2007年05月02日

FAH〜〜の3

「風呂か?」風呂のようだった。小屋の入り口は開いているようだ。もう少し乗り出せば中が見えそうだ。
 僕は通路から完全に頭を出して小屋の中に視線をやった。ドアが開いている。 湯気でぼやけるがちょうど良い角度だ。

 でも見えた風景は予想できないものだった。
 「何で?何で?」いくら叫んでも答えは得られない。

 小屋の中も又見渡す限りのゴミ袋の山だったのだ。天井までビッシリとゴミ袋が積まれている。
 そして、ここも同じようにゴミとゴミの隙間からひと一人通れる通路が内部に向かって作られていた。それ以外はゴミで埋まっている。中から水の音がちゃぷんと聞こえた。

 これ以上進む事はあまりに無謀である。声を上げて一目散に逃げ出したい気持ちを抑え、ぼくはチャプン踊りをチャプチャプ唱えながらエビのように後ずさりをした。正直恐怖を感じたのだった。
 
 後ずさりをしながら昔父が話してくれた話を思い出していた。
「お前のおばあちゃんのそのまたおじいちゃんの弟にはお墓が無いんだよ。
長州のお侍だったんだけど、背中に馬韓戦争の時の刀傷があってね。敵に背中を見せたって事で一族の墓に入れてもらえなかったんだよ。おばあちゃんはその事を一族の恥だとよく言ってたよ。壮絶な時代だな。」
 もしかしたら、背中からそっと近づかれて不意打ちを食ったかもしれないのに、ばあちゃんのじいちゃんの弟はかわいそうだなと思ったものだ。そういえばゴルゴ13は敵に背中を絶対に見せないのだったな。そうだ、坂本龍馬は前のめりに倒れた、、。ボブサップと戦った曙でさえそうだった、、。

 「お客さん、、。」

 人間は後方に背を向け、魚は上方に背を向けている。マレー半島のナマケモノは下方にだ。後ろの正面だ。後ろの正面ダーレだ。わあ〜い。

 「お客さん!」
 最近ショックを受けるとこのコーヒーショップに入るのが習慣に成りつつあった。
 「ああ、コーヒーひとつね。」

 やはり考えがまとまらない。意味が分からない。あのゴミの内部に風呂桶があるのだろうか。風呂桶があるとしてわかしているのはただのお湯か?いまさら、お茶を沸かそうが、、スライムを湧かそうが驚かないが、わからないということがこんなに苦しいとは知らなかった。
 とりあえず帰ろう。何も分からなかったのだから、、。

 僕は駅前のコーヒーショップを出て、ぶらぶらしながら家を目指した。あの化け物屋敷が視界に少しずつ入ってくる。化け物屋敷の前を通り過ぎて、自分家との間の坂道に目をやった。まだ湯気が出ている。誰か入っているのだろうか?そう思った瞬間、ゴミの垣根が揺れた。そのとき歴史が動いた。

         歴史が動くまで一週間待て、、続く


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この記事へのコメント
風呂にゴミ袋? 自分達の思う一般常識だと『100%ナイ!』事だけど、家人にとっては至って普通なコト? 歴史が動くまで1週間待ちます。
Posted by 蘭丸 at 2007年05月04日 21:47