエンスストアに行くつもりで出かけたのだが、とっくに本来の目的を忘れてた。
「ちょっと覗いちゃおうかな!!!」
軽い気持ちだったのだ。本当に軽い気持ちで、、僕は戸口の隙間から中を覗いてみる事にした。
「はあ???@???何だぁ????@」
よくわかんない。良く見えないのだ。何だか室内は白いもやのようなものに包まれ、奥がどうなっているのかわからなかった。
「霧?、、。家の中に霧がかかっている。」僕は呟いた。バルサンでも焚いているのだろうか。でもゴミの匂いはするが、薬品の匂いはまったくしない。どうも違う、、なんか雲のようだ。ああ生魚のような匂いがする。わけがわからん。
「何だろう?これ?」今一度僕は暗い室内を目を凝らして覗いた。
覗いて驚いた。驚いて声をあげる所だった。声を上げたうえに、もう手もあげる所だった。手をあげて更にそのまま走り出しケチャックダンスを、、、って(くどいですね済みません)
蜘蛛の巣だったのだ。ホラー映画のセットだとしたら、はっきりいってやり過ぎ。逆にリアリティーを失う程の蜘蛛の巣だ。天井から床までの空間の上部三分の一を蜘蛛の巣が占めている。天井が全く見えない。
普通蜘蛛の巣は天井の隅にそこはかとなく住処を張り、いつ来るかとも知れない来訪者を待つものではないのか、、。
だが今目の前に展開している世界は巨大な綿菓子を100程天井からぶら下げた様なものであった。
「ありえね〜〜〜!!」ありえないとしか言えなかった。
だってこれでは大人が立って室内を歩く事が出来ないではないか。場所によってはもっと下まで垂れ下がっている所もあるぞ。
「人工物?」そう考える方が現実的だと思える程だ。
「確かめたい、、、。」でも、後一歩が踏み出せない。「不法侵入ぐらいでびびるような、ウエダではないわい!」というチャレンジャー君と「引き返せ、罠だ!」と叫んでいる本能君がいる。
僕は冷静に両者の意見を聞いた。まず、チャレンジャー君のディベートから始まる。
「今日はチャレンジャーです。結論から申しますと、現実的にこんな大量の蜘蛛の巣は存在しません、何故ならこれだけの蜘蛛の巣を維持する為の昆虫が室内に存在しないからです。自ずとこれは人工物であると推測出来ます。東急ハンズ等で売られているパーティーグッズ等を使用し、根気よく時間を掛けて作られたマニアの作品です。恐れる事はありません。」
すかさず、本能君が手を上げた。
「本能です。もちろんあなたの推測を否定する事は現状では出来ません。でも問題はそうではなくこれが本物であった場合の危険性を私は唱えているのです。ここで君が巨大蜘蛛の巣に引っ掛かったとして、誰が助けに来てくれるというのです。巨大な蜘蛛の巣にとらえられ、グルグルまきにされてこの天井に吊るされているあなたを、、。あなたは地球上全ての生物に精通しているのですか。そうではないでしょう?モルダーならそう考えます。」
僕は玄関に顔を突っ込んだまま、固まっていた。そして何となく視線を床に落とした瞬間またあのいやな感じが又した。
「はあ???@???何だぁ????@」
暗くて良く分からないのだが、床がぐにゃぐにゃしてみえる。
「海、、、、?家の中に波がたっている。」
なんか床がさざ波立って見えるのだ。
「何だろう?これ?」今一度僕は暗い室内を目を凝らして覗いた。
「ええええええええ???!!!!!!」
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次にふと我に返ったのは既にケチャックダンスをしながら100メートル走った後だった。
「どういうことだ?あれも人工物か?でもあの匂いから考えると、、、あ、ありえない、、」
僕は隣人をかるく見ていたようだ。