日銀の金融緩和、マイナス金利の導入の影響を受け、住宅ローン金利は低水準のままです。6月1日現在の住宅ローン金利の最安値はじぶん銀行で変動金利0.497%とのことです。
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このように低金利で住宅ローンを組めることから念願のマイホーム購入を検討しているヒトもいるかもしれません。以前から賃貸と購入どちらが有利か、といった雑誌の記事をよく見かけるのですが、改めてワタシなりの両者比較を記事にしてみることにしました。結論から言うと、賃貸と購入では間違いなく賃貸のほうが断然お得、ということになります。

1.比較方法

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比較方法は極めてシンプルです。
【前提条件】
・居住期間は30年間とする。
・30年間賃貸合計額と不動産取得額(元金+金利)を同額とする。

つまり、一般的に「賃貸で借りるなら購入したほうが安い」という言葉でよく比較されるので、30年間の賃貸住宅への支払い(5,400万円)と同額を住宅ローンで借りた場合を比較する、とします。シンプルでしょう?

2.賃貸住宅を借りた場合

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賃貸住宅を30年間借りた場合の総額は以下のとおり算出しました。
【家賃】
 150,000円×360月=5,400万円

また、2年に1回は更新料が求められます。家賃1か月分とみなして計算します。また、契約更新時には火災保険の加入も求められます。ここでは20,000円として計算に含めます。
【更新料】
 (150,000円+20,000円)×15回=255万円

よって、賃貸住宅を30年間借りた場合の合計は以下のとおりとなります。
【合計額】
 5,400万円+255万円=5655万円

賃貸住宅の場合はライフステージにあった住居を選択できるメリットがあるので、30年間15万円の賃貸住宅を借りる必要はないと思いますが考え方をシンプルにするために賃貸額は一定とします。

3.不動産購入の場合

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不動産の場合は積算が若干複雑になりますので以下のとおり整理します。
【前提条件】
新築一戸建てを購入します。
・住宅費用は5,000万円とします。これはフルローンを組んだ際の返済合計額5,400万円を住宅ローン金利で逆算すると借入元本は約5,000万円になるためです。
・住宅ローン金利は最低水準ということで0.5%とします。
・頭金は借入元本の10%程度(500万円)とする。
・住宅ローンは頭金を差し引いた金額を30年間で元利均等方式による返済とします。
・不動産登記、取得税、保険、住宅ローン手数料などの初期費用の平均は借入金の約6%から10%。中間値の8%として計算(432万円)
・都市計画税や固定資産税は150,000円とする
・外壁、給排水などのメンテナンス費用として10年に1回(10年目と20年目に)100万円を支出します。

以上の前提条件のもとに不動産購入額を計算すると以下のとおりとなります。
【住宅取得費+維持費】
・頭金10%程度=500万円を支払う
・残額を金利0.5%で借り入れる。30年間月額134,635円を支払う(住宅ローン計53,468,600円)
・初期費用=432万円
・固定資産税+都市計画税150,000円×30回=450万円
・メンテナンス費用=200万円
【合計額】
上記すべての合計額=6482万円

本来であれば、5年や10年ごとに火災保険や地震保険に加入することが多いのですが、金額も算定できないのでここでは無視することにします。

また住宅金利ローンも30年間0.5%が継続するかどうかは保証できませんが、わかりやすさ優先で30年間据え置きと仮定します。

4.両者を比較・・・でもちょっと待て?

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以上の計算結果を賃貸とマイホームを比べてみました。

【賃貸住宅】56,550,000円
【マイホーム】64,820,000円

よって、賃貸住宅のほうがトータルとして安くなりますね!

ちょっと、待って!マイホームは資産ですから、これを加味しないと公平ではないですよね。ただ、一戸建ての場合はうわものの建築物は30年間も経過すればその価値はゼロになり、残るのは土地の価値のみ。低価格の戸建ては「888万円の家」なんていうコマーシャルをやっているぐらいですから、5,000万円から1,000万円を引いた4,000万円が土地の価値として残る、という計算とします。

30年後に4,000万円で売却できれば6,482万円との差し引き2,482万円の負担で済みますからマイホームのほうがお得ということになりますね。

5.運用による複利効果の強み

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しかし、賃貸住宅の場合は、マイホームで支払うべきお金を運用に回すだけの余力が残ります。すなわち・・・

・初期手数料分の432万円
・頭金500万円
・10年に1度のメンテナンス代金200万円
・税金代(年15万円)と更新料+火災保険料(2年間で17万円)の差額

これらを運用資金として投資に回します。仮に株式運用による期待利回りは8%と言われていますが、ここでは保守的に見て6%とし、30年間の再投資による複利運用に回します。

この結果を計算すると、30年後には約6475万円の資産を築くことができるのです。

6.収入も含めて改めて比較してみる

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支出と収入を考慮して比べてみるとこのようになりました。

賃貸住宅 支出=5,655万円 収入=約6,475万円 収支=約820万円 
マイホーム 支出=6,482万円 収入=4,000万円 収支=-2,482万円

やはり賃貸住宅のほうが経済的には断然お得、という結論になります。

7.マイホームとの差は歴然

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それ以外にも賃貸住宅のメリットはたくさんあります。

マイホームを買った瞬間、地方に単身赴任になった、といった月並みな例を用いるまでもなく、持ち家のリスクというのは色々あります。

賃貸住宅の場合はライフステージにあわせた住み替えが可能になるほか、居住に必要な設備(水道管やガス給湯器など)全て大家の負担になります。一方、マイホームの場合は災害が起こった場合も損失を被ることになりますし、賃貸住宅で借りていればこうした資産の損失リスクを回避することもできます。

不動産は自分が居住する期間は売却することはできません。しかし、証券や定期預金・債券などの運用においては、緊急時や万が一大きな金額が必要となる場合でも十分に対処できる資産なので安心感もあります。

8.最後に

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もちろんマイホームにもいい面もあります。

マイホームはまさに自分の城であり、家に帰って落ち着ける安堵感や開放感もあります。また、安定的に居住できる安心感も同様です。このような感覚はまさに「プラスレス」であります。しかし、先ほどの収支の差の前に「プラスレス」の部分で凌駕できるのか、改めて自分に問い正してみる、というのはとても重要な行為だと考えます。

今回の比較では住宅ローン金利などの前提条件でマイホーム購入のほうが有利な部分も多々ありました。それでも、マイホームを購入するのは経済的に不利と分かります。かくいうワタシももう一度5年前に戻れるのならマイホームではなく賃貸住宅を選ぶべきだったか、とややもすると後悔に近い気持ちです。

周りが持ち家を買っているから、住宅ローン金利が低いから、といった理由だけでマイホームに飛びつくのはとても危険です。マイホームに何を求めるのか、なぜマイホームを買うのかといったことをきちんと整理するなど悔いのない判断が必要だと思います。
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