高校1年生の11月、色々なことに疑問を持っていた彼女は通っていた私立の学校を中退。次の日に学園入学。すでに2年間、問題を見つけ、調べ、考え、発表などをする授業の他に、タイの大学へ日本語を教えに行ったり、ベトナムへ行ったり、添乗員アシスタントとして先生と一緒に商社の買い付け担当者の方々をヨーロッパの展示会にご案内したりという経験があります。
また、当たり前に問題を分析し、しっかり自分の頭で考え、まとめ、そして発話することが、日本語で出来ます。また、どんなに困難でも最後まで何とかコミュニケーションをとろうという姿勢が出来ていますので、英語力不足の心配はしておりません。なにしろコミュニケーション能力とは語学力だけではないとの思いからです。
伝えたいと思うこともなく、伝えたいと思う意思もなければ、いくら英語が出来てもコミュニケーションはとれません。日本人同士、日本語で話していても「宇宙からの交信不可能!!」と言いたくなるように、意味も通じないし、理解もできない日本語を話す日本人はたくさんいることでもお分かりだと思いますが。
明確に「伝えたい!」と思うことがあり、伝えたいと思う意思があれば、その伝え方として語学・絵・ジェスチャー・表情・メモなど等、どれを使って伝えてもいいのです。言いたいことが相手に伝わり、相手の言いたいことが何とか理解できれば、それがコミュニケーションの始まりですから。そのためにも、伝えたいと思う最低の材料が自分で作れ、また話し手の話が素直に理解できるそんな人間に育てることが、学校教育だと考えております。
「必要」と気づいたときに何時でも座学は始められますが、体験から学べる実学はなかなか出来ません。だからこそ学園では実学の出来るチャンスは絶対逃さないように気を付けております。
主役は生徒です。教師は主役のアシスタント。アシスタントは旗を立てて主役の前を歩かない。即ち、なるべく手をださない“引き算の教育”で、学生自身が気づけるように誘導する。それがアシスタントである教師の役目であり、それが出来る授業をするのが、教師の使命だと考えています。
今回の大学のサマーコース受講も、その授業の一環です。そこで起こる色々な出来事は始めから終わりまで総て学びです。勿論、学生だけで行かせるリスクは計算してありますし、安全対策はとってありますが、それも含めて学びです。
年齢が17歳のため、受講できる科目はあまりないのですが、受講する科目から、大学への手続き、ホームステイ先への送金。ヒースロー空港からホームステイ先への行き方等など、総て一人でやらせました。そして先週の金曜日、「楽しんで来ます!!」と嬉しそうに出かけて行きました。
授業の合間に、辞書を引き引き書類に必要事項を書き込んだり、送金しに郵便局に飛んで行くそんな彼女の様子を遠くから見守りながら、私から彼女にアドバイスや注意したことは、①ホームステイ先では自分の家にいるつもりで、掃除でも何でもお手伝いさせて頂くこと。②時間があれば、ミュージカルを見てくること。③夏だけ開いているような、ちょっと田舎の農家でアフタヌーンティーを飲んでくること。そして、④日記をつけ、帰国後、来年チャレンジする予定の学生に説明してあげることの4つと、朝の6時半、「パスポート!」、「書類!」、「お金!」と点検させて、彼女が乗った成田空港行きのバスをバス停で見送ったことだけです。
彼女にとってイギリスは初めての国です。受講する学生のほとんどがヨーロッパ人というサマーコースで、彼女はたった2週間とはいえアタフタすることも多いと思います。しかし、自分の頭でしっかり考え行動する彼女のことです。短いとはいえ、この2週間が将来の進路に大きな影響を与えることでしょう。
そんな彼女が元気に帰国するのを楽しみ半分、ドキドキ半分しながら、親からも学園からも早く独立していけるよう今日も“引き算の教育”を心がけながら、学生達を応援しています