7月は私の担当している女性の利用者さんの  

誕生日になります。  

なんと今月で99歳です。  



その人に週に訪問リハビリを週2回40分  

させていただいてます。  

今回は、元気で99歳を迎えるHさんの  

かれこれ2年弱の関わりを書こうかと思います。  



Hさんは笑顔がとても可愛らしいおばあちゃんです。  

脳梗塞で9ヶ月ほど病院に入院していました。  
(正確な数字は忘れました)  




はじめて関わった時は  

右手足がだらんと力が入らないのが特徴で  

また右手をよく車椅子に巻き込んだり  

麻痺だけでなく、右手の存在自体を忘れてしまう  

症状もありました。  



座った姿勢は  

端坐位はとれますが、  

前かがみになることさえ前に倒れそうで  

恐怖を感じます。  



また立ち上がる時は  

とにかく必死に首をそらして  

天井方向へ自分の体を持ち上げようとしますが、  

うまく行きません。  



起き上がりも柵をぐっと引っ張り  

体を起こそうとするので、  

手伝わないとできませんでした。  



全体としてまとめると  

右手、右足はほとんど動かず、  

左手、左足は動きますが、  

動作としては坐位をとれるだけで、  

そこから何もできない、介助が必要だった状態です。  



そればかりか、無理に動く習慣がかなりついてしまって  

体を常に強張らせて、動こうとされます。  

当然、体が硬くなりますから、  

動作がさらに困難になっています。  



また認知機能も私の顔は覚えることはできましたが、  

曜日などは曖昧で、また話した内容も  

半分以上は忘れています。  



病院のリハビリでは  

平行棒で立つ練習や  

支えながら歩く練習をしたそうです。  



家族から聞いた話ですが、  

できなかったら、  

「なぜ、できないの、このまえやったでしょ!!」  

と強く言われることもあって  

涙を流されてこともあって、見るのもしのびなかった  

とのことでした。  

一生懸命体を動かそうとするけど  

うまくいかないという連続でした。  



私自身のこの2年間のアプローチでは  

まず、坐位でゴソゴソ動くことが  

大切だと思いそこからはじめました。  




主に使用した道具は  

電動ベッド(高さ調整のみ)と  

肘置きのない椅子2脚です。  

これがあれば、充分在宅でもリハビリできます。  



実際にしていったことを  

をすごく簡単に表現していきます。  


■片側の坐骨に重さを移す練習  

から  

■お尻で歩く練習  

■前に楽にかがむ練習  

■端坐位で足に重さを写して、そのまま横にお尻を移動する練習  

などを行いまいした。  



本人にとって、比較的簡単な動きは  

適切なハンドリングのもと  

練習していくと、少しずつ  

様になってきます。  



様になってきたら  

■椅子をベッドにの横につけて、高さを合わせます。  
そして少しずつお尻を動かして、椅子の方に移乗していきます。  


■なれてきたら、90度移乗、  
手をつくのに、もう一台の椅子を使います。  

■それも慣れてきたら、180度の移乗  
(椅子と椅子を向かいあって移乗)  

を行いました。  



もちろん、一人ではできないので、  

やはり、介助者のハンドリングのスキルが  

とても大切です。  



その時に意識したことは、  

「全体と機能する」  

ということです。  

麻痺足の手も骨があるので、  

ぶらんとさせるのではなく  

使います。  



だからといって対称にしようという意図はありません。「  

麻痺の腕は弱いのですか、  

弱いなりに使って、動作が少しでも楽になればいいのです。  

むしろ、非対称な体を無理やり対称にするほうが  

無理があります。  

体は非対称になっているのに、動作は対称だと  

弱いのなら、弱いなりに  

全体として無理なく機能するようにします。  




ですから、重さの乗せ方を最初は  

麻痺側1,2割、麻痺ではない側は8.9割  

という使いかたをします。  

また頭の動きも動作として参加するように  

練習します。  



そうして経過していくうちに  

少しずつ変化が起きてきました。  

麻痺足の手が少しずつ動くようになってきました。  

麻痺足の足も少し支えられるように。  

そして手を忘れることがなくなってきました。  

この頃には起き上がりもできるようになってきます。  



麻痺側に時間をかけて介入していることは  

ありません。むしろ麻痺ではない側に力が  

入りすぎていたので、そちらの使い方を  

移乗動作を練習するのに加えて、少し時間をかけて練習していました。  



ではなぜ変わったか?  

それはやはり、「全体として機能する」  

ということが理由だと考えられます。  

麻痺則の腕と足は邪魔物から  

動きを少し助けてくれる役割に変化しました。  


そして楽しく動くことで、  

さらに笑顔も増えてきました。  




動きが変われば、構造に影響を与えます。  

脳の神経回路も、身体的な構造にも。  

多くの人は構造が変わって、機能が高まると考えていますが、  

私は逆です。  




機能が変わることで、構造が変わってきます。  

機能とは体の使い方であり、洗練された動きのことです。  

少しずつ体の使い方が変わることで  

麻痺側の手足や脳に影響を及ぼしたのでしょう。  



また楽しい楽な動きは、  

本人は好奇心や  

興味をもって練習できます。  

それが、さらに脳に影響を及ぼしたように思います。  



そして一年ぐらいで  

移乗が小さいステップであれば  

ほぼ一人でできるようになってきました。  



次の段階に行きます。  

■椅子やベッド使って手をそこに起き、半四つ這いを楽に取る  

■半四つ這いが楽にとれたら、左右に移動する  

■慣れてきたら、ベッドを高くしたり、椅子の淵を高くして高這い  
に近い状態に  




そうなれば、少しずつ空間の中で  

体が高くなってきます。  

少しずつ四つ這いで  

手足にのっていた重みが  

体が起きてくることで重さが足に乗る  

割合が高くなります。  



で現在ですが、  

四つ這いの練習をしながら、  

■シルバーカーを押したり、  

■片手は並べて椅子の背もたれの上をもち、少しだけ  

麻痺則をサポートする  

この前はシルバーカーで歩きながら  
(軽介助あり)  

部屋の入り口から、家族のいる台所へ  

いきなり行って家族をびっくりさせてました。  

車椅子がすっかり定着していたので  

歩いてでてくる姿は相当違和感です笑  



と少しずつ必要なプロセスをたどって  

歩行ができるようになってきてます。  

2年弱の歳月がかかりましたが、  

99歳にして、機能が統合されています。  

同時に詳しくは書いていませんが、  

楽に動けるように「思考」も学習しています。  



一生懸命歯をくいしばって頑張らなければいけないと  

という考えがHさん自身を苦しめていました。  

そういった考えも動きながら  

「苦しまない考え」をHさんに伝えていきます。  

もちろん忘れることも多いです。  

忘れてもいいんです。もう一度伝えればいいんですから。  



個人的にも常に人の可能性をみるのですが、  

99歳で軽度の老人性の認知症があっても  

脳の失認という後遺症があっても  

人は学習できると  

身をもって教えていただきました。  

(ただし、重度の認知症は本人ではなく  
周囲の人が学習することをおすすめします)  



今はあたりまえのように、  

小さい動きの乗り移りや  

座り直しもとてもうまくできるのですが、  


「もう余裕でできますね」  

と私が声をかけると  

こんなことでけへんかったんかなあ  

とすでに昔できなかったことを忘れます。  

それぐらいの物忘れなら問題はありません。  



またこのような方法は  

Hさんと一緒に作り上げたものです。  

さらっと書いてますが、  

実際はいったりきたり、また小さい動きの練習も  

いれています。  

細かく書くと、簡単な本一冊かけそうです。  



自分でいうのもなんですが、  

リハビリ中はとてもよい顔をされます。  

その顔を見て  

ご家族も嬉しそうになれます。  



そのニコニコした表情を見ると  

自分はよい仕事したなあと思います。  



私は本人に100歳で一人で  

歩けるようになりましょうと言ってます。  

昔から割と本気で言ってましたが、  

ようやく現実味を帯びてきました。  



先のことはどうなるかわかりません。  

でも自分の可能性を発見していくことは  

とても楽しいことだと思います。  

それはリハビリ依存とは質がまったく違います。  
(このあたりもメルマガなどで一度書きたいテーマです)  



一瞬でよくなることは難しいですが、  

しかし動きを変えていくことを  

時間をかけて学習し  

機能を高めていくことで  

幸せに生きることの手伝いが  

週に1回か、2回の学習でも  

できるのだと思いました。  



私は、何々法とかにこだわっていません。  

キネステティクスもフェルデンクライスメソッドも教えていますが  

大切なのは人に関する理解です。  

上記はただの道具です。そのための入り口でしかありません。  

本質は目の前にあります。  



動きの理解と、学ぶことの理解のもとに、  

人とかかわれば  

人それぞれのアプローチを作ることができます。  

この方法はHさん法と名付け、一緒にHさんと  

作りあげたアプローチです。  

世界に一つのアプローチをHさんと楽しんでいます。  



私がしたことは答えではありません。  

一つのかかわり方です。  

人がかわればかかわり方も答えも変わります。  




私は皆さん自身も、  

皆さんと患者さんの中での  

世界に一つだけのかかわりで作り上げることができるように  

お手伝いしたいと思っています。  

そうやって仕事すると  

ケアもリアビリも  

おもろいですよ。