「朝から晩まで学生達と一緒だからそうなりがちなのは分かりますが、 母親になると「早くよくなって欲しい」とか「早く一人前になって 親や先生達から焦らされた子供達は、大きく分けると二通りの道に 一つは、動物的嗅覚があり、自分というものをまだ持っている子供達は 動物的に親や大人と距離を取ったり、顔色を読んだり、喜ぶ言葉を 彼が卒業してから何年経ったでしょうか。口を開くと愛想のない しかし私は違っておりました。ぶっきらぼうでしたが、心根の優しい、 在学中、理屈を度外視した鋭い感覚で他を見極める彼のその力にいつも アルバイトで生活費を稼ぎながら、怒鳴られたり、注意されたり、叱責されたり、 彼の話を聞きながら改めて思いました、教育とは資格でも学歴でもなんでもないと。 教育とは、尊敬できる人達との出会いと、その出会いを自分の頭でしっかり理解し、 「ご自由にどうぞ!!」も禁句だと思いますが、でも「早く、早く!!」は 個人的なことですが、彼の話を聞きながら98歳で亡くなった母がよく言っていた 改めて母の言葉を懐かしく思いだしながら、なんともいい顔に成長し、しっかり
お母さんをしては駄目ですよ」と、時々アシスタントの高田先生に
注意されることがあります。その度に、もう少し冷静に学生達と
お付き合いしようと反省させられています。
欲しい」とか「早く普通の生活をして欲しい」とか「早く他の人の
ように大学生になって欲しい」とか、「早く、早く、早く!!」と
連呼し、「~して欲しい」という気持ちの焦りを子供達に押し付けて
しまいがちです。それを私がしないようにと、高田先生は注意をして
くれるのです。
分かれて進み始めます。
「今は親や大人達から離れていた方がいい」と嗅ぎ分け、色々なかたち
で親や大人達から距離をとりながら心のバランスを保ち、成長して
いきます。しかし、そうでないもう一方の子供達は、親が大好きなだけに、
動物的な嗅覚よりも頭や理性で考えようとして、親の顔色をみながら
落ち着かない心をだましだまし親や大人の意見に沿って歩こうと努力し、
疲れ果てて無気力になったりします。また、表面的には親や大人の意向に
合わせてその場だけを取り繕った行動をし、実行を伴わない、でも親や
大人が喜ぶ言葉だけを発して安心させようとするのです。
発して安心させたり、周りの意向に沿って歩いたりする子供たちでも、
問題が先に起こるか後から起こるかの違いはあっても、問題のある
子供達です。そんな彼らも好い人達との出会いと時間が彼らを成長させて
くれます。それを改めて感じさせられたことが、最近ありました。
ぶっきらぼうな物言いのうえ、考えていることが良く理解できず、随分
戸惑ったり心配させられたりした彼でしたが、彼の言葉を借りれば
「学園に入らなければ、絶対選択しなかった職業です」と言い切るほど、
自分が“俳優になる”という仕事を選択した自分に驚いていたようです。
責任感の強い男っぽい男の子だった彼でしたが、残念なことに、周りから
なかなか理解してもらえず、小さいときから随分誤解をされてきたようです。
それだけに、ご縁が出来、演出家の山崎哲氏のワークショップに参加させて
頂き、全く素人の彼の演技を見て「人間が最高にいい。養子に欲しいくらいだ」
と称賛して頂いたこと。それも、学園外の方に認めて頂けたことは、
彼にとって、とても大きな意味を持ったと思いました。
驚かされていただけに、「山崎哲の劇団に入って演技の勉強をします」と
言われても、山崎哲氏から何かを感じたのだろうという思いと、親御さんたちが
ご心配するお気持ちも理解できましたが、卒業後のことは学生の聖域。だから
相談には乗るが、「こうしろ、ああしろ」とは「絶対言わない」というのが
学園の決まり。それを守りながら、彼なら何かをつかんでこられるのではという
思いで、彼の意見には全く反対はしませんでした。
褒められたり。色々な経験と時間を過ごす中で成長していった彼は、そこで
学んだことや山崎哲氏から受けた大きな影響は、舞台の上の演技に対する
考えだけではなく生き方なのだと言い、それを理解した今、彼は次のステップに
向かって歩み出すことを決めたようです。
努力し、感謝し、楽しむことが出来るように育てることであると。その教育が
きちんと出来ていれば、本人自身と、時間と、出会う人達が、本人を一人前に
育ててくれると。
もっと禁句です。だからこそ、成長に必要な個々の時間をしっかり見極め、
認めてあげる。そのために子供達を取り巻く大人達が、子供達をしっかり観察し、
その子はその子であることを認め、信じ、成長するのを楽しみに待つことも
仕事の一つとするべきだと。
言葉を思い出しておりました「親の仕事は自分との闘いです。可愛いから厳しく
しないといけないし、大切だからこそ、突き放さなければいけないこと。
子供に嫌がられても言わなければいけないことは言う。自分でやったら簡単に
出来ることも、いくら時間がかかっても、子供が例え嫌がっても、やらせなければ
いけないことは、子供自身にやらせる。いい親になるのは、子供との闘いや葛藤
ではなく、自分との闘いです」と。
自分の考えを理路整然と述べている卒業生の顔を見ながら、思わず肩を叩いて
「素敵な若者に成長してきましたね。おめでとう!!」と褒めてあげたくなった
ほどでした。
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