すぐに分かった。あの秘密の通路だ。ゴミが揺れている。秘密の通路から今誰かが出てくる。何かが道をやってくる、、。ぼくはブラッド,べリーダンスの準備をしながら、ってねーよ、そんなダンス。
僕は坂道の上から一部始終を見る事にした。だってやつらは家に戻るなら僕の方に向かうはずだからだ。
出てきたのは一人だった。初めて見る住人だ。こんな奴も居たのか。年齢はさっぱり分からない、三十代後半?ぐらいか、、。がっちりした体格で少しデカイ、多分僕より若いぐらいだ。何だ、普通じゃん。
あれ、でも今時ステテコにグンゼのシャツだ。嗚呼すごい!しかも風呂桶とタオル持参だ!やっぱりふろだ!何だ風呂だ!でもこれじゃごみ風呂だろ。
大阪時代、この格好の人間に町なかで出会うと警戒したものだ。此の手の人種は大概、情にもろく、気さくなものなのだが。天才バカボンのパパや、じゃりんこチエのパパを引き合いに出すまでもなく、時おり壊れている場合がある。
今までの状況から推測すると、壊れている可能性の方が大だが、それでもいままで補足したこの生物たちの中ではりっぱな成虫の部類ではないかと思われた。ボスかもしれない。
交渉するならこいつだ!こいつなら話し合いも可能かもしれない。他の連中は目が合っただけでも飛んで逃げたが。こいつはどっしりして見える。
そう思う否や、僕は坂道を駆け下りた。もうウォッチングを決め込む余裕がその時の僕には無かった、怒りが勝っていた。男は下を向きながら坂道を上ろうとしていた。此の事から推測すると、敷地内を通りふろから母屋に移動は出来ないようだ。僕はおもむろに彼の行く手を遮った。
「ちょっと兄ちゃん!隣のもんや!ええか、よう聞けよ。お前らが家の中で何しようが、知ったこっちゃない。だがな、家の外にゴミを置くな、撒くな。猫の餌もだめだ。家の中でやれ。ふとんも外に置くな。これからはその都度文句言いにいくぞ。お前にや。お前に文句を言う。それでも変わらんかったら、お前に掃除させる。とりあえず明日中に家の前の此のゴミ、戻しとけよ。聞いてんのか、なあ、聞いてんのか!!こら。」
何の反応も示さない此の男に僕は腹を立ててしまった。どうしてくれようと思った矢先。ゆっくりと男は面を上げた。
「なあ、聞いてるのか!!!」
もう一度僕は問いかけた。もう手が出てしまいそうだ。
男は宙をあおぎ、やっと一言発した。ブルータスおまえもか、、僕はそれを聞いて凍り付いた。
「FAH〜〜〜〜〜〜〜〜〜ふぁhr〜〜〜〜〜〜〜〜〜。」
何ともいえない声だった。宇宙人が仲間を呼んでいるような、いや空に帰りたがっているような声だ。これ以上ここに居ては危険だ。
立場は一変し僕はベリーダンスをしながらエビのように後ずさりを始めた。本能が戦ってはならないと告げていた。
次回 ナスの恐怖が始まります、またね!